WHITE★CANDY
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#761 [ぎぶそん]
夜、リビングでくつろぎながら三人で今日一日を振り返る。
「サイン貰えなくて残念だったな。しかも見れたのもちょっとだけだったし」
父が私を元気づける。
「ううん、見れただけで十分」
私はその気持ちを受け取った。

「あ、今日のことニュースで言ってるぞ!」
私たち親子に東吾兄がテレビに注意を向けさせる。
芸能ニュースの話題で、今日ミーナたちが来日したことが報道されていた。
今日リアルタイムで見たサングラス越しのミーナの微笑みが、画面に大きく映る。

その後その番組で「ミーナ・ハレルソンさんに単独インタビュー」という特集が流れた。
新作映画の看板を背景に、「日本ノ皆サン、コンニチハ」とミーナが最初に片言な日本語で挨拶をした。
彼女の女優としての来歴の説明の後、彼女が新作映画の見所や撮影でのエピソードなどをインタビュアーに語る。
最後に彼女がもう一度たどたどしい日本語で「皆サン、ゼヒ観ニ来テ下サイ」と喋り、映像は終わった。

この映画、出来れば優平と観に行きたいな。

⏰:12/05/02 00:47 📱:Android 🆔:kEs1dhPg


#762 [ぎぶそん]
二日後の月曜日。朝教室に着くと、私は一昨日撮ったミーナの写真をエリに見せた。

「よく撮れてるじゃん。優平にも見せてあげたら?」
エリの提案を受け、私は映画の誘いも兼ねて優平に会いに行くことにした。

昼休み昼食を済ませた後、写真と映画の前売り券を片手に優平がいるF組を訪ねてみる。
廊下から教室の中をちらりと覗くと、目の前に七瀬玲央奈たちのグループが賑やかに話し込んでいるのが見えた。

――また、彼女たちに何か言われたらどうしよう……。
一抹の不安が胸に過る。

結局彼に会わずその場を離れ、私は一呼吸落ち着けようと屋上に上がることにした。

⏰:12/05/03 20:13 📱:Android 🆔:wGpfMb4g


#763 [ぎぶそん]
残念な気持ちを後退りながらも、一秒も休むことなく階段を上った。
屋上の扉を開けると同時に、新鮮な空気が受動的に身体に入ってくる。
いつもに増して風が強いせいなのか、今日は雲の流れを早く感じた。

フェンスを背もたれにして、ため息をつく。
「……映画、誘いたかったなあ」
両手で持った前売り券をまじまじと見つめる。

その時、屋上全体に強い風が吹く。
一瞬目を閉じた隙に、手にしていた券が飛んで行ってしまった。

「あ!」
私は慌てて空中に舞う券を追いかける。

すると、いつからいたのか給水塔で座っていた男子生徒が飛び降り、地面に落ちた券を拾い上げる。

「ほら」
「有難うございます」
私はその男子から券を受け取った。

「あんた、B組の雨宮真希やろ?」
割り箸をくわえたまま、その男子は話し掛けてくる。

⏰:12/05/03 20:47 📱:Android 🆔:wGpfMb4g


#764 [ぎぶそん]
「どうして私の名前を……?」
私は見覚えのない彼に訝しげに尋ねた。
「だって、あんたいつもここに来とうやろ。そん時俺も大抵あの場所にいたんやて」
彼が割り箸を口から離し、給水塔を指差す。
そうだったのか。今まで全く気がつかなかった、と思った。

「あ、俺、G組の横山って言うもんたい。横山礼司。よろしくなあ」
横山と名乗るその男子が、軽々しい態度で握手を求めてきた。
私も仕方なく右手を差し出す。

「因みに、こないだも俺ここにおったんやで。放課後、F組の桜井とか言う奴と話し込んでた時…」
「もう!詮索しないでよ!」
私は感情的になり咄嗟に握手していた手を離した。
不覚にもあのやり取りを他人に全部見られていたなんて、気恥ずかしい。

「詮索もなにも、事実を言ったまでやん。」
横山が離された手を撫でながら言い返してくる。

⏰:12/05/03 21:29 📱:Android 🆔:wGpfMb4g


#765 [ぎぶそん]
「ははーん。さては、その映画も桜井君と観に行くつもりなんやな」
彼が全てを悟ったかのような顔をする。
もしかしたら彼は、芸能ワイドショーとか人の噂話が好きな性質なのかも知れない。

「そうだよ。でもさっき誘おうとしたけど、F組の女子が怖くて逃げてきた」
気がつけば私は彼に事情を話していた。
今ある胸の内を、ただ誰かに聞いて欲しかったのかも知れない。
でも何となく、この彼には気の許せる雰囲気が漂っていると感じた。

「俺、代わりに桜井君に渡してやってもよかとよ」
「本当?」
親切な彼の言葉に私の心が晴れる。
「ただし、条件がある」
条件、という言葉に息を呑んだ。
「俺も一緒に映画に行くこと」
彼がポケットから私と同じ前売り券を取り出した。

⏰:12/05/03 22:50 📱:Android 🆔:dIN0YH7U


#766 [ぎぶそん]
「俺もこの映画好きでな。
でも俺、こっちに引っ越してからあんま友達おらんし。一人で観に行くんも寂しいと思っとるし」
彼が侘しい表情で券を見つめる。
「友達がいない」「寂しい」という言葉に同情の念が生まれる私。

「分かった。じゃあ、頼んだから」
私は彼に前売り券を渡した。
「任しとき。あ、それから……」
給水塔に登った彼が振り返る。

「水色のパンツ、なかなか可愛かったで」
素早く弁当を片付けると、彼はそそくさと屋上から出ていった。

パンツって……さっき風が吹いた時見られてたんだ。
抜け目のない男、と私はあっけにとられた。

⏰:12/05/03 23:11 📱:Android 🆔:dIN0YH7U


#767 [ぎぶそん]
放課後、私はエリと机を真向かいにして一緒に勉強をしていた。
「ねえ、エリ。G組の横山礼司って知ってる?」
私は情報通のエリに昼休み出会った彼のことを尋ねてみた。
「あの天然パーマの人?生まれは九州らしいけど、家が転勤族でしょっちゅう引っ越してるとか。この学校に来たのも去年の二学期からだったと思う」
彼女がまるで辞書を引いたかのように、的確な情報だけを私に伝えてくる。

「横山君がどうかしたの?」
彼女が不思議そうに尋ねてくる。
「実は……、今度その彼と優平と三人で映画観に行くことになりそうなんだ」
私は昼休みあった出来事を彼女に話した。

「ぷっ!あはは!横山君って、見た目どおり変わった人なんだね。
優平と二人きりで映画を観れないのは残念だけど、横山君って悪い人じゃなさそうし楽しんできなよ」
私の話に、彼女がくすくすと笑う。
彼女の言うように、私も新しい友達が一人出来たと思うことにした。

「雨宮ーっ!」
教室の前で、けたたましい声で誰かが私を呼ぶ。その音量に耳がきんきんと鳴る。

⏰:12/05/03 23:39 📱:Android 🆔:dIN0YH7U


#768 [ぎぶそん]
横山だった。
教室にいる皆の視線が彼に向けられる。
私は慌てて彼の元に行った。

「ちょっと、そんな大きな声で呼ばないでよ。皆の迷惑でしょ」
「例のあれ、桜井君にばっちり渡したけん」
横山が大きな目を細めてにんまりと笑う。

「桜井君、今週の日曜なら予定空いとうって。俺、彼のメールアドレスもゲットしちゃった」
彼が満面の笑みで自分のケータイをちらつかせる。
「何でそんなに嬉しそうなのよ」
私は彼を疑問視した。
「だって、俺ゲイやもん」
「え?そうなの?」
彼の意外な告白に、私は目を丸くした。
「嘘に決まっとうやろ、ヘテロや。でも、雨宮みたいな背の高い女はあんま好みやないっちゃけどな」
そう言い残すと、彼は大笑いをしながら教室を去っていった。

なかなか癖のある人物だけど、いい友達にはなれそうだ。

⏰:12/05/05 02:47 📱:Android 🆔:PQ0W3.s6


#769 [ぎぶそん]
その日の夜、部屋で本を読んでいるとケータイの着信音が鳴った。
相手が「もしもし?」と遠慮がちに話す。
優平だった。

「今日、横山って人から突然映画のチケット渡されたんだけど…」
彼が戸惑った声を出す。
私は咄嗟にところどころ嘘を交えながら彼に経緯を話した。
横山と親しくなり、偶然同じ映画の前売り券を持っていたのでそのまま意気投合したと。
七瀬玲央奈たちを避けたかったという話は、かえって彼に気を遣わせることになりそうなので言わなかった。

「直接渡してくれたら良かったのに」
「ああ。えーっと、今日は何か忙しくて……」
彼の純粋な問い掛けに、やや冷や汗が出る。
「分かった。じゃあ、また日曜日な」
その後お互い「おやすみ」と言い合った後、私たちは電話を切った。

久しぶりに優平と電話出来て嬉しかったな。
でもF組の女子を敵に回したくないし、しばらくは学校で会えそうにないな。

⏰:12/05/05 03:15 📱:Android 🆔:PQ0W3.s6


#770 [ぎぶそん]
水曜日。リビングでテレビを観ていると、父のケータイが鳴る。
いつもみたいに会社からかなと思い、そのまま気にせずテレビを観続ける。

「はい、そうです。えっ……本当ですか!」
父の嬉しそうな声が聞こえ、思わずそちらに目をやる。

「真希、例の『パリの祝日』のイベントに当選したって!」
父が通話中のケータイを離し、私に声を掛ける。
「えっ!?本当に?」
あまりの驚きで一瞬、自分の中の時が止まる。
きっと、宝くじに当たった時ってこんな気持ちになるのだろうと思った。

父はそれから相手の話を従順に聞くと、深々と頭を下げながら丁寧に電話を切った。
「今週の土曜日、とりあえず衣装の寸法計りたいからスタジオに来てって」
相手に言われたことを私に説明する。

日曜日じゃなくて良かった、と一先ず安心した。
それからずっと、毎週欠かさず観てるテレビ番組の内容も全然頭に入らないくらい混乱していた。

⏰:12/05/05 03:40 📱:Android 🆔:PQ0W3.s6


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