WHITE★CANDY
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#721 [ぎぶそん]
教師役が去り舞台の照明が落ちると、優平だけにスポットライトが照らされた。
―「俺の名前は星井龍河、高校二年生。本来なら春から三年に上がるはずだったのだが、間抜けな俺はあろうことか留年してしまった。
やりたくもない補習をやらされたり、うだつの上がらない日々を過ごしている」
予め録音していたのか、彼のやや棒読みの語りが会場に流れ始めた。
その間、彼は舞台の上で時間が止まっているよう頬杖をついたまま硬直していた。
再び照明が点くと、今度はセーラー服を着た女子が上手からやって来た。昨日F組の前で優平といた時に彼を囲んでいた女子の一人だった子だ。
スカートが普段の時と同じでやけに短く、雰囲気もいつもと変わらず派手だ。
歩く振動で、彼女の巻き髪が小さく揺れる。
「星井、それ手伝ってあげよっか」
彼女が彼の席の前に立つ。
「桜子」と、彼が呼ぶ。
:12/04/19 00:16
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#722 [ぎぶそん]
彼が彼女に机の上のプリントを渡し、彼女が彼の隣の席に座る。彼女が机の上に携帯電話を置いた。
「……このクラス、皆あんたのことを怖がってるよ」
彼女がペンを動かしながら彼に話しかける。
「別に気にしねぇ」
不機嫌そうに答える彼。
その直後、彼女の携帯から着信音が流れる。
ぎこちない少年の声とあまり上手くない演奏が混じるロックテイストなナンバーだった。
「聴き慣れない歌だな、それ」
「アタシが中学の時付き合ってた彼氏の曲。中学三年の時交通事故で死んじゃってもういないけどね。この曲を聴くと隣で歌ってくれてる気がして、いまだに着信音にしてる」
彼女が携帯を胸元で抱きしめる。
彼女の演技力もあいまって、フィクションと思いつつも少し胸が切なくなった。
:12/04/19 00:39
:Android
:ivn.nX26
#723 [ぎぶそん]
「……アタシが何であんたによく話し掛けたりしてると思う?」
ペンを動かすのを止め、彼女が彼の顔を見ながら尋ねる。
「そうだなあ……、かっこいいから?」
冗談半分で答える彼。
「……馬鹿。あんたって、その死んだ彼に少し似てるの。だからあんたを彼と重ねて見てしまう自分がいて……でももうそんなことしない。あ、この話は全部忘れて。じゃあね」
彼女がプリントを渡し、立ち上がるや否や駆け足で教室を出た。
舞台から消えるまでその様子を彼が見つめる。
「彼と似てる、か……」
顔を仰ぎ、彼が溜め息混じりに呟く。
おそらくこの物語のヒロインはさっきの彼女で、主人公は彼女に恋を寄せてるのだろうと私は推測した。
そして二度目の舞台の暗転となった。
:12/04/19 22:38
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:ivn.nX26
#724 [ぎぶそん]
数分も経たぬうちに照明が点く。
教室にはたくさんの生徒役の人たちがいて、席に座っていたり立っていたりしている。
下手側にあるダンボールで作ったと思われる簡易な背景のセットが、先程の夕方から朝の景色に変わっていた。細部までの細かい演出に粋を感じた。
上手から星井役の優平が教室に入ると、突然机の上に立つ。
「ジャジャーン!」
黄色いエレキギターを掲げて、陽気に踊り始めた。
生徒役の子たちが唖然とする。
観客席では少し嘲笑気味の笑いが聞こえ、
私も同じように可笑しさを感じて笑ってしまった。
さきほどの女子生徒役の子が再び現れる。
「星井、どうしたのそのギター!?」
仰天した様子で彼の元に寄る。
「桜子。俺、今日から音楽やることにした」
物語が中枢部に突入しだした。
:12/04/19 23:05
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:ivn.nX26
#725 [ぎぶそん]
「音楽やるって言っても……うちの学校に軽音楽部はないわよ」
彼女が不安そうな表情で彼を見つめる。
「そんなもんなくてもどうにかなるさ。って言うか、俺が作る」
そして、彼は机から飛び降りた。
「なあっ!誰か俺と一緒にバンド組まねえか?」
教室中の生徒にこう呼び掛ける彼。
しかしその声に耳を傾ける者は一人もおらず、嫌そうな目つきで彼を見る。
実年齢が彼より一つ年下に当たるクラスの子らは、彼の存在を煙たく感じているようだ。
「星井!学校にギターなんか持ってくるんじゃない!」
そこで登場した教師役の男子が彼を怒鳴りつけ、持っていた名簿表で彼の頭を叩いた。
痛々しい音が聞こえると同時に、彼が苦痛そうに顔を歪める。本気で叩かれたのだろうか。
この教師役の男子、F組一の熱演かも知れない。
:12/04/20 23:46
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:SolPToBg
#726 [ぎぶそん]
三度目の場面転換。
背景が夕方に変わっていて、教室では優平の他に素行の悪そうな男子生徒が二人席に座っていた。
一人はガムをクチャクチャさせながら退屈そうに、もう一人は携帯電話に夢中になっている。
背が高くて白衣を着た教師役の男子が入ってきた。
プリントを配ると、彼らの席の周りを徘徊しながら話はじめる。
「今年は例年になく留年した生徒が三人、か……。本当にお前らはクズだなあ。あまり先生らに無駄な手を掛けさせないでくれよ」
冷酷
「ああっ!何だと!?」
ガムを食べていた男子が立ち上がり、教師の近くに寄ると彼の胸ぐらを掴む。
「どうした?殴るのか?私を殴れば君は停学処分のみでは済まないぞ。クズは所詮、何をしてもクズのままなのさ」
教師役の男子が冷酷な笑みを浮かべる。
生徒役の男子が、悔しそうな顔を浮かべながら掴んでいた両手を離す。
ドラマではたまにいたりするけど、こんな非道な先生って実際にいるのかなあ、いたら怖いなと私は恐ろしさを感じた。
:12/04/21 00:13
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#727 [ぎぶそん]
白衣の教師が立ち去ると、優平がエレキギターを手にした。
教室でジャカジャカと渇いた音が小さく響く。
その姿をさっき教師に突っかかっていた生徒が哀愁漂う瞳で眺める。
「ギター、か……中学の時女にモテたくて手ェ出したけど三日坊主だったな。本当、クソみたいな俺の人生……」
生徒役の男子がやりきれないと言わんばかりの表情をする。
「だったら俺とバンド組まん?」
声高らかに優平が彼に問いかける。
「えー……。今さら面倒くせえ……」
生徒役が渋る。
「あんた、今のままでいいのか?このままクソみたいな毎日で高校生活が終わっても」
「……」
優平のまっすぐな問いに、黙りこくる生徒役。
そして数秒ほどして、「分かった。やるよ」とぶっきらぼうに応えた。
:12/04/23 21:34
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#728 [ぎぶそん]
「そっちの人は?」
優平がもう一人いた生徒に投げかけた。
その彼が携帯を動かす手を止める。
「あんたも、俺らと一緒にバンドやらん?」
優平がもう一度彼に問いかける。
「……」
おどおどして黙りこくる生徒。気弱で物静かな性格のようだ。
「んじゃ、やるってことで決まり。じゃあバンド名決めようぜ」
優平が半ば強引に物事を進める。
その後、優平を中心とした話し合いが始まる。
三人共に落ちこぼれということからバンド名は「ハイスクールダスト」に決定した。
教師に生徒の役名は、荻野篤弘。短気を起こしやすい性格の半面、不正は許さない正義感の持ち主。留年経験は二度目で、今年19歳になる。
もう一人の生徒は、川島洋一郎。内気で友達がおらず、携帯のアプリゲームが趣味。病気がちで入退院を繰り返し、出席日数が足らず今年三度目の留年となった。今年20歳とこの中では最年長となる。
:12/04/23 22:01
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#729 [ぎぶそん]
舞台が暗転し、二度目の優平の語りが流れる。
―「こうして俺と篤弘と洋一郎の三人は放課後速やかに補習を済ませ、人が来る気配がほとんどない空き教室で毎日練習に明け暮れた」
再び舞台が明るくなると、薄汚れた教室で三人が楽器を手にしていた。
優平と篤弘役の男子がジャ、ジャと不慣れな感じでギターの音を出す。
洋一郎役の男子は経験者なのか器用な性格なのか、可もなく不可もなくベースの音を出していた。
「……後はドラムだけか。龍河、広報活動はばっちりなんだろうな!?」
篤弘役の男子が野太い声で優平に尋ねる。
「大丈夫。学校のいたるところにドラマー募集のポスター貼ってきたから」
優平が能天気そうな顔をして笑う。
「それ、先公に見つかったらまずいんじゃあねーのか!?この学校に軽音楽部があったら今頃のびのび出来たのになあ……」
落胆する篤弘役。
:12/04/24 21:18
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#730 [ぎぶそん]
「あの……」
その時、教室に一人の男子生徒が入ってきた。
小柄で眼鏡を掛けていて、身体は前屈み気味で小心者そうなタイプだ。
「僕、『ハイスクールダスト』のドラムやりたいんですけど、まだ募集してますか?」
その生徒が低姿勢で尋ねてくる。
三人が慌ててその生徒の元に駆け寄ってきた。
「うんしてるしてる!え、君ドラムやってくれんの?」
優平が落ちつきない態度で尋ね返す。
「僕、小学生の頃からドラムやってるから。この学校でバンド組めるなんて本当に嬉しい。あ、名前は工藤匠って言います。学年は一年です」
物腰の柔らかい匠役が、三人に握手を求めた。
このバンドに最年少のメンバーが加入した。
:12/04/24 21:32
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