冷たい彼女〔続編〕
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#101 [ゆーちん]
冗談っつーか、ノリだよな、西山姉妹特有の。
キツい事言ってるけど、本当はナイーブな姉妹なんだよ。
:09/01/31 21:13 :SH901iC :27oj1HQU
#102 [ゆーちん]
「もちろん。私はいいけど…佐奈ちゃん大丈夫かな?」
「佐奈が?」
「彼氏が浮気したんでしょ?そりゃ荒れるよねー。」
「剛さんって言ったかな、彼氏の名前。」
「剛さんとまだ付き合ってたんだ。」
「まだって…そんなに長いの?」
:09/01/31 21:15 :SH901iC :27oj1HQU
#103 [ゆーちん]
凜によると、佐奈と剛さんはもうかれこれ5年の付き合い。
佐奈が高校1年の時から付き合っていて、喧嘩をするたび別れ、でもまた付き合って…。
それの繰り返しだったらしい。
そんな長年過ごして来た剛さんに浮気をされちゃ…そりゃ荒れるな。
:09/01/31 21:16 :SH901iC :27oj1HQU
#104 [ゆーちん]
「まぁ、とりあえず一晩寝たら落ち着くだろうから、今晩よろしくね。」
「うん。」
「ごめんね。」
「何で謝るの。誰も悪くないよ。それよりフェリーの時間大丈夫?」
:09/01/31 21:16 :SH901iC :27oj1HQU
#105 [ゆーちん]
時計を見ると、時間が迫って来ていた。
「あぁー、やばい。んじゃ帰るね。」
「気をつけなよ。」
凜に玄関まで見送ってもらい、俺は島に帰る為にフェリー乗り場まで急いだ。
:09/01/31 21:17 :SH901iC :27oj1HQU
#106 [ゆーちん]
翌日。
いつものようにフェリーに乗りながら登校していた時だった。
凜からの着信。
「おはよー。」
「おはよ。朝から元気だね。」
相変わらず、朝はテンションの低い凜。
「大輝のがテンション高いけどね。それより佐奈は?」
:09/02/01 15:14 :SH901iC :lGeUBDQs
#107 [ゆーちん]
「さっき帰った。やっぱりお酒飲んでたみたいで心に会ったの覚えてないって。」
凜は小さく笑った。
いやいや、笑い事じゃないっすよ。
大変だったんだよ、俺。
なのに佐奈ちゃん、覚えてないって…酷すぎ。
:09/02/01 15:14 :SH901iC :lGeUBDQs
#108 [ゆーちん]
「信じられないんですが。」
「ドンマイだね。佐奈ちゃん、起きた瞬間に叫んでたよ。ここどこーって。」
「そりゃ覚えてないなら、自分のいる場所わかんねぇわな。」
「昨日の事話したら、ラーメンなんか食べてないって言ってたけど?」
:09/02/01 15:15 :SH901iC :lGeUBDQs
#109 [ゆーちん]
いやいや。
食べてないとは言わせないよ。
3杯も食べといて、記憶にないと?
「でも剛さんが浮気したって騒いでたのは覚えてたみたいで、剛に会うって言って慌てて帰ってったよ。」
「そっか。まぁ何にせよ、ありがとうね。」
「いいえ。」
:09/02/01 15:15 :SH901iC :lGeUBDQs
#110 [ゆーちん]
凜との電話が終わる頃、本島に着いた。
本島のフェリー乗り場から学校まで、竜と大輝と歩きながら昨日の事を話した。
竜も大輝も大笑い。
「さすが西山佐奈。」
「そういうマシンガン的なとこ、変わってないねー佐奈。」
:09/02/01 15:31 :SH901iC :lGeUBDQs
#111 [ゆーちん]
「俺のとこ来てラーメン3杯食べたの覚えてないのは、ある意味バカでしょ?」
「あぁー、確かに。」
「バカっつーか、佐奈はやる事が昔から極端なんだよな。」
「だよな。やけ食いにも限度があるっつーの。」
:09/02/01 15:32 :SH901iC :lGeUBDQs
#112 [ゆーちん]
竜と大輝で佐奈の事を話しながら盛り上がった。
佐奈がいない時は呼び捨てにしている俺らだけど、実際、本人がいたら絶対呼び捨てなんかしない。
つーか、できない。
:09/02/01 15:32 :SH901iC :lGeUBDQs
#113 [ゆーちん]
島の男はみんな佐奈にビビってたんだ、小さい時から。
昔から怖くって逆らうと絶対泣かされてた。
女王様って感じ。
だから逆らう気は更々ない。
そんな女王様の暴走っぷりも、なんだか愛着があるっつーか…憎めないんだよね。
:09/02/01 15:33 :SH901iC :lGeUBDQs
#114 [ゆーちん]
いつも通り学校を終え、放課後はバイトだった。
そして昨日と同じ時間、また佐奈が来た。
「おっすー、心、久しぶり!」
「いらっしゃいませ、佐奈ちゃん。久しぶりじゃないよ、昨日会ったんだから。」
:09/02/01 15:34 :SH901iC :lGeUBDQs
#115 [ゆーちん]
佐奈の元に水を運んだ。
「らしいね。でも私、覚えてないんだわ。」
いきなり水を飲み干して、お変わりを要求。
俺はコップに水を注いだ。
:09/02/01 15:34 :SH901iC :lGeUBDQs
#116 [ゆーちん]
「今日も酔ってんの?」
「バカ心。酔ってないよ。しょうゆラーメン1つ。」
「…はい。」
:09/02/01 15:35 :SH901iC :lGeUBDQs
#117 [ゆーちん]
厨房にオーダーを通してから、佐奈が座るカウンターの近くで無理矢理仕事を作った。
何か働いてないと、ただ喋ってるだけじゃマスターに叱られるからね。
「起きたら知らない部屋だからマジびびったわ。凜ちゃんの部屋行った事ないからさ。」
:09/02/01 15:36 :SH901iC :lGeUBDQs
#118 [ゆーちん]
「頑張って運んだんだよー、酔い潰れた佐奈ちゃんを。」
「いやー、悪かったね。今日は詫び入れるついでにラーメン食べに来たの。」
「…それより剛さんと仲直りした?」
その質問に、佐奈の態度は急変した。
:09/02/01 15:36 :SH901iC :lGeUBDQs
#119 [ゆーちん]
「…してないよ、あんな奴。今度こそもう本当に終わりだね。」
不機嫌になった佐奈。
「そっか。」
何も言えない俺。
「浮気される為に、5年も一緒にいた訳じゃないっつーの。」
:09/02/01 16:14 :SH901iC :lGeUBDQs
#120 [ゆーちん]
そう呟いた佐奈は俺が初めて見た、弱った佐奈だった。
こんな悲しんでいる佐奈は生まれて15年、一度たりとも見た事はなかったから…俺まで弱ってしまう。
「浮気疑惑は過去にもあったの。でも勘違いだった。だけど今回は…正真正銘の浮気だよ。腹立つって言うより、情けない。今まで気付かなかったんだもん、私。」
:09/02/01 16:15 :SH901iC :lGeUBDQs
#121 [ゆーちん]
昨日の佐奈と今日の佐奈。
同じ人なのに、全くの別人のように思えた。
出来上がったラーメンを佐奈に出すと、またまた態度は急変。
元気な顔してラーメンを食べ始めた。
:09/02/01 16:17 :SH901iC :lGeUBDQs
#122 [ゆーちん]
「超美味い!」
「そりゃよかった。」
「つか今日何時上がり?」
「あー、あと30分ぐらいかな。」
「じゃあ上がりまで待つ。フェリー乗り場まで送ってってやるよ。」
「マジ?ありがと。」
:09/02/01 16:17 :SH901iC :lGeUBDQs
#123 [ゆーちん]
ほらね、根は優しいんだ。
なんだかんだ言って、俺は佐奈が好きなんだよ。
同じ島の、本当の姉ちゃんみたいな存在として。
:09/02/01 16:17 :SH901iC :lGeUBDQs
#124 [ゆーちん]
2杯目を食べ終えたところで、俺のバイトが終わり、佐奈と一緒に店を出た。
昨日と合わせて計5杯。
なぜ太らないんだ、西山佐奈。
そんな大食い女の車に乗って、フェリー乗り場まで送ってもらった。
:09/02/01 16:18 :SH901iC :lGeUBDQs
#125 [ゆーちん]
「ありがとね、佐奈ちゃん。」
「おうよ。んじゃまたね。」
俺を降ろすと軽快に走り去った佐奈の車。
これから佐奈、どうなるんだろ。
彼氏と上手くいけばいいな…なんて、ちゃっかり願いながら俺は島へと帰る。
:09/02/01 16:19 :SH901iC :lGeUBDQs
#126 [ゆーちん]
それからしばらくは佐奈がラーメン屋に現れる事もなければ、連絡もなかった。
台風みたいな人だ。
凜にも連絡はなし。
どうしてんだろ、大丈夫だったかな。
…なーんて、心配なんかしなければよかったと今更後悔。
:09/02/01 17:25 :SH901iC :lGeUBDQs
#127 [ゆーちん]
佐奈台風が再び俺らの元に上陸したのは、夏休みを2日後に控えた、とても暑苦しい日だった。
「もっしー、心?」
「久しぶりだね、佐奈ちゃん。」
電話の向こうからは明るい佐奈の声。
「今から剛ぶっ殺しに行くけど、一緒に行くぅー?」
:09/02/01 17:26 :SH901iC :lGeUBDQs
#128 [ゆーちん]
おいおいおいおい…西山さんが『ぶっ殺す』とか言わないでよ。
洒落になんないから!
「ちょっ、ちょっと佐奈ちゃん、落ち着いて!」
「落ち着いてるよー。」
まぁ確かに、落ち着いてはいる。
:09/02/01 17:28 :SH901iC :lGeUBDQs
#129 [ゆーちん]
でも落ち着きすぎて恐い。
「とりあえず深呼吸して。」
「は?私に命令?」
「あぁー、ごめん。深呼吸して下さい。」
「何でしなきゃなんないのよ。もぉ…ハァ〜。」
:09/02/01 17:28 :SH901iC :lGeUBDQs
#130 [ゆーちん]
大きく息を吐く音がしたので、どうやら深呼吸はしてくれたみたい。
「今どこ?」
「心はどこなのよ。迎え行くから場所言って。」
:09/02/01 17:29 :SH901iC :lGeUBDQs
#131 [ゆーちん]
バイト後の幸せである、凜ちゃんのマンションだった俺。
素直に場所を言うべきか、それとも島にいると嘘をつくか。
「えーっと…」
「さっさと答えてよ!」
「…凜ちゃんのマンションです。」
:09/02/01 17:55 :SH901iC :lGeUBDQs
#132 [ゆーちん]
「10分後に外で待ってて。」
それだけ言うと、佐奈の電話は切れた。
何、正直に言ってんだよ俺。
嘘つけば、今から凜ちゃんが作ってくれたカレーライスが食えたのに…。
:09/02/01 17:55 :SH901iC :lGeUBDQs
#133 [ゆーちん]
「凜ちゃあ〜ん。」
「…何で半ベソかいてんの。」
「俺が殺人者になっても彼女でいてくれる?」
「…話が見えないよ。」
:09/02/01 17:56 :SH901iC :lGeUBDQs
#134 [ゆーちん]
シレッとする凜の態度。
余計に泣けてくるよ。
「佐奈ちゃんから電話があって、今から剛ぶっ殺すとか言ってんの。で、俺のこと迎えに来るってー。もうやだよ、あの人…。」
:09/02/01 17:57 :SH901iC :lGeUBDQs
#135 [ゆーちん]
げんなりしていると凜の表情が変わった。
「私も行く!」
マジでー。
もう、何か、やだ。
「凜ちゃんは来なくていいよ。」
:09/02/01 17:58 :SH901iC :lGeUBDQs
#136 [ゆーちん]
「何でよ。私だって佐奈ちゃん心配だもん。」
「僕、カレーライスが食べたい。」
「一晩寝かせたほうが美味しいの!ほら、出掛ける仕度して。」
:09/02/01 17:58 :SH901iC :lGeUBDQs
#137 [ゆーちん]
電気やガスや戸締まりのチェックを済ませ、凜と一緒にマンションの外で佐奈の迎えを待つ。
「あ、来た。」
やたらうるさい車が、俺たちの真横に停車した。
窓から佐奈ちゃんが覗き出す。
:09/02/01 17:59 :SH901iC :lGeUBDQs
#138 [ゆーちん]
「凜ちゃん!こないだの朝ぶり〜。あの日はごめんね。お世話になりました。」
「ううん、気にしないで。今から剛さんのとこに行くんでしょ?」
「うん。息の根止めてくるー。」
:09/02/01 18:00 :SH901iC :lGeUBDQs
#139 [ゆーちん]
笑顔で言うセリフじゃないでしょ、佐奈ちゃん。
「私も行っていい?心だけじゃ頼りないだろうし。」
「あっ、そうだね。じゃあ凜ちゃんも乗って。」
:09/02/01 18:00 :SH901iC :lGeUBDQs
#140 [ゆーちん]
そうだね、って…頼りないと思うなら最初から呼ばないでよ。
助手席に乗り込んだ凜。
後部座席に乗り込んだ俺。
何か、女って怖いよねー。
「浮気は誤解だって剛がずっと言って来てて、信じてやろうかなって思ってた矢先なの。知らない女が剛の部屋入ってくの見たって情報入ってさ。今から殴り込みよ。」
:09/02/01 18:02 :SH901iC :lGeUBDQs
#141 [ゆーちん]
素で怖い。
女の情報網の凄さはあなどってはいけないんだって竜たちにも教えてあげないと。
「前も聞いたけど本当に浮気かな?」
その凜の質問に佐奈は小さく呟きながら答えた。
:09/02/01 18:02 :SH901iC :lGeUBDQs
#142 [ゆーちん]
「…浮気じゃなきゃ女を家に連れ込まない。」
佐奈はアクセルを強く踏み、車は剛さんの家へと走って行った。
15分もすれば剛さんの住むアパートに到着した。
車を降りると、佐奈は力強い足で歩く。
:09/02/01 18:35 :SH901iC :lGeUBDQs
#143 [ゆーちん]
俺と凜は佐奈の後ろをついて歩く。
ドアに手をかけ、キーケースの中から鍵を出し、簡単にドアを開けた。
きっと合い鍵なんだろう。
:09/02/01 18:36 :SH901iC :lGeUBDQs
#144 [ゆーちん]
「…チッ。逃げられた。」
玄関を見て佐奈は呟いた。
靴は男性物のスニーカーしかない。
この部屋に女性はいないようだ。
:09/02/01 18:36 :SH901iC :lGeUBDQs
#145 [ゆーちん]
意を決し、鋭い目で部屋の中に入って行く佐奈。
俺達も後に続いた。
「剛!」
佐奈が扉を開けると、タンクトップにパンツ一枚姿の男がいた。
どうやら、この人が剛さんらしい。
:09/02/01 18:37 :SH901iC :lGeUBDQs
#146 [ゆーちん]
「えっ、佐奈…。」
剛さんは相当驚いているらしく、微動だにせず、佐奈を見上げていた。
固まって座っている剛さんの目の前にしゃがみ、タンクトップの首元を掴みながら声を荒げた。
「ヤリ終われば女は用無しか?」
:09/02/01 18:39 :SH901iC :lGeUBDQs
#147 [ゆーちん]
「えっ…何の事。」
「ふざけんな。女がこの部屋入って行くの目撃されてんだよ。」
剛さんの目が泳ぐ。
どうやら図星のようだ。
「それは…」
「何、来てないの?私の勘違い?だったら弁解しなよ。言い訳しなよ!」
女の人が、この部屋に来ていたのは間違いないんだろう。
:09/02/01 18:40 :SH901iC :lGeUBDQs
#148 [ゆーちん]
佐奈に怒鳴られた剛さんは何も言わず、ただ目の前にいる人だけを見ていた。
「その女も一緒に殴り殺してやろうかと思ったけど、どうやら帰った後みたいだし。今日はお前だけ先に殴り殺すわ。」
「ちょっと待って佐奈!勘違いなんだってば。俺は浮気なんかしてない。」
:09/02/01 18:41 :SH901iC :lGeUBDQs
#149 [ゆーちん]
眉を下げて、佐奈に訴える剛さん。
「この期に及んでまだ言い訳する気?その言葉は聞き飽きたよ。」
「今日ここに来たのは俺の兄貴の奥さんだよ。」
「はぁ?義理の姉と不倫かよ!」
佐奈は大きな声で剛さんに怒鳴った。
:09/02/01 18:42 :SH901iC :lGeUBDQs
#150 [ゆーちん]
「違うってば…浮気でも不倫でもない。」
「証拠は?」
「本人に直接聞けばいいよ。」
「聞いたとしても本当の事なんて言う訳ないじゃん。義理の弟とヤリましたって。」
「だからヤッてないってば…。隠れて会ってただけだよ。」
「何で隠れる必要があんのさ。訳わかんない!」
:09/02/01 18:42 :SH901iC :lGeUBDQs
#151 [ゆーちん]
「ちゃんと話すから…離して。」
「言い訳なら聞きたくないって言ってんじゃん!」
「頼む、離して。」
「やだっ!」
「ごめん、ちゃんと謝るから。ちゃんと話すから。」
「ふざけ…な…」
佐奈はとうとう泣き出してしまった。
:09/02/01 22:05 :SH901iC :lGeUBDQs
#152 [ゆーちん]
自分で自分をコントロール出来ていない佐奈は、急に俯いて、剛さんの胸板を小さな拳でポンポンと叩き始めた。
そんな佐奈を剛さんは優しく抱きしめた。
:09/02/01 22:05 :SH901iC :lGeUBDQs
#153 [ゆーちん]
「佐奈ちゃ‥」
「凜ちゃん。俺ら外出よ。」
「えっ、でも…」
「大丈夫でしょ。外で待とう。」
:09/02/01 22:05 :SH901iC :lGeUBDQs
#154 [ゆーちん]
泣いている佐奈なんか見たくなかった。
小さくなって剛さんの腕の中で泣きじゃくる佐奈は、俺の知らない佐奈だ。
そんな姿、見たくない。
それに、俺らがいなくても解決しそうな気がした。
なぜ来たのか、いまだによくわからないくらいだから。
:09/02/01 22:07 :SH901iC :lGeUBDQs
#155 [ゆーちん]
凜の手をひいてアパートの外に出る。
夜風が涼しい。
俺らはちょっとした石段の上に座った。
「浮気じゃないのかもね。」
凜が言った。
:09/02/01 22:07 :SH901iC :lGeUBDQs
#156 [ゆーちん]
「うん、たぶん違うっしょ。俺、剛さんに初めて会ったけど、嘘つくような人には思えないもん。」
「佐奈ちゃんの勘違いだけならいいね。」
「うん、そうだね。」
:09/02/01 22:08 :SH901iC :lGeUBDQs
#157 [ゆーちん]
中が気になるものの、きっと大丈夫という自信はある。
だから俺らは寄り添いながら佐奈が出てくるのを待った。
「このまま仲直りして盛り上がっちゃって…とかないよね?」
「は?」
「だからー、仲直りしてチューとかしちゃってそのままベットインして…って!想像したらキモいわ!」
:09/02/01 22:22 :SH901iC :lGeUBDQs
#158 [ゆーちん]
「想像したの?やらしい、変態。一種の浮気だね。」
「…ごめんなさい。」
「まぁでも心の予想が当たったとしたら、私たち野宿だよ。帰り道わかんないもん。」
:09/02/01 22:23 :SH901iC :lGeUBDQs
#159 [ゆーちん]
「戻って来るのを祈るしかないんだね。頼むから盛り上がっちゃったりしないでよ、佐奈ぁ〜。」
「それより、もう最終出たね。」
凜が携帯電話の時計を見て呟いた。
「えっ!嘘、マジで?」
凜ちゃんの携帯電話を覗き込みと、たった今最終のフェリーが出た時間だった。
:09/02/01 22:23 :SH901iC :lGeUBDQs
#160 [ゆーちん]
「どうしよー!とりあえず母ちゃんに電話するわ。」
ポケットから携帯電話を取り出すと、電池が残り1つだった。
「げっ、充電すんの忘れてた。」
「私の使いな。途中で電池切れると面倒でしょ?」
「うん、ありがと。」
:09/02/01 22:24 :SH901iC :lGeUBDQs
#161 [ゆーちん]
島でいる時なんて携帯電話は滅多に使わなかったのに、本島に通うようになってから急に携帯電話をよく使うようになった。
だから電池とか充電の感覚が違いすぎて…その環境の変化にびっくり。
:09/02/01 22:26 :SH901iC :lGeUBDQs
#162 [ゆーちん]
そういえば凜も島に来た時、驚いたって言ってたっけ。
携帯依存症も治ったって言ってたし。
「あ、もしもし母ちゃん?俺だけど。」
「俺って誰?オレオレ詐欺なら間に合ってまーす。」
:09/02/01 22:27 :SH901iC :lGeUBDQs
#163 [ゆーちん]
「ボケてる場合じゃねぇよ。あんたの可愛い可愛い一人息子の心ちゃんです!」
「可愛い?そんな息子ウチにはいないね。いたずら電話なら切りますよー。」
:09/02/01 22:27 :SH901iC :lGeUBDQs
#164 [ゆーちん]
ふざけてる場合じゃないんだよ、母ちゃん!
もぉー、俺の周りの女はどいつもこいつも!
女運悪いのかな、俺。
「ちょちょちょ!ごめん。あなたのバカ息子の心です。」
「で、用件は何。」
:09/02/01 22:28 :SH901iC :lGeUBDQs
#165 [ゆーちん]
「最終のフェリー乗り過ごしちゃった。」
「あっそ。」
「あっそ、って!」
「乗り過ごしたんなら仕方ないじゃない。帰って来れないんだから一晩ぐらい自分で何とかしなさい。じゃあね。」
:09/02/01 22:28 :SH901iC :lGeUBDQs
#166 [ゆーちん]
一方的に切られた電話。
ブチッて音…今日2回目だわ。
「ありがとね。」
凜に携帯電話を返すと、なぜか笑ってた。
「面白いねー、心のお母さん。だいたい何言ってたのか想像つくよ。」
:09/02/01 22:29 :SH901iC :lGeUBDQs
#167 [ゆーちん]
「凜ちゃんごめん、一晩泊めて下さい。」
「…。」
「お願い!」
「一泊5万円。」
「高っ!」
「フフッ。」
凜の部屋に泊めてもらう事になり、これで一安心。
:09/02/01 22:30 :SH901iC :lGeUBDQs
#168 [ゆーちん]
に、しても…母ちゃん俺への愛情なさすぎじゃない?
アレが普通なのかな。
俺ってマザコン?
んー、まぁどうでもいいや。
とりあえず明日の終業式は凜ちゃんの家から登校…って訳だね。
:09/02/01 22:30 :SH901iC :lGeUBDQs
#169 [ゆーちん]
「お待たせ。」
佐奈が部屋から出て来たのは、日付が変わってからだった。
「佐奈ちゃん、どうだった?」
凜の質問に佐奈は笑った。
「勘違いでしたー。」
:09/02/01 22:31 :SH901iC :lGeUBDQs
#170 [ゆーちん]
思わず俺と凜は顔を見合わせた。
はぁ、よかった。
本気でそう思った。
すると、部屋からズボンを履いた剛さんが出て来た。
:09/02/01 22:31 :SH901iC :lGeUBDQs
#171 [ゆーちん]
「ごめんねー、こんな遅くまで。」
「いえ、俺たちは全然。」
「お前なんで高校生カップル連れ回してたの。」
剛さんの問い掛けに佐奈は笑った。
「私の奴隷と、その彼女だから。」
:09/02/01 22:32 :SH901iC :lGeUBDQs
#172 [ゆーちん]
奴隷になった覚えなし。
「あぁ、そりゃ大変だね、君。」
剛さんも笑ってる。
「つか、最終出たよね?ごめん。ウチ泊まる?」
佐奈が俺に言った。
「ううん、凜ちゃんち泊めてもらう。」
「やらしい事すんなよー。凜ちゃんも変な事されたらすぐに電話しておいで。二度と役に立たないように、アソコちょん切ってやる。」
:09/02/01 22:33 :SH901iC :lGeUBDQs
#173 [ゆーちん]
恐い恐い恐い。
何でこんな恐い事をサラッと言えるのかな、この人。
剛さんも剛さんだよ。
こんな人と5年も付き合うなんて、よっぽどの肝っ玉の持ち主だな。
:09/02/01 22:33 :SH901iC :lGeUBDQs
#174 [ゆーちん]
「じゃあね。」
「うん、またな。」
佐奈と剛さんは俺らの前でキスをした。
んなもん見せ付けるなよ。
俺だって凜ちゃんとしたくなるじゃん。
:09/02/01 22:34 :SH901iC :lGeUBDQs
#175 [ゆーちん]
「君たち、本当にごめんね。今度何か奢るからいつでも遊び来てよ。」
剛さんは俺らに笑いかけた。
「あざーっす。」
「ありがとうございます。でも本当に気にしないで下さいね。」
凜の、しっかりした大人な答え方に自分のガキっぽさが情けなく感じた。
:09/02/01 22:35 :SH901iC :lGeUBDQs
#176 [ゆーちん]
佐奈の車に乗り込み、剛さんに見送られて、車は動き出した。
凜のマンションまで帰る車内、佐奈は話してくれた。
剛さんは、お兄さんの奥さんと会っていた理由。
それは家族愛、っていうか兄弟愛っていうか。
「剛の兄ちゃんが昇進したらしいの。それで友達がパーティー開いてくれるとかで、場所を探してたんだって。」
:09/02/01 22:35 :SH901iC :lGeUBDQs
#177 [ゆーちん]
「場所?」
「うん。ああ見えて剛はここらへんのクラブとかご飯屋とか超詳しいの。だからパーティー向けの会場を紹介するのに、義理の姉ちゃんと色々と探索してたんだって。」
あぁ、なるほど。
それで一緒に歩いてるところを目撃されて、佐奈が騒ぎ出したって事か。
:09/02/01 22:36 :SH901iC :lGeUBDQs
#178 [ゆーちん]
「今日、家に来てたのは色々と貸す物があったんだって。ビンゴゲームのガラガラって回すおもちゃとか、ミラーボールとか、変装グッズとか。」
「えっ、剛さんってそういうの持ってんの?」
「あいつ、お祭事大好きだから。確認したら確かにパーティーグッズが無かったの。ただ貸しただけだって言ってた。」
:09/02/01 22:37 :SH901iC :lGeUBDQs
#179 [ゆーちん]
「じゃあ誤解だったんだね。」
「本当に何も無いか問い正したら…マジで何もないっぽいし。だからもっかい信じる事にした。」
「そっかぁ。よかった〜。ねっ、心!」
「おうよ。どうなるかと思った。」
:09/02/01 22:37 :SH901iC :lGeUBDQs
#180 [ゆーちん]
「剛さ、バカ正直じゃん。だから家に女来てたんでしょ?って言ったとき弁解しなかったんだよ。女性が来た事に間違いはないんだからってさ。そういう正直すぎる所が私の誤解を買うのにね。学ばない奴なんだ。」
剛さんの悪口を言う佐奈の姿はどこか誇らしげだった。
:09/02/01 22:38 :SH901iC :lGeUBDQs
#181 [ゆーちん]
ちゃんと仲直りしたんだ。
よかった。
そう思えた。
俺の事振り回す迷惑姉ちゃんだけど、幸せを願ってあげたくなるのが普通だよな。
まさか俺ってシスコン?
マザコン疑惑にシスコン疑惑と来た。
やっぱ女運無しかもな。
:09/02/01 22:38 :SH901iC :lGeUBDQs
#182 [ゆーちん]
○●○●○●○
ヤキモチの妬き方
○●○●○●○
:09/02/02 16:47 :SH901iC :wn1IpYPU
#183 [ゆーちん]
佐奈にマンションまで送り届けてもらった俺達は、お互いお風呂に入ってすぐに眠ってしまった。
空腹だったはずなのに、睡魔の方が勝ってしまったらしい。
俺も凜も気疲れしてしまったのだろう。
ベットで、二人寄り添って眠った。
:09/02/02 16:48 :SH901iC :wn1IpYPU
#184 [ゆーちん]
さっきの佐奈と剛さんみたく、俺の腕の中で凜が眠る。
熱帯夜じゃなくてよかった。
暑苦しい夜だと、こんな風に甘えてくんないからね。
:09/02/02 16:48 :SH901iC :wn1IpYPU
#185 [ゆーちん]
その夜見た夢は、全然覚えていない。
だけど数時間後に目が覚めた時、1番愛しい人が隣でいてくれた幸せな気分だけは鮮明とココロに焼き付いていた。
:09/02/02 16:49 :SH901iC :wn1IpYPU
#186 [ゆーちん]
「朝からカレーはキツい。」
「じゃあ夜ご飯で。今日バイト終わりに食べ来るから。」
「昨日は外泊で、今日も夕飯はいらない。そんな親不孝息子を持つおばさんの辛さは計り知れないね。」
:09/02/02 16:52 :SH901iC :wn1IpYPU
#187 [ゆーちん]
「…今日は来るなって事?」
「別に、そうは言ってないよ。」
「じゃあ来る。凜ちゃんもマザコンな彼氏は嫌でしょ。」
「全然。むしろ親を大切にする男ってカッコイイ。」
:09/02/02 16:52 :SH901iC :wn1IpYPU
#188 [ゆーちん]
朝からそんな事言われちゃ来るに来れないよ。
せっかくの凜ちゃん特製チキンカレーは諦めて、今日はバイトが終わったら真っ直ぐ帰る事にした。
:09/02/02 16:52 :SH901iC :wn1IpYPU
#189 [ゆーちん]
「大丈夫だよ。友達呼んでカレーは食べ切っちゃうからさ。」
「置いといてくんないの?」
「また作ってあげるから諦めて。はい、朝ごはん。」
そう言ってバタートーストとサラダ、それに目玉焼きを出して来てくれた凜ちゃん。
:09/02/02 16:53 :SH901iC :wn1IpYPU
#190 [ゆーちん]
本当はカレーライスが食べたかったけど、まぁいいや。
こんな豪華な朝食、うちじゃなかなか食べられないもん。
マザコンかもしんないけど、やっぱ1番好きな人が作ってくれるご飯は何だって美味しいんだ。
:09/02/02 16:53 :SH901iC :wn1IpYPU
#191 [ゆーちん]
支度を済ませ、俺らは一緒にマンションを出た。
何だか緊張する。
同じ部屋から出て来て学校に向かうなんて、初めてで心臓ドキドキ。
新婚な気分って言ったら、また何か違うんだけど…とにかくドキドキ。
:09/02/03 14:29 :SH901iC :HYcai0m6
#192 [ゆーちん]
「何ニヤけてんの。気持ち悪い。」
「フフッ。つーか明日から夏休みだね。」
「ね。」
「いっぱい遊ぼうね!」
「私、島帰ろっかな。里帰り。」
「そうしなよ!そのほうが俺は嬉しい!」
「おじいちゃん達がいいって言ってくれたらの話だけどね。」
:09/02/03 14:30 :SH901iC :HYcai0m6
#193 [ゆーちん]
そんなの、いいって言うに決まってんじゃん。
んもー、凜ちゃんってば自分のじいちゃん達にまで気使いする子なんだから。
孫ならもっと甘えるべきでしょ。
「帰って来たらカレー作ってね。」
:09/02/03 14:31 :SH901iC :HYcai0m6
#194 [ゆーちん]
「ママに作ってもらいなよ。私よりママのカレーライスのが美味しいんじゃない?」
凜が笑った。
「バカにしてる?俺マザコンじゃないよ!てか、マザコンのがいいって凜ちゃん言ったじゃん!」
「別にバカにしてないよ。」
「してるじゃんかー!」
:09/02/03 14:32 :SH901iC :HYcai0m6
#195 [ゆーちん]
笑いながら手を繋いで登校した。
むちゃくちゃ楽しくて嬉しくて幸せ。
毎日こうやって笑って過ごせればいいのに。
そう願わずにいられないほど、凜が大好きだった。
:09/02/03 14:33 :SH901iC :HYcai0m6
#196 [ゆーちん]
「あっ!」
「何。」
「トーストにカレー付けて食べればよかった。なんちゃってカレーパン出来たのに。」
「どんまい。」
:09/02/03 14:33 :SH901iC :HYcai0m6
#197 [ゆーちん]
「ショックー。絶対また作ってね?」
「だからー、ママに作ってもらい‥」
「違うってば!」
「アハハッ!」
凜が笑うと幸せになる。
そんな関係でずっといられたらいいな。
:09/02/03 14:34 :SH901iC :HYcai0m6
#198 [ゆーちん]
翌日からの夏休み。
待ちに待った夏休み。
俺はバイトに励んだ。
凜は8月に島へ帰ると言っていた。
凜が島に戻って来ている間、何をして過ごそうか。
:09/02/03 21:16 :SH901iC :HYcai0m6
#199 [ゆーちん]
そんな事を考えながらバイトする俺。
集中力のない奴だなって自分でも思うよ…。
「いらっしゃい…あっ、佐奈ちゃん!」
「真面目に働いてるかぁ?」
:09/02/03 21:17 :SH901iC :HYcai0m6
#200 [ゆーちん]
相変わらず派手な格好。
ラーメン屋には似合わない。
そんなギラギラしている佐奈ちゃんの後ろから、見覚えのある男性が店を覗いた。
「…あっ、剛さん?」
:09/02/03 21:17 :SH901iC :HYcai0m6
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