今でも
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#141 [なおみ]
むしろ会いたい。
そんな気持ちだった。
あっという間に土曜になり、私は亮との待ち合わせ場所に少し早く着いた。
省吾には今日のことは嘘をついて出掛けてきた。
私はこの時も、今もこれからも、省吾にきみちゃんの話をするつもりはない。
省吾に余計な心配をかけたくない。
そんな気持ちからだった。
:12/08/07 22:18
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#142 [なおみ]
しばらくしたら、亮が到着した。
亮「お!久しぶり。雰囲気変わったな。あの頃のギャルギャルしさが抜けちゃって!大人な女性になった。」
亮は笑った。
亮はあの頃のままだった。
相変わらず塚本高史だった。
それから2人で30分くらい電車に乗った。
その間、私の空気を和ませようと、亮は色んな話をしてくれた。
私はそんな亮の優しさに泣きそうになった。
:12/08/07 22:25
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#143 [なおみ]
電車を降り、病院に向かう道中、亮は急にしゃべらなくなった。
きっと、私に気をつかいすぎて疲れたんだろう。
自分だって、重い空気のはずなのに。
私「夏樹さんてどんな人?」
今度は私から話しかけてみた。
亮「ん?ああ...。おもしろい奴だよ。ちょっと変わってるかな。大学時代からの知り合いでさ。」
私「ふうん。てか、あたしが行ってどんな繋がりって説明すればいいの?」
私は急に不安になった。
亮「うーん...。とりあえず夏樹と話してみろよ。」
亮は優しく笑った。
:12/08/07 22:41
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#144 [なおみ]
しばらく歩くと、病院に着いた。
大きくて、意外に人がいなかった。
裏口から入ったのか、小さな入口だった。
節電しているのか、薄暗く感じた。
私はこの時、初めて大きな病院に来た。
ドラマでの病院のイメージがあったから、もっと人がわんさかいて、明るくて、看護師さんたちが慌ただしくしてるものだと思ってた。
亮「公貴が病室移動してから俺も初めて来るんだよ。部屋番号聞いてくるな。」
亮は受付で質問していた。
:12/08/08 08:17
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#145 [なおみ]
待ってる間、まだ実感が湧かない自分に、戸惑った。
私はただ亮の背中を見つめてた。
亮はいそいそと戻ってきて、私を案内してくれた。
エレベータを降りたら、人がいくらかいた。
廊下がずーっと向こうまで続いていて、すごく長く感じた。
亮「ここだ。」
亮は一室の前で立ち止まり、ドアを開けた。
:12/08/08 08:39
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#146 [なおみ]
部屋に入った瞬間、きみちゃんの匂いがした。
私は急に切なくなった。
亮が部屋に入り、夏樹さんと何か話していた。
私は夏樹さんに挨拶もできずに、夏樹さんを見ることもできずに、ただ一点に集中していた。
部屋の奥のベッド。
頭に包帯をぐるぐる巻いていて、色々な機材が繋がれている人。
間違いなく、きみちゃんだった。
:12/08/08 08:48
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#147 [なおみ]
私「きみちゃっ...」
私は思わずきみちゃんの両肩を掴んだ。
きみちゃんは眠っているようで、ただ繋がっている機械の音が響いていた。
私「や、きみちゃん!きみちゃん...!」
私は恐くて揺することはできなかったけど、何度も名前を呼んだ。
腫れ上がっている顔を見て、別人のような気もしたけど、紛れもなくきみちゃんで、これが現実なんだって実感した。
:12/08/08 20:34
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#148 [なおみ]
泣きながらきみちゃんの名前を呼ぶ私を見て、亮も夏樹さんも泣いていた。
私は亮からきみちゃんのことを聞いたあと、脳死のことをちょっと調べてた。
内容は、亮が言ってた通りだった。
回復する事例は奇跡的なこと。
その回復したっていう事例だって、脳死って誤診だったんではないかって書き方もちらほらあった。
セカンドオピニオンを受けるとか、色々まだやれることはある。
けど、私は赤の他人だってこと。
奥さんでもなければ、親戚でもない。
私がとやかく口出しできる立場じゃないってこと。
そんなやるせない気持ちでいっぱいだった。
:12/08/08 20:51
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#149 [なおみ]
私がいつまでもきみちゃんの手を握って泣いている状態を見て、亮が椅子を持ってきてくれた。
亮「なおみ...。」
私は立てなかった。
それを分かって、亮が私を持ち上げて座らせた。
ティッシュで私のぐちゃぐちゃになった顔を拭いてくれた。
その光景が、お別れをしたときのきみちゃんの姿と重なって、また泣けた。
:12/08/08 20:58
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#150 [なおみ]
私「うっ...」
私はまた泣き出した。
亮はそんな私を抱き締めてくれた。
亮「泣くな泣くな。公貴の前では笑ってろ。」
私は亮のその言葉に余計泣いた。
夏樹さんがお茶を買ってきてくれた。
夏「なおみちゃん?初めまして。公貴の妻の夏樹です。」
夏樹さんはしゃがんで、お茶を渡してくれた。
:12/08/09 10:06
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