冷たい彼女〔続編〕
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#151 [ゆーちん]
「ちゃんと話すから…離して。」

「言い訳なら聞きたくないって言ってんじゃん!」

「頼む、離して。」

「やだっ!」

「ごめん、ちゃんと謝るから。ちゃんと話すから。」

「ふざけ…な…」


佐奈はとうとう泣き出してしまった。

⏰:09/02/01 22:05 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#152 [ゆーちん]
自分で自分をコントロール出来ていない佐奈は、急に俯いて、剛さんの胸板を小さな拳でポンポンと叩き始めた。


そんな佐奈を剛さんは優しく抱きしめた。

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#153 [ゆーちん]
「佐奈ちゃ‥」

「凜ちゃん。俺ら外出よ。」

「えっ、でも…」

「大丈夫でしょ。外で待とう。」

⏰:09/02/01 22:05 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#154 [ゆーちん]
泣いている佐奈なんか見たくなかった。


小さくなって剛さんの腕の中で泣きじゃくる佐奈は、俺の知らない佐奈だ。


そんな姿、見たくない。


それに、俺らがいなくても解決しそうな気がした。


なぜ来たのか、いまだによくわからないくらいだから。

⏰:09/02/01 22:07 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#155 [ゆーちん]
凜の手をひいてアパートの外に出る。


夜風が涼しい。


俺らはちょっとした石段の上に座った。


「浮気じゃないのかもね。」


凜が言った。

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#156 [ゆーちん]
「うん、たぶん違うっしょ。俺、剛さんに初めて会ったけど、嘘つくような人には思えないもん。」

「佐奈ちゃんの勘違いだけならいいね。」

「うん、そうだね。」

⏰:09/02/01 22:08 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#157 [ゆーちん]
中が気になるものの、きっと大丈夫という自信はある。


だから俺らは寄り添いながら佐奈が出てくるのを待った。


「このまま仲直りして盛り上がっちゃって…とかないよね?」

「は?」

「だからー、仲直りしてチューとかしちゃってそのままベットインして…って!想像したらキモいわ!」

⏰:09/02/01 22:22 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#158 [ゆーちん]
「想像したの?やらしい、変態。一種の浮気だね。」

「…ごめんなさい。」

「まぁでも心の予想が当たったとしたら、私たち野宿だよ。帰り道わかんないもん。」

⏰:09/02/01 22:23 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#159 [ゆーちん]
「戻って来るのを祈るしかないんだね。頼むから盛り上がっちゃったりしないでよ、佐奈ぁ〜。」

「それより、もう最終出たね。」


凜が携帯電話の時計を見て呟いた。


「えっ!嘘、マジで?」


凜ちゃんの携帯電話を覗き込みと、たった今最終のフェリーが出た時間だった。

⏰:09/02/01 22:23 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#160 [ゆーちん]
「どうしよー!とりあえず母ちゃんに電話するわ。」


ポケットから携帯電話を取り出すと、電池が残り1つだった。


「げっ、充電すんの忘れてた。」

「私の使いな。途中で電池切れると面倒でしょ?」

「うん、ありがと。」

⏰:09/02/01 22:24 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#161 [ゆーちん]
島でいる時なんて携帯電話は滅多に使わなかったのに、本島に通うようになってから急に携帯電話をよく使うようになった。


だから電池とか充電の感覚が違いすぎて…その環境の変化にびっくり。

⏰:09/02/01 22:26 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#162 [ゆーちん]
そういえば凜も島に来た時、驚いたって言ってたっけ。


携帯依存症も治ったって言ってたし。


「あ、もしもし母ちゃん?俺だけど。」

「俺って誰?オレオレ詐欺なら間に合ってまーす。」

⏰:09/02/01 22:27 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#163 [ゆーちん]
「ボケてる場合じゃねぇよ。あんたの可愛い可愛い一人息子の心ちゃんです!」

「可愛い?そんな息子ウチにはいないね。いたずら電話なら切りますよー。」

⏰:09/02/01 22:27 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#164 [ゆーちん]
ふざけてる場合じゃないんだよ、母ちゃん!


もぉー、俺の周りの女はどいつもこいつも!


女運悪いのかな、俺。


「ちょちょちょ!ごめん。あなたのバカ息子の心です。」

「で、用件は何。」

⏰:09/02/01 22:28 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#165 [ゆーちん]
「最終のフェリー乗り過ごしちゃった。」

「あっそ。」

「あっそ、って!」

「乗り過ごしたんなら仕方ないじゃない。帰って来れないんだから一晩ぐらい自分で何とかしなさい。じゃあね。」

⏰:09/02/01 22:28 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#166 [ゆーちん]
一方的に切られた電話。


ブチッて音…今日2回目だわ。


「ありがとね。」


凜に携帯電話を返すと、なぜか笑ってた。


「面白いねー、心のお母さん。だいたい何言ってたのか想像つくよ。」

⏰:09/02/01 22:29 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#167 [ゆーちん]
「凜ちゃんごめん、一晩泊めて下さい。」

「…。」

「お願い!」

「一泊5万円。」

「高っ!」

「フフッ。」


凜の部屋に泊めてもらう事になり、これで一安心。

⏰:09/02/01 22:30 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#168 [ゆーちん]
に、しても…母ちゃん俺への愛情なさすぎじゃない?


アレが普通なのかな。


俺ってマザコン?


んー、まぁどうでもいいや。


とりあえず明日の終業式は凜ちゃんの家から登校…って訳だね。

⏰:09/02/01 22:30 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#169 [ゆーちん]
「お待たせ。」


佐奈が部屋から出て来たのは、日付が変わってからだった。


「佐奈ちゃん、どうだった?」

凜の質問に佐奈は笑った。


「勘違いでしたー。」

⏰:09/02/01 22:31 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#170 [ゆーちん]
思わず俺と凜は顔を見合わせた。


はぁ、よかった。


本気でそう思った。


すると、部屋からズボンを履いた剛さんが出て来た。

⏰:09/02/01 22:31 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#171 [ゆーちん]
「ごめんねー、こんな遅くまで。」

「いえ、俺たちは全然。」

「お前なんで高校生カップル連れ回してたの。」


剛さんの問い掛けに佐奈は笑った。


「私の奴隷と、その彼女だから。」

⏰:09/02/01 22:32 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#172 [ゆーちん]
奴隷になった覚えなし。


「あぁ、そりゃ大変だね、君。」


剛さんも笑ってる。


「つか、最終出たよね?ごめん。ウチ泊まる?」


佐奈が俺に言った。


「ううん、凜ちゃんち泊めてもらう。」

「やらしい事すんなよー。凜ちゃんも変な事されたらすぐに電話しておいで。二度と役に立たないように、アソコちょん切ってやる。」

⏰:09/02/01 22:33 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#173 [ゆーちん]
恐い恐い恐い。


何でこんな恐い事をサラッと言えるのかな、この人。


剛さんも剛さんだよ。


こんな人と5年も付き合うなんて、よっぽどの肝っ玉の持ち主だな。

⏰:09/02/01 22:33 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#174 [ゆーちん]
「じゃあね。」

「うん、またな。」


佐奈と剛さんは俺らの前でキスをした。


んなもん見せ付けるなよ。


俺だって凜ちゃんとしたくなるじゃん。

⏰:09/02/01 22:34 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#175 [ゆーちん]
「君たち、本当にごめんね。今度何か奢るからいつでも遊び来てよ。」


剛さんは俺らに笑いかけた。


「あざーっす。」

「ありがとうございます。でも本当に気にしないで下さいね。」


凜の、しっかりした大人な答え方に自分のガキっぽさが情けなく感じた。

⏰:09/02/01 22:35 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#176 [ゆーちん]
佐奈の車に乗り込み、剛さんに見送られて、車は動き出した。


凜のマンションまで帰る車内、佐奈は話してくれた。


剛さんは、お兄さんの奥さんと会っていた理由。


それは家族愛、っていうか兄弟愛っていうか。


「剛の兄ちゃんが昇進したらしいの。それで友達がパーティー開いてくれるとかで、場所を探してたんだって。」

⏰:09/02/01 22:35 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#177 [ゆーちん]
「場所?」

「うん。ああ見えて剛はここらへんのクラブとかご飯屋とか超詳しいの。だからパーティー向けの会場を紹介するのに、義理の姉ちゃんと色々と探索してたんだって。」


あぁ、なるほど。


それで一緒に歩いてるところを目撃されて、佐奈が騒ぎ出したって事か。

⏰:09/02/01 22:36 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#178 [ゆーちん]
「今日、家に来てたのは色々と貸す物があったんだって。ビンゴゲームのガラガラって回すおもちゃとか、ミラーボールとか、変装グッズとか。」

「えっ、剛さんってそういうの持ってんの?」

「あいつ、お祭事大好きだから。確認したら確かにパーティーグッズが無かったの。ただ貸しただけだって言ってた。」

⏰:09/02/01 22:37 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#179 [ゆーちん]
「じゃあ誤解だったんだね。」

「本当に何も無いか問い正したら…マジで何もないっぽいし。だからもっかい信じる事にした。」

「そっかぁ。よかった〜。ねっ、心!」

「おうよ。どうなるかと思った。」

⏰:09/02/01 22:37 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#180 [ゆーちん]
「剛さ、バカ正直じゃん。だから家に女来てたんでしょ?って言ったとき弁解しなかったんだよ。女性が来た事に間違いはないんだからってさ。そういう正直すぎる所が私の誤解を買うのにね。学ばない奴なんだ。」


剛さんの悪口を言う佐奈の姿はどこか誇らしげだった。

⏰:09/02/01 22:38 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#181 [ゆーちん]
ちゃんと仲直りしたんだ。


よかった。


そう思えた。


俺の事振り回す迷惑姉ちゃんだけど、幸せを願ってあげたくなるのが普通だよな。


まさか俺ってシスコン?


マザコン疑惑にシスコン疑惑と来た。


やっぱ女運無しかもな。

⏰:09/02/01 22:38 📱:SH901iC 🆔:lGeUBDQs


#182 [ゆーちん]
○●○●○●○

ヤキモチの妬き方

○●○●○●○

⏰:09/02/02 16:47 📱:SH901iC 🆔:wn1IpYPU


#183 [ゆーちん]
佐奈にマンションまで送り届けてもらった俺達は、お互いお風呂に入ってすぐに眠ってしまった。


空腹だったはずなのに、睡魔の方が勝ってしまったらしい。


俺も凜も気疲れしてしまったのだろう。


ベットで、二人寄り添って眠った。

⏰:09/02/02 16:48 📱:SH901iC 🆔:wn1IpYPU


#184 [ゆーちん]
さっきの佐奈と剛さんみたく、俺の腕の中で凜が眠る。


熱帯夜じゃなくてよかった。


暑苦しい夜だと、こんな風に甘えてくんないからね。

⏰:09/02/02 16:48 📱:SH901iC 🆔:wn1IpYPU


#185 [ゆーちん]
その夜見た夢は、全然覚えていない。


だけど数時間後に目が覚めた時、1番愛しい人が隣でいてくれた幸せな気分だけは鮮明とココロに焼き付いていた。

⏰:09/02/02 16:49 📱:SH901iC 🆔:wn1IpYPU


#186 [ゆーちん]
「朝からカレーはキツい。」

「じゃあ夜ご飯で。今日バイト終わりに食べ来るから。」

「昨日は外泊で、今日も夕飯はいらない。そんな親不孝息子を持つおばさんの辛さは計り知れないね。」

⏰:09/02/02 16:52 📱:SH901iC 🆔:wn1IpYPU


#187 [ゆーちん]
「…今日は来るなって事?」

「別に、そうは言ってないよ。」

「じゃあ来る。凜ちゃんもマザコンな彼氏は嫌でしょ。」

「全然。むしろ親を大切にする男ってカッコイイ。」

⏰:09/02/02 16:52 📱:SH901iC 🆔:wn1IpYPU


#188 [ゆーちん]
朝からそんな事言われちゃ来るに来れないよ。


せっかくの凜ちゃん特製チキンカレーは諦めて、今日はバイトが終わったら真っ直ぐ帰る事にした。

⏰:09/02/02 16:52 📱:SH901iC 🆔:wn1IpYPU


#189 [ゆーちん]
「大丈夫だよ。友達呼んでカレーは食べ切っちゃうからさ。」

「置いといてくんないの?」

「また作ってあげるから諦めて。はい、朝ごはん。」


そう言ってバタートーストとサラダ、それに目玉焼きを出して来てくれた凜ちゃん。

⏰:09/02/02 16:53 📱:SH901iC 🆔:wn1IpYPU


#190 [ゆーちん]
本当はカレーライスが食べたかったけど、まぁいいや。


こんな豪華な朝食、うちじゃなかなか食べられないもん。


マザコンかもしんないけど、やっぱ1番好きな人が作ってくれるご飯は何だって美味しいんだ。

⏰:09/02/02 16:53 📱:SH901iC 🆔:wn1IpYPU


#191 [ゆーちん]
支度を済ませ、俺らは一緒にマンションを出た。


何だか緊張する。


同じ部屋から出て来て学校に向かうなんて、初めてで心臓ドキドキ。


新婚な気分って言ったら、また何か違うんだけど…とにかくドキドキ。

⏰:09/02/03 14:29 📱:SH901iC 🆔:HYcai0m6


#192 [ゆーちん]
「何ニヤけてんの。気持ち悪い。」

「フフッ。つーか明日から夏休みだね。」

「ね。」

「いっぱい遊ぼうね!」

「私、島帰ろっかな。里帰り。」

「そうしなよ!そのほうが俺は嬉しい!」

「おじいちゃん達がいいって言ってくれたらの話だけどね。」

⏰:09/02/03 14:30 📱:SH901iC 🆔:HYcai0m6


#193 [ゆーちん]
そんなの、いいって言うに決まってんじゃん。


んもー、凜ちゃんってば自分のじいちゃん達にまで気使いする子なんだから。


孫ならもっと甘えるべきでしょ。


「帰って来たらカレー作ってね。」

⏰:09/02/03 14:31 📱:SH901iC 🆔:HYcai0m6


#194 [ゆーちん]
「ママに作ってもらいなよ。私よりママのカレーライスのが美味しいんじゃない?」


凜が笑った。


「バカにしてる?俺マザコンじゃないよ!てか、マザコンのがいいって凜ちゃん言ったじゃん!」

「別にバカにしてないよ。」

「してるじゃんかー!」

⏰:09/02/03 14:32 📱:SH901iC 🆔:HYcai0m6


#195 [ゆーちん]
笑いながら手を繋いで登校した。


むちゃくちゃ楽しくて嬉しくて幸せ。


毎日こうやって笑って過ごせればいいのに。


そう願わずにいられないほど、凜が大好きだった。

⏰:09/02/03 14:33 📱:SH901iC 🆔:HYcai0m6


#196 [ゆーちん]
「あっ!」

「何。」

「トーストにカレー付けて食べればよかった。なんちゃってカレーパン出来たのに。」

「どんまい。」

⏰:09/02/03 14:33 📱:SH901iC 🆔:HYcai0m6


#197 [ゆーちん]
「ショックー。絶対また作ってね?」

「だからー、ママに作ってもらい‥」

「違うってば!」

「アハハッ!」


凜が笑うと幸せになる。


そんな関係でずっといられたらいいな。

⏰:09/02/03 14:34 📱:SH901iC 🆔:HYcai0m6


#198 [ゆーちん]
翌日からの夏休み。


待ちに待った夏休み。


俺はバイトに励んだ。


凜は8月に島へ帰ると言っていた。


凜が島に戻って来ている間、何をして過ごそうか。

⏰:09/02/03 21:16 📱:SH901iC 🆔:HYcai0m6


#199 [ゆーちん]
そんな事を考えながらバイトする俺。


集中力のない奴だなって自分でも思うよ…。


「いらっしゃい…あっ、佐奈ちゃん!」

「真面目に働いてるかぁ?」

⏰:09/02/03 21:17 📱:SH901iC 🆔:HYcai0m6


#200 [ゆーちん]
相変わらず派手な格好。


ラーメン屋には似合わない。


そんなギラギラしている佐奈ちゃんの後ろから、見覚えのある男性が店を覗いた。


「…あっ、剛さん?」

⏰:09/02/03 21:17 📱:SH901iC 🆔:HYcai0m6


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