闇の中の光
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#613 [ゆーちん]
もし宗太郎の気持ちが本当だったとしても、私は彼の気持ちには応えられない。
哲夫が好きだから。
だけど、宗太郎たった一人にでも、萌子は必要とされた。
その事実に、自信がついたんだ。
親と戦おうって言う、自信。
:09/01/23 21:27 :SH901iC :OVGZkR5U
#614 [ゆーちん]
哲夫を起こさないように、シホとして最後になるかもしれない家事をした。
掃除、洗濯、料理。
お風呂の時間が近付くと、哲夫は目を覚ました。
「まだ眠い…」
「お風呂入ればすっきりするよ。」
:09/01/23 21:28 :SH901iC :OVGZkR5U
#615 [ゆーちん]
あくびばかりする哲夫と、いつもより長い時間、お湯につかった。
「気持ち良いね。」
「だな〜。風呂最高。」
気の抜けた哲夫の声が浴室に響き、自然と笑顔を誘った。
:09/01/23 21:30 :SH901iC :OVGZkR5U
#616 [ゆーちん]
「今日の夕飯、何だと思う?」
「何か焼いてた音がしたから〜…炒め物?」
「ヒント、哲夫の好きなもの。」
「あぁ、ハンバーグだ!」
「ブブー。ヒント2、私にとって思い出の料理。」
「シホにとって?」
「うん。じゃあヒント3。最後のヒントだよ。」
:09/01/23 21:31 :SH901iC :OVGZkR5U
#617 [ゆーちん]
「ん。」
「ヒント3。シホの初めての料理。」
哲夫は覚えてくれているのだろうか。
私がここに来て、シホとしての初めての食事であった食べ物。
誰かのために料理をするなんて、面倒だから嫌いだった。
だけど、美味しいって言ってくれる人のために作る料理は、嫌いじゃなかった。
:09/01/23 21:33 :SH901iC :OVGZkR5U
#618 [ゆーちん]
「わかった?」
少し考えた哲夫は、口の端を吊り上げて笑った。
「お好み焼きだ。」
嬉しかった。
覚えててくれたんだ。
照れるような、恥ずかしいような。
「正解。」
「さすが、俺。」
浴室には二人の笑い声が優しく響いた。
:09/01/23 21:34 :SH901iC :OVGZkR5U
#619 [ゆーちん]
お風呂から上がり、そのお好み焼きを頬張った。
簡単な料理だけど、私にとっては特別な料理。
色違いのお箸で食べたお好み焼き。
自分で作った物を、初めて美味しいって思えた。
料理って味だけじゃなく、誰とどこでどんな風に食べるかも左右されるんだね。
:09/01/23 21:35 :SH901iC :OVGZkR5U
#620 [ゆーちん]
食べ終わり、片付けが済めば、集会に行く支度をする。
着替えたり、髪をセットしたり、化粧したり。
今日もいつものように準備に取り掛かる。
そんな私を、ベットに腰掛けて煙草を吸う哲夫の目が、ずっと追い掛けていた。
:09/01/23 21:36 :SH901iC :OVGZkR5U
#621 [ゆーちん]
「何見てんの?」
「んー?」
「あんま見ないでよ。恥ずかしいじゃん。」
照れ笑いした私に哲夫は小さく呟いた。
「明日の今頃には、もういねぇのかなって思って。」
私の顔から笑顔が消えた。
同時に、化粧をする手の動きも止まった。
:09/01/23 21:45 :SH901iC :OVGZkR5U
#622 [ゆーちん]
「そんな寂しい事、言わないで。」
「…ん、悪い。」
ずっとずっと、はっきりさせたいって思っていた事があった。
この機会に、哲夫に聞いてもいいよね?
「聞いてもいいかな?」
「何?」
:09/01/23 21:46 :SH901iC :OVGZkR5U
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