2006,夏恋
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#31 [主]
「みーなーみっ」
「………。」
あたしはまた加奈の声で我にかえった。
加奈はどうしたの?と聞いてきたが、あたしはあえて口にせず
「なんでもないよ」
とかるく返事をした。
:07/01/07 02:34
:N701i
:s.uGeus6
#32 [主]
そして、去年の夏はベスト16入りしたまま
野球部は幕を閉じた。
長い長い、夏だった。
中村くんはあのとき以来、あまり目にしていない。
たまに廊下で会うが、知り合いでもないあたしたちは何も話さないのが現実。
別にあたしは中村くんのことを好きでもないし、中村くんはあたしの存在すらしらないだろう。
:07/01/07 02:39
:N701i
:s.uGeus6
#33 [主]
それを考えると少し淋しくなるが、恋心を持たなかったことには感謝している。
中村くんはあたしの存在をしらないのだから。
手にとった野球ボールをみつめ、去年の夏を思い出したあたし。
なんだか、所帯染みたような気がするのは気のせいかな?
:07/01/07 02:51
:N701i
:s.uGeus6
#34 [主]
「ごめん」
と走ってきたのは、坊主頭。
加奈が「あっ」と声をあげたのは聞き間違いだろうか。
「ん?加奈どうした?」
あたしは野球ボールを走ってきた人に渡し、加奈をみた。
加奈は「なんでもない」といい下をむいた。あたしはわけもわからず、前を向くと
さっきの人はもういなくなっていた。
:07/01/07 02:55
:N701i
:s.uGeus6
#35 [主]
蒸し暑い風が、涼しい午後の風に変わった。
時計を見るともうすぐ1時。チャイムが鳴る時間
あたしはコロッケパンの入っていた袋をクシャッとつぶし、その場から立った。
「ほら、加奈もお弁当箱かたして。あたしいくよ?」
:07/01/07 03:01
:N701i
:s.uGeus6
#36 [主]
「あのね…南。さっきの人」
キーンコーン…。
加奈が言いかけたときに、タイミング悪くチャイムが鳴った。
加奈は慌ててお弁当箱をかたして、立ち上がり
スカートについたほこりをパンパンっとはらう。
「さっきの人…の続き言ってよ。気になって授業に集中できない」
ざわざわとうるさい昼休みの雰囲気も一気に消え、シーンとした空気が耳鳴りになって聞える。
:07/01/07 03:13
:N701i
:s.uGeus6
#37 [主]
加奈は「後で言うねっ」といい、自分のクラスに戻っていった。
あたしもそのあとに続こうとしたが、なぜだか足は教室と逆方向にむいていた。
サボり…?いや、違う。これはサボりじゃない。
ちょっと休憩するだけ
あたしは自分に言い聞かせ、ハンカチで汗を拭いた。
そんな6月の梅雨明け。
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:07/01/07 03:21
:N701i
:s.uGeus6
#38 [主]
あたしが授業をサボったことは後に先生にバレ、こってり叱られた。
そして、今日から7月。
教室にも扇風機がつき、夏を感じさせる。
窓から入ってくる風はちっとも涼しくなく、あたしを一段と困らせた。
加奈がこの前言った続きは聞くことなく、あたしはそのことすらも忘れていた。
「みなみーっ」
:07/01/07 03:29
:N701i
:s.uGeus6
#39 [主]
あたしを呼ぶ声は窓の外から聞えた。
窓から顔を出し、覗き込むと加奈がいた。
「なーにー?」
と大声で返事をすると、加奈はちょっと‥と手招きした。
あたしは風でボサボサになった髪を手でとかし、窓をしめ
扇風機を少しだけ占領し、教室を出る。
:07/01/07 03:36
:N701i
:s.uGeus6
#40 [主]
下につくと、加奈の後ろ姿がすぐ目に入った。
ポニーテールに少し茶色の髪、すぐに加奈だとわかったあたしって天才?
なんてバカなことを考える白石南16才。
「かな‥」
あたしは加奈を呼ぶ声をとめた。
それは、加奈の隣りに男の人がいたから。
:07/01/07 03:45
:N701i
:s.uGeus6
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