漆黒の夜に君と。[BL]
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#871 [ちか]
「なんでこんな事したの。君が犯人じゃなかったらこのビルごと燃やしてやろうと思ったのに。」
いや、それはまずいんじゃ…?!
と、思わず言いたくなったけど必死にその言葉を飲み込んだ。
そんな俺の心とは反対に神楽さんはしゅんとした表情(カオ)で恭弥を見た。
「すいません‥‥。」
か細い声がぽつりと零れる。
:09/04/02 18:48 :P906i :Mc5Yvxbs
#872 [ちか]
その声を聞いて恭弥はあからさまにため息をつくと、この上ないくらいに鬱陶しそうな表情を浮かべながら話した。
「全くいい迷惑だよ。
なに、遊びのつもり?
それとも僕のこと馬鹿にしてるの?
いい加減にしないと、幼馴染みでも許さないよ。」
恭弥のきつい目付きに俺も少し恐怖感を抱いた。
:09/04/02 19:07 :P906i :Mc5Yvxbs
#873 [ちか]
「……ッ悔しかったんです‥!!」
隣で鉄のがバキバキと音をたてて壊れる音がして、それと同時に震えた声が耳を通り抜けた。
咄嗟に右を向くと、小刻みに肩を震わせている神楽さんが見えた。
まさか、暴れる気?!!?!
俺は無意識に身体を守るような体勢をとっていた。
……が、飛んでくる物は無い。
:09/04/02 19:23 :P906i :Mc5Yvxbs
#874 [ちか]
瞑った目をゆっくり開けると、目に入ったのは大粒の涙を溢(コボ)す神楽さんの姿だった。
恭弥も驚いたように目を丸くしている。
「私はずっと恭くんが好きでした…ッ、子供の頃からずっと…!!!なのにこんな最近ひょっこり現れたような男の子を恭くんは大切だと言って……っ!!!
私や、他の人にも見せた事のない表情(カオ)で微笑んで……っ
悔しかったんです…ッ
恭くんが遠くに行ってしまったような気がして…っ」
そう言ってぽろぽろと涙を流す神楽さんの姿から、恭弥をどれだけ好きだったか伝わってきた。
:09/04/02 19:34 :P906i :Mc5Yvxbs
#875 [ちか]
神楽さんは神楽さんなりに恭弥を好きだったんだよな…
不意に車の中で恭弥と自分の昔話をしていた時の、頬を火照らしていた神楽さんを思い出した。
愛し方(カタチ)は違っても、神楽さんは俺と同じように恭弥を愛してたんだよな。
そう思うと涙を流す神楽さんに罪悪感すら感じた
:09/04/02 19:50 :P906i :Mc5Yvxbs
#876 [ちか]
崩れるようにしゃがみこんだ神楽さんに恭弥はそっと近づいて目線の合う位置まで腰を下ろした。
「神楽、聞いて?
神楽の気持ちは知ってたし本当に嬉しいよ。」
しゃくりあげて泣く神楽さんの髪に優しく触れた
「だけど僕は冥のことが好き。神楽の気持ちには応えられない。」
恭弥がそう呟くと細い肩がさらに揺れた。
:09/04/02 20:04 :P906i :Mc5Yvxbs
#877 [ちか]
「でもね、僕にとっては神楽も大切な人なんだよ。
種類は違うけど大切な人に変わりはない。これからもずっと。
遠くへなんか行かないから、いつでも近くに居るから安心してよ。」
そう言うと恭弥は神楽の大きな瞳に溜まった涙を人差し指で拭った。
まるで神楽さんが恋をしたあの日(トキ)のように。
:09/04/02 20:15 :P906i :Mc5Yvxbs
#878 [ちか]
そのあと、恭弥は神楽さんが泣き止むまでずっと傍で背中を擦っていた。
そんな2人を俺は後ろから見るしかなかった。
ちょっと妬いたけどさ、邪魔するほど俺だって空気読めない奴じゃないし。
暫くして神楽さんは泣き止むと俺に深々と頭を下げて謝ってきた。
:09/04/02 20:24 :P906i :Mc5Yvxbs
#879 [ちか]
「冥さん、本当にすいませんでした…」
「や、頭上げてくださいよ!!もう全然気にしてないですって!!」
改めてこう言われると困るよな。
俺の言葉を聞いてゆっくりと頭をあげると神楽さんは柔らかい笑みを俺に向けた。
「ありがとうございます。
しかし、勝負の結果は私の負けです。
これからは私もお二人のために協力しますっ!」
協力って一体‥(笑)
張りきる神楽さんを流すように俺はヘラヘラと笑った。
:09/04/02 20:35 :P906i :Mc5Yvxbs
#880 [ちか]
玄関まで神楽さんの見送りを受けて、俺と恭弥は松山さんの待つ車に乗り込んだ。
沈黙が続く。
別に気まずいわけじゃない。
ただ、『ありがとう』を言うべきか『ごめん』を言うべきか、どっちを先に言うかでずっと悩んでいるのだ。
:09/04/02 20:50 :P906i :Mc5Yvxbs
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