闇の中の光
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#612 [ゆーちん]
自惚れかもしれないけど、シホを必要としてくれる人はたくさんいる。


だけど萌子は誰からも必要なんかされていない。


ずっとそう思っていた。


だけど違った。


嘘かもしれないけど、宗太郎は萌子を必要だとしてくれていた。

⏰:09/01/23 21:26 📱:SH901iC 🆔:OVGZkR5U


#613 [ゆーちん]
もし宗太郎の気持ちが本当だったとしても、私は彼の気持ちには応えられない。


哲夫が好きだから。


だけど、宗太郎たった一人にでも、萌子は必要とされた。


その事実に、自信がついたんだ。


親と戦おうって言う、自信。

⏰:09/01/23 21:27 📱:SH901iC 🆔:OVGZkR5U


#614 [ゆーちん]
哲夫を起こさないように、シホとして最後になるかもしれない家事をした。


掃除、洗濯、料理。


お風呂の時間が近付くと、哲夫は目を覚ました。


「まだ眠い…」

「お風呂入ればすっきりするよ。」

⏰:09/01/23 21:28 📱:SH901iC 🆔:OVGZkR5U


#615 [ゆーちん]
あくびばかりする哲夫と、いつもより長い時間、お湯につかった。


「気持ち良いね。」

「だな〜。風呂最高。」


気の抜けた哲夫の声が浴室に響き、自然と笑顔を誘った。

⏰:09/01/23 21:30 📱:SH901iC 🆔:OVGZkR5U


#616 [ゆーちん]
「今日の夕飯、何だと思う?」

「何か焼いてた音がしたから〜…炒め物?」

「ヒント、哲夫の好きなもの。」

「あぁ、ハンバーグだ!」

「ブブー。ヒント2、私にとって思い出の料理。」

「シホにとって?」

「うん。じゃあヒント3。最後のヒントだよ。」

⏰:09/01/23 21:31 📱:SH901iC 🆔:OVGZkR5U


#617 [ゆーちん]
「ん。」

「ヒント3。シホの初めての料理。」


哲夫は覚えてくれているのだろうか。


私がここに来て、シホとしての初めての食事であった食べ物。


誰かのために料理をするなんて、面倒だから嫌いだった。


だけど、美味しいって言ってくれる人のために作る料理は、嫌いじゃなかった。

⏰:09/01/23 21:33 📱:SH901iC 🆔:OVGZkR5U


#618 [ゆーちん]
「わかった?」


少し考えた哲夫は、口の端を吊り上げて笑った。


「お好み焼きだ。」


嬉しかった。


覚えててくれたんだ。


照れるような、恥ずかしいような。


「正解。」

「さすが、俺。」


浴室には二人の笑い声が優しく響いた。

⏰:09/01/23 21:34 📱:SH901iC 🆔:OVGZkR5U


#619 [ゆーちん]
お風呂から上がり、そのお好み焼きを頬張った。


簡単な料理だけど、私にとっては特別な料理。


色違いのお箸で食べたお好み焼き。


自分で作った物を、初めて美味しいって思えた。


料理って味だけじゃなく、誰とどこでどんな風に食べるかも左右されるんだね。

⏰:09/01/23 21:35 📱:SH901iC 🆔:OVGZkR5U


#620 [ゆーちん]
食べ終わり、片付けが済めば、集会に行く支度をする。


着替えたり、髪をセットしたり、化粧したり。


今日もいつものように準備に取り掛かる。


そんな私を、ベットに腰掛けて煙草を吸う哲夫の目が、ずっと追い掛けていた。

⏰:09/01/23 21:36 📱:SH901iC 🆔:OVGZkR5U


#621 [ゆーちん]
「何見てんの?」

「んー?」

「あんま見ないでよ。恥ずかしいじゃん。」


照れ笑いした私に哲夫は小さく呟いた。


「明日の今頃には、もういねぇのかなって思って。」


私の顔から笑顔が消えた。


同時に、化粧をする手の動きも止まった。

⏰:09/01/23 21:45 📱:SH901iC 🆔:OVGZkR5U


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