クソガキジジイと少年。みそ汁編
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#70 [ザセツポンジュ]
『ママと遊びたいのにー!保育園行くのいやだー!』
そしてこの町では変わった人として有名な意地悪ジジイのきーさんに、ダダをこねてはゲンコツを食らわされ、泣きわめく始末だ。
:09/03/04 06:04 :W61S :2upng3Ik
#71 [ザセツポンジュ]
『オレがね、保育園から帰るまでは絶対にオウチにいてね、ママ。』
『わかった。ご飯作って待ってるからね、トミオちゃん。』
いいニオイのするママはトミーの涙をふいてゲンコツされた頭をなでてくれる。
:09/03/04 06:05 :W61S :2upng3Ik
#72 [ザセツポンジュ]
『今日は早くむかえに来いよ、クソジジイ!』
『なんじゃと?もっぺん言ってみろクソガキ!』
きーさんは拳を抱えて、なかなか言う事を聞かないトミーを追いかけ回す日々は続いた。
:09/03/04 06:08 :W61S :2upng3Ik
#73 [ザセツポンジュ]
『ねぇねぇ、じぃちゃん。ママはお出かけしたら帰って来なくなるの?』
トミーはキュウんちのお母さんが“お出かけに行った”まんま帰って来なくなったと言う事実に不安を抱いていた。
それ以来、ママが出かけるのを嫌がって甘えてばかりいるのだった。
:09/03/04 06:13 :W61S :2upng3Ik
#74 [ザセツポンジュ]
保育園が無い日の昼間
きーさんは
春の日を浴びながら
暴れん坊将軍を見ていた。
そんな気持ちのいい午後、
クソガキの話などどうでも良かったが、不安そうな我が孫の顔を見て、ジジイは考える。
『今のトミオに話して、意味が分かるとは思えん。すまんが、その話はできん。クソガキには。』
:09/03/04 06:16 :W61S :2upng3Ik
#75 [ザセツポンジュ]
『なんでー!教えてじぃちゃん。』
トミーには珍しく
あまりの不安感からか、
きーさんにまとわりついた。
『おい、トミオ。ガムいるか?』
きーさんは、10枚入りのガムを、ひとつだけ飛び出させてトミーに差し出した。
『いーるー!』
:09/03/04 06:20 :W61S :2upng3Ik
#76 [ザセツポンジュ]
バチン!
『いてー!!』
きーさんが差し出したのはパッチンガム。100円のドッキリおもちゃだ。
素直にガムを抜いたトミーは
バチンと指を挟まれてしまった。
『やーいやーい。トミオよ、お前はまだ子供なんじゃ。だから教えられん。』
:09/03/04 06:23 :W61S :2upng3Ik
#77 [ザセツポンジュ]
『クッソー!クッソジジイ!』
トミーは挟んだ指を痛そうに握ってきーさんを思いきり蹴った。
『おーおー。かゆいかゆい。トミオ、そのキックの素晴らしさゆえ、一個だけ教えてやろう。』
きーさんは、トミーを正面に座らせた。
:09/03/04 06:27 :W61S :2upng3Ik
#78 [ザセツポンジュ]
『寂しい思いをせずには生きて行けんのじゃ。トミオだって、寂しい思いをすることがこの先あるかもしれないけど、それはそれでいいんじゃよ。悪い事じゃないとワシは思う。』
トミーはまじまじときーさんを見つめた。
『ママがいなくなるっていい事なの?』
:09/03/04 06:31 :W61S :2upng3Ik
#79 [ザセツポンジュ]
『あぁあ。めんどくさいなぁもう。そうとは言っとらん。トミオ、じぃちゃんは今何が言いたいか分かるか?』
きーさんは、正面に座るトミーを横にずらした。
『わかりませーん。』
『フン。ワシは今テレビが見たいんじゃ。男ならそれくらいの事把握しておけ。』
:09/03/04 06:34 :W61S :2upng3Ik
#80 [ザセツポンジュ]
トミーはきーさんと討論するのはやめた。
まだ指がジンジンと痛む。
『じぃちゃん。オレ、キュウんち遊びに行ってくる。』
『おう、じゃあな。』
きーさんはコマーシャルになったと同時に立ち上がり、台所へ移動した。
トミーは金魚のフンのようにきーさんに付いていく。
:09/03/04 06:39 :W61S :2upng3Ik
#81 [ザセツポンジュ]
『なにかしら、トミオちゃん。おじいちゃんに何か用でも?お前も飲むか?』
きーさんはコップにカルピスの原液を注ぐ。
『いらない。ねぇ、あのね。ママがお出かけしないように見張っててね。』
『おう、じゃあな。了解なまこん。』
:09/03/04 06:43 :W61S :2upng3Ik
#82 [ザセツポンジュ]
信用ならないふざけたジジイを前に、トミーはなかなか玄関まで踏み出せないでいた。
『うん、うまい。なんじゃ?トミオまだいたのか。お前も一口飲んでみろ、カルピス。よく見ろ、ワシが口をつけたのはココじゃ。ココ以外で飲め。』
『いーいらない!ねぇママがね…』
:09/03/04 06:46 :W61S :2upng3Ik
#83 [ザセツポンジュ]
『うぁああ。分かった分かった。了解なまこん!おいトミオ!ひとつ言うがしつこい男は嫌われるぞ!早く、キュウちゃんち行って来い、チビ!』
トミーはきーさんの手に噛みつき、やっと玄関を飛び出した。
:09/03/04 06:49 :W61S :2upng3Ik
#84 [ザセツポンジュ]
『キュウーちゃん!あーそーぼー!』
『いーやーよー!』
『おじゃましまーす!』
キュウの家には
“ツインファミコン”があった。ディスクを挿入できる、すなわちマリオ2ができる本体だ。
片田舎にしては珍しい品だった。
:09/03/04 06:52 :W61S :2upng3Ik
#85 [ザセツポンジュ]
出稼ぎに行っている
キュウのお父さんからのみやげだ。
東京で珍しい物を見つけては
購入し、
田舎者を馬鹿にしたかのように
持って帰って来ては
キュウに渡すのだった。
キュウはお父さんの事を
“おみやげの人”と認識していた。
:09/03/04 06:56 :W61S :2upng3Ik
#86 [ザセツポンジュ]
『あれー。さーだは?』
さーだはキュウのじいちゃんの事だ。
きーさんやすーさんみたいに変人ではなく、普通の優しいじいちゃんだ。
『お買い物行ったよ。』
キュウの今のマイブームは
“コップに水を入れて並べる”事。
『ドーレーミー!』
:09/03/04 07:01 :W61S :2upng3Ik
#87 [ザセツポンジュ]
スプーンでコップを叩くと
調整して入れた水の具合によって様々な音を奏でる。
が、キュウの大きな声で
何がどうドレミなのかも
もはや分からなくなっていた。
『キュウーちゃん!あーそーぼー!』
『いーやーよー!』
『…入ってもいーい?』
今度はムシカゴ片手に
ジョウジロウちゃんがやって来た。
:09/03/04 07:05 :W61S :2upng3Ik
#88 [ザセツポンジュ]
『ジョウジロウちゃんいいところに来た!オレとゴエモンやろう!』
トミーはファミコンをセットする。
『う、うん。ねぇねぇ見て!チョウチョとったの!』
ジョウジロウちゃんは
ムシカゴを高くかかげた。
『すごおい!』
『キレーイ!』
ツンツン。
ツンツン。
:09/03/04 07:09 :W61S :2upng3Ik
#89 [ザセツポンジュ]
『ジョウジロウちゃん、このチョウチョ手でとったの?』
キュウはスプーンを手に持ったまんまでジョウジロウちゃんに問う。
『ムシトリアミだよ。』
『ムシトリアミって虫をとるアミじゃん!』
トミーはファミコンのコントローラーを握りしめたまんまムシカゴを覗き込む。
:09/03/04 07:12 :W61S :2upng3Ik
#90 [ザセツポンジュ]
『たまにはチョウチョとってもいいんだよー。』
いちばん嬉しそうなジョウジロウちゃんはチョウチョの羽の模様に見とれている。
そして3人はしばらく
テレビ画面の中の
ゴエモンとえびす丸を応援しながらファミコンに熱中するのだった。
:09/03/04 07:15 :W61S :2upng3Ik
#91 [ザセツポンジュ]
『ただいまー。』
『さーだが帰って来た!』
チビ達は玄関までダッシュして
さーだに飛び付いた。
『ほれ、ほれほれ。』
『うわーい。』
さーだはビニール袋から
子供の夢を取り出した。
マーブルチョコレート、ベビースターにウメトラ3兄弟。
:09/03/04 07:18 :W61S :2upng3Ik
#92 [ザセツポンジュ]
『マーブルマーブルマーブルマーブルマーブルチョコレイト〜マーブルマーブルマーブル…』
3人はピョンピョン跳び跳ねながらCMソングを歌う。
『そういや、トミオちゃん。さっきスーパーでママに会ったよ。』
:09/03/04 07:21 :W61S :2upng3Ik
#93 [ザセツポンジュ]
トミーはマーブルチョコレートの丸い筒を床に落とした。
『ヒ、ひぃぃい!オレ、帰る!』
トミーは一目散に
キュウの家から飛び出した。
『???トミーが帰っちゃった…』
:09/03/04 07:23 :W61S :2upng3Ik
#94 [ザセツポンジュ]
見張ってもらわなきゃ困る。
お出かけされちゃ困る。
ママがいなくなっちゃ困る。
寂しい思いはしたくない。
大好きな人が
どうか離れて行きませんように。
きーさんだけは信用するまいと心に誓ったトミオ少年だった。
:09/03/04 07:27 :W61S :2upng3Ik
#95 [ザセツポンジュ]
:09/03/04 07:30 :W61S :2upng3Ik
#96 [ザセツポンジュ]
『明日はね、ボクがおにぎり係だから母さんよろしくね。』
『はぁい。』
ジョウジロウちゃんの母さんは建築士、そして父さんは大工だ。
しかし暮らす家は
今にも倒れそうなボロ家。
建て直す計画もあるが
まだ実行されてはいない。
:09/03/08 00:34 :W61S :IR6AgnaY
#97 [ザセツポンジュ]
忙しい母さんは家事をおこたっていたが、トミーとキュウと3人で決めた約束ごとは守るようにしていた。
それはおにぎり係だ。
大工の父さんは仕事から帰るとジョウジロウの相手をした。
:09/03/08 00:36 :W61S :IR6AgnaY
#98 [ザセツポンジュ]
ジョウジロウには5つ年上の兄がいて、シンイチロウと言う。
ただのゲーマーだったために弟の相手はあまりせず、自分の興味のある事だけは集中してやりとげるような性格だ。
コントローラーの取り合いよりも、父さんと、歴史のお話をする事の方が自分の性にはあっていたジョウジロウちゃん。
:09/03/08 00:40 :W61S :IR6AgnaY
#99 [ザセツポンジュ]
『三國志のお話はこないだ終わったから、今日はロンドンのお話をしよう。』
父さんは60年代のロンドンの話をはじめた。
そうすると兄のシンイチロウも、あれだけ大好きなファミコンをやめて、自らロンドンの話に耳を傾けるのだった。
『おやすみなさい。』
:09/03/08 00:43 :W61S :IR6AgnaY
#100 [ザセツポンジュ]
ジョウジロウちゃんはロンドンを想像しながら布団に入り、眠りにつくのだった。
シンイチロウも、父さんの車の中で聴くビートルズを好きになっていくのであった。
目が覚めたジョウジロウちゃんは台所の戸を開けた。
『おっぱいよう。』
『じぃちゃんおはよう。』
:09/03/08 00:46 :W61S :IR6AgnaY
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