闇の中の光
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#752 [ゆーちん]
父を信じてもいいのかもと思ったのは、萌子に戻って1ヵ月程経った時だろうか。
私が作った晩ご飯に、初めて『美味い』と感想を述べてくれた。
他愛もない事が私にとっては嬉しくて、3人揃って色違いの箸を使いながら食事をとるのが奇跡に近かったから。
:09/01/25 12:04 :SH901iC :PIdEEYAI
#753 [ゆーちん]
萌子が死ぬ前に上辺で付き合っていた彼氏とやらは、いつのまにか私以外の彼女がいた。
驚きも、悲しみも、憎しみもない。
だって私にも大好きな彼氏がいるからね。
11ヵ月という月日は矢のように過ぎ、私は18歳になっていた。
彼も23歳になっている。
:09/01/25 12:05 :SH901iC :PIdEEYAI
#754 [ゆーちん]
そういえば宗太郎は元気だろうか。
あの襲撃の時に会った以来、顔も見てない。
連絡なんか取れる訳もなく、複雑な気持ちだけが残っていた。
私にちょっとばかし力をくれた宗太郎。
感謝しないといけないな。
:09/01/25 12:06 :SH901iC :PIdEEYAI
#755 [ゆーちん]
12月。
なぜ11ヵ月もの間会わなかったのか。
理由なんかない。
戦った後、電話で『引き分けかも。』と伝えると『また冬に会おうな。』と言われた。
:09/01/25 12:06 :SH901iC :PIdEEYAI
#756 [ゆーちん]
会いに行けば会ってくれる距離にいたのに11ヵ月もの間、会わなくても私は大丈夫だった。
自惚れだって言われてもいい。
私は見放されないっていう自信が、なぜか満々とあった。
12月の再会には意味があった。
:09/01/25 12:08 :SH901iC :PIdEEYAI
#757 [ゆーちん]
萌子に戻ってからの11ヵ月間、毎日なにかしら忙しかった。
援助交際ではないアルバイトをし、父だけの収入では苦しい家庭を支えた。
高校3年生になり、夏には就職先が決まった。
秋が過ぎ、冬が来る。
本当に早かった。
:09/01/25 12:08 :SH901iC :PIdEEYAI
#758 [ゆーちん]
私の気持ちを親に打ち明けたのは11月の末。
家を出て行きたい。
好きな人と住みたい。
でもたまには家族として、3人で過ごしたい。
答えはOKだった。
私がいなくなった去年の冬、2人は考えてくれたらしい。
:09/01/25 12:09 :SH901iC :PIdEEYAI
#759 [ゆーちん]
萌子にも幸せな人生を歩かせてやりたい、って。
初心に戻って、1からやり直したいって思ったんだって。
信じがたい話だったけど、信じてみようと思った。
もう暴力を振るって来なくなったから。
:09/01/25 12:10 :SH901iC :PIdEEYAI
#760 [ゆーちん]
そんな私の幸せが、家を出て好きな人と暮らす事なら応援すると親は言った。
だけど仕送りを頼まれた。
結局お金かよ、って思ったけど援交してた時の苦痛とか苛立ちは感じなかった。
2人は私の巣立ちを、私は2人への仕送りを承諾し、話はまとまった。
:09/01/25 12:11 :SH901iC :PIdEEYAI
#761 [ゆーちん]
久しぶりにその携帯電話を使う。
ずっと料金は支払われていて、いつでも使える状態にしてくれていた。
「もっしっしー。」
「フフッ。元気そうだね。」
「俺はいつだって元気。」
私の兄のような人の11ヵ月ぶりの声には、何の変わりもなかった。
:09/01/25 12:11 :SH901iC :PIdEEYAI
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