クソガキジジイと少年。みそ汁編
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#80 [ザセツポンジュ]
トミーはきーさんと討論するのはやめた。
まだ指がジンジンと痛む。
『じぃちゃん。オレ、キュウんち遊びに行ってくる。』
『おう、じゃあな。』
きーさんはコマーシャルになったと同時に立ち上がり、台所へ移動した。
トミーは金魚のフンのようにきーさんに付いていく。
:09/03/04 06:39 :W61S :2upng3Ik
#81 [ザセツポンジュ]
『なにかしら、トミオちゃん。おじいちゃんに何か用でも?お前も飲むか?』
きーさんはコップにカルピスの原液を注ぐ。
『いらない。ねぇ、あのね。ママがお出かけしないように見張っててね。』
『おう、じゃあな。了解なまこん。』
:09/03/04 06:43 :W61S :2upng3Ik
#82 [ザセツポンジュ]
信用ならないふざけたジジイを前に、トミーはなかなか玄関まで踏み出せないでいた。
『うん、うまい。なんじゃ?トミオまだいたのか。お前も一口飲んでみろ、カルピス。よく見ろ、ワシが口をつけたのはココじゃ。ココ以外で飲め。』
『いーいらない!ねぇママがね…』
:09/03/04 06:46 :W61S :2upng3Ik
#83 [ザセツポンジュ]
『うぁああ。分かった分かった。了解なまこん!おいトミオ!ひとつ言うがしつこい男は嫌われるぞ!早く、キュウちゃんち行って来い、チビ!』
トミーはきーさんの手に噛みつき、やっと玄関を飛び出した。
:09/03/04 06:49 :W61S :2upng3Ik
#84 [ザセツポンジュ]
『キュウーちゃん!あーそーぼー!』
『いーやーよー!』
『おじゃましまーす!』
キュウの家には
“ツインファミコン”があった。ディスクを挿入できる、すなわちマリオ2ができる本体だ。
片田舎にしては珍しい品だった。
:09/03/04 06:52 :W61S :2upng3Ik
#85 [ザセツポンジュ]
出稼ぎに行っている
キュウのお父さんからのみやげだ。
東京で珍しい物を見つけては
購入し、
田舎者を馬鹿にしたかのように
持って帰って来ては
キュウに渡すのだった。
キュウはお父さんの事を
“おみやげの人”と認識していた。
:09/03/04 06:56 :W61S :2upng3Ik
#86 [ザセツポンジュ]
『あれー。さーだは?』
さーだはキュウのじいちゃんの事だ。
きーさんやすーさんみたいに変人ではなく、普通の優しいじいちゃんだ。
『お買い物行ったよ。』
キュウの今のマイブームは
“コップに水を入れて並べる”事。
『ドーレーミー!』
:09/03/04 07:01 :W61S :2upng3Ik
#87 [ザセツポンジュ]
スプーンでコップを叩くと
調整して入れた水の具合によって様々な音を奏でる。
が、キュウの大きな声で
何がどうドレミなのかも
もはや分からなくなっていた。
『キュウーちゃん!あーそーぼー!』
『いーやーよー!』
『…入ってもいーい?』
今度はムシカゴ片手に
ジョウジロウちゃんがやって来た。
:09/03/04 07:05 :W61S :2upng3Ik
#88 [ザセツポンジュ]
『ジョウジロウちゃんいいところに来た!オレとゴエモンやろう!』
トミーはファミコンをセットする。
『う、うん。ねぇねぇ見て!チョウチョとったの!』
ジョウジロウちゃんは
ムシカゴを高くかかげた。
『すごおい!』
『キレーイ!』
ツンツン。
ツンツン。
:09/03/04 07:09 :W61S :2upng3Ik
#89 [ザセツポンジュ]
『ジョウジロウちゃん、このチョウチョ手でとったの?』
キュウはスプーンを手に持ったまんまでジョウジロウちゃんに問う。
『ムシトリアミだよ。』
『ムシトリアミって虫をとるアミじゃん!』
トミーはファミコンのコントローラーを握りしめたまんまムシカゴを覗き込む。
:09/03/04 07:12 :W61S :2upng3Ik
#90 [ザセツポンジュ]
『たまにはチョウチョとってもいいんだよー。』
いちばん嬉しそうなジョウジロウちゃんはチョウチョの羽の模様に見とれている。
そして3人はしばらく
テレビ画面の中の
ゴエモンとえびす丸を応援しながらファミコンに熱中するのだった。
:09/03/04 07:15 :W61S :2upng3Ik
#91 [ザセツポンジュ]
『ただいまー。』
『さーだが帰って来た!』
チビ達は玄関までダッシュして
さーだに飛び付いた。
『ほれ、ほれほれ。』
『うわーい。』
さーだはビニール袋から
子供の夢を取り出した。
マーブルチョコレート、ベビースターにウメトラ3兄弟。
:09/03/04 07:18 :W61S :2upng3Ik
#92 [ザセツポンジュ]
『マーブルマーブルマーブルマーブルマーブルチョコレイト〜マーブルマーブルマーブル…』
3人はピョンピョン跳び跳ねながらCMソングを歌う。
『そういや、トミオちゃん。さっきスーパーでママに会ったよ。』
:09/03/04 07:21 :W61S :2upng3Ik
#93 [ザセツポンジュ]
トミーはマーブルチョコレートの丸い筒を床に落とした。
『ヒ、ひぃぃい!オレ、帰る!』
トミーは一目散に
キュウの家から飛び出した。
『???トミーが帰っちゃった…』
:09/03/04 07:23 :W61S :2upng3Ik
#94 [ザセツポンジュ]
見張ってもらわなきゃ困る。
お出かけされちゃ困る。
ママがいなくなっちゃ困る。
寂しい思いはしたくない。
大好きな人が
どうか離れて行きませんように。
きーさんだけは信用するまいと心に誓ったトミオ少年だった。
:09/03/04 07:27 :W61S :2upng3Ik
#95 [ザセツポンジュ]
:09/03/04 07:30 :W61S :2upng3Ik
#96 [ザセツポンジュ]
『明日はね、ボクがおにぎり係だから母さんよろしくね。』
『はぁい。』
ジョウジロウちゃんの母さんは建築士、そして父さんは大工だ。
しかし暮らす家は
今にも倒れそうなボロ家。
建て直す計画もあるが
まだ実行されてはいない。
:09/03/08 00:34 :W61S :IR6AgnaY
#97 [ザセツポンジュ]
忙しい母さんは家事をおこたっていたが、トミーとキュウと3人で決めた約束ごとは守るようにしていた。
それはおにぎり係だ。
大工の父さんは仕事から帰るとジョウジロウの相手をした。
:09/03/08 00:36 :W61S :IR6AgnaY
#98 [ザセツポンジュ]
ジョウジロウには5つ年上の兄がいて、シンイチロウと言う。
ただのゲーマーだったために弟の相手はあまりせず、自分の興味のある事だけは集中してやりとげるような性格だ。
コントローラーの取り合いよりも、父さんと、歴史のお話をする事の方が自分の性にはあっていたジョウジロウちゃん。
:09/03/08 00:40 :W61S :IR6AgnaY
#99 [ザセツポンジュ]
『三國志のお話はこないだ終わったから、今日はロンドンのお話をしよう。』
父さんは60年代のロンドンの話をはじめた。
そうすると兄のシンイチロウも、あれだけ大好きなファミコンをやめて、自らロンドンの話に耳を傾けるのだった。
『おやすみなさい。』
:09/03/08 00:43 :W61S :IR6AgnaY
#100 [ザセツポンジュ]
ジョウジロウちゃんはロンドンを想像しながら布団に入り、眠りにつくのだった。
シンイチロウも、父さんの車の中で聴くビートルズを好きになっていくのであった。
目が覚めたジョウジロウちゃんは台所の戸を開けた。
『おっぱいよう。』
『じぃちゃんおはよう。』
:09/03/08 00:46 :W61S :IR6AgnaY
#101 [ザセツポンジュ]
忘れてはいけないのが
この家の変態ジジイ、鈴木ひとしの存在だ。
『ジョウジロウ、お前な、今からきーさんを読んで来い。』
すーさんはオセロをセットして正座していた。
『やだよー。ボク今日忙しいんだから。』
ジョウジロウちゃんは、机に置かれたお弁当箱を手に持った。
:09/03/08 00:48 :W61S :IR6AgnaY
#102 [ザセツポンジュ]
『おい!ワシにさからうとは15年早いなぁ。呼んで来いったら!』
すーさんは足をもぞもぞさせている。
『足、しびれてたてないの?』
ジョウジロウちゃんはすーさんの足の裏をつついた。
『ひゃう!ひゃら!ジョウジロウ!やめろ!快感がワシをおそう!』
:09/03/08 00:52 :W61S :IR6AgnaY
#103 [ザセツポンジュ]
即座に
気持ちが悪い。
と感じたジョウジロウちゃんは一旦お弁当を置いて、隣のきーさんちへ向かった。
『トーミオちゃん。』
『はーあーいー…』
トミーはデレデレしながらママと玄関までやってきた。
:09/03/08 00:54 :W61S :IR6AgnaY
#104 [ザセツポンジュ]
『ジョウジロウちゃんおはよう。今から朝ごはんなんだけど、もう食べちゃった?』
トミーのママは美人だ。
小さな子供でもうっとりするほどの。
『ううん。まだ。あのね、ウチのじぃちゃんにね、きーさん呼んで来てって頼まれた…』
:09/03/08 00:56 :W61S :IR6AgnaY
#105 [ザセツポンジュ]
『おうおう。ジョウジロウちゃんおはよう。なんじゃ?すーさんにまたコキ使われたのか?かわいそうに、あがりなさい。ほれほれ。』
ジョウジロウちゃんは寝癖をつけたまんまトミーの家におじゃました。
『オレんち今日ね、サンドイッチ!この卵のはね〜オレが手伝ってね〜…』
:09/03/08 00:59 :W61S :IR6AgnaY
#106 [ザセツポンジュ]
『うるさいぞトミオ。お前はすーさんにコキ使われた事が無いからサンドイッチではしゃいでられるんじゃ。見てみろ、ジョウジロウちゃんのこの悲しそうな朝を。』
きーさんは食卓に座って
ツナサンドを食べた。
朝早く仕事に向かう両親を持つジョウジロウちゃんは、
:09/03/08 01:02 :W61S :IR6AgnaY
#107 [ザセツポンジュ]
前の日に多く作ったおかずの残り物を自分でお皿によそって、ご飯を食べていたのだ。
朝早くから
オセロのために正座をするすーさんには、優しさと言うものがあまり無いため、自分のご飯は自分で用意していた。
それを知っていた木田家は、ジョウジロウちゃんを朝食に誘う事が度々あった。
:09/03/08 01:05 :W61S :IR6AgnaY
#108 [ザセツポンジュ]
『ジョウジロウちゃん、ゆっくり食べなさい。トミオちゃんはマザコンだし、すーさんは変態だし、お前のにぃちゃんはゲームしかしないし、まともなのはワシとジョウジロウちゃんだけじゃ。うん、うまい。ツナサンド食べなさい。』
ジョウジロウちゃんはツナサンドをほうばった。
:09/03/08 01:08 :W61S :IR6AgnaY
#109 [ザセツポンジュ]
きーさんは、割りと物静かな方だが、謙虚で優しい隣の家のジョウジロウちゃんがお気に入りだった。
すーさんはと言うと、なんでもかんでもつっかかってはゲラゲラ笑っている隣の家のトミーがお気に入りだった。
『じゃあキュウんち行って来る!』
『あっ!待って!先にボクんち行ってお弁当箱持って来ないと!』
:09/03/08 01:12 :W61S :IR6AgnaY
#110 [ザセツポンジュ]
朝ごはんを終えたジジイと少年二人は、すーさんが正座をしたまんま静止していると思われる隣の家に移動した。
『おぉい!ジョウジロウ!ワシはきーさんを呼んで来いと言ったろ!ハナクソチビ野郎!』
予想通りのポーズで大声をあげるすーさん。
:09/03/08 01:15 :W61S :IR6AgnaY
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