2006,夏恋
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#17 [主]
「………うん。」
加奈はお弁当を包んでいるバンダナを開く手を止め、顔をあげた。
「あのね、加奈とさっき話してた坊主の子わかる?」
あたしは家から持ってきた烏龍茶を半分まで一気に飲み、加奈に視点を合わす。
そして、「なんとなく」とおぼろげな返事をした。
:07/01/07 00:38
:N701i
:s.uGeus6
#18 [主]
カーテン越しに入ってきた風もやみ、また太陽の熱気があたしを悩ます。
クラスの男子はお弁当を食べおわったのか、騒ぐ声が耳鳴りのように聞える。
「あの子、南のことが好きみたいなの。」
「…………。」
一瞬、息が止まった。
蝉の声もやみ、男子たちの声も耳に入ってこないくらいにあたしの心臓は
ドクドクドク…と音をたて、鳴っていた。
:07/01/07 00:45
:N701i
:s.uGeus6
#19 [主]
「……好きって。冗談やめてよ」
あたしは少しかじったコロッケパンを半分口につめこみ、残りの烏龍茶で流しこんだ。
「加奈ね、南に恋してもらいたいの」
加奈はそういいながらバンダナを開き、お弁当箱のふたを開けた。
恋なんて、いつからしてないのだろうか‥。
:07/01/07 00:54
:N701i
:s.uGeus6
#20 [主]
高校生になって、恋をしたいと思ったことは数少なくもない…。
そして、2年目の夏がやってくるというのに好きな相手すら見つからない。
焦りはするが、あたしは彼氏を作ろうとする努力もせずに
部活の日々を淡々と過ごしていた。
:07/01/07 00:59
:N701i
:s.uGeus6
#21 [主]
あたと違って、加奈は高校に入ってすぐクラスの男子と付き合いだした。
よく喧嘩はしてるが今でも続いているからすごいと思う。
しばらくの沈黙のあとに、あたしは口をひらいた。
「なんで、加奈はあたしに彼氏ができてほしいの?」
あたしはコロッケパンをちまちまかじり、ペットボトルに残っている烏龍茶を1滴口に垂らす。
:07/01/07 01:06
:N701i
:s.uGeus6
#22 [主]
加奈は卵焼きを1口だけ食べ、箸を置いた。
「南、可愛いのにもったいないもん。なんで彼氏できないのか不思議なくらい。」
ため息混じりで加奈は言った。
ちょうどそのとき
コロコロコロ…
:07/01/07 01:15
:N701i
:s.uGeus6
#23 [主]
「…ん?」
あたしの足元に転がってたきたのは、1つの野球ボールだった。
初めて触った
野球ボールの感触
……かたっ。
少し泥がついた野球ボールは去年の夏を思い出させる。
:07/01/07 01:22
:N701i
:s.uGeus6
#24 [主]
………ジジジジジ。
真夏の7月上旬。
高校野球の全国大会への予選に、あたしたち生徒は全員応援に行かされた。
球場は、市内のちっぽけな球場で県でベスト16を決める試合。
こんな球場に全員入るのかと思ったけど、以外にあっさり入ってびっくりした。
「……暑いね。」
:07/01/07 01:31
:N701i
:s.uGeus6
#25 [主]
隣りにいるのは、加奈。
加奈は学校で配られたうちの学校名の入った帽子をかぶっている。
今日の気温は31℃
あたしは帽子をとり風を顔におくった。
蝉の声が一段とうるさくなる。
首に巻いたタオルで汗をふくが、それは止まることなくあたしにまとわりつく。
そんな中、試合開始のサイレンが球場に鳴り響いた。
:07/01/07 01:45
:N701i
:s.uGeus6
#26 [主]
あたしと加奈がいるのはアルプススタンドの前から2列目。
隣りにはチアとレギュラー入りできなかった、残りの野球部の人たちが全力で応援している。
暑さにも負けず、仲間を応援する気持ちにあたしは胸をうたれ
今まで興味もなかった野球を食い入るようにみていた。
:07/01/07 01:57
:N701i
:s.uGeus6
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