冷たい彼女〔続編〕
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#321 [ゆーちん]
あのうるさくて賑やかな車じゃ、この島で確実に浮く。


持ち主と同じだ。


佐奈も香奈も、この島じゃ浮いていた。


ちょっと派手派手しい格好をしてたばっかりに、周りに怖がられたり、変な目で見られたり。

⏰:09/02/06 11:37 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#322 [ゆーちん]
別に見た目くらい何でもいいじゃんね。


大事なのは中身だよ。


って、凜に一目惚れだった俺が言うなって?

⏰:09/02/06 11:38 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#323 [ゆーちん]
「佐奈ちゃん、元気〜?」

「あ、心?何でいんの。」


大事なのは、中身。


中身だよ、中身。


「凜ちゃんと西山姉妹のお出迎えに決まってんじゃん。」

「はぁ?んなバレバレな嘘つくなよ。どうせ私と香奈なんか眼中になかったくせに。」

⏰:09/02/06 11:40 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#324 [ゆーちん]
「えっ…バレた?」

「ひき逃げするぞ、ハゲ。」


怖いけど、大事なのは中身の中身なんだよ。


うん。


中身の中身がいいから、俺は何だかんだで西山姉妹が好き…なのかな。


認めたくないけど。

⏰:09/02/06 11:41 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#325 [ゆーちん]
香奈は助手席、凜は後部座席へと乗り込む。


俺も後部座席に乗り込もうとしたら…


「心の乗る場所ないよ?」


佐奈の車の定員は4人まで。


じゃあ俺も乗れるじゃん。

⏰:09/02/06 12:09 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#326 [ゆーちん]
「何で?」


すると佐奈は後部座席を指さした。


凜の隣を覗き込む。


…乗れない理由がわかりました。

⏰:09/02/06 12:10 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#327 [ゆーちん]
「家出っすか?」

「ただの里帰りだっつーの!」

「里帰りの荷物の量じゃないだろ、これ。」


凜の隣には、無造作に積まれた荷物荷物荷物。

⏰:09/02/06 12:10 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#328 [ゆーちん]
よくもまぁここまで荷物を積めるなってぐらい。


「女は何かと必要なんだよ。」

「あぁ、そうですか。」


渋々、俺は佐奈ちゃんの車を見送った。


せっかく迎え来たのに凜も車乗ってっちゃうんだもんなー。

⏰:09/02/06 12:13 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#329 [ゆーちん]
俺は太陽に励まされながら、家までの道をのんびり歩いた。


こんな事なら自転車で来ればよかった、と後悔しながらね。

⏰:09/02/06 12:14 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#330 [ゆーちん]
寄り道せず杉浦家まで足を進めた。


「凜ちゃーん。」


玄関は開いたまま。


ふと足元を見ると、かわいらしいサンダルが脱ぎ揃えられていた。

⏰:09/02/06 12:17 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#331 [ゆーちん]
「あぁ、やっと来たの。」


二階から降りて来た凜は俺を見て、そう呟いた。


「片付け終わった?」

「うん、まぁ。片付けって言う程荷物ないし。」

「あ、そっか。佐奈ちゃんの荷物見た後だから、どうも感覚が。」

⏰:09/02/06 12:17 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#332 [ゆーちん]
「あの姉妹の荷物は私もビックリした。」


凜が笑った。


夏の暑さも忘れちゃうような涼しい笑顔のせいで、俺の心臓は締め付けられっぱなし。

⏰:09/02/06 12:18 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#333 [ゆーちん]
「散歩でも行こっか。」

「いいよ。」


今日は自転車なし。


のんびりとしたこの島を、のんびりとした足取りで歩いた。


凜は日焼け対策として日影を選んで歩く。


日なたに引きずり出してやろうかと思ったけど、そんな事して嫌われちゃやだもん。

⏰:09/02/06 12:19 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#334 [ゆーちん]
「凜ちゃんカレーライスはいつ作ってくれんの?」

「んー、そのうち。」

「明日作って?」

「明日は澪たちと遊ぶからダメ。」

「ちぇーっ。」

⏰:09/02/06 12:19 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#335 [ゆーちん]
「そんなに食べたいんだったらママに作ってもらいなってば。」

「マザコンキャラ定着っすか?」

「へへッ…」

⏰:09/02/06 12:20 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#336 [ゆーちん]
俺達は自然と海に向いて進んでいた。


観光客や島の奴らが楽しそうに泳いでいる。


見慣れた光景。


「心、あっち座ろう。」

「ん。」


凜が指さした先は、やっぱり日影。


ちょっと人込みから外れた場所だったので、二人っきりという雰囲気に何だかドキドキさせられる。

⏰:09/02/06 12:21 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#337 [ゆーちん]
海を眺めながら何をするわけもなく、ぼーっとしたり、話したい事を話したり。


やっぱりこの島が1番。


のんびりできて、羽根伸ばせて、安らげて。


それに…

⏰:09/02/06 12:22 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#338 [ゆーちん]
「凜ちゃーん。」

「ん?」

「チューしようよ。」

「やだよ。すぐそこに人いるし。」

「バレないって。」

「変たっ‥」


好きな人が隣にいて。


海で騒ぎ回る人達に隠れながらしたキスは、子供の笑い声がBGM。

⏰:09/02/06 12:22 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#339 [ゆーちん]
唇が離れると『バカ心。』と言って、笑ってた。


「凜ちゃんとチューできんなら、バカでも変態でも何だっていいもぉん。」


そんな俺を嘲笑った凜。


ちょっとばかり、顔が赤くなってた気がする。


本当、可愛い。

⏰:09/02/06 12:23 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#340 [ゆーちん]
次に凜と会ったのは2日後だった。


バイトに行く為、フェリー乗り場にいた時。


「心!」


見覚えのある白いワンピース姿の凜。


「凜ちゃん!偶然だね。」

「今からバイト?」

「そうだよ。凜ちゃんは?本島に行くの?」

⏰:09/02/06 13:18 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#341 [ゆーちん]
「ううん。」


凜の表情が少し変わったのがわかった。


「どうしたの?」

「親が、来るの。」

「えーっ!」


つい、叫んでしまった。


それほど驚く出来事なんだ。


海外を忙しく飛び回る凜の親が来るって事は。

⏰:09/02/06 13:19 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#342 [ゆーちん]
卒業式や入学式にも出席できない程、忙しいみたいなのに…。


「よかったね。それで凜ちゃんはお迎えに来たって訳?」

「うん。」

「そっか。会うの久しぶりなんじゃない?」

「一年以上会ってないからちょっと緊張しちゃう。」

⏰:09/02/06 13:20 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#343 [ゆーちん]
困った表情の凜を見て、悲しくなった。


親と久しぶりに会えるのに、嬉しくないのかなって。


「大丈夫、大丈夫。元気な姿見せてあげなよ〜?」

⏰:09/02/06 13:21 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#344 [ゆーちん]
「うん。心の事、機会があったら言うつもりだから。」

「俺の事?」

「彼氏だよ、って。」

⏰:09/02/06 13:21 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#345 [ゆーちん]
さっきまで悲しんでたくせに、その言葉で有頂天になってる俺。


「えへへ〜。」

「そのデレデレした顔やめて。気持ち悪いから。」


早めに家を出て来てよかった。


フェリーの時間までまだ少しある。


こんなところで凜に会えるなんて思ってなかったから、すっげぇ得した気分。

⏰:09/02/06 13:22 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#346 [ゆーちん]
1秒でも長く話したいって思ってしまう。


「ごめんちょ。つーか、昨日楽しかった?澪と遊んだんだろ?」

「あぁ…うん。まぁ。」


今日の凜の顔は忙しい。


コロコロと変わってく表情。

⏰:09/02/06 13:24 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#347 [ゆーちん]
「楽しくなかったの?」

「んー…色々あって。」

「どうしたの?」

「女の悩みってやつ。ごめん、心にも言えない。」

「あら残念。」

「ごめんね?」

「ううん、別にいいよ。女の子も大変だね〜。」

「うん…大変だよ。」

⏰:09/02/06 13:24 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#348 [ゆーちん]
時間も気になるし、凜も気になるし…。


キョロキョロする俺に、凜は言った。


「明日の夜会える?」

「うん。でもバイトだから遅くになるよ。」

「それでもいい。」


凜から誘ってくれるなんてさ、顔が自然に緩んでしまう。

⏰:09/02/06 13:25 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#349 [ゆーちん]
凜の顔だけじゃなく、俺の顔も忙しいや。


「また連絡する。」

「うん。ご両親によろしく。いってきます!」

「いってらっしゃい。」



凜に見送られてバイトに行くのは、なかなか気分がいい。


調度すれ違う時間だったので、凜の両親には会えなかったけど、願わくば今夜は家族団欒楽しく過ごして欲しいと思った。

⏰:09/02/06 13:27 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#350 [ゆーちん]
翌日の夜、バイトが終わると同時に凜から連絡が入り、約束通り会う事になった。


本島から帰って来た俺を出迎えてくれた凜。


「おかえり。」

「ただいま凜ちゃん!」


抱き着きたくなったけど、我慢。


手を繋いでそのまま海辺まで歩いた。

⏰:09/02/06 13:28 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#351 [ゆーちん]
「今日の夕方、お父さんとお母さん帰ったよ。」

「もう?一日しか居れなかったんだ。」

「忙しいみたいだから。」

「楽しかった?」

「んー、普通。」

「そ。普通が1番だよ。」

「…変態の心にそんな事言われても説得力ない。」

⏰:09/02/06 13:29 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#352 [ゆーちん]
日中は賑わう海辺も、夜は驚くぐらい静かになる。


民宿などないこの島は日帰りで海に遊びに来る観光客がほとんどだから。


そんな静かな海に、凜と俺の笑い声が響く。


波音も混ざって、すごく心地いい。

⏰:09/02/06 13:29 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#353 [ゆーちん]
「久しぶりに会ったのに、緊張ってゆーか…変に遠慮とかしてぎこちなかったなぁ。」


凜はいきなり反省会を開き出した。


「そうなんだ。」

「心の事、結局紹介できなかった。」

「また次でいいよ。」

「次?次いつ会えるかわかんないんだよ?また1年後かもしんないし…それまで別れないで一緒にいられる?」

⏰:09/02/06 13:31 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#354 [ゆーちん]
凜が意地悪な顔で笑った。


「俺は凜ちゃんと同じ墓に入るつもりだから。」


「ふーん…あっそ。」


これが凜の愛情表現。

⏰:09/02/06 13:32 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#355 [ゆーちん]
ちょっと突き放す言葉を言い、俺は縋り付く言葉を返す。


そして凜は笑う。


それが彼女の愛情表現なんだと俺は思っていた。


ちょっと難しい女の子だけど、それがたまらなく俺のツボ。


本当、凜以外の女なんか考えらんねぇもん。

⏰:09/02/06 13:33 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#356 [ゆーちん]
「私は、お父さんとお母さんに、たった一年会ってないだけ。でもお父さんとおじいちゃん達はもっと会ってない訳じゃん。」

「うん、まぁ。」


今まで凜を連れて里帰りをしなかった話を聞くと、少なくとも十年以上は会ってなかったのかもしれない。

⏰:09/02/06 13:34 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#357 [ゆーちん]
「なのに普通なの。すっごく自然。私が変に緊張しすぎちゃってたのかも。」

「そっかぁ。でもまぁ仕方ないよ。」

「仕方ないのかな。3人で住んでた頃、どんな風に接してたのか思い出せなくて。私、変かな?」

⏰:09/02/06 13:34 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#358 [ゆーちん]
「全然。そんな緊張とかしちゃうのも含めて凜ちゃんなんだから。ご両親は気にしてないよ、きっと。久しぶりに娘に会えて喜んでただろ?」

「うん、まぁ喜んでたけど…。」

「じゃあ気にしない、気にしない!」

⏰:09/02/06 13:35 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#359 [ゆーちん]
珍しくクヨクヨしている凜を見て、勝手に体が動いてた。


小さな凜の肩を抱きしめている俺の左手。


凜も嫌がらず俺にもたれ掛かってくれている。


「今日きっとヘコむんだろうと思って昨日のうちから心と会う約束したの。正解だね、見事にヘコんじゃったよ。心のバカヅラ見て充電しないと。」

⏰:09/02/06 13:41 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


#360 [ゆーちん]
親とぎこちなくなったりするのも、若さの特権だとか思わない?


同じ歳の親が言うのも変だけど思春期ってやつじゃないのかな。


いつか笑って話せる日が来ますようにと俺は願った。

⏰:09/02/06 13:42 📱:SH901iC 🆔:ML7ZPUMw


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