冷たい彼女〔続編〕

「夕ご飯いらない、って凜ちゃん家には、おばちゃんが電話しておいてあげる。」

「色々とすみません。」

「いいのよ！それじゃあ夕ご飯までゆっくりしてってね。」

「ありがとうございます。」

母ちゃんと凜の会話、終了。

凜は俺の部屋に入った途端、声を出して笑った。

「タイミング良すぎだよ、心のお母さんっ！」

「まさかカレーライスとはねぇ。」

しばらくカレーライスネタで笑っていると、凜は扇風機の前に座って、さっきの話しを詳しく教えてくれた。

佐奈が言ってた内容とさほど変わらなかったけど、凜が丁寧に教えてくれたおかげで、やっと理解できた。

澪は妊娠３ヵ月。

彼氏は出産に反対だが、澪は産みたい。

だけどお金や将来を考えると不安だらけ。

同級生だけではなく、佐奈という姉ちゃん的存在の人にも相談したが、なかなか決断できずにいる。

「誰にもチクったりしないって信じてるから、佐奈ちゃんも心に話したんだと思うよ。」

チクんないよ、当たり前じゃん。

チクるどうこうより、俺にできることなら何だって協力してあげたいって思う。

「妊娠なんて私達には、まだまだ無関係な出来事なんだって思ってた。だけどSEXしてるって時点で、１番身近な事になっちゃうんだよね。」

凜の言う通りだと思った。

軽々しい気持ちなんかで、SEXはしちゃいけないんだ。

あれは愛を確かめあう行為だから。

「澪の妊娠、とても他人事には思えない。自分が澪の立場だったらどうするだろって考えちゃうんだよね。」

「俺は反対なんかしない。」

本音。

上っ面な気持ちじゃないよ。

「凜ちゃんが妊娠したなら、俺は頭を下げるよ。産んで下さいって。」

凜の大きな目は、俺をじっと見ていた。

「心。」

「ん？」

「頭も丸めてくれる？」

そう言った凜に、久しぶりにハグされた。

嬉しかった。

「坊主でも何でも、凜ちゃんの為ならできるよん。」

凜の顔は見えなかったけど、俺の予想…半泣きだったと思う。

小さく零れた吐息と、鼻をすする音が聞こえたから。

「…バカ。」

「じゃあ凜ちゃんはバカの彼女だね。」

「うるさい。」

笑った声も、ちょっとだけ震えてた。

何だか俺まで泣きそうだった。

『カレーの時間ですよ～。』と、なんとも拍子抜けな母ちゃんの声が聞こえたのは７時ぐらいだった。

澪の事を知った以上、色々気になっていたけど、やっぱり凜といると楽しくて…ついつい母ちゃんの呼び声だけでも２人で笑い合っていた。