○最後の四季○
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#1 [ゆり]
なんの迷いもなく
濁りもない
想いをくれた。
そんな
あなたが
とても
とても
好きだったけれど。
:06/08/31 13:27 :V703SH :O7rysDvw
#2 [ゆり]
バタン
いってきますの
挨拶もなしに
あたしは家を出る。
だって誰もいないし。
両親が別居始めて
もう2年か。
:06/08/31 13:28 :V703SH :O7rysDvw
#3 [ゆり]
バイトまでの道程。
一人歩く。
今日も空は変わらないし
でも風が少し強い。
こうやってまた
夏が終わって
秋が来るんだ。
「あ〜ぁ…」
何に対してか
わからないけど
溜め息が出る。
:06/08/31 13:29 :V703SH :O7rysDvw
#4 [ゆり]
バッチリ髪を巻いて
ヒールを鳴らして歩いても
最近あたしは
いつもこんな感じだ。
満たされないまま
何を求める訳じゃなく
失う事も出来ないでいる。
:06/08/31 13:38 :V703SH :O7rysDvw
#5 [ゆり]
2週間前から
パチンコ屋でバイトを始めた。
理由は
まぁ-お金。
キャバは彼氏の隼人に止められたし
なんだかんだで
夜の仕事をする程度胸はないし。
ちょ-ど近くにあったパチ屋に決めたんだ。
隼人は渋りながらも
頑張れよって言ってくれてる。
:06/08/31 13:39 :V703SH :O7rysDvw
#6 [ゆり]
夜12時まで
バイトをして
煙草を吸わないあたしは
バイトの皆と溜まる事もなく
さっさと着替えて
店を出る。
「高原さん」
低い声で
名前を呼ばれて
振り返る。
同じバイトの大橋くん。
少しパーマ掛かった茶色い髪が
昔好きだった人に似てる。
:06/08/31 13:41 :V703SH :O7rysDvw
#7 [ゆり]
「送ってく。
乗りなよ。」
「ほんと?
ありがと。」
薬指が輝く手で
車のドアを開けてくれる。
あたしの薬指にも
違う輝きがある。
「わざわざ
ごめんね。」
「近いし
全然いいよ。」
隼人が
こんな風に
女の子車に乗せてたら
あたしはたぶん
泣くだろーな。
とか思いながら
助手席に座る。
:06/08/31 13:42 :V703SH :O7rysDvw
#8 [ゆり]
こんな所見たら
隼人も泣くんかな。
でも夜道をさ
一人で歩いて
何かあるよりは
いいじゃん?
なんて
言い訳してみたり。
:06/08/31 13:45 :V703SH :O7rysDvw
#9 [ゆり]
近いから
すぐに家の前。
「お疲れさん。」
「ありがと。」
ガチャッ
車からおりて
笑顔を作って
「おやすみ。」
何食わぬ顔で
真っ暗な家の鍵を開ける。
:06/08/31 13:48 :V703SH :O7rysDvw
#10 [ゆり]
飼ってるにゃんこが
あたしの足に纏わり付く。
こいつはほんと
あたしと違って
可愛いな。
キャットフードを
お皿に流し入れ
隼人にただいまのメール。
隼人からおかえりのメール。
:06/08/31 13:50 :V703SH :O7rysDvw
#11 [ゆり]
変わらない
繰り返し。
平凡で単調な
こんな毎日を
きっと
幸せって
呼ぶんだろうね。
でも
あたしは弱くて
悪い女。
あの日から。
あたしは変わってしまったんだ。
:06/08/31 13:51 :V703SH :O7rysDvw
#12 [ゆり]
隼人と付き合って
2年を迎えた夏。
何気ない
当たり前の日々が
幸せだった。
あたしは。
隼人はそう思ってなかった?
幸せはもう
あんたにとっては
当たり前に
なっていたのかな。
:06/08/31 13:55 :V703SH :O7rysDvw
#13 [ゆり]
「ゆり!これ可愛くね?」
「うーわ…それはないわ」
この日は車で
アウトレットに来ていた。
メンズの服を見てる。
相変わらず
隼人の好みはおかしい。
:06/08/31 13:56 :V703SH :O7rysDvw
#14 [ゆり]
「だいたいさぁ〜
可愛いじゃなくて
カッコイイ視点で選ぼーよ」
腕を組みながら
呆れ返るあたし。
よくある光景。
「え〜可愛いじゃん…」
「ハイハイ。
あ、このTシャツかっこいくない?」
隼人に合わせてみる。
:06/08/31 13:58 :V703SH :O7rysDvw
#15 [ゆり]
「あ〜かっけ-!似合う?♪」
「似合う似合う。」
(だからあのダサイキャラTはやめて)
「惚れる?♪」
「惚れる惚れる。」
(だからこれにして)
「まじで?♪
でもさっきのも可愛くない?」
「はーいコレに決定!
買ってこい!」
:06/08/31 13:59 :V703SH :O7rysDvw
#16 [ゆり]
バシッと叩くと
ゆりチャン冷た-いとか
ブツブツ言いながら
レジに向かって歩いて行った。
向かう途中で
携帯を見てた。
最近やたら
携帯ばっかり見てる。
普通に
カンだけど
なんかあるよね。
:06/08/31 14:01 :V703SH :O7rysDvw
#17 [ゆり]
あ-あ。
浮気ですか?
勘弁して下さいよ。
あたしは隼人に
過去に一度
体の浮気とかじゃないけど
信用を壊された事がある。
だから
トラウマ。
もう
裏切られるのは
嫌だし
傷付くのも
嫌。
:06/08/31 14:03 :V703SH :O7rysDvw
#18 [ゆり]
「ゆりチャン!おまたせ〜」
「いいのあって良かったね♪」
周りから見れば
色黒な男と
色白な女が
その場限りの恋をして
手を繋いで歩いてる。
そんな風にしか
見えないだろうけど
実際
いろいろあるんです。
こんなうちらにだって。
:06/08/31 14:06 :V703SH :O7rysDvw
#19 [ゆり]
ファ-ストフード店で
飲み物を買って
席に座る。
また
隼人が携帯を気にする。
「ねぇ」
あたしの声に
携帯から視線を上げた。
「ん?」
「誰とメールしてるの?」
:06/08/31 14:09 :V703SH :O7rysDvw
#20 [ゆり]
不安をごまかす様に
あたしはグラスの氷を
ストロ-で突きながら聞いた。
「着うたとか見てるだけだよ!」
あらら。
そんな言い訳?
頭悪いなぁ。
:06/08/31 14:10 :V703SH :O7rysDvw
#21 [ゆり]
「最近急にだよね。
携帯ばっか気にして
どーかした?」
笑いながらゆったけど
怖い笑顔だっただろーな。
「どうもしないって!笑
新しい着うたあるかな-とか見てただけだし!」
:06/08/31 14:12 :V703SH :O7rysDvw
#22 [ゆり]
「…ふーん。」
あーあ。
やっぱ何かある。
悔しい。
ムカつく。
あたしに嘘つくなんて
たいした度胸だなちくしょ-。
:06/08/31 14:13 :V703SH :O7rysDvw
#23 [ゆり]
「携帯見せて。」
あちゃー
言っちゃいました。
今まで20年生きてきて
一度も言わなかった台詞。
:06/08/31 14:16 :V703SH :O7rysDvw
#24 [ゆり]
変なプライドがあるあたしは
相手の全てを知りたがる事を
ずっと出来ずにいた。
そこまでのめり込んでるって
思わせたくないから。
男を調子に乗らせない。
安心させない。
猫みたいに気まぐれな
微妙な距離を保つのが
あたしの付き合い方だった。
:06/08/31 14:20 :V703SH :O7rysDvw
#25 [ゆり]
でもとりあえず
そのプライド捨てました。
だって
気になる。
「えーなんもないって!笑」
「じゃあいいじゃん
見せてよ」
手を出して催促する。
「ほら!サイト見てるだけだよ!」
:06/08/31 14:22 :V703SH :O7rysDvw
#26 [ゆり]
いやいや。
そんなとこから
サイトが映った
携帯の画面見せられてもね。
あたしが見たいのは
メールですから。
でもこれ以上は
無理だ。
あープライドめ。
捨て切れなかった。
:06/08/31 14:24 :V703SH :O7rysDvw
#27 [グミ]
ゆりチャンだぁ。
前の話も、隼人クンの話も読ませてもらったよ。今回も続き気になっちゃう。ガンバってね☆
:06/08/31 17:00 :N901iC :☆☆☆
#28 [ゆり]
グミチャン☆
読んでくれてありがとォ(^-^)少し更新します☆
:06/08/31 20:51 :V703SH :O7rysDvw
#29 [ゆり]
「あっそ。」
もうやめた。
意味ないや。
なんかあるって
わかっちゃったし。
隠すなら
もっとマシな嘘で
もっと上手く
隠してよね。
バカ男。
:06/08/31 20:53 :V703SH :O7rysDvw
#30 [ゆり]
「まじなんもないよ?!」
笑いながら
隼人が焦る。
「わかったよ」
いつも通りの
あたし。
「も〜…怒らんでよー」
「…」
一気にウーロン茶を
飲み干して
席を立った。
:06/08/31 20:54 :V703SH :O7rysDvw
#31 [ゆり]
「行こ!」
気にしてない
そぶりは出来ても
笑顔で許せる程
かっこよくは
なれない。
「ゆり待ってよ〜」
隼人は膨れっ面で
あたしの手を取る。
振り払いたいけど
我慢我慢。
:06/08/31 21:22 :V703SH :O7rysDvw
#32 [ゆり]
「あたしも服見る〜ッ」
「うん♪
あっちの方
ゆりの好きそーな店
いっぱいあったよ!」
「じゃ-連れてって☆」
隼人は嬉しそうに
本当に嬉しそうに
笑って
あたしの肩を抱いて
歩き出した。
:06/08/31 21:23 :V703SH :O7rysDvw
#33 [ゆり]
この日は青い空が
果てしなく広がっていて
暑い夏の
日差しも強くて
隼人はあたしの日焼けを
気にしてくれていたね。
日影を探して歩いてくれたり
大きな手で
日が当たらない様にしてくれたり。
:06/08/31 21:28 :V703SH :O7rysDvw
#34 [ゆり]
そんな
無条件の優しさは
もういらないから
信用だけは
壊さないで
欲しかった。
あたしはあんたと
一緒に居られたら
それだけで
幸せだったんだよ。
:06/08/31 21:29 :V703SH :O7rysDvw
#35 [ゆり]
あたしの買い物を済ませて
アウトレットを出た。
帰り道の途中
洋食屋さんで夕飯を食べていた時
なにがどうなってかは忘れたけど
隼人が他の女の子と
メールしてたのが発覚。
:06/08/31 22:01 :V703SH :O7rysDvw
#36 [ゆり]
隼人の口から
メ-ルしてた事を
リアルに聞いた時は
マジでショックだった。
わかってはいたけど
あくまで妄想だったから
現実って
痛いな。
:06/08/31 22:06 :V703SH :O7rysDvw
#37 [ゆり]
あたしは
「うーわ」
って言った。
笑い飛ばしたかった。
そんな気持ちとは真逆に
涙が込み上げてきた。
堪えたけど。
:06/08/31 22:08 :V703SH :O7rysDvw
#38 [ゆり]
「あ〜
泣きそうだわ、ほんと。」
軽く笑いながら
目に溜まる涙を押さえた。
「でも俺にゆりがおるのは
向こうも知ってるし
なんもないよ?!」
:06/08/31 22:10 :V703SH :O7rysDvw
#39 [ゆり]
ハイハイ。
でもあんたさ
アド変した時ゆったじゃん。
ゆりと
家族と
学校の奴にしか
教えてないよ
って。
女の子と
メールなんて
してない
って。
なんもないなら
なんで
嘘ついちゃった?
上手い言い訳で
納得させてよ。
お願いだから。
:06/08/31 22:12 :V703SH :O7rysDvw
#40 [ゆり]
「あたしはさぁ…
メモリに女の子がいるとか
メールしてる子がいるとか
そーゆうのはいいんだよ。
言ってくれれば。
嘘つかれてた事が
悲しいだけ。」
食べかけの
オムライス。
このお店にも
二人で
よく来たよね。
:06/08/31 22:15 :V703SH :O7rysDvw
#41 [ゆり]
あたしが絶対
中途半端に残すのを
お腹いっぱいなのに
食べてくれたよね。
その後すぐ
お腹痛いとか
言い出して
毎回あたしが背中あっためたんだ。
そんな優しくて
情けないとこに
呆れてたけど
大好きだった。
:06/08/31 22:17 :V703SH :O7rysDvw
#42 [ゆり]
「嘘って言うけど
頻繁にメールしてる訳じゃないじゃん!
そりゃ毎日なら浮気にもなるけど…
俺はゆりだけだし」
「…もういいよ」
どうせあんたは
「こんな事くらい」って
思ってるんでしょ?
:06/08/31 22:18 :V703SH :O7rysDvw
#43 [ゆり]
でもね
あたしにとっては
した事の大きさなんて
どーでもいいの。
嘘ついてメールしようが
内緒で会おうが
キスしようが
えっちしようが
全部同じ。
した事自体が
問題だから。
様は
信用の問題だよ。
:06/08/31 22:19 :V703SH :O7rysDvw
#44 [グミ]
ゆりチャン☆
なんか読んでて心配。色々聞きたいけど、ネタばらしになっちゃうから…。
更新待ってるね!
:06/08/31 22:34 :N901iC :☆☆☆
#45 [ゆり]
☆グミチャン→前作も読んでくれてたとか本当に嬉しいなァ(T-T) 総合に感想板作ったのでよかったら来て下さい☆ありがとう♪
:06/08/31 22:38 :V703SH :O7rysDvw
#46 [ゆり]
「…もー無理。」
あたしは
オムライスを見たまま
呟いた。
「…」
隼人は
うんざりした様に
溜め息を
吐いた。
それが過去の傷痕に
深く刺さった
気がしたんだ。
:06/08/31 22:40 :V703SH :O7rysDvw
#47 [ゆり]
「なんで隼人がキレてんの?笑」
「だって俺なんもしてないじゃん!」
「…ほんとにそう思うの?」
「だって…気持ちが浮ついたとかじゃないし
会った訳でもないし
俺はお前だけだって!」
「…」
あーオムライスが冷めちゃう。
食べよ。
:06/08/31 22:42 :V703SH :O7rysDvw
#48 [ゆり]
「なぁ…
ほんとにゆりだけだよ」
卵ふわふわだな-。
チキンライスもおいしいし。
優しい味。
「聞いてる?
俺まじでなんもやましい事ないよ?」
今日は絶対
全部食べ切ろう。
:06/08/31 22:44 :V703SH :O7rysDvw
#49 [ゆり]
「ゆり…なんか言ってよ」
やば。
下向いてたら
涙出てきちゃったよ。
「ゆり?泣いてんの?」
あー
悔しい。
泣いたら認める事になる。
こんなに隼人が
好きなんだって。
:06/08/31 22:45 :V703SH :O7rysDvw
#50 [ゆり]
「美味しいから
感動して
泣けてきただけ。」
あたしは滲むスプーンで
必死にオムライスを食べた。
財布から千円を出して
隼人の前に置いて
席を立った。
「じゃーね。」
:06/08/31 22:47 :V703SH :O7rysDvw
#51 [ゆり]
「…も〜…なんで…」
隼人はこんなあたしに
完璧呆れたみたい。
仕方ないじゃん。
突っ走っちゃう性格は昔からだし。
仕方ないじゃん。
あたし傷付いちゃったんだし。
勝手なのは謝るけど
仕方ないじゃん。
あんたがめっちゃ好きなんだから。
:06/08/31 22:50 :V703SH :O7rysDvw
#52 [ゆり]
店から出ると
生ぬるい風が
頬に当たった。
「あ〜食べ過ぎた…」
あたしは涙を拭いて
駅に向かって
歩き出した。
今は暗いけど
電車乗ったら
顔見えるよな。
化粧直ししとこう。
:06/09/01 00:11 :V703SH :ZFLxxx9g
#53 [ゆり]
近くのビルの
トイレに入った。
カチャカチャ…
ファンデを探してると
携帯が鳴った。
着信は
隼人から。
いつもなら無視するけど
なんか
どうでもよかった。
:06/09/01 00:12 :V703SH :ZFLxxx9g
#54 [ゆり]
ピッ
「もしもーし」
「…お前今どこ?」
少し怒ってる声。
なんでそっちが怒るんだよ-。
「トイレだよ☆」
熱くなるのすら
もう馬鹿馬鹿しい。
どんだけ言っても
あいつには解らないし。
:06/09/01 00:15 :V703SH :ZFLxxx9g
#55 [ゆり]
「どこの?
てかお前どうやって帰んの?」
「電車で帰るよ☆
隼人も気をつけて帰ってね♪」
「送ってくよ…
危ないじゃん」
:06/09/01 00:16 :V703SH :ZFLxxx9g
#56 [ゆり]
「大丈夫大丈夫!!
帰れるよ☆」
「…どこのトイレにおるの?」
あたしはビルの名前を言った。
頭ん中はポッカリしてて
怒りも悲しみも
もうなかったんだ。
:06/09/01 00:17 :V703SH :ZFLxxx9g
#57 [ゆり]
化粧直しをして
トイレを出ると
ちょうど隼人が来た。
汗かいてた。
お互い無言で
隼人はあたしの手を掴んで
歩き出した。
あたしの歩幅に合わせて
ゆっくり。
:06/09/01 00:20 :V703SH :ZFLxxx9g
#58 [ゆり]
ビルを出て
駐車場まで
人が少ない道を歩く。
隼人が静かに口を開いた。
「ゆり…無理とか言わんといて。」
「…」
「俺お前しかいねーから」
「…」
何を言われても
風みたいに
通り抜けてく。
あたしには
もう無意味な言葉。
:06/09/01 00:23 :V703SH :ZFLxxx9g
#59 [ゆり]
「メールしてたのはごめん。
でもやましい事ないから」
「…隼人…」
「なに?」
隼人に手を引かれ
下を向いたまま言った。
「あたしね
付き合ってく上で
1番必要なのって
愛じゃなくて
信頼だと思うんだよ。」
:06/09/01 00:25 :V703SH :ZFLxxx9g
#60 [ゆり]
「…うん
お前昔からそう言ってたよな」
「だからね
あたしは今も
隼人の事が好きだけど
信頼はなくなった。
だから付き合ってく事
出来ない。」
好きならいーじゃんね
って
自分で思いながら伝えた。
:06/09/01 00:27 :V703SH :ZFLxxx9g
#61 [ゆり]
隼人は黙ったままで
手を少し強く握った。
あたしの大好きな手。
熱いくらいの体温も
冷え性なあたしには
心地よかったんだよ。
:06/09/01 00:30 :V703SH :ZFLxxx9g
#62 [ゆり]
「でも俺
お前の事好きだもん」
何回そう言われて
許して来ただろう。
あたしも随分勝手な女だし
たくさん困らせたけど
嘘は言った事ないよ。
本当に大事に
してきたつもりだよ。
伝わってた?
あたしの想い。
ねぇ隼人…
:06/09/01 00:36 :V703SH :ZFLxxx9g
#63 [ゆり]
溜め息を飲み込んで
言葉を返した。
「あたしも好きだよ。
でも信じられないの。
ごめん」
「…別れるとか嫌だよ」
「じゃああたしだけ
傷付いてくの?
信じて裏切られてを
繰り返さなきゃいけないの?」
:06/09/01 00:38 :V703SH :ZFLxxx9g
#64 [ゆり]
「もう裏切らない…」
「…それも信じられない」
「…」
「一回で直らなかったら
一生直らないよ。」
:06/09/01 00:40 :V703SH :ZFLxxx9g
#65 [ゆり]
車についた。
乗り込んでも
隼人はエンジンをかけない。
あたしも何も言わなかった。
隼人は傷付いた顔して
被害者みたいな空気出して
ほんといいよね。
自分が壊しといて
離れてくのは嫌だ嫌だって
どんなん?
毎回毎回。
あたしより勝手だよ。
:06/09/01 00:42 :V703SH :ZFLxxx9g
#66 [ゆり]
あたしは
疑われるより
疑う方が
辛いと思う。
許して貰えないより
許せない方が
辛いと思う。
両方後者は
あたし自身。
ほんとは
疑いたくない。
許したい。
でも自分じゃ
どうしようもないんだもん。
:06/09/01 00:47 :V703SH :ZFLxxx9g
#67 [ゆり]
あたしは今
どんな顔してる?
今まで以上に
色を失って
今まで以上に
冷たい瞳に
なっているかな。
なんか
吹っ切れた
喪失感。
それは多分
諦めから
きてる。
もう
いいや。
どうでもいい。
:06/09/01 00:48 :V703SH :ZFLxxx9g
#68 [ゆり]
「そんなに別れたくないなら
別れなくていいよ。」
静かな車内に
あたしの声が少し響いた。
「え?」
「いいよ。
隼人がしたい様に
すればいいよ。」
:06/09/01 00:50 :V703SH :ZFLxxx9g
#69 [ゆり]
「でもゆりは別れたいんでしょ…?」
あー
堂々巡り。
あたしが何言っても
どうせあんたは
だだこねて
別れないくせに。
「どっちでもいい。」
「なにそれ…」
あー
めんどくさい。
何言っても
こんなんじゃん。
:06/09/01 00:51 :V703SH :ZFLxxx9g
#70 [ゆり]
「あたしにどうしろって言うの?」
頭ん中が
ぐしゃぐしゃ。
もう傷付くとか
傷付けるとか
うんざりだよ。
「…俺は別れたくないんだって…」
ハンドルに手を置いて
隼人が俯いた。
:06/09/01 00:54 :V703SH :ZFLxxx9g
#71 [ゆり]
「じゃあ別れない。
それでいいでしょ?」
「…ゆり
俺の事好き?」
「好きだよ」
「…今回はごめんな」
「うん」
隼人はあたしを抱き寄せて
キスをした。
:06/09/01 00:55 :V703SH :ZFLxxx9g
#72 [ゆり]
好きだけど
大好きだけど
隼人の事
信用出来ない。
こんな風に
他の子とも
キスしたんだろうな。
あたしの特技は
妄想。
マイナスの妄想なんて
永遠と出てくる。
考えるのやめよ。
いいんだ。
もう…
:06/09/01 00:56 :V703SH :ZFLxxx9g
#73 [ゆり]
あたしはこの日から
変わった。
表面は変わらない。
笑って怒って悲しんで。
でも内面
完全に冷めてた。
「どうでもいい。」
傷痕が痛む度に
これが口癖になった。
:06/09/01 00:58 :V703SH :ZFLxxx9g
#74 [ゆり]
隼人からの想いに
満たされる事も
なくなった。
いつもどこかで
疑う気持ちが消えてくれなかった。
心から信じる事が
出来ないんだから
満たされないのも
仕方ないね。
:06/09/01 01:00 :V703SH :ZFLxxx9g
#75 [あやぽん]
:06/09/01 02:34 :SH700i :C5pDNgNw
#76 [桜]
:06/09/01 05:22 :P902iS :LFpQf7DA
#77 [ゆり]
あやぽんチャン☆
桜さん☆
ありがとォ(*´∪`*)
:06/09/01 08:33 :V703SH :ZFLxxx9g
#78 [ゆり]
こうして夏は進んでいったんだ。
今日もバイト。
疲れた…
休憩室に入った瞬間
勢いよく扉が開いた。
「ゆりチャ〜ン♪
休憩かぶったにゃー♪」
この黒くてライオンみたいなヘア-の男
三上達也。一個下。
黙ってればカッコイイのに。
:06/09/01 08:35 :V703SH :ZFLxxx9g
#79 [ゆり]
「そーだにゃ〜」
「しかも二人きりだにゃーん♪」
「にゃ〜ん」
意味不明な会話をしつつ
自販機で
お茶を買う。
三上くんは煙草に火をつけ
しゃべり出す。
:06/09/01 08:37 :V703SH :ZFLxxx9g
#80 [ゆり]
「ゆりチャン
彼氏とはどーよ?」
「まぁ普通」
「あらぁ〜
倦怠期〜??」
「いやもうラッブラブ」
「あはは(笑
俺の彼女飛んだし〜
ってか消えちったぁ!」
「消えたとか
どんなん(笑」
:06/09/01 08:38 :V703SH :ZFLxxx9g
#81 [ゆり]
いいなぁ。
そーゆうラフな付き合い。
本気の愛とか
もう疲れたよ。
嫉妬とか
束縛とか
不安とか
信用とか
なにもなくて
次から次へ
渡り歩いて。
傷付いたり
傷付けたりも
なくて。
楽だろうなぁ。
:06/09/01 08:41 :V703SH :ZFLxxx9g
#82 [ゆり]
「俺寂しい〜!」
ライオンが吠えてる。
「笑
…あたしも寂しい。」
少し笑って
席を立って
ゴミ箱に缶を捨てた。
:06/09/01 08:44 :V703SH :ZFLxxx9g
#83 [ゆり]
「ゆりチャン
なんかあったなりかー?」
心配そうな
純粋な瞳。
いいな。
あたしの瞳はもう
濁っちゃったよ。
昔みたいに満たされる事
一生ないだろうな。
「大丈夫なりよ〜(笑」
次の休憩の人達が入ってきて
あたし達は仕事に戻った。
:06/09/01 08:47 :V703SH :ZFLxxx9g
#84 [ゆり]
バイトを終えて
外に出る。
夏の匂いは消えてきて
今日は少しだけ
肌寒い。
「お疲れ」
大橋くんだ。
「あ、お疲れ様」
:06/09/01 08:49 :V703SH :ZFLxxx9g
#85 [ゆり]
「今日も歩き?
送ってくよ。」
「ありがと。」
ガチャ…
バタン
「明日バイト入ってる?」
車に乗り
シートベルトを締めた瞬間
大橋くんが言った。
:06/09/01 08:50 :V703SH :ZFLxxx9g
#86 [ゆり]
「明日は〜休みだよ。
やっと4連勤終わったの」
「そっか〜お疲れ。
明日休みなら
今からどっか行かない?」
びっくりした。
三上くんならまだしも
大橋くんはそんな事言う感じに
見えないから。
彼女いるし。
:06/09/01 08:51 :V703SH :ZFLxxx9g
#87 [ゆり]
「あ、朝から予定あったりする?」
彼女さんの事が気になった。
隼人の顔が過ぎった。
でも
どうでもよかった。
「ううん、いいよ」
あたしはそう答えてた。
:06/09/01 08:53 :V703SH :ZFLxxx9g
#88 [ゆい]
ゆりさんぁんたさー人と好きになるってゅーのわぉ互いの価値観を分け合って成長していくもんなんだょ!男だって我慢してくれてんだからあんたも理解しなよ!自分がほかの人とメールしないだけでそれわあんたの価値観ぢゃん!その価値観をあわせてくれちゃうモルモットがいいわけ?って思いました
:06/09/01 20:17 :D902i :0sGc3WIQ
#89 [ゆり]
ゆいさんへ☆
言いたい事めっちゃわかります(>_<)
価値観を押し付けるのわ良くないってコトですよね(*ノω<*)
あくまでこれはあたしの隼人との時間の中で作られた恋愛観、二人の約束なので…×
不快にさせてしまったならすみませんでした(*´`*)
:06/09/02 00:23 :V703SH :wd4TjqJk
#90 [ゆり]
「いいの?
どこ行こっか〜」
「大橋くんが行きたいとこでいいよ〜」
「海とか行く?」
「あ、行きたい!」
「よしっじゃあ出発」
途中でコンビニに寄ったりして
1時半くらいに着いた。
真っ暗。
波の音が
染み渡る。
堤防を二人で歩いた。
:06/09/02 00:25 :V703SH :wd4TjqJk
#91 [ゆり]
「高原さん〜てか
ゆりちゃんでいい?」
「ああなんでも」
「じゃあゆりちゃんで(笑
寒くない?」
「大丈夫だよ☆」
「てかヒール大丈夫?
コケたらほかって帰るからな」
「うわヒドッ
すごい勢いで追い掛けるでいいよ」
「怖ッ(笑
…ほら、手。」
:06/09/02 00:27 :V703SH :wd4TjqJk
#92 [ゆり]
少し先を歩いてた大橋くんが
あたしの方に右手を出した。
「ありがと。」
あたしは左手で
握った。
あったかいな。
「…俺が言うのもおかしいけど
こんなとこ来てて
彼氏怒らない?」
「怒るんじゃないかな」
「なんじゃそら(笑
大丈夫なの?」
:06/09/02 00:28 :V703SH :wd4TjqJk
#93 [ゆり]
「大丈夫じゃないよ。
でも
いいんだ。」
それ以上
大橋くんは何も聞かなかった。
あたしはいつから
こんな弱くて
こんな勝手で
いつも何かのせいにして
大切なものを
自分から遠ざける様に
なったんだろう。
:06/09/02 00:32 :V703SH :wd4TjqJk
#94 [ゆり]
隼人に言った。
自業自得って言葉。
今あたしにも
当て嵌まる。
わかってるつもりでも
出来ない事ばかり。
歩いてると
大橋くんが止まった
から
あたしも止まった。
「俺彼女とケンカしたんだー」
:06/09/02 00:34 :V703SH :wd4TjqJk
#95 [ゆり]
ありきたりな展開。
二人で傷の舐め合いか。
なんか虚しいね。
「なんで喧嘩したの?」
「めんどくさくなっちゃってさ」
「あはは
あたしと一緒だ。」
:06/09/02 00:37 :V703SH :wd4TjqJk
#96 [ゆり]
「そーなの?」
「うん
あたしは自分が
めんどくさい。」
「重傷だな(笑」
「重傷ですね…」
少し沈黙があって
波の音を聞いてた。
一定に打っては返って。
あたしには
悲し過ぎるくらい
優しい音だった。
:06/09/02 00:41 :V703SH :wd4TjqJk
#97 [ゆり]
「あー!さみぃ」
いきなり大橋くんはそう言って
あたしを抱きしめた。
「あったけ〜」
「…」
やっぱ人って
あったかい。
温もりって
いいなぁ…
そんな事を
考えてた。
でも風が冷たくて
心が
寒い。
埋まらない。
:06/09/02 00:44 :V703SH :wd4TjqJk
#98 [ゆり]
「大丈夫か?」
「うん」
隼人以外の人の香りなんて
2年ぶり。
改めて気付く。
隼人の腕に愛が溢れてた事。
隼人の腕にいつも優しさがあった事。
:06/09/02 00:49 :V703SH :wd4TjqJk
#99 [ゆり]
「ごめ…
もう…離して」
身体を離すと
二人の間に
冷たい風が吹いた。
「ごめん」
大橋くんは頭を下げて謝った。
:06/09/02 00:52 :V703SH :wd4TjqJk
#100 [ゆり]
「ううん…
彼女の事
めんどくさくても
信じられるうちは
大事にしてあげて下さい。」
大橋くんは
まだきっと
彼女さんに満たしてもらえるから。
満たしてあげられるから。
だから、ね。
:06/09/02 00:54 :V703SH :wd4TjqJk
#101 [ゆり]
夜中の3時過ぎに家に着いた。
携帯を見ると
隼人からのメールはなかった。
多分あたしがバイト終わる前に
寝たんだろう。
昔居酒屋でバイトしてた時は
終わるのが夜中の2時でも3時でも
起きててくれたのになぁ。
:06/09/02 00:55 :V703SH :wd4TjqJk
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