もう二度と・・・
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#300 [林奈]
「どこ行くの?あの二人だけには何もしないで」


何を言っても何を聞いても答えない男二人。


私は暗闇の中、気付かれないように携帯を触った。

⏰:07/05/06 18:34 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#301 [林奈]
手探りでメモリの1番を押す。
いちかばちか賭けてみた。携帯に慣れすぎて暗闇でも押せる自分を少し誇らしくも感じてしまった。

ノブヒロへと通話ボタンを押す。


“お願い!出て”


それを願った。

⏰:07/05/06 20:20 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#302 [林奈]
ノブヒロの声が聞こえないように、通話音量を最低にまで下げ、私はノブヒロに助けを求めた。


ノブヒロにこの状況が伝わるように分かる範囲で、男達に話しかけた。


「どこに向かってるの?私らをどうするの?」


あらゆる言葉を使った。

⏰:07/05/06 20:24 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#303 [林奈]
30分くらいしてから着いた暗い倉庫。チラッと見えた名前。


“鹿沼倉庫”


私は鹿沼倉庫の名前を意味もなくデカい声で叫んだ。


きっと男達は私を壊れた女と思っただろう。

⏰:07/05/06 20:27 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#304 [林奈]
倉庫に入れられ、出られないように鍵をかける。私ら三人を真ん中に集め、囲む六人の男。


ナイフをちらつかせ、ニヤニヤ笑うヤツら。


私は怒り狂った。

⏰:07/05/06 20:29 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#305 [林奈]
「お前ら気持ちわりぃんだよ」


「な―に言っちゃってんの?男をナメると怖いんだよ」


そしてジュンがおかしな事を言う。


「こいつらヤッちゃって」


ジュンの合図で私らは男達にそれぞれ押し倒された。

⏰:07/05/06 20:39 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#306 [林奈]
「やめろよ」


私らの叫びは届かなかった・・・。


私ら三人は、男達の道具にされたんだ。何回も何回も回され、男達は頂点に立つ。


涙すらも出ない。
もう殺してほしいと思った・・・。


ただ怖かった・・。

⏰:07/05/06 20:43 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#307 [林奈]
何時間いたんだろうか。
私らにはものすごい長く感じた。
ノブヒロにも届かない。


ほんとに諦めた。


男達が疲れ果て、私らは抜け殻状態。


その時だった。

⏰:07/05/06 20:45 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#308 [林奈]
倉庫の出入り口のドアで音がした。
夜中に響き渡る音。

一人の男がドアを開けた時、目を疑った。


ノブヒロがいたんだ。

⏰:07/05/06 20:49 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#309 [林奈]
“え?”


そう思った時、ノブヒロの後ろからたくさん人が入ってきた。
数えたら10人はいる。


声が出なかった。

⏰:07/05/06 20:51 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#310 [林奈]
「お前ら何してんだよ!その子らに何をした?」


「は?誰だてめぇ」

「その子らのツレだわ」


ノブヒロは私らを見るなり駆け寄ってきてくれた。

⏰:07/05/06 20:52 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#311 [林奈]
「大丈夫か?」


「なんで来てくれたの?」


「そりゃあ電話繋がっても林奈訳分からんこと言うし、けどただ事じゃないのが分かって、鹿沼倉庫だけが聞こえたらいきなり切れるし。ツレたくさん呼んで助けに来た」


私は涙が出た。
一気に涙が出てしまったんだ。

⏰:07/05/06 20:56 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#312 [林奈]
ノブヒロのツレ達はジュン達をボコボコにした。
一部始終を見て、私は震えが止まらなかった。


ノブヒロ達に体を支えられて、車に乗り、向かったのはノブヒロの家だった。

⏰:07/05/06 20:59 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#313 [林奈]
玄関で待っててくれたのはノブヒロの奥さんだった。


「大丈夫?とりあえず上がって」


心配そうに私らを上げてくれた。


「何があったんだ?」


ノブヒロの質問に私は全部答えた。

⏰:07/05/06 21:02 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#314 [林奈]
ノブヒロは私らに怒った。


「何をしてんだよ!そんな事になる前に何で俺や警察に相談しんかったんだ?」

「できるわけないじゃん。私今家出してるしノブヒロは奥さんいるんだよ?自分で何とかするしかないやん」


「嫁には前からお前の話をしてた。俺が昔援交してた事も全部話して許してもらった。お前は妹みたいなヤツだからって話したばっかだ。そんな矢先にこんな事があるなんて」

⏰:07/05/06 21:09 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#315 [林奈]
ノブヒロは泣いた。そしてノブヒロの奥さんが言った。


「この人ね、林奈ちゃんには幸せになってほしいって思ってたの。確かに昔の事は腹が立ったけど、今この人を信じようと思ったの。でもあなた達の命だけでも助かってよかった」

奥さんが私らを一人一人抱きしめてきたんだ。

⏰:07/05/06 21:14 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#316 [林奈]
私から電話があった時、様子がおかしいと思い、奥さんも聞いてたそうだ。奥さんが助けに行くよう言ってくれて、ノブヒロはツレをかき集めてくれたそうだ。そしてわかった事は、ノブヒロが元ヤンだという事。
ノブヒロのツレ達はすぐに集まってくれたみたい。

⏰:07/05/06 21:20 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#317 [林奈]
私は本当に感謝した。この人たちがいなかったらと思うと、涙が止まらなかったんだ・・・。


その日はノブヒロの家に泊まり、次の日奥さんのすすめで病院に行った。

⏰:07/05/06 21:22 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#318 [林奈]
三人とも異常はなく、けど一週間後に検査結果を聞きに行くことになった。


ノブヒロの奥さんは、“アヤ”さんと言う。アヤさんとノブヒロは私らが落ち着くまで家にいていいと言ってくれた。

⏰:07/05/06 21:25 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#319 [林奈]
次第にアヤさんとノブヒロの優しさに、心が安らいでいったんだ・・・。
それはトモミもヒロコも一緒だった。


援交をしてる女だから、レイプされたくらい何とも思わないだろう。


普通思うと思う。


けど違うんだ・・。

⏰:07/05/06 21:28 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#320 [林奈]
同意のない関係はやっぱり怖い・・・。

自分の過ちで、トモミとヒロコまでも傷付けて、ノブヒロ達までにも迷惑をかけた。


ほんとに最低なヤツだ・・・。

⏰:07/05/06 21:31 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#321 [林奈]
検査結果を聞きにいき、問題はやっぱりなかった。
でも安心はできない。
またジュンに何かされるんじゃないか。それだけだった。

⏰:07/05/06 21:33 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#322 [林奈]
だいぶ落ち着いた頃、ノブヒロに連れられて、私らを助けてくれた人達にお礼を言いに回った。
みんないい人達で、無事でいる私らに笑顔を見せてくれたんだ。


そして私ら三人は新しいアパートへと移った。


ジュンの逆襲に怯えながら・・・。

⏰:07/05/06 21:36 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#323 [林奈]
トモミとヒロコはあんな目に遭わせた私を責めたりしなかった。
それが逆に辛くて。

二人は何事もなかったかのように笑ってる。それは私に対しても変わらなかったんだ・・・。

⏰:07/05/07 09:49 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#324 [林奈]
あの事がきっかけで、二人は援交をきっぱり辞めた。
それぞれ、新しいまともな仕事に就こうとしてた。


それは私も同じだった・・。

⏰:07/05/07 09:51 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#325 [林奈]
ヒロコはファミレスのバイト。
トモミは服屋のバイト。
私はドラッグストアのバイト。


私ら三人は戸惑いながらも新しい仕事に馴染み始めてた。

⏰:07/05/07 09:54 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#326 [林奈]
ジュンから何の連絡もなく、また平凡な生活が戻ってた。


あの事からもう1ヶ月経とうとしてた。

そしてノブヒロとアヤさんの家にも遊びに行けるようになった。
二人は私ら三人を妹のように可愛がってくれてた。

⏰:07/05/07 10:02 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#327 [林奈]
トモミもヒロコも変わりなく生活し、気付いたらもう私も、18になった。


その間に実家に帰ることは一度もなかった。心配にもならない。


“あんな家は家なんかじゃない”


私はずっと思って過ごしてた。

⏰:07/05/07 10:06 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#328 [林奈]
そんな日々の中、久しぶりに父から電話があった。


初めの言葉は、「元気にしてるか?」ではなく、冷たい言い方。


「話したい事があるから近々家に来なさい」


一方的に電話を切られた。

⏰:07/05/08 07:52 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#329 [林奈]
“今更なに?”


父の素っ気ない言い方に腹が立った。


次の日仕方なく何年振りに実家に戻ってみた。
相変わらず兄はまだ引きこもり。
変わらぬ家の中に、急に安心感を覚えたんだ。

⏰:07/05/09 10:34 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#330 [林奈]
父に会い、私の顔を見て、突然話し出した。


「ひぃばあちゃんが体調悪い。もう98にもなるし医者は時間の問題って言うんだけど、お父さんは仕事でなかなか看病できないからお前に帰ってきてほしい」

初めて私に頭を下げた父。

⏰:07/05/09 10:37 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#331 [のり]
毎日読んでるよ!がんばってぇぇ!

⏰:07/05/09 10:42 📱:N702iD 🆔:☆☆☆


#332 [林奈]
のりさんありがとね!がんばるね!

⏰:07/05/09 13:49 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#333 [林奈]
私は迷った。
今更って思った。祖々母にも可愛がられた記憶はない。


“あんなばぁさんどうなってもいい”


そう思うのに・・。迷う自分がいた。

⏰:07/05/09 13:56 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#334 [林奈]
私はノブヒロに相談した。
ノブヒロの家に行き、アヤさんにも聞いてもらった。


するとノブヒロは私に言う。


「もう帰ったほうがいいんじゃないか?いい機会だし。お父さん、ほんとは淋しいんだと思うぞ」


「淋しいわけないやん。久しぶりに電話してきても、元気か?の一言もないんだよ?」


「お前バカだな。久しぶりだから言えなかったんだよ。お父さんも迷ったんじゃないかな。帰ってやれよ」

⏰:07/05/09 14:01 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#335 [林奈]
私はノブヒロの説得で家に帰ることにしたんだ。


トモミとヒロコは寂しそうにしてくれたけど、ずっと実家にいるつもりはなかった。


実家に戻った時、父は少し笑顔だった。

⏰:07/05/09 14:05 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#336 [林奈]
何年か前まではありえない表情。
しかもよく見たら会わないうちに、痩せて老けた感じがしたんだ。


何かふと、申し訳なく思えた・・。

⏰:07/05/09 14:13 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#337 [あやめ]
頑張れ

⏰:07/05/09 22:05 📱:SH702iS 🆔:☆☆☆


#338 [林奈]
父が言った初めての「ごめん」は何だか切ないけど暖かい気がした。


私は家事全般をすることになった。
昔の自分ではありえない心の変化。


それは“この家にいてもいいかも”っていつしか思うようになってた。

⏰:07/05/09 23:26 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#339 [林奈]
家にいる間、兄と話す時間も増えてく。たわいもないテレビの話やご飯のメニュー。
兄はいつしか笑うようにもなった。


それは些細な事で、私が小さなミスをしたりするってだけの理由。

⏰:07/05/09 23:29 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#340 [林奈]
実家に戻り1ヶ月経った頃、祖々母の様子がおかしくなった。ご飯なんてあんまり口にしなかったのに、昔好きだったお肉が食べたいと言い出したんだ。

⏰:07/05/09 23:31 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#341 [林奈]
テレビで見たことがある。
亡くなる前、人はそれを分かってるから好きなモノを最後に口にしたいと言うらしい。


“もしかして”


私はそう思った。しきりにお肉が食べたいと言う祖々母に、私は脂気の少ないお肉を食べさせた。

⏰:07/05/09 23:33 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#342 [林奈]
あやめさん、いつも応援ありがとうメ
また少し書いてくね

⏰:07/05/09 23:37 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#343 [林奈]
「おいしい、おいしい」
と言いながら目に涙を溜める祖々母。
私に対して嫌がらせや嫌みを言ってた時の面影はなく、ほんとにほんとに優しい表情をしてた。


食べて終わり、片付けに行こうとした私の手を、祖々母が握ってきた。

⏰:07/05/09 23:40 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#344 [林奈]
「どうしたの?」
驚く私に祖々母は言った。


「あんたには色々苦労させたね。今さらだけどね、あんたの事は可愛くて仕方なかったんだ。こんなカサカサな手にさせちゃってごめんね」

初めて聞いた優しい言葉。
大粒の涙を流しながら言った祖々母。


胸が締め付けられてた。

⏰:07/05/09 23:44 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#345 [繭]
今までの読みました…

ほんまに感動する…

ほんまの小説にしたらいいのに…

小さい事で悩んでる自分がバカみたいで恥ずかしくなりました…


これからも書き続けて下さい★
最後まで読みます☆

⏰:07/05/10 01:06 📱:P902i 🆔:☆☆☆


#346 [林奈]
》345さん、名前の漢字が難しくて読めないのごめんなさいmmありがとう!本にするつもりはないです。ただこんな生き方もあるって伝えたいだけで・・。最後まで頑張るね☆

⏰:07/05/10 01:10 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#347 [林奈]
後片付けをしていた時、祖々母の言葉が蘇る。


気付いたら私も泣いてた・・。


頑固で融通がきかない人が、泣いてた。

私も大粒の涙が溢れて止まらなかった。

⏰:07/05/10 01:13 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#348 [林奈]
祖々母はその二日後、息を引き取った。眠るように、優しい顔をして・・・。


葬儀の日、私は後悔してた。


“何でもっと大事にしてあげられなかったんだろう”


厳しさの裏にあった優しさに、私は気付きもしなかった。

⏰:07/05/10 01:17 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#349 [林奈]
幼すぎた自分。
私がもっと大人ならよかった・・・。


祖々母の部屋の机から見つかった写真と手紙・・・。


そこには赤ちゃんの頃の私が祖々母に抱かれてる姿が写ってたんだ・・。

⏰:07/05/10 01:19 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#350 [林奈]
写真と一緒にあった手紙を読んだ。


「林奈、今あんたは幸せかい?ちゃんと笑ってるかい?手紙を読んだってことはもうわしはいないんだろうけど、あんたは大事な大事な子やからな。血のつながりなど関係ない。お父さんにちゃんと甘えなさい」


日付が私が出ていった時だった。

⏰:07/05/10 01:24 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#351 [林奈]
私はただただ涙が止まらなかった。


不器用すぎる家族がいて、私は初めて家族への感謝の気持ちが込み上げてきたんだ・・・。


“気付くのが遅すぎたね・・・”


祖々母との事がきっかけで私は生まれ変わろうと思った。

⏰:07/05/10 01:27 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#352 [林奈]
葬儀から何日かして、久しぶりにトモミとヒロコに会った。

二人とも変わらない感じ。でも援交はもうやってないって自信満々に言ってた。

そして私も祖々母の事を話したら二人は優しい顔をしてた。

⏰:07/05/10 01:40 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#353 [林奈]
「林奈はもう大丈夫だよ。ちゃんと前を向いてける。こんなうちらが言うのもなんだけど、幸せにならなきゃね」


トモミの言葉が胸を締め付けた。


“汚れた過去と向き合うのは今しかないんだ”


私は強くそう思ったんだ。

⏰:07/05/10 01:44 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#354 [林奈]
私は家族との間にできてた溝を埋めようと努力した。


父と兄と祖父。


笑顔で話しかける私に、父も祖父も最初は戸惑ってた。
私はどんな時も冷静に歩み寄ることで、必ず分かり合えると思ったから。


一週間もしたら、家族が一緒に過ごす時間が増えてたんだ。

⏰:07/05/10 02:33 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#355 [林奈]
自分の部屋に引きこもりだった兄が、居間で寝るようにもなった。
家でご飯を食べる事があまりなかった父が、夕飯を楽しみに早く帰ってきてくれるようにもなった。いつもムスッとした顔して、自分からは話してくれなかった祖父が、喫茶店に誘ってくれるようになった。

⏰:07/05/10 02:37 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#356 [林奈]
それぞれ、何かを変えたくて努力してる。私は素直に嬉しかった・・。


食卓を囲んで笑い合うことなんて、絶対ないって思い込んでた分、ものすごい嬉しかったんだ。

⏰:07/05/10 02:40 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#357 [林奈]
私は信じた。


“もう一度家族を取り戻せる”


って・・・。


そして変わらない日が続き、大きな変化が訪れたんだ。

⏰:07/05/10 02:41 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#358 [林奈]
それは兄の進歩。


今まで引きこもりで何がしたいのかイマイチ分からなかったのに、兄は急に言ってきた。


「俺、調理師になりたい」


兄の突然の告白に、私も父も祖父も開いた口が閉じなかった。

⏰:07/05/10 02:44 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#359 [林奈]
「調理師?」


私は思わず聞いた。

「うん。俺前からちょくちょく料理はしてて、本気でやりたいと思ったんだ」


兄のまっすぐな目は真剣だった。

⏰:07/05/10 04:49 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#360 [林奈]
私も父も祖父も驚いたけど、兄が何かをやりたいなんて初めてだから、すごい嬉しくなった。


その日の夜中、目が覚めた私は台所に水を飲みに行った。
すると、家では普段飲まない父が、酒を飲んでた。

⏰:07/05/10 04:51 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#361 [繭]
まゆって読むよ(≧▽≦)

また更新されてて読みいったヾ(≧∇≦)〃

⏰:07/05/10 05:22 📱:P902i 🆔:☆☆☆


#362 [林奈]
まゆさんって言うんだね(^-^)/ありがとう!

⏰:07/05/11 07:27 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#363 [林奈]
父の背中が震えてたんだ。
近付いて父の顔を見たら泣いてた。


「お父さん?」


「起こしたか?ごめん」


「ううん。泣いてるの?」


「なんかあいつが自分から何かやりたいなんて初めてだから嬉しくてさ」


くしゃくしゃな顔して泣いてた。

⏰:07/05/11 07:32 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#364 [林奈]
「お父さん、鼻水垂れてるよ」


私は父のそんな姿が嬉しくてつい言ってしまった嫌み。
けど父は笑ってくれた。


私は今まで母に虐待され、別の父の存在、そして家族に見離され、家を出て、ろくでもない生き方してきた。


父の泣き顔を見たら後悔が心を埋めてしまってた。

⏰:07/05/11 07:40 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#365 [林奈]
「お父さんごめん」

「何でお前が謝るんだ?」


「だってこんな娘だからさ」


「何言ってるんだよ。お前は可愛い娘だわ」


照れくさそうに言う父の顔は、『本当の父』だった・・。

⏰:07/05/11 07:50 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#366 [林奈]
私が泣きそうになった。
父から聞いた本音。やっと“親子”になれた気がしたんだ。

そして父は私に聞いた。


「林奈は俺を恨んでないのか?」


「もう恨んでないから」

⏰:07/05/11 07:54 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#367 [林奈]
「ほんとにか?」


「確かに最近までは恨んでたよ。お母さんに殴られても助けてくれなかった。本当の父親がいるって分かった時も、優しい言葉が欲しかった。けどひぃばぁちゃんの事があって、分かったんだ。お父さんは私を必要としてくれてるんだって」

⏰:07/05/11 07:58 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#368 [林奈]
「少しずつお父さんの一面がいっぱい見れるようになって、恨めないよ」


「ごめんな」


「いいよもう」


「お母さんの事は恨んでるんだろ?」


父の率直な質問に、どう答えればいいか分からなかった。

⏰:07/05/11 08:01 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#369 [林奈]
「正直今も恨んでる。どんな理由にしろお父さん裏切ったし、私にも母親らしい事してくれなかった。あの人が謝ったとしても私は許さないよ」


「そうか」


また少し悲しい顔をした父。
けど自分の気持ちに嘘はない。


“一生許さない”


私は改めて思った。

⏰:07/05/11 08:42 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#370 [林奈]
父とのやり取りから一週間くらいしてから、兄が出かけると言った。
もう何年も外を出歩かなかった兄が、家を出てく姿は、何か凛とした姿だった。

調理専門学校の説明会らしい。
目がキラキラしてたんだ。

⏰:07/05/11 08:47 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#371 [林奈]
帰ってきて、夕飯の支度をしている私に駆け寄ってきた。


「なぁなぁ俺やっぱり調理師やるわ。親父に頼んでみる」


「そっかぁ。頑張りなよ?」


「おう!ありがとな。てかごめんな。俺が引きこもりの時、お前に辛い思いさせてたんだよな。ずっと謝らなきゃって思ってた」


兄の素直な気持ち。それだけで十分だって思った。

⏰:07/05/11 08:51 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#372 [林奈]
「もういいよ。お兄ちゃんが悪いわけじゃないし。それより調理師に頑張ってなってよ」


「頑張るよ」


嬉しそうに笑った兄の背中が大きく見えた。
そして同時に願ったんだ。


“今度こそは”ってね・・・。

⏰:07/05/11 08:56 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#373 [林奈]
夕飯の時に、兄は父に頼んでた。すると父は何も言わずうなずいてた。


男と男の会話なんだろう。


祖父は兄に学校のお金を出すと言った。けど兄は断っていた。

⏰:07/05/11 08:58 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#374 [林奈]
今まで迷惑かけた分、来年入るまでバイトしてお金貯めて自分で行くと言ってた。
そんな兄を見て、祖父は後から一人で言ってたな。


「頑張れよ」

って・・。

⏰:07/05/11 09:01 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#375 [林奈]
兄はすぐバイトを見つけて夢に向かって歩き始めた。


けど私は?・・・。

私にはやりたい事なんてない。
トモミやヒロコは今の仕事を好きだと言ってるのに、私にはなかった。

⏰:07/05/11 09:04 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#376 [林奈]
私はほんとに久しぶりにサオリと連絡を取ってみた。時々メールをするだけで会うことをためらってた。


サオリやマサとは生きてた世界が違ってたから、私とはもう話が合わないと思ってた。

⏰:07/05/11 09:08 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#377 [林奈]
会った時、サオリはキレイになってた。当たり前だけど、前のようなチャラチャラした感じはもうなくて、すごく落ち着いてた。


いっぱい話した。サオリの恋、今の仕事、マサの事、そして私の汚い過去も。

⏰:07/05/11 09:14 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#378 [林奈]
サオリは今、介護の仕事をしてた。お母さんの影響みたい。マサはバイクの専門店で働いていて、彼女と来年結婚すると言っているらしい。

そして私の過去の話を全部した。引くかもしれない。そう思ったけど、サオリなら分かってくれると思ったから。

⏰:07/05/11 09:17 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#379 [林奈]
サオリは泣いた。


「辛かったね」って言いながら泣いた。

そして私の目を見て言ったこと。


「林奈も介護の仕事してみたら?きっと何かを得られる。そんな辛い思いしたなら、他の人にも優しくできるよ」


私は驚いた。


“自分が介護?”

⏰:07/05/11 09:21 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#380 [林奈]
祖々母の世話はしてたけど、でも他人だと・・・。


正直、介護の仕事はえらいだけだと思ってた。他人の汚物に触ったり、私にはありえないと思った。

けどサオリはそんな仕事を“楽しい”って話してた。

⏰:07/05/11 09:24 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#381 [か]
>>1-200
>>201-380

⏰:07/05/11 19:35 📱:N902iX 🆔:☆☆☆


#382 [林奈]
悩んだ。でも自分にはできないって最終的に思った。
だから私は違う仕事を見つけようとした。もちろん援交なんかではなく、普通の仕事を・・・。

⏰:07/05/11 22:10 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#383 [林奈]
その事を父に相談してみた。
そしたら父は知り合いの和食屋のバイトを紹介してくれた。

“とりあえずやってみよう”


私は気軽に始めてみた。

⏰:07/05/11 22:17 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#384 [繭]
頑張って書いてなぁ

自分のペースで

⏰:07/05/11 22:42 📱:P902i 🆔:☆☆☆


#385 []
頑張ってねえ

ちゃんと読んでますょ

⏰:07/05/12 07:58 📱:N903i 🆔:☆☆☆


#386 [林奈]
まゆさん、さんありがとうメまた少し更新します

⏰:07/05/12 10:06 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#387 [林奈]
父の昔からの知り合いと言う、亭主の、“ヨシオさん”と肝っ玉って感じの奥さんの“サトミさん”が、二人で切り盛りしてるお店。
若い学生さんや、サラリーマン達がよく通うお店らしい。


バイト初日、私は二人に挨拶した。

⏰:07/05/12 10:11 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#388 [林奈]
「初めまして。父から紹介されて来ました、林奈です。今日からよろしくお願いします」


「林奈ちゃん初めてじゃないんだよ?まだ小さい頃よく来てくれてたんだよ。覚えてないよね?」


サトミさんが昔の話をしてきたけど、全く覚えてない。


「すいません。覚えてないです」


「そりゃそうだわ」

二人は大笑い。
すごく温かい感じがした。

⏰:07/05/12 10:15 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#389 [林奈]
くしゃくしゃな笑い顔。
すごい温かい二人に安心した。


仕事を色々覚えて勤務時間は11時から17時まで。休憩にまかないをくれて、私は仕事が楽しかった。

⏰:07/05/12 10:28 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#390 [林奈]
そんな生活の中、私が出会った人。
サトミさん達の親戚の子どもの、ストリートミュージシャンの“ユウくん”当時は23歳だった。


よく家に遊びに来るうちに私と仲良くなった。

⏰:07/05/12 10:36 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#391 [林奈]
私が休憩してる時に色々歌ったりしてくれた。
気さくな感じで私はだんだん惹かれ始めた。


ユウくんと私は自然に付き合いだし、幸せだった。

⏰:07/05/12 10:39 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#392 [林奈]
バイトをしながら、東京への上京を夢見るユウくんに、一生付いていきたいって思ったんだ。
それくらい真剣だった・・。


ユウくんとの付き合いにいい気をしない父。


20歳直前、私とユウくんはある決意をしたんだ。

⏰:07/05/12 10:41 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#393 [林奈]
まだまだ幼い私は、この人ならって思った。


ユウくんから出た突然のプロポーズ。


「結婚しよか」


私はめちゃくちゃ嬉しかった。

⏰:07/05/12 10:43 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#394 [林奈]
二人で働けば何とかなるって思った。


社会をまともに知らない、たったハタチのヤツが何ができるんだ。


今ならそう言えるのに・・・。


あの頃は目先の事にいっぱいいっぱいだった。

⏰:07/05/12 11:14 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#395 [林奈]
ユウくんは父に挨拶をしたいと言い、家に来た。


ユウくんと付き合ってる事はもう何年も前から父は知ってた。


「娘さんと結婚させてください」


真剣なユウくんに父は答えた。

⏰:07/05/12 11:17 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#396 [林奈]
「結婚させるわけにはいかない」


冷静な父の返事。


「お父さん何でダメなの?私達真剣なんだよ?」


「真剣だからいかんのだわ。ストリートミュージシャンがいけないとは思わない。けど将来性があると思ってるのか?子どもが生まれたらどうする?やってけるって言い切るお前たちはまだ甘い」


私はそんな父に腹が立った。

⏰:07/05/12 11:22 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#397 [繭]
また読ませて頂きました

更新されてて嬉しかった

⏰:07/05/12 13:04 📱:P902i 🆔:☆☆☆


#398 [林奈]
「お父さんには関係ない!言わなきゃよかった!お父さん本当は私の事可愛くないから言うんでしょ?どうせ血なんて繋がってないんだし」

私はカッとなって言ってしまったんだ。

父のものすごい悲しい顔が今も目に焼き付いてる。

⏰:07/05/12 15:24 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#399 [林奈]
我に返った時は遅かった。
父は部屋を出て行ってしまったんだ。


「ごめん」の一言が言えなかった・・。

父を傷付ける言葉。私を愛してくれてるのを分かってるのに・・・。


こんな時に血の繋がりを出す私は卑怯者・・。

⏰:07/05/12 15:27 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


#400 [林奈]
すごい後悔した。


結局父の反対で結婚は見送られた。


その数日後に分かったことがある。
ユウくんは借金をしてた。それが原因で別れた。


父とあれから話をしない毎日。お互いに顔を合わせないようにしてた。

⏰:07/05/12 15:30 📱:W43CA 🆔:☆☆☆


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