「華」
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#1 [mmk] 14/06/18 22:11
「おめでとうございます」

その一言から始まった。

これから10ヵ月、私は私だけのからだではなくなる。



大切な命。
小さな命。

#2 [mmk]
渋谷横浜。
若者の街でアパレルを続け、最先端のファッションで身を包み、その全てがフェイク。
つけまつげ、スカルプ、プチ整形までして 着飾っていた。


店長、マネージャーと昇格し、まだまだこれからというときに、 足に違和感を感じ始めた。

「下肢静脈瘤」

その病気は足の皮膚にに虫がいるような感覚から、やがて痛みを伴う。
痛みだしたときには、もう、足がだせないくらい血管が浮き出てしまっていた。

⏰:14/06/18 22:24 📱:L-01E 🆔:cSv28Pv6


#3 [mmk]
アパレルとして、致命的。
自分の仕事に誇りを持ち、楽しくてたまらなかった私は、がんばりりたいのに痛む足に苛立ちを感じ、やがて休むようになり、結局やめざるを得なくなった。

⏰:14/06/18 22:28 📱:L-01E 🆔:cSv28Pv6


#4 [mmk]
「本当に悔しいよ。」

焼酎を飲み干したグラスをガタンと叩き、
向かいの席でタバコをふかしたあきらくんを睨み付けた。

「そうだね、でもケイは本当に偉いよ、頑張ってたもん。もう、体をやすめなさいって事なんだよ」

金髪の似合わない色白のあきらくんは
優しい口ぶりで慰めてくれる。

⏰:14/06/18 22:48 📱:L-01E 🆔:cSv28Pv6


#5 [mmk]
あきらくんに慰めてもらうと、私はいつも自然と心が和らぐんだ。

付き合って2年半年。
都会でカチカチギラギラしていても、
彼の元へ帰ると 緩んでしまう。

軽い気持ちで付き合ったけどいつの間にか 私の全てが彼を求めるまでになっていた。

⏰:14/06/18 22:52 📱:L-01E 🆔:cSv28Pv6


#6 [mmk]
彼は私と付き合ってすぐ、私の実家の近くに引っ越してきた。

「けい、忙しから少しでも会えるように、俺部屋借りるから」

重たいなんて思ってたりしたけど、すっかり通い妻になり、毎日顔を見ないと1日が終わらないとかんじるほどになっていた。

⏰:14/06/18 22:58 📱:L-01E 🆔:cSv28Pv6


#7 [mmk]
「けい、辞めたらどうするの?」

会計を済ませて、私の手をとりながら訪ねてきた。

「まだ考えられないな、とりあえず足がゆうこときかないから休むつもり」

私が答えると彼はそっと頷いた。

それから3ヶ月のあいだ、失業保険での生活を送った。

⏰:14/06/20 13:10 📱:L-01E 🆔:vPI90SeQ


#8 [mmk]
足がよくない私に彼は原付をブレゼントしてくれた。 雨や風の日は必ず迎えにきてくれて、とても優しくしてくれる。

彼の収入は並だと思うけど、パチンコへ行ったり飲みに行ったり、買い物したり、楽しい毎日だ。

ずっと一緒にいたい。
だから私も出来る限り彼に尽くしてあげたい。そして、そろそろ結婚できたらなって思っていた。

⏰:14/06/20 13:16 📱:L-01E 🆔:vPI90SeQ


#9 [mmk]
「ねえ、結婚はいつするの?」

私の料理したご飯をたべる彼に聞いてみる。

「またその話?だから、もう少し待ってって。」

そう。また言ってみた。
いつも同じ答え。
年齢的にも、付き合った年数も、両親とも仲良くしているのになかなか進もうとしてくれない。

⏰:14/06/20 13:21 📱:L-01E 🆔:vPI90SeQ


#10 [mmk]
「真面目にかんがえてるから、もう少し待ってよ。
タバコ買ってくる!タスポかして!」

早食いの彼は食べ終わるなりそう言ってわたしからタスポを取り、行ってしまった。

女がいるのかと一度疑ったけど、全くそんな気配はないし、よくわからない。だけど信じてる。ちゃんと向き合ってくれる日がくるんだって。

⏰:14/06/20 13:25 📱:L-01E 🆔:vPI90SeQ


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