漆黒の夜に君と。[BL]
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#521 [ちか]
「ただいま。」
返される優しい笑顔。
この笑顔はみんなに平等?
分かってる。俺のモノじゃないんだよな…。
「兄貴、そっちの部屋行っていい?」
ニコニコと笑う優里。
:09/03/09 23:30 :P906i :QJ4p4rAQ
#522 [ちか]
「あ…ごめん、今から出掛けなきゃいけなくて…」
「えー…なんで?」
口を尖らす優里。
え、じゃあ俺またコイツと2人っきり?!
耐えられないって…
「ちょっとこの前の商談の続きがあってね。」
ん?商談?
て事は‥‥――!!
:09/03/09 23:42 :P906i :QJ4p4rAQ
#523 [ちか]
「お、俺も行く!!!」
「「え?」」
2人の視線が一気に集中する。
「挨拶も無いままバイト辞めちゃったし…荷物とかあるし‥‥‥だめ?」
俺は恐る恐る恭弥を見る
恭弥は暫く考えるような顔をしたあと、
「いいよ。」と、返事をくれた。
:09/03/09 23:47 :P906i :QJ4p4rAQ
#524 [ちか]
「やったあ!!」
いい機械だ。
ちゃんと店長に挨拶して、お礼を言おう。
ついでにこのギャップの激しい奴とも離れられて好都合だ。
「俺も一緒に行く…っ!!」
喜ぶ俺とそれを見て微笑む恭弥の間を割って入るような声。
:09/03/10 00:50 :P906i :iBV6D6kI
#525 [ちか]
「優里、お前はダメだ。」
なんの躊躇もなく恭弥は優里を見据えてそう言った。
「なんでコイツは良くて俺はダメなんだよっ!!!!」
「それはお前が一番良く分かってるだろ?」
「でも…っ「優里。」
いつもは優しく慰めるように言う筈なのに、この時は違った。
優里の言葉を遮って、最後までOKを出さなかった
:09/03/10 00:55 :P906i :iBV6D6kI
#526 [ちか]
「兄貴の馬鹿…―っ!!!!」
吐き捨てるようにそう言って優里は部屋を飛び出していった。
部屋に流れ出す沈黙。
恭弥もそれをかき消すように、
「じゃあ、下で待ってるから。」
と微笑んでドアを閉めてしまった。
だけど、なんでそんな悲しそうに笑うんだろう…
:09/03/10 14:45 :P906i :iBV6D6kI
#527 [ちか]
下に降りていくと、黒いスーツを身に纏った恭弥が居た。
スラリとした身体つきによくに合っていて、つい見とれてしまった。
あの漆黒の夜を思い出して。
:09/03/10 15:12 :P906i :iBV6D6kI
#528 [ちか]
「冥?」
名前を呼ばれて、俺は我に返った。
「ほわ?!?!なに?!」
あー…また変な声出してしまった…
「クスッ、行こっか。」
笑われた事が少し恥ずかしくて、俺は小さく頷いた。
:09/03/10 15:24 :P906i :iBV6D6kI
#529 [ちか]
久しぶりにまたあの長いリムジンに乗った俺は、なぜか緊張して畏(カシコ)まってしまった。
「クスッ、なんで固くなってるの?」
「だって、なんか…」
いろいろ思い出すし…
恭弥は俯く俺を見て、ふふっと笑うと優しく頭を撫でた。
:09/03/10 15:49 :P906i :iBV6D6kI
#530 [ちか]
「子供扱い…するな…//」
「冥は素直じゃないね。」
この余裕な表情がムカつくんだよ‥っ///
俺は照れ隠しに、撫でられる手をはらいながら話題を変える事にした。
「て、て言うか、なんで優里連れて来なかったの?別にあんな厳しくする事ないのに。」
:09/03/10 16:08 :P906i :iBV6D6kI
#531 [ちか]
そう言って恭弥の顔にチラリと目をやると、そこには哀しげな表情(カオ)があった。
「ごめん、俺…っ、そんな顔させるつもり無かったんだけど‥‥、」
俺は慌てて言葉を付け足した。
「や、冥は何も悪くないよ。謝らないで?」
そう言ってまた作られる哀しげな笑顔。
:09/03/10 16:28 :P906i :iBV6D6kI
#532 [ちか]
何も言えなくなる。
そんな顔されたら‥‥
俺まで哀しくなる…
恭弥は俺の表情が曇っていくの見て、こう問いかけた。
「冥は…優里がなんでカナダに住んでたと思う?」
:09/03/10 16:33 :P906i :iBV6D6kI
#533 [ちか]
>>532訂正
曇っていくの見て×
曇っていくのを見て○
すいません><
:09/03/10 16:34 :P906i :iBV6D6kI
#534 [ちか]
突然の問いかけに俺は少し考え込んだ。
「英才教育の一貫…とか?」
暫くして、俺は浮かんできた答えの中で一番もっともらしい答えを口にする。
しかしそれはハズレだったようで、恭弥は首を横に振った。
そして言ったんだ。
「優里はね、病気なんだ」
:09/03/10 17:33 :P906i :iBV6D6kI
#535 [ちか]
「え…?」
“病気”と言う単語がリアルに感じるのは、きっと恭弥の表情(カオ)が暗いから。
「病気って言っても、癌みたいなものじゃないんだ。
優里には生まれつき心臓に小さな腫瘍があってね。
普段は普通の人と何も変わりないんだけど、その腫瘍のせいでいつ発作が起こるか分からないんだ。
言うならば、心臓に爆弾を抱えてるようなもので…」
恭弥の顔から作り笑いすら消えていく。
:09/03/10 17:41 :P906i :iBV6D6kI
#536 [ちか]
「カナダに心臓外科の名医が居るんだ。
その先生に診てもらう為に優里は五歳の時、日本の病院からカナダの病院に移されてそこに住んでる。だから、僕と優里は物心ついた頃から離ればなれだったんだ。
今はまだ手術に耐えられる歳じゃないから、進行を遅らせる事しか出来なくて…」
俺はただ黙々と恭弥の話を聞いた。
だけどどこかに『まさか』『あれで本当に病気?』って思ってしまう自分が居る。
:09/03/10 18:29 :P906i :iBV6D6kI
#537 [ちか]
「優里のあの口調と派手な見た目はね、優里なりの強がりなんだ。
『病気で可哀想』、『親兄弟と会えなくて可哀想』、『病院暮らしで可哀想』…。
とにかく他人に可哀想な目で見られたくないみたい。
だから派手にして、『自分は全然辛くなんかない』ってそう他人に見せつけてた。
案の定、同年代の子はみんな優里を怖がって離れていっちゃった…」
:09/03/10 18:38 :P906i :iBV6D6kI
#538 [ちか]
「優里は辛いとか寂しいなんて一言も言った事ないけど、小さい頃、隅っこで泣いてるのをよく見たよ。
だから、僕は決めてるんだ。滅多に会えない分、会った時はどんな優里でも、誰よりも理解して守ってあげようって。
それが兄として、優里にしてやれる精一杯の事だと思うから…」
兄として精一杯してやれる事‥‥―――
恭弥はいつからそれを決めてたんだろう。
子供の頃からそんな事を思えるのは、きっと…――
:09/03/10 18:55 :P906i :iBV6D6kI
#539 [ちか]
「だからこんな血の気の多い場所、いつ発作が起こるか分からないのに連れていけないよ。
大切な‥‥弟だから。」
呟く声がやけにか弱くて。
「恭弥は優しいね。」
俺はそう言って手を握った。
:09/03/10 19:40 :P906i :iBV6D6kI
#540 [ちか]
「ありがとう。」
あぁ。
良かった‥――
やっと笑ってくれた。
俺もその笑顔に安心して、笑顔を溢した。
やがて静かに車は停まり、俺はそこから降りた。
:09/03/10 19:57 :P906i :iBV6D6kI
#541 [ちか]
「じゃ、また後で迎えに来るね。」
「うん、じゃあね。」
俺は車を視界から消えるまで見送ったあと、店のドアノブに手をかけた。
しかしなかなか回す事が出来ない。
いきなりなんの挨拶もお礼も無し辞めちゃって、半ば勢いでここまで来たけど、店長達に合わせる顔が…
:09/03/10 20:05 :P906i :iBV6D6kI
#542 [ちか]
「あれ、日下?!」
後ろから急に名前を呼ばれ、俺の身体はビクリと跳ねた。
振り返るとそこには、
「崎田さん…」
一緒に働いていた先輩が居た。
:09/03/10 20:08 :P906i :iBV6D6kI
#543 [ちか]
「久しぶりだなっ!!」
崎田さんは俺より7つ年上でよく面倒みてもらっていた。
なおさら合わせる顔が無い。
「急に辞めたから驚いたわ!!!」
「すいません…」
:09/03/10 20:11 :P906i :iBV6D6kI
#544 [ちか]
「ま、立ち話もなんだし、入れよ!」
「あ…っ」
カランコロンと小さく鈴の音が鳴って、崎田さんに背中を押された俺は店内に入った。
「いらっしゃ…――冥!!」
入って早々、目に飛び込んだのは店長の顔だった
:09/03/10 20:21 :P906i :iBV6D6kI
#545 [ちか]
「お、お久しぶりです…」
目もまともに見れない‥
だけど店長の声は優しかった。
「元気だったか?」
俯いていた顔をあげると、優しい笑顔。
「はい‥、あの…急に辞めちゃって、なんのお礼も言えなくて…すいませんでした!!!」
俺は深く頭を下げた
:09/03/10 20:33 :P906i :iBV6D6kI
#546 [ちか]
「頭あげろよ、お前らしくない。」
頭上で、あははっと笑い声をあげる店長。
「お前が急に居なくなったのにはほんとに驚いたけど、後から黒羽さんに話聞いたから。」
恭弥?
いつの間に…
:09/03/10 20:41 :P906i :iBV6D6kI
#547 [ちか]
「気にしすぎだっつーの!
頭あげろって。」
崎田さんはそう言って俺の頭を軽く叩いた。
俺ってつくづく幸せだよな…
こうやって温かく迎えてくれる人が居て…
:09/03/10 20:46 :P906i :iBV6D6kI
#548 [ちか]
それから店長達とたくさん話をした。
最近あったくだらない話や、常連さんの面白話…
店が込みだせば、手伝ったりもして、あっと言う間に時間は過ぎていった
夜が深くなり、街はさらに活気を増していく。
柄の悪い連中も増える時間。
「なんか店の外が騒がしいな。」
店長がドアの方を見ながら呟いた。
:09/03/10 21:11 :P906i :iBV6D6kI
#549 [ちか]
「喧嘩は勝手にしてりゃあ良いけど、ウチの前でされちゃあ困るんだよなー。」
店長は眉間にシワを寄せながら腕を組んだ。
途切れ途切れに聞こえてくる喧嘩の声。
「…〜っ!!!はなせってば…!!!」
この声、聞いた事ある…
:09/03/10 21:20 :P906i :iBV6D6kI
#550 [ちか]
これは…
「〜…触んな、馬鹿野郎!!!」
この声は…
「おい、冥!!?」
気づけば俺は店の外に飛び出していた。
「優里?!?!」
:09/03/10 21:28 :P906i :iBV6D6kI
#551 [ちか]
目の前に飛び込んで居たのは、柄の悪そうな二人と掴み合いになっている優里の姿だった。
「どこ見て歩いてんだよ、ガキが!!!!」
「おっさんこそ目見えてないんじゃねーの?!?!
あんたが悪いんだろーが!!」
「誰がおっさんだコラァ!!」
そう言って優里に拳が振り上げられた。
バキ‥‥――ッ
:09/03/10 21:40 :P906i :iBV6D6kI
#552 [ちか]
鈍く生々しい音が辺りに響いた。
「い゙ってーっ!!!!!」
俺、頭がどうかしちゃったんだろうか。
優里をかばって、自分が殴られるなんて。
「お前…っ、なんで!??!」
「そりゃこっちのセリフだっつーの…」
左の頬がジンジンと痛んだ。
:09/03/10 21:44 :P906i :iBV6D6kI
#553 [ちか]
「なんだてめえっ!!!‥‥‥‥あ、お前この前のっ!!!」
大声を張り上げる男を見上げると、そいつは偶然にもあの夜に恭弥にやられた二人組だった。
「てめえ、あの時はよくも…っ!!!!!」
ガタイのでかい男がもう一度拳振り上げる。
「やめろ。」
「あ゙?!なんでだよ!!!」
「‥‥‥‥俺にもっといい考えがある。」
:09/03/10 21:54 :P906i :iBV6D6kI
#554 [ちか]
>>551訂正
目の前に飛び込んで居たのは→×
目の前に飛び込んで来たのは→○
すいません´;;`
:09/03/10 21:55 :P906i :iBV6D6kI
#555 [ちか]
>>553訂正
拳振り上げる→×
拳を振り上げる→○
本当にごめんなさい;
:09/03/10 22:26 :P906i :iBV6D6kI
#556 [ちか]
>>553― 恭弥side.―
思ったより商談が長引いてしまった。
ふと時計に目をやると、短い針が3を指す手前まで来ていた。
早く迎えに行かなきゃ。
そんな事を考えながら車を走らせて、冥の待つ店に向かった。
:09/03/10 22:34 :P906i :iBV6D6kI
#557 [ちか]
ドアを開くと、店長の水嶋さんが焦った顔で僕に駆け寄ってきた。
「こんばんわ、あの…冥は…?」
見渡す限り冥の姿は無い
「それが、店の前で喧嘩してた連中に連れていかれて‥‥っ!!!冥と同い年くらい金髪の子も一緒に…!!」
:09/03/10 22:44 :P906i :iBV6D6kI
#558 [ちか]
同い年くらいの金髪の子って…――優里?!
「警察にも言えないし‥‥、とにかく早く助けないと‥‥っ、ってちょっと!!」
一瞬で血の気が引いた。
冥と優里が‥‥――?
水嶋さんの話も最後まで聞かないまま、僕は店を飛び出した。
:09/03/10 22:51 :P906i :iBV6D6kI
#559 [ちか]
しかし外に出たところで、何かが分かるワケでもない。
「恭弥様?どうなさいましたか?顔色が‥‥」
心配そうな顔で松山は僕の顔を覗き込む。
「‥‥‥松山。」
「なんでしょうか?」
:09/03/10 22:56 :P906i :iBV6D6kI
#560 [ちか]
「命令だ。
冥と…優里が連れ去られた。
一秒でも早く探し出せ。
手段は選ぶな。」
低い声が静かな街中に響いた。
「はい。」
:09/03/10 23:00 :P906i :iBV6D6kI
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