漆黒の夜に君と。[BL]
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#537 [ちか]
「優里のあの口調と派手な見た目はね、優里なりの強がりなんだ。
『病気で可哀想』、『親兄弟と会えなくて可哀想』、『病院暮らしで可哀想』…。
とにかく他人に可哀想な目で見られたくないみたい。
だから派手にして、『自分は全然辛くなんかない』ってそう他人に見せつけてた。
案の定、同年代の子はみんな優里を怖がって離れていっちゃった…」

⏰:09/03/10 18:38 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#538 [ちか]
「優里は辛いとか寂しいなんて一言も言った事ないけど、小さい頃、隅っこで泣いてるのをよく見たよ。
だから、僕は決めてるんだ。滅多に会えない分、会った時はどんな優里でも、誰よりも理解して守ってあげようって。
それが兄として、優里にしてやれる精一杯の事だと思うから…」


兄として精一杯してやれる事‥‥―――
恭弥はいつからそれを決めてたんだろう。
子供の頃からそんな事を思えるのは、きっと…――

⏰:09/03/10 18:55 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#539 [ちか]
「だからこんな血の気の多い場所、いつ発作が起こるか分からないのに連れていけないよ。

大切な‥‥弟だから。」


呟く声がやけにか弱くて。

「恭弥は優しいね。」

俺はそう言って手を握った。

⏰:09/03/10 19:40 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#540 [ちか]
「ありがとう。」

あぁ。
良かった‥――
やっと笑ってくれた。


俺もその笑顔に安心して、笑顔を溢した。


やがて静かに車は停まり、俺はそこから降りた。

⏰:09/03/10 19:57 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#541 [ちか]
「じゃ、また後で迎えに来るね。」

「うん、じゃあね。」

俺は車を視界から消えるまで見送ったあと、店のドアノブに手をかけた。

しかしなかなか回す事が出来ない。
いきなりなんの挨拶もお礼も無し辞めちゃって、半ば勢いでここまで来たけど、店長達に合わせる顔が…

⏰:09/03/10 20:05 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#542 [ちか]
「あれ、日下?!」

後ろから急に名前を呼ばれ、俺の身体はビクリと跳ねた。

振り返るとそこには、

「崎田さん…」


一緒に働いていた先輩が居た。

⏰:09/03/10 20:08 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#543 [ちか]
「久しぶりだなっ!!」

崎田さんは俺より7つ年上でよく面倒みてもらっていた。
なおさら合わせる顔が無い。

「急に辞めたから驚いたわ!!!」

「すいません…」

⏰:09/03/10 20:11 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#544 [ちか]
「ま、立ち話もなんだし、入れよ!」

「あ…っ」

カランコロンと小さく鈴の音が鳴って、崎田さんに背中を押された俺は店内に入った。

「いらっしゃ…――冥!!」


入って早々、目に飛び込んだのは店長の顔だった

⏰:09/03/10 20:21 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#545 [ちか]
「お、お久しぶりです…」

目もまともに見れない‥

だけど店長の声は優しかった。

「元気だったか?」

俯いていた顔をあげると、優しい笑顔。

「はい‥、あの…急に辞めちゃって、なんのお礼も言えなくて…すいませんでした!!!」

俺は深く頭を下げた

⏰:09/03/10 20:33 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#546 [ちか]
「頭あげろよ、お前らしくない。」

頭上で、あははっと笑い声をあげる店長。

「お前が急に居なくなったのにはほんとに驚いたけど、後から黒羽さんに話聞いたから。」

恭弥?
いつの間に…

⏰:09/03/10 20:41 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


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