闇の中の光
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#683 [ゆーちん]
「何着ようかなって。」
すると哲夫が言った。
「着るもの決めてから脱げよ、バカ。」
そう言って、康孝の手に握られていた袋を奪い、そのまま私に手渡した。
「えっ、何これ。」
「ちょうど着るもの悩んでたんだろ?俺からのプレゼント。」
と、康孝が笑った。
:09/01/24 21:30 :SH901iC :JFMqBZYE
#684 [ゆーちん]
袋の中身を見て、息を飲み込んだ。
「これ…」
私が初めてここに来た時、着ていた服だ。
あんなに汚かったのに、新品のように綺麗。
「私の制服…」
「康がクリーニングに出してくれたんだぞ。」
「ヤッちゃんが?」
「たまには俺だって役に立つだろ?」
:09/01/24 21:31 :SH901iC :JFMqBZYE
#685 [ゆーちん]
舌を出してピースサインをした康孝はバカっぽかった。
幼稚園児以下。
だけどそんな康孝が好きだった。
仲間として、男として、人として、好きだった。
だけどそれは哲夫への【好き】とは、また違う。
人間の感情は、数え切れない。
:09/01/24 21:35 :SH901iC :JFMqBZYE
#686 [ゆーちん]
「それともう1つプレゼント。」
「え?」
「玄関にツルピカに輝いてるローファーが待ってるぞ。」
康孝の言葉を聞いた私はすぐさま玄関まで走った。
康孝の言う通り。
汚かったローファーが、ピカピカしている。
:09/01/24 21:35 :SH901iC :JFMqBZYE
#687 [ゆーちん]
驚いていた私を追い掛けて来た康孝が、教えてくれた。
「靴みがき買って来て、みんなで磨いたんだぞ。」
【ありがとう】を何度言えばいいのかわからない。
【嬉しい】を通り越した感情が私を襲う。
「私、何て言ったらいいのか…」
「お礼はいいから早く服着ろ。」
:09/01/24 21:36 :SH901iC :JFMqBZYE
#688 [ゆーちん]
部屋に戻ると哲夫が笑ってた。
「哲夫ぉ、ローファーが…」
「フッ。よかったな。半泣きなってるし。」
「泣いてないよ。もう泣かないって決めたんだから。」
「そ。早く服着ないと風邪ひくぞ。」
「うん。今さっきヤッちゃんにも服着ろって叱られた。」
:09/01/24 21:37 :SH901iC :JFMqBZYE
#689 [ゆーちん]
二人の視線は気にならない。
というか着替える私なんか見ていなかったのかも。
久しぶりに袖を通した制服は、ひんやりしていた。
やけに体にフィットする。
あぁ、私はやっぱり紛れも無い【金河萌子】なんだって実感した。
:09/01/24 21:38 :SH901iC :JFMqBZYE
#690 [ゆーちん]
スカートを短くし、あの日履いてた靴下を引っ張り上げる。
靴下は、クローゼットの下の引き出しの1番奥に潜んでた。
久しぶりに取り出すもんだから、なんだか違和感たっぷりだった。
:09/01/24 21:39 :SH901iC :JFMqBZYE
#691 [ゆーちん]
「ほほぉー。シホちゃんも何だかんだでまだ現役だもんな。やっぱ制服似合うわ。」
康孝がそんな言葉をサラッと言いきると、哲夫に『セクハラかよ。』と笑われていた。
そんな笑ってた哲夫が、小さな声で呟いた。
:09/01/24 21:39 :SH901iC :JFMqBZYE
#692 [ゆーちん]
「懐かしいな。」
康孝も『あぁ。』と私を見ながら懐かしんでいた。
「つい昨日の事みたい。制服着た女が俺のナイフ握って眠ってたんだよな。」
「哲夫の部屋に知らない女子高生がいて、俺すっげぇビックリした。」
:09/01/24 21:40 :SH901iC :JFMqBZYE
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