漆黒の夜に君と。[BL]
最新 最初 🆕
#641 [ちか]
「あなたは!」

大きな瞳をさらに大きくして女の人は言った。

「俺の事、分かります‥?」

そう尋ねると、にっこりと柔らかく微笑んで、
「もちろんです!」
と、声を大きくした。

「あなたが私をここに?」

辺りをキョロキョロと見ながら言うその人に、俺はコクリと顔を縦に振った。

⏰:09/03/13 16:34 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#642 [ちか]
「ありがとうございます。
道に迷っていたら雨が降ってきてしまって…止むのを待っていたら、いつの間にかこんな事に…」

恥ずかしげに頬を染める彼女。

そこら辺で雨宿りすればよかったのに。
この人天然?
なんて事を思いながらも、その美貌に目を奪われる。

「あ、そう言えば人を探してるって‥‥」

確かそう言ってたような

⏰:09/03/13 16:38 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#643 [ちか]
その人はほんわりと微笑んでいた目をぱっちりと見開いた。

「あっ、そうなんです!!
私、その…人を探してて道に迷ってしまって…」

仕草が女の子らしく、
その困った表情が可愛いく思えた。

「あの、俺で良かったら一緒に探しますよ?」

「いえ、そんなお世話になってばかりでは申し訳ないです…っ」

⏰:09/03/13 21:40 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#644 [ちか]
「全然ですよ、もしかしたら俺の知ってる人かも知れないし!
あ、俺、日下冥って言います。」

「私の方こそ申し遅れてすいませんっ!!
私は‥‥―――、」

そう言いかけた時、
ドアをノックする音が鳴った。

きっとこれは、

「冥?居るの?松山に聞いたらここだって‥――」

ほら、やっぱり恭弥だ


ガチャッと言う音とともに、恭弥が部屋に入ってきた。

⏰:09/03/13 21:50 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#645 [ちか]
「「‥‥‥‥‥‥‥。」」

ん?

俺を間に挟んで、言葉を無くす2人。

俺は交互に2人の顔をキョロキョロと見る。


恭弥の顔が青ざめていくように見えるのは気のせい?

しかし長く続いた沈黙を破る声は相当大きかった。

⏰:09/03/13 21:59 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#646 [ちか]
「恭くんっ!!!!!」


その瞬間、恭弥の顔から血の気が引いていくのが分かった。

正確には、抱き締められた瞬間、血の気が引いていった。


そう。
抱き締められて‥‥――

抱き締められて?!?!

⏰:09/03/13 22:08 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#647 [ちか]
いつの間にっ!!!!!

女の人はベッドを出て、
いつの間にか恭弥に抱きついていた。


硬直する恭弥。


硬直する俺。


さらにきつく抱きつく謎の女の人。

⏰:09/03/13 22:24 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#648 [ちか]
謎の修羅場。

ん?修羅場なのか?


もうなんなのか解らない


俺の思考は停止したも同然だ。


だって、こんなの…
優里ぶりで‥‥―――

⏰:09/03/13 22:33 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#649 [ちか]
「く、苦し‥‥っ」

絞り出すような声を出し、ますます青ざめていく恭弥。

「私の愛の証です!」

そう言ってさらにぎゅうぎゅうと締め付ける女の人。

え、愛?
LOVEって意味の?
あ、俺英語強くなった?

って、そう言う話じゃないっ!!

俺は目の前に浮かぶ光景に困惑し、一人ツッコミまでしてしまう始末。

⏰:09/03/13 22:41 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#650 [ちか]
「そんな愛は要らない!!
て言うか、なんでお前がここに?!」

もはや恭弥の顔は青を通り越して、白くなっていた。

「クスッ、相変わらず恭くんは照れ屋さんですね。
でも、婚約者が婚約者に会いに来るのに理由なんて要らないでしょう?」


そして俺の頭も今さっき
真っ白になった。


 

⏰:09/03/13 22:47 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#651 [ちか]
「こ…んやく…しゃ…?」

耳に入ってきた言葉を
おうむ返しのように
口にする。


だけど意味は一向に理解出来なかった。

いや、きっと理解することを頭が、身体が拒否したんだろう。

だってそんなの…

⏰:09/03/14 16:53 📱:P906i 🆔:tb7s0gDM


#652 [ちか]
俺の間抜けな声に女の人は俺の存在を思い出して、恭弥から体を離した。


「あ、お恥ずかしいところをお見せして申し訳ありませんっ!!」

そう言って顔を赤くして、頭をペコリと下げる。


しかし何を言われても
今の俺の頭は回転せず、
ただ恭弥とその人を交互に見るだけだった。

⏰:09/03/14 16:58 📱:P906i 🆔:tb7s0gDM


#653 [ちか]
頭をあげると同時に栗色の長い髪がふわりと宙を描いた。



「私、九谷神楽(クタニ カグラ)と申します。」



九谷 神楽 ‥―――

その聞き覚えのある名前が何度も何度も頭の中でエコーした。

⏰:09/03/14 17:03 📱:P906i 🆔:tb7s0gDM


#654 [ちか]
神楽‥‥―――


もしかして、この人が優里の言ってた『神楽姉』って人‥‥?


だけど気をつけろ

って何を?
どう言う意味?

婚約者だから、バレないしろって意味…?

⏰:09/03/14 17:40 📱:P906i 🆔:tb7s0gDM


#655 [ちか]
考えれば考えるほど、
思考は悪い方へと進んでいくばかり。


ついには涙まで浮かんできた。
胸がズキズキと痛い。


なんで?ねぇ、恭弥‥

青ざめたのは、婚約者って言う関係がバレてしまうと思ったから‥?
そうなの‥――?

⏰:09/03/14 17:50 📱:P906i 🆔:tb7s0gDM


#656 [ちか]
黙りこむ俺に、暫くして
女の人は口を開いた。


「あ、私はもうお気づきかも知れませんが、私は恭くんの、」

聞きたくない…
聞きたくない…っ
改めて言われたら俺…ッ

「婚約‥‥―――、」

そこまで口にしたところで、今まで生気が抜けたように黙っていた恭弥が突然声を張りあげた。



「婚約者になった覚えは微塵も無い!」

⏰:09/03/14 18:01 📱:P906i 🆔:tb7s0gDM


#657 [アリス]
続き楽しみ

⏰:09/03/15 22:35 📱:N702iD 🆔:klDjXBQY


#658 [ちか]
>>657
└→アリスさま*

ありがとうございます★
更新頑張りますねっ

⏰:09/03/16 15:17 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#659 [ちか]
「え‥‥?」


何、どう言うこと?


「もう恭くんったら♪
照れなくてもいいんですよ?」


どっちなんだよ…
答えてよ…恭弥…――

⏰:09/03/16 15:40 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#660 [ちか]
「端から照れてなんかない。神楽、誤解を招くようなことばっかり言ってると、いい加減怒るよ?」


いつになく刺々しい口調の恭弥。

黙りこんでしまった神楽さん。



てことは‥‥―――っ

⏰:09/03/16 15:42 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#661 [ちか]
「冥、誤解しないで。
神楽は僕の幼馴染みだ。」


幼ななじみ‥‥?


「まぁ、簡単に言えばそうなりますが‥‥」

「簡単に言わなくてもそうだ。会うのは久しぶりだけど。」

どう言うこと?

⏰:09/03/16 15:56 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#662 [ちか]
「だいたい、お前が来るなんて僕は一言も聞いてないよ。」

ため息混じりにそう言って恭弥は目線を神楽さんに落とした。


「‥‥‥‥‥‥‥‥私、
家を出てきたんです。」


俯いたまま、そう言った声はか細かった。

⏰:09/03/16 17:58 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#663 [ちか]
「‥‥だと思った。今度はなんで?」

恭弥のなんでと言う問いに神楽さんの肩が急に震えだした。
泣いてるのか‥‥?

「だっ、だって…―――
お父様が‥‥っ!!!!」

声まで震えてる。

俺は小刻みに震える神楽さんを見ながら、酷く心配な気持ちになった。

「また始まった‥‥。」

「え?」

ぼそりと呟かれたその声同様、恭弥の顔は鬱陶しそうな表情で曇っていた

「お父様が…――っ!!!」

⏰:09/03/16 18:12 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#664 [ちか]
勢いよく上げられた顔は
泣いているどころか、
怒り狂っているように見えた。

「私は恭くん以外の方と結婚する気など無いと何度も申していますのに!!!!」

「冥…出来るだけ守るけど、気を付けてね…。」

「え、何それどう言う…―ひっ?!?!」

何かが勢いよく俺の顔のすぐ隣をかすめた。

フォ、フォーク?!?!

これさっきメイドの人が運んできたご飯の‥‥?!
でもテーブルの上の皿に乗ってたはずじゃ‥‥
あれ、無い?!

⏰:09/03/16 18:26 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#665 [ちか]
「懲りもせずに自分の部下を連れてきては婿にしろ婿にしろ、と‥‥―――っ!!!!」

神楽さんが喋る度に、部屋の中にあるものが潰れていく。

正しくは、神楽さんが喋ると同時に身の周りにある物を片っ端から掴んでは、素手で潰している……。

「私はそんな野蛮な輩は嫌だと申してますのに!!」

「ひゃ…っ!!!?」

飛んでくる物達。
恭弥が引っ張ってくれたおかげで今助かった。

⏰:09/03/16 18:32 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#666 [ちか]
「あまりにしつこいので、家を出てきたんです!!!!」

荒々しく放たれたその言葉を最後に、飛んでくる物は終わった。

いや、もう投げれるほどの物が部屋に残っていなかっただけなのかも知れない。

もうこの部屋に原型をとどめている物はなかった。

⏰:09/03/16 18:41 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#667 [ちか]
疲れたのか、神楽さんは言い終わったあとペタンとその場に座り込んだ。


「あー…また派手にやったね。」

苦笑いを浮かべる恭弥。

また、って‥‥
これよくある事なの…?!

「ご、ごめんなさい…。」

神楽さんからは、さっきの怒った表情がすっかり消えてもとのおっとりとした雰囲気に戻っていた。

⏰:09/03/16 19:43 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#668 [ちか]
「あ、あのー‥」

ちんまりと座りしゅんとしている神楽さんと腕を組んで眉を寄せる恭弥。


俺の声はそんな2人の間を割るように小さく声を出した。


それに反応した2人から俺は一気に視線を浴びる

⏰:09/03/16 21:56 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#669 [ちか]
>>668訂正
俺の声は…×
俺は…  ○
すいませんД`

⏰:09/03/16 22:07 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#670 [ちか]
「あ、改めてちゃんと説明するね。
この人は九谷神楽。
僕の幼馴染みで神楽のお母さんは日本で5本の指に入る茶道家なんだ。」

「へえー‥」

それで喋り方とかも丁寧なのかな?
そう言えば着物姿きれかったなあ。
だいぶ濡れてたから今は着替えたのかワンピース姿だけど。

けど茶道してる人って、
こう…もっと大人しい感じのイメージが‥‥‥、

「それから、」

⏰:09/03/16 22:23 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#671 [ちか]
「神楽のお父さんは、日本で5本の指に入るマフィアで、まぁ、簡単に言えばヤクザなんだけど。
神楽の破壊力はそう言う家業からの遺伝からなんだと思う。また神楽のお父さんは大柄な人でね‥‥。」

「えぇ?!?!」

「普段は気をつけてるつもりなんですけれど、頭に血が上ると力をコントロールしきれなくて‥‥‥。
驚かせてしまってすいません…。」


いやいや!!!!
そりゃその破壊力にも十分驚いたけどっ!!!

俺が今驚いてんのは、
神楽さんがヤクザの人だって事で!!!!

⏰:09/03/16 22:37 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#672 [ちか]
言いたいことがありすぎて言葉に出来ず俺は口をパクパクさせた。

「神楽、たぶん冥はそっちに驚いてるんじゃなくて…」

「はい?」

「いや…なんでもない。
とりあえず僕達は部屋に戻るから。
神楽はメイドに他の部屋用意してもらうよう頼んどくからそれまでここに居て。(部屋から出て家中を壊されたら困るし、僕達もこれ以上被害受けたくないしね。)」

「はい…。お世話になってばかりですいません…。」

恭弥は神楽さんの返事を聞いてにっこり微笑むと、俺の手を掴んで、部屋を出た。

⏰:09/03/17 00:01 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#673 [ちか]
「ごめんね。ほんといろいろと…。」

ドアを閉めたあと、申し訳なさそうな顔で恭弥は言った。

「あ、いや、謝らなくていいって。別に恭弥が悪いワケじゃないし…。」

元を辿れば、連れてきたのは俺だし‥‥。

「ありがと…。それで、お願いがあるんだけど…」

「え、なに?」

恭弥が俺にお願いなんて、珍し…

「‥‥今日、冥の部屋で寝かせてくれない?」

⏰:09/03/17 00:29 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#674 [ちか]
「ふえっ?!?!///」

「ごめん、やっぱりダメだよね…。」

いや、別にいっつも急に入ってくるし!
たまに寝ていくし‥‥//
別にいいんだけど!

ただ改めて了承を得られるとなんか…照れる…//

「じゃあ、僕部屋戻るね。」

で、でも…――っ

⏰:09/03/17 01:00 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#675 [ちか]
「‥‥‥‥‥いっ、いいよ?入れ‥ば?//」

ただ傍に居たくて、
去ろうとする恭弥の服の裾を掴み、俯き加減でそう小さく呟いた。


あー。
俺ってマジで可愛げないよな…。

いや、16にもなって可愛げを求めるのもアレだけど!!!!///

って別にそう言う問題じゃなくて…〜っ!!

あーもうっ!!//
俺、何やってるんだろ…

⏰:09/03/17 01:08 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#676 [ちか]
俯く俺の頭に大きな手がそっと置かれた。

「ありがとう。」

見上げると、悩殺されそうになるくらい愛しい笑顔。


俺は赤らんでいく顔を気づかれないようにそらしながら、自分の部屋のドアノブを捻(ヒネ)った。

「入らないの‥?//」

そんな俺を見て恭弥はふふっと笑い、中に入った

⏰:09/03/17 14:17 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#677 [ちか]
ドアを閉める音がひっそりとした部屋に響いた。

「でも、なんで急に?」

そう言って少し前に立っている恭弥を見た。

「あぁ、神楽がね…。」

「神楽さん?」

「うん。昔から親と喧嘩してはウチに来てたんだけど…、夜になると寝ぼけてるのか僕の部屋に絶対入ってくるんだよ。ついでに僕の部屋を破壊するし…。安心して寝れなくてね…。」

そう言ってどこか遠くを見ながら苦笑いを浮かべる恭弥。


胸中お察しします‥‥。

⏰:09/03/17 14:33 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#678 [ちか]
「大変なんだな…。(いろいろと)」

「まぁね。」


「「‥‥‥‥‥‥‥。」」


沈黙の中に何か会話のネタは無いかと俺は必死に思考を巡らせた。

なんで緊張してんだよ、俺っ!!//
なんか無いか?!なんか‥

⏰:09/03/17 14:38 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#679 [ちか]
「あっ!」

俺は胸の前で思い出したように軽く手を叩くと、ソファーの上に無造作に置かれたカバンへと手を伸ばした。

恭弥に背を向け、ゴソゴソと鞄の中をあさる俺。

それを不思議そうに見つめる恭弥。

暫くして、探していた物を掴むと俺は振り返りそれを見せた。

「これ、教えて?」

恭弥に見せたのは、居残りの時先生から渡された太い紙の束。

⏰:09/03/17 14:51 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#680 [ちか]
「随分いっぱい渡されたんだね。」

恭弥は目を丸くして紙の束を見つめた。

「高橋先生鬼だから…。」

見るだけでやる気なくすよな、この量‥‥。

居残りのことを思い出すだけで気が滅入ってくる

そんな俺を見かねて恭弥は口を開いた。


「じゃ、やろっか。」

⏰:09/03/17 15:00 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194