WHITE★CANDY
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#161 [Gibson]
サッカー部の練習は、いつも暗くなるまでやっていると聞いている。
きっと彼は、今日は私の見舞いの為に途中で切り上げてきたのだろう。
申し訳ないという思いに駆られようとした時、
「エリは料理出来ないし、元基の元気さは病人にとっちゃ、かえって煩わしいだけだし。
だから俺が来た。」
と、彼が私の気持ちを察したかのように、細かい訳を冗談混じりに話してくれた。
玄関の前で言っていた"代表"の意味を、そこで理解した。
:09/01/24 02:01
:SH705i
:rMw4yosg
#162 [Gibson]
細かく切ったりんごを乗せた皿を持ち、彼が寝てる私の目の前に、しゃがみ込んできた。
「はい、どうぞ。」
上体を起こし、彼に差し出されたフォークで一つずつ口に入れる。
痛くて渇いた喉に、りんごの水分が程よく吸収される。
:09/01/24 04:06
:SH705i
:rMw4yosg
#163 [Gibson]
「…今みたいに、病気になった時は大変そうだな。」
ついさっきまで看病なしで過ごしていた私を、彼が気の毒そうな眼差しで見つめる。
その綺麗な瞳が、ほんの微かに湿り気を帯びる。
「別に何ともないよ。」
無表情のまま、次のりんごを口に運んだ。
何故、自分が人に冷めた印象をよく持たれるか、一番理解できる瞬間だ。
:09/01/24 04:34
:SH705i
:rMw4yosg
#164 [Gibson]
「…さっきの言葉、気に障ったのならごめん。
でも俺、真希の家庭環境を不幸せだとか思ったことは一度もないよ。
家のことはいつも、生き生きとした表情で話してくれるし。」
彼が軽やかな手先で、りんごの欠片を一つ摘んだ。
父のことはいつも、「うざい」「恥ずかしい」などの表現で紹介しているつもりだったが、
それが愛情と信頼の裏返しだということを、
今ここにいる彼は読み取っていてくれていたらしい。
:09/01/24 05:26
:SH705i
:rMw4yosg
#165 [Gibson]
その次に彼は皿をテーブルの上に置き、腰を上げた。
リビングの隅に向かい、棚の上に飾ってある、白い写真立てを手に取る。
幼稚園の頃、父とラベンダー畑に行った時の瞬間が収められている。
一面紫の花に囲まれて嬉しそうな私を、満面の笑みで抱き抱えている父。
:09/01/24 06:48
:SH705i
:rMw4yosg
#166 [Gibson]
「…真希は本当に、大事に育てられてきたんだなぁ。」
写真の中の二人に向かって、彼が微笑む。
「俺ん家って無駄に広くてさ、形式や建前気にして、何か全体的によそよそしいんだよね。
親や兄弟より、使用人と多く接してきた気がする。」
ハハハ、と目を細めて笑う優平であったが、寂しさを押し隠すような、そんな表情にしか見えなかった。
:09/01/24 13:25
:SH705i
:rMw4yosg
#167 [Gibson]
優平の父は、歴代が設立した会社の社長を務めており、桜井家は由緒正しい家柄だという噂を、ちょくちょく耳にしたことがある。
彼が私やエリらを家に一度も招かないのは、そんな部分に対して、自分と距離を感じて欲しくないからであろう。
繊細さ故、彼も何か思う部分があったということを、今日ここで初めて知った。
:09/01/24 13:45
:SH705i
:rMw4yosg
#168 [Gibson]
「あっ、俺さっきから病人の前で喋り過ぎだよな。
これじゃ元基のこと、悪く言えないわ。」
写真立てを元の位置に戻し、再びこちらに来て屈む。
「早く良くなれよ。」
優平が、私の左手を両手で取る。
その手のひんやりとした感触が、熱を冷ましてくれるようで心地よかった。
:09/01/24 13:58
:SH705i
:rMw4yosg
#169 [Gibson]
「俺、お前の母さんの分まで、ずっとそばにいてやるから。」
「え…?うん…。」
「俺、いなくなったりしないから。」
「うん、うん…。」
彼の真摯な姿勢と眼差しが、私の心一点を射る。
その雄々しい態度に、彼もまた一人の男の子だということを、改めて認識する。
:09/01/24 14:18
:SH705i
:rMw4yosg
#170 [Gibson]
安心感から、目を閉じもう一度眠ろうとする私。
優平はその名の通り、心優しい少年である。
クラスの委員長には、真っ先に選ばれるタイプで、
周りの世話を焼いたり、統率をするのが上手な人間だ。
でも、今私に注いでくれてる温かさが、義理な人情とは別物であってほしいと、独占欲に似た感情で願った。
:09/01/24 14:32
:SH705i
:rMw4yosg
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