WHITE★CANDY
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#718 [ぎぶそん]
H組の演劇が終わって少しの休憩を挟んだ後、次は元基のいるC組の発表となった。
C組はアメリカのホームコメディドラマをモチーフとした演劇で、ステージのセットも洋風のリビングみたいに施されていた。
父親役らしき元基が、コミカルな言動で客席の笑いを誘う。
私も隣に座るエリも、人目も気にせず大声で笑う。
最後にクラス全員でミュージカル風味のダンスを踊り、最初から最後までにぎやかなままC組の発表は終了した。
舞台で笑いを取ることは涙を誘うことより難しいと聞いたことがある。
それをこんな大人数の中いとも簡単にやってのけた元基に一つの才能を感じた。
将来はお笑い芸人っていうのも良さそう。
:12/04/18 22:56
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:cCLZ7M/U
#719 [ぎぶそん]
六番目に発表のA組の時代劇も真面目に鑑賞し、いよいよ優平のいるF組の発表となった。
私が密かにこの日で一番楽しみにしていたもの。
「優平たち何やるの?」
休憩の間、エリが鞄から取り出した飴を舐めながら私に尋ねる。
「『星くずロック』っていう漫画の劇だって」
「あ!だから昨日本屋で表紙を見てたのねー!」
エリが瞬時ににやつく。続けて、
「私その漫画ちょっと読んだことあるけど、主人公って不良っぽいし優平とは正反対の性格だよ。あのお坊っちゃんがどんな演技するか見物ね。」
と言い足した。
そうなんだ、と彼女に返したところで観客席の明かりが消され、幕が上がり始める。
:12/04/18 23:22
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:cCLZ7M/U
#720 [ぎぶそん]
教室をシチュエーションとしたセットの中央で一人、主人公役の優平が頬杖をついて気だるそうに席に座っている。
この学校の制服ではない学ランを着ていて、いくつかボタンが空いていた。
右手に持つ鉛筆を小刻みなリズムで動かしながら、机の上を小突く。
「星井!補習のプリントは全部やったのか!?」
教師役と思われる男子が上手から颯爽と現れた。
丸い眼鏡に少しだぼついた黄土色のスーツが、F組のクラスの吉川先生を彷彿とさせる。
「……まだっす。もう帰っていいっすか?観たいテレビあるんで」
優平が鞄を持って席を立ち上がった。
「ダメだ!全部終わるまで学校はおろか一歩も教室から出ちゃいかんからな!」
教師役の男子が怒り狂う様子で彼を取り押さえる。
舌打ちをし、観念した感じで彼が再び座った。
まだ数分しか経っていないのに優平のいつもと全然違う雰囲気、態度、言葉遣いに演技と分かりつつ私は混乱する。
:12/04/18 23:51
:Android
:cCLZ7M/U
#721 [ぎぶそん]
教師役が去り舞台の照明が落ちると、優平だけにスポットライトが照らされた。
―「俺の名前は星井龍河、高校二年生。本来なら春から三年に上がるはずだったのだが、間抜けな俺はあろうことか留年してしまった。
やりたくもない補習をやらされたり、うだつの上がらない日々を過ごしている」
予め録音していたのか、彼のやや棒読みの語りが会場に流れ始めた。
その間、彼は舞台の上で時間が止まっているよう頬杖をついたまま硬直していた。
再び照明が点くと、今度はセーラー服を着た女子が上手からやって来た。昨日F組の前で優平といた時に彼を囲んでいた女子の一人だった子だ。
スカートが普段の時と同じでやけに短く、雰囲気もいつもと変わらず派手だ。
歩く振動で、彼女の巻き髪が小さく揺れる。
「星井、それ手伝ってあげよっか」
彼女が彼の席の前に立つ。
「桜子」と、彼が呼ぶ。
:12/04/19 00:16
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:ivn.nX26
#722 [ぎぶそん]
彼が彼女に机の上のプリントを渡し、彼女が彼の隣の席に座る。彼女が机の上に携帯電話を置いた。
「……このクラス、皆あんたのことを怖がってるよ」
彼女がペンを動かしながら彼に話しかける。
「別に気にしねぇ」
不機嫌そうに答える彼。
その直後、彼女の携帯から着信音が流れる。
ぎこちない少年の声とあまり上手くない演奏が混じるロックテイストなナンバーだった。
「聴き慣れない歌だな、それ」
「アタシが中学の時付き合ってた彼氏の曲。中学三年の時交通事故で死んじゃってもういないけどね。この曲を聴くと隣で歌ってくれてる気がして、いまだに着信音にしてる」
彼女が携帯を胸元で抱きしめる。
彼女の演技力もあいまって、フィクションと思いつつも少し胸が切なくなった。
:12/04/19 00:39
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:ivn.nX26
#723 [ぎぶそん]
「……アタシが何であんたによく話し掛けたりしてると思う?」
ペンを動かすのを止め、彼女が彼の顔を見ながら尋ねる。
「そうだなあ……、かっこいいから?」
冗談半分で答える彼。
「……馬鹿。あんたって、その死んだ彼に少し似てるの。だからあんたを彼と重ねて見てしまう自分がいて……でももうそんなことしない。あ、この話は全部忘れて。じゃあね」
彼女がプリントを渡し、立ち上がるや否や駆け足で教室を出た。
舞台から消えるまでその様子を彼が見つめる。
「彼と似てる、か……」
顔を仰ぎ、彼が溜め息混じりに呟く。
おそらくこの物語のヒロインはさっきの彼女で、主人公は彼女に恋を寄せてるのだろうと私は推測した。
そして二度目の舞台の暗転となった。
:12/04/19 22:38
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:ivn.nX26
#724 [ぎぶそん]
数分も経たぬうちに照明が点く。
教室にはたくさんの生徒役の人たちがいて、席に座っていたり立っていたりしている。
下手側にあるダンボールで作ったと思われる簡易な背景のセットが、先程の夕方から朝の景色に変わっていた。細部までの細かい演出に粋を感じた。
上手から星井役の優平が教室に入ると、突然机の上に立つ。
「ジャジャーン!」
黄色いエレキギターを掲げて、陽気に踊り始めた。
生徒役の子たちが唖然とする。
観客席では少し嘲笑気味の笑いが聞こえ、
私も同じように可笑しさを感じて笑ってしまった。
さきほどの女子生徒役の子が再び現れる。
「星井、どうしたのそのギター!?」
仰天した様子で彼の元に寄る。
「桜子。俺、今日から音楽やることにした」
物語が中枢部に突入しだした。
:12/04/19 23:05
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:ivn.nX26
#725 [ぎぶそん]
「音楽やるって言っても……うちの学校に軽音楽部はないわよ」
彼女が不安そうな表情で彼を見つめる。
「そんなもんなくてもどうにかなるさ。って言うか、俺が作る」
そして、彼は机から飛び降りた。
「なあっ!誰か俺と一緒にバンド組まねえか?」
教室中の生徒にこう呼び掛ける彼。
しかしその声に耳を傾ける者は一人もおらず、嫌そうな目つきで彼を見る。
実年齢が彼より一つ年下に当たるクラスの子らは、彼の存在を煙たく感じているようだ。
「星井!学校にギターなんか持ってくるんじゃない!」
そこで登場した教師役の男子が彼を怒鳴りつけ、持っていた名簿表で彼の頭を叩いた。
痛々しい音が聞こえると同時に、彼が苦痛そうに顔を歪める。本気で叩かれたのだろうか。
この教師役の男子、F組一の熱演かも知れない。
:12/04/20 23:46
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:SolPToBg
#726 [ぎぶそん]
三度目の場面転換。
背景が夕方に変わっていて、教室では優平の他に素行の悪そうな男子生徒が二人席に座っていた。
一人はガムをクチャクチャさせながら退屈そうに、もう一人は携帯電話に夢中になっている。
背が高くて白衣を着た教師役の男子が入ってきた。
プリントを配ると、彼らの席の周りを徘徊しながら話はじめる。
「今年は例年になく留年した生徒が三人、か……。本当にお前らはクズだなあ。あまり先生らに無駄な手を掛けさせないでくれよ」
冷酷
「ああっ!何だと!?」
ガムを食べていた男子が立ち上がり、教師の近くに寄ると彼の胸ぐらを掴む。
「どうした?殴るのか?私を殴れば君は停学処分のみでは済まないぞ。クズは所詮、何をしてもクズのままなのさ」
教師役の男子が冷酷な笑みを浮かべる。
生徒役の男子が、悔しそうな顔を浮かべながら掴んでいた両手を離す。
ドラマではたまにいたりするけど、こんな非道な先生って実際にいるのかなあ、いたら怖いなと私は恐ろしさを感じた。
:12/04/21 00:13
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:z8kxVQLg
#727 [ぎぶそん]
白衣の教師が立ち去ると、優平がエレキギターを手にした。
教室でジャカジャカと渇いた音が小さく響く。
その姿をさっき教師に突っかかっていた生徒が哀愁漂う瞳で眺める。
「ギター、か……中学の時女にモテたくて手ェ出したけど三日坊主だったな。本当、クソみたいな俺の人生……」
生徒役の男子がやりきれないと言わんばかりの表情をする。
「だったら俺とバンド組まん?」
声高らかに優平が彼に問いかける。
「えー……。今さら面倒くせえ……」
生徒役が渋る。
「あんた、今のままでいいのか?このままクソみたいな毎日で高校生活が終わっても」
「……」
優平のまっすぐな問いに、黙りこくる生徒役。
そして数秒ほどして、「分かった。やるよ」とぶっきらぼうに応えた。
:12/04/23 21:34
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