闇の中の光
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#563 [ゆーちん]
年越し蕎麦もなし。


お雑煮やお節料理だってなし。


もちろん、お年玉も。


年末年始は普段よりも仕事に精を出していた。


父親にも『年末年始は稼げるから、たくさん働け。』と言われる程だもの。


寒い中、懐の緩んだ親父との援助交際に励んでいたんだ。

⏰:09/01/19 11:09 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#564 [ゆーちん]
いい思い出なんかない大晦日。


もちろん、お正月だって同じ。


いい思い出なんか、全然…。


「蕎麦食わなきゃ年越せねぇっつうの。康呼ぶぞ。」


そう言って哲夫は康孝に電話をかけた。

⏰:09/01/19 11:10 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#565 [ゆーちん]
「蕎麦3人前買って来て。」


哲夫のその命令に、たった20分で対応した康孝は、なぜか上機嫌で蕎麦を持ってやって来た。


「いぇーい、あけおめイヴ〜。」

「意味わかんねぇし。」

「ヤッちゃん、寒いのにわざわざありがと。こっち座って。」

「おっ、サンキュね。シホちゃん。」

⏰:09/01/19 11:11 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#566 [ゆーちん]
私が座っていた場所を康孝に譲り、年越し蕎麦を作りにキッチンへ向かった。


ダシを作って、温めた蕎麦にかけるだけ。


こんな簡単な料理なのに、どうして金河家は年越し蕎麦を作ってくれなくなったんだろう。


そんな疑問、考えたって答えは出るはずもないか。

⏰:09/01/19 11:12 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#567 [ゆーちん]
「出来たよ。」


哲夫、康孝、そして私。


3人で年越し蕎麦を食べた。


「美味い!」

「三玉百円の蕎麦なのに、案外美味いね〜。」

「はぁ?康、お前そんな安物買って来たのかよ。」

「こういうのしかスーパーに置いてねぇんだもん。」

⏰:09/01/19 11:12 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#568 [ゆーちん]
久しぶりの年越し蕎麦は、本当に美味しくて…安物の蕎麦だろうが何だろうが、私にとってはご馳走だった。


体が温まり、後片付けが済んだ頃、康孝は帰ると言い出した。

⏰:09/01/19 11:13 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#569 [ゆーちん]
「いればいいじゃん。」

「そうだよ。一緒にカウントダウンしようよ、ヤッちゃん。」

「いやっ、二人の邪魔する気はねぇし。」


邪魔だなんて思わない。


康孝は私のお兄ちゃんみたいな存在なんだもん。


「ねぇヤッちゃん。私、まだお礼言ってなかったよね。」

「お礼?」

⏰:09/01/19 11:13 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#570 [ゆーちん]
「この前…のんちゃん助けてくれてありがとう。」

「あぁ、その事か。」

「ヤッちゃんが助けに来てくれてなかったら…のんちゃん…」

「お礼なんかいらねぇぞ。仲間を助けるのは当然の事だからさ。」


康孝はニッと笑い、私の頭を撫でた。

⏰:09/01/19 11:14 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#571 [ゆーちん]
哲夫に撫でられる時より、少し違う感情が私の心臓を跳ね上げさせた。


「テッちゃんから聞いたと思うけど、年明け早々ぶっかまして来るから応援頼むよシホちゃん。」

「あ、うん…気をつけてね。」

「あいよ!んじゃバイバイ。よいお年をー。」

⏰:09/01/19 11:15 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#572 [ゆーちん]
最後まで上機嫌だった康孝。


彼が帰った部屋は、何だか急に静けさが増した気がする。


「つーわけだ。仲間なんだから助けるっつう行為は当然の物なの。」


私と康孝の会話を聞いていた哲夫は優しく笑いながら教えてくれた。

⏰:09/01/19 11:16 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


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