闇の中の光
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#718 [ゆーちん]
しおらしくなるのは嫌。
だから笑って車を降りた。
哲夫も後に続く。
康孝は降りて来なかった。
「シホ。」
哲夫に肩を抱かれ、私達は歩く。
ずっと無言のまま歩いた。
3度、角を曲がった時、哲夫は口を開いた。
:09/01/25 11:19 :SH901iC :PIdEEYAI
#719 [ゆーちん]
「ここで俺は女子高生を拾った。」
哲夫の視線は、冷たそうな地面だけを捕えていた。
「最初は死んでんだと思った。俺のナイフ握ってたから、すげぇびっくりした。」
「うん。」
「あまりにも汚い女で、何か笑えた。」
:09/01/25 11:20 :SH901iC :PIdEEYAI
#720 [ゆーちん]
哲夫の笑顔。
不思議なことに、それを見れば自然と勇気も沸く。
自分から、哲夫の腕から抜け出した。
「じゃあ、行くね。」
「道わかんのか?」
「何となく思い出せると思う。わかんなかったら誰かに聞くよ。」
:09/01/25 11:20 :SH901iC :PIdEEYAI
#721 [ゆーちん]
「そ。」
「ありがとう。」
【バイバイ】は言わない。
【バイバイ】したくないから。
また、会いたいから。
「シホ。」
「何?」
「いってらっしゃい。」
哲夫は右手をヒラヒラ動かし、私に手を振った。
:09/01/25 11:21 :SH901iC :PIdEEYAI
#722 [ゆーちん]
私も手を振り返す。
「行ってきます。」
【いってらっしゃい】だなんて、哲夫に初めて言われた。
【行ってきます】だって、哲夫に初めて言った。
ちょっと、くすぐったい。
:09/01/25 11:21 :SH901iC :PIdEEYAI
#723 [ゆーちん]
哲夫に背を向け、歩き出した時。
「だぁー!待って!」
拍子抜けしちゃうような、哲夫の声。
足を止め、哲夫の方を向くと何か投げられた。
「落とすな!」
「えっ?」
:09/01/25 11:31 :SH901iC :PIdEEYAI
#724 [ゆーちん]
落とすまいと慌てて掴んだもの。
携帯電話だった。
「…これ。」
「服とか化粧品は置いといてやる。あと箸も。でも携帯電話は携帯って言うぐらいだから、携帯しねぇといけないもんじゃん?」
:09/01/25 11:31 :SH901iC :PIdEEYAI
#725 [ゆーちん]
哲夫、康孝、のんちゃん、チームの女の子達。
萌子の携帯電話より、登録件数は少ないけど、とても純粋な携帯電話だって自分では思う。
「いいの?」
「負けたら電話して来い!ぶっ飛んでってやるから。」
哲夫の笑顔も、最高だ。
:09/01/25 11:32 :SH901iC :PIdEEYAI
#726 [ゆーちん]
涙は見せない。
笑顔を見せるんだ。
「ありがと。」
「次に会う時は、汚い格好で寝転がってんじゃなくて、綺麗な格好で恋人同士として会おうな!」
「うん!」
もう、振り返る事はなかった。
あまり見覚えのない道を堂々と歩いてやった。
:09/01/25 11:32 :SH901iC :PIdEEYAI
#727 [ゆーちん]
しばらく歩くと、すぐに見覚えのある道に出た。
足は自然と金河家に進む。
不思議と、人っこ一人出会わなかった。
目に映る、あの金河家。
吐き気がする。
そんな時は目を閉じて、笑顔を浮かべる。
のんちゃん、康孝、そして哲夫。
:09/01/25 11:33 :SH901iC :PIdEEYAI
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