WHITE★CANDY
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#300 [ぎぶそん]
「今日の夕飯、何が食べたい?」

「えっ?何でもいいよ。」

「そうだ、何処かドライブ行きたい所ある?
旅行中止になっちゃったし、祥華さんは色んな観光地知ってるよ。」

「優平ん家行けるだけで、充分だよ。」

二人で後部席でやり取りしていると、運転中の祥華さんが、その会話の途中で笑った。

「ウフフ。何でも出来る優くんも、こっち(恋愛)方面じゃウブのようねぇ。
まだまだ女の子の喜ばせ方を知らないみたいね。」

⏰:09/02/17 01:46 📱:SH705i 🆔:cEdrtdZ6


#301 [ぎぶそん]
「…。」

彼女の一言で、二人の会話が一気に静まり返った。

妙な空気の流れの恥ずかしさから、お互いの顔を見れずにいる。

私たち、端から見たら恋人同士に見えるのかな…―

その状況について、隣に座る優平が困惑していないことを祈った。

⏰:09/02/17 01:51 📱:SH705i 🆔:cEdrtdZ6


#302 [ぎぶそん]
「お二人さん、着いたわよ。」

祥華さんに言われて、顔を上げる。
車が走ってる間は、ずっと俯き加減のままでいた。

彼女がエンジンを止めた後、三人で車を降りる。

「…。」

ただっ広い車庫には、高級外車がずらりと並んでいた。
その中に、テレビや写真でしか見たことのないベンツの姿もあった。

⏰:09/02/17 05:38 📱:SH705i 🆔:cEdrtdZ6


#303 [ぎぶそん]
祥華さんを先頭にして、校庭以上に広い庭を歩く。

歩く地面は、レンガが敷き詰められている。

庭はガーデニングの装飾が隅々まで行き届いていて、見事に美しい。
まるで中世のヨーロッパ時代にタイムスリップしたみたいだ。

歩く途中、丸い形をした噴水の横を通った。
大理石で造られたそれは、西洋風の庭にふさわしく洒落たものであった。

⏰:09/02/17 05:50 📱:SH705i 🆔:cEdrtdZ6


#304 [ぎぶそん]
噴水のせせらぎに気を取られていると、紳士服を着た初老の男性が、前方からせわしなくやって来た。

そして休む間もなく、優平に向かって深くお辞儀をした。

「優平坊ちゃま、お帰りなさいませ。」

「ジィ。紹介するよ、友達の雨宮真希さん。」

「初めまして。」

会話の流れで、初老の男性に一礼をした。

⏰:09/02/17 06:00 📱:SH705i 🆔:cEdrtdZ6


#305 [ぎぶそん]
「おぉ!貴女様が雨宮様でございますか。
坊ちゃまから、話はいつも聞いております。
想像以上にお美しい方で、誠に光栄でございまする。」

「ジィ!余計なこと言わなくていいから!」

優平に喋った内容を指摘され、焦る初老の男性。

その会話を聞いた祥華さんが、フフフッと口に手を当てながら笑う。

「あ、彼は使用人の沼木豊彦。
俺が小さい頃からここにいて、俺はずっとジィって呼んでるんだ。」

沼木さんが、もう一度私に頭を下げる。

大きく言えば、沼木さんも祥華さんと同じ役割の人間か。
桜井家に仕えてる使用人は、沢山いそうだ。

⏰:09/02/17 06:15 📱:SH705i 🆔:cEdrtdZ6


#306 [ぎぶそん]
「ささっ。お二人共、早く家に上がって、ゆっくりとくつろいで下さい。」

沼木さんが私の荷物を代わりに持つと、先導するように私たちの前を歩く。

「ごめんね。こんな格好で。
もう少しいい格好してくれば良かった。」

今日の服装は自分でも頑張った方だが、優雅な桜井家の前では、からっきしシンプル過ぎる。

東吾兄の大学を初めて訪れた時に着た、花柄のワンピースが浮かんだ。
あいにく、あれは今回我が家に置いてきた。

「そんなことないよ!
充分、か、可愛いよ。」

優平が、首元をポリポリと掻く。

⏰:09/02/17 06:29 📱:SH705i 🆔:cEdrtdZ6


#307 [ぎぶそん]
私たちは、本館と呼ばれる建物に入った。
ここは主に優平や、彼の家族が生活空間を営む場所らしい。

本館以外には使用人が寝泊まりする別館、優平のお父さんが趣味の絵画を描く為のアトリエなどが設けられているとか。

本館は庭以上にまた、その広さと豪勢さに呆気に取られることとなった。

2階優平の祖父が描かれた大きな肖像画が飾っており、その階へと螺旋階段が続いていた。

「お帰りなさいませ、優平坊ちゃま。」

「ただいま。」

優平が、数人と使用人と挨拶を交わす。

⏰:09/02/17 06:57 📱:SH705i 🆔:cEdrtdZ6


#308 [ぎぶそん]
「あ、田辺さん。
シェフの宮島さんに、今日の夕飯はうんとご馳走を振る舞うように言っておいて。」

「分かりました。」

田辺さんと言う人が、そそくさとその場を離れる。

使用人、本館、別館、シェフ。

昔で言う所の貴族な生活を、同級生の優平はずっと送っていたのだ。

『優平は私たちと次元が違う』
一週間前の、エリの言葉を思い出した。

⏰:09/02/17 07:03 📱:SH705i 🆔:cEdrtdZ6


#309 [ぎぶそん]
「今日はこの部屋で寝ていいから。」

優平に、3階の"空き部屋"と呼ばれる所に案内された。
そうは言っても、私の部屋より広くて、立派な造りをしていた。

「あら。優くんの部屋で、一緒におねんねすればいいじゃない。」

「…祥華さん!!」

学校ではクールな優平が、今日は珍しく何度も取り乱す。

祥華さんの言う冗談にもだんだんと慣れてきた私は、二人のやり取りを笑いながら見ていた。

⏰:09/02/17 07:18 📱:SH705i 🆔:cEdrtdZ6


#310 [ぎぶそん]
「あっ、部屋に荷物置いたら、とりあえず噴水近くの庭で待ってて。」

それだけ言い残すと、優平は同じ階の自分の部屋へと駆けて行った。

「…真希ちゃん、だっけ?」

「はい。」

二人きりになった所で、祥華さんが私に話し掛けてきた。

⏰:09/02/17 07:25 📱:SH705i 🆔:cEdrtdZ6


#311 [ぎぶそん]
「優くんのこと、頼んだわ。」

「え?」

「彼ね、中学時代は外での出来事なんか一言も話してくれなかったのに、
高校であなたたちと出会ってから、とても生き生きしてるの。
今日もあんな風に張り切っちゃって。」

「…はい。」

初めて知った、物静かな優平の気持ち。
それはきっと、私たち3人と同じ気持ちだ。

⏰:09/02/17 16:39 📱:SH705i 🆔:cEdrtdZ6


#312 [ぎぶそん]
優平に言われたとおり、部屋に荷物を置いてから、庭の噴水近くに出向いた。

そのそばにテーブルとイスがあるのに気がついて、イスに腰掛けた。

「雨宮様、紅茶をどうぞ。」

使用人の男性が、気を利かせて飲み物を持って来てくれた。
白いティーカップに、熱い紅茶が注がれる。

「ありがとうございます。」

入れたばかりの紅茶は、高級感の漂う香りがした。

⏰:09/02/17 22:12 📱:SH705i 🆔:cEdrtdZ6


#313 [ぎぶそん]
「お待たせ。」

紅茶を一口飲んでみた所で、優平が現れた。
何やら黒いケースを抱えている。

「練習し始めたのは中学の時からだけど、同級生に披露するのは初めてかな。」

腰を下ろした彼がケースから取り出したのは、バイオリンだった。

⏰:09/02/17 22:24 📱:SH705i 🆔:cEdrtdZ6


#314 [ぎぶそん]
その場を立ち上がると、少し呼吸を整え、バイオリンを弾き始める優平。

彼が演奏した曲は、モーツァルトの「フィガロの結婚」だった。

巧みに弓を動かしながら、繊細なメロディーを奏でる。

学校では決して見せてはくれない、御曹司としての姿。
私はただ、彼の悠然な姿に見とれていた。

⏰:09/02/17 22:37 📱:SH705i 🆔:cEdrtdZ6


#315 [ぎぶそん]
5分くらい経った後、演奏が終わった。

「…最後ちょっと間違えちゃった。」

彼が照れ隠しのような笑みを浮かべる。

私はイスに座ったまま、大きな拍手をした。

「かっこよかったよ。」

彼が陰で"王子"と呼ばれる理由が、今は理解できるかも知れない。

⏰:09/02/17 22:44 📱:SH705i 🆔:cEdrtdZ6


#316 [ぎぶそん]
「優平はいつも、家で何をして時間を過ごしてるの?」

「えっ?課題済ませて、予習して、テレビ観て、風呂入って…普通だよ、普通。」

「そう。今日は家での優平の様子が知りたいな。」

「えぇっ!?何かそう言われると、無駄に緊張するなー。」

イスから垂らした両足をプラプラさせながら、彼のはにかんだ笑顔を眺めていた。

⏰:09/02/18 00:37 📱:SH705i 🆔:fL1Gvzv6


#317 [ぎぶそん]
また本館に戻ると、2階の洋室に案内された。

優平がリモコンで操作すると、ソファーの前に映画館で見るようなスクリーンが降りてきた。

「好きなの選んでいいよ!
ごめん、俺ん家、恋愛物はないんだ。」

優平が、棚からDVDボックスを取り出してきた。
色んなジャンルのDVDが入ってる。

「これがいい。」

その中から、1枚を抜き取った。

「『バトル・シアター』?また過激なのにしたな!」

⏰:09/02/18 00:51 📱:SH705i 🆔:fL1Gvzv6


#318 [ぎぶそん]
「坊ちゃま、雨宮様、お菓子をここに置いておきます。」

またもや使用人の男性が、ハーブティーと焼きたてのクッキーを持って来てくれた。
ソファーの前のテーブルに、2人分にして並べる。

そして退室する前に、部屋の電気を暗くしてくれた。

「これ、コーラとポップコーンの代わりだね。」

「アハハ。面白いこと言うなぁ。」

無料の映画鑑賞は、いたせりつくせりであった。

⏰:09/02/18 01:04 📱:SH705i 🆔:fL1Gvzv6


#319 [ぎぶそん]
「…。」

目を開けた時、エンドロールが流れていた。

確か、主人公が生き残りの戦士として目覚めて…。
その後はすっかり、眠りに就いてしまったようだ。

部屋が暗かったことと、桜井家に着いてからやっと緊張感から少し解放されたことから、安心しきって一眠りしてしまった。

⏰:09/02/18 09:13 📱:SH705i 🆔:fL1Gvzv6


#320 [ぎぶそん]
「あ、起きた?」

隣に座る優平が、顔をこちら側に向けた。

「ごめん。途中ですっかり寝ちゃったみたい。」

「アハハ。気持ち良さそうに寝てたから、無理に起こさなかった。
続きが気になるんだったら、またいつでも同じDVD観ていいから。」

⏰:09/02/18 09:19 📱:SH705i 🆔:fL1Gvzv6


#321 [ぎぶそん]
夕方―

「優平坊ちゃま、食事のご用意が出来ました。」

「お、もうそんな時間?」

新人の使用人の男性を交えてTVゲームをしていると、沼木さんが報告しに来た。

「よーし、続きはまた今度。」

熱中していたゲームを中断する。

⏰:09/02/18 09:26 📱:SH705i 🆔:fL1Gvzv6


#322 [ぎぶそん]
それまでいた洋室を出て、1階の食堂に足を運んだ。

白いテーブルクロスが掛けられた長机に、豪勢な食事が無数に並んでいる。

「遠慮せず好きなの食べていいよ。」

二十人は同席できる食事の席に着いてるのは、私と優平だけであった。

高級レストランに出向いたようなパスタ、伊勢海老の姿焼き、ローストチキン。

何から手をつけていいのだろうと、頭を悩ます私。

⏰:09/02/18 09:42 📱:SH705i 🆔:fL1Gvzv6


#323 [ぎぶそん]
「雨宮様、お口に合わなかったら何なりと申して下さい。」

料理を作ったシェフの宮島さんという人が、私に一言話し掛けてきた。

「全然そんなことないです。どれも美味し過ぎるほど美味しいです。」

一先ず、普段食べられそうにないものから積極的に食べた。
一気に舌が肥えそうだ。

隣では、慣れた手つきでナイフとフォークを扱う優平。
テーブルマナーは、自然に完璧にこなしている。

⏰:09/02/18 09:50 📱:SH705i 🆔:fL1Gvzv6


#324 [ぎぶそん]
「…優平って、カップ麺とか食べたことある?」

ご馳走に囲まれた食卓の中で、こんな質問をしてみた。

「元基ん家に泊まった次の日に出されたから、その時初めて食べたよ。」

「あはは。あいつももっと、気の利いたものを出せばいいのに。」

まあ、らしいと言えばそうであるかな。

「ううん。なかなか美味しかった。また食べたいと思ってる。」

⏰:09/02/18 09:56 📱:SH705i 🆔:fL1Gvzv6


#325 [ぎぶそん]
「だったら今度、うちの近所にある『保ラーメン』に連れて行ってあげるよ。
美味しいって凄く評判なんだ。」

「本当に?楽しみ。」

「うん。今日招待してくれたお礼。」

"真希ちゃん、遂にボーイフレンドが出来たのかい?"と屈託のない保おじさんの笑顔が浮かぶ。

⏰:09/02/18 10:03 📱:SH705i 🆔:fL1Gvzv6


#326 [ぎぶそん]
最後に口直しにデザートの特製杏仁豆腐を食べ、片付けられた席の前で、二人でゆっくりと雑談を始めた。

「今日はこんな豪華なフルコースを振る舞ってくれて有り難うね。
お父さんや東吾兄にも食べさせたら、喜んだだろうな。」

今日来るはずだったエリと元基も、今頃一緒にいればきっと舌が唸っていただろうな。

「宮島さんが心を込めてくれて作ってるから、その分美味しいんだろうね。」

「うん、そうだね。
…優平は、お母さんの手料理は食べたことないの?」

⏰:09/02/18 10:15 📱:SH705i 🆔:fL1Gvzv6


#327 [ぎぶそん]
「うーん、数え切れるほどしかないかなぁ。
運動会の時に、お昼に弁当を作ってくれたのが最後かな?」

「…そうなんだ。」

「なかなか忙しいみたいだから。親父の右腕としてさ。」

「…。」

そう晴れやかに笑う優平の姿を、直視できなかった。

⏰:09/02/18 10:22 📱:SH705i 🆔:fL1Gvzv6


#328 [ぎぶそん]
夜、敷地内に設置された露天風呂を、祥華さんと一緒に入ることになった。

祥華さんが全身を包み隠さずさらけ出すので、その抜群プロポーションに、同性ながら少しドキドキする。

「どうかしら?初めて訪れた桜井家は。」

「お陰さまで、楽しいです。」

「優くんのような人と一緒にいたら、毎日がお姫様気分ね。」

⏰:09/02/18 10:47 📱:SH705i 🆔:fL1Gvzv6


#329 [ぎぶそん]
「…優平がどう思ってるかは分からないけど、私は少なくとも彼を一人の男性として見ています。」

「それで?」

祥華さんがにこやかに、理解しているような目つきを私に送る。

「でも、今日ここに来て、正直少し距離を感じてしまいました…。
住んでる世界があまりにも違いすぎて…。」

今日の私は優平のファンの子たちから見れば、この上ない幸せの中にいるのだろうか。

⏰:09/02/18 10:57 📱:SH705i 🆔:fL1Gvzv6


#330 [ぎぶそん]
「ウフフ。それでいいと思うわよ。心から優平のことを見ているからこそ、そうやって悩むと思うわ。」

「え?」

「でも、これからも見る目を変えてあげないでいてね。
彼、こんな必要以上の贅沢に囲まれた環境の中、あんなに健気に真っすぐと育ったのよ。」

「はい。」

優平は大切な友達であり、一人の大切な人に変わりはない。

祥華さんに打ち明けてみて、改めて気づかされた大事なこと。

「ありがとうございます、祥華さん。」

⏰:09/02/18 11:07 📱:SH705i 🆔:fL1Gvzv6


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