もう二度と・・・
最新 最初 全
#301 [林奈]
手探りでメモリの1番を押す。
いちかばちか賭けてみた。携帯に慣れすぎて暗闇でも押せる自分を少し誇らしくも感じてしまった。
ノブヒロへと通話ボタンを押す。
“お願い!出て”
それを願った。
:07/05/06 20:20 :W43CA :☆☆☆
#302 [林奈]
ノブヒロの声が聞こえないように、通話音量を最低にまで下げ、私はノブヒロに助けを求めた。
ノブヒロにこの状況が伝わるように分かる範囲で、男達に話しかけた。
「どこに向かってるの?私らをどうするの?」
あらゆる言葉を使った。
:07/05/06 20:24 :W43CA :☆☆☆
#303 [林奈]
30分くらいしてから着いた暗い倉庫。チラッと見えた名前。
“鹿沼倉庫”
私は鹿沼倉庫の名前を意味もなくデカい声で叫んだ。
きっと男達は私を壊れた女と思っただろう。
:07/05/06 20:27 :W43CA :☆☆☆
#304 [林奈]
倉庫に入れられ、出られないように鍵をかける。私ら三人を真ん中に集め、囲む六人の男。
ナイフをちらつかせ、ニヤニヤ笑うヤツら。
私は怒り狂った。
:07/05/06 20:29 :W43CA :☆☆☆
#305 [林奈]
「お前ら気持ちわりぃんだよ」
「な―に言っちゃってんの?男をナメると怖いんだよ」
そしてジュンがおかしな事を言う。
「こいつらヤッちゃって」
ジュンの合図で私らは男達にそれぞれ押し倒された。
:07/05/06 20:39 :W43CA :☆☆☆
#306 [林奈]
「やめろよ」
私らの叫びは届かなかった・・・。
私ら三人は、男達の道具にされたんだ。何回も何回も回され、男達は頂点に立つ。
涙すらも出ない。
もう殺してほしいと思った・・・。
ただ怖かった・・。
:07/05/06 20:43 :W43CA :☆☆☆
#307 [林奈]
何時間いたんだろうか。
私らにはものすごい長く感じた。
ノブヒロにも届かない。
ほんとに諦めた。
男達が疲れ果て、私らは抜け殻状態。
その時だった。
:07/05/06 20:45 :W43CA :☆☆☆
#308 [林奈]
倉庫の出入り口のドアで音がした。
夜中に響き渡る音。
一人の男がドアを開けた時、目を疑った。
ノブヒロがいたんだ。
:07/05/06 20:49 :W43CA :☆☆☆
#309 [林奈]
“え?”
そう思った時、ノブヒロの後ろからたくさん人が入ってきた。
数えたら10人はいる。
声が出なかった。
:07/05/06 20:51 :W43CA :☆☆☆
#310 [林奈]
「お前ら何してんだよ!その子らに何をした?」
「は?誰だてめぇ」
「その子らのツレだわ」
ノブヒロは私らを見るなり駆け寄ってきてくれた。
:07/05/06 20:52 :W43CA :☆☆☆
#311 [林奈]
「大丈夫か?」
「なんで来てくれたの?」
「そりゃあ電話繋がっても林奈訳分からんこと言うし、けどただ事じゃないのが分かって、鹿沼倉庫だけが聞こえたらいきなり切れるし。ツレたくさん呼んで助けに来た」
私は涙が出た。
一気に涙が出てしまったんだ。
:07/05/06 20:56 :W43CA :☆☆☆
#312 [林奈]
ノブヒロのツレ達はジュン達をボコボコにした。
一部始終を見て、私は震えが止まらなかった。
ノブヒロ達に体を支えられて、車に乗り、向かったのはノブヒロの家だった。
:07/05/06 20:59 :W43CA :☆☆☆
#313 [林奈]
玄関で待っててくれたのはノブヒロの奥さんだった。
「大丈夫?とりあえず上がって」
心配そうに私らを上げてくれた。
「何があったんだ?」
ノブヒロの質問に私は全部答えた。
:07/05/06 21:02 :W43CA :☆☆☆
#314 [林奈]
ノブヒロは私らに怒った。
「何をしてんだよ!そんな事になる前に何で俺や警察に相談しんかったんだ?」
「できるわけないじゃん。私今家出してるしノブヒロは奥さんいるんだよ?自分で何とかするしかないやん」
「嫁には前からお前の話をしてた。俺が昔援交してた事も全部話して許してもらった。お前は妹みたいなヤツだからって話したばっかだ。そんな矢先にこんな事があるなんて」
:07/05/06 21:09 :W43CA :☆☆☆
#315 [林奈]
ノブヒロは泣いた。そしてノブヒロの奥さんが言った。
「この人ね、林奈ちゃんには幸せになってほしいって思ってたの。確かに昔の事は腹が立ったけど、今この人を信じようと思ったの。でもあなた達の命だけでも助かってよかった」
奥さんが私らを一人一人抱きしめてきたんだ。
:07/05/06 21:14 :W43CA :☆☆☆
#316 [林奈]
私から電話があった時、様子がおかしいと思い、奥さんも聞いてたそうだ。奥さんが助けに行くよう言ってくれて、ノブヒロはツレをかき集めてくれたそうだ。そしてわかった事は、ノブヒロが元ヤンだという事。
ノブヒロのツレ達はすぐに集まってくれたみたい。
:07/05/06 21:20 :W43CA :☆☆☆
#317 [林奈]
私は本当に感謝した。この人たちがいなかったらと思うと、涙が止まらなかったんだ・・・。
その日はノブヒロの家に泊まり、次の日奥さんのすすめで病院に行った。
:07/05/06 21:22 :W43CA :☆☆☆
#318 [林奈]
三人とも異常はなく、けど一週間後に検査結果を聞きに行くことになった。
ノブヒロの奥さんは、“アヤ”さんと言う。アヤさんとノブヒロは私らが落ち着くまで家にいていいと言ってくれた。
:07/05/06 21:25 :W43CA :☆☆☆
#319 [林奈]
次第にアヤさんとノブヒロの優しさに、心が安らいでいったんだ・・・。
それはトモミもヒロコも一緒だった。
援交をしてる女だから、レイプされたくらい何とも思わないだろう。
普通思うと思う。
けど違うんだ・・。
:07/05/06 21:28 :W43CA :☆☆☆
#320 [林奈]
同意のない関係はやっぱり怖い・・・。
自分の過ちで、トモミとヒロコまでも傷付けて、ノブヒロ達までにも迷惑をかけた。
ほんとに最低なヤツだ・・・。
:07/05/06 21:31 :W43CA :☆☆☆
#321 [林奈]
検査結果を聞きにいき、問題はやっぱりなかった。
でも安心はできない。
またジュンに何かされるんじゃないか。それだけだった。
:07/05/06 21:33 :W43CA :☆☆☆
#322 [林奈]
だいぶ落ち着いた頃、ノブヒロに連れられて、私らを助けてくれた人達にお礼を言いに回った。
みんないい人達で、無事でいる私らに笑顔を見せてくれたんだ。
そして私ら三人は新しいアパートへと移った。
ジュンの逆襲に怯えながら・・・。
:07/05/06 21:36 :W43CA :☆☆☆
#323 [林奈]
トモミとヒロコはあんな目に遭わせた私を責めたりしなかった。
それが逆に辛くて。
二人は何事もなかったかのように笑ってる。それは私に対しても変わらなかったんだ・・・。
:07/05/07 09:49 :W43CA :☆☆☆
#324 [林奈]
あの事がきっかけで、二人は援交をきっぱり辞めた。
それぞれ、新しいまともな仕事に就こうとしてた。
それは私も同じだった・・。
:07/05/07 09:51 :W43CA :☆☆☆
#325 [林奈]
ヒロコはファミレスのバイト。
トモミは服屋のバイト。
私はドラッグストアのバイト。
私ら三人は戸惑いながらも新しい仕事に馴染み始めてた。
:07/05/07 09:54 :W43CA :☆☆☆
#326 [林奈]
ジュンから何の連絡もなく、また平凡な生活が戻ってた。
あの事からもう1ヶ月経とうとしてた。
そしてノブヒロとアヤさんの家にも遊びに行けるようになった。
二人は私ら三人を妹のように可愛がってくれてた。
:07/05/07 10:02 :W43CA :☆☆☆
#327 [林奈]
トモミもヒロコも変わりなく生活し、気付いたらもう私も、18になった。
その間に実家に帰ることは一度もなかった。心配にもならない。
“あんな家は家なんかじゃない”
私はずっと思って過ごしてた。
:07/05/07 10:06 :W43CA :☆☆☆
#328 [林奈]
そんな日々の中、久しぶりに父から電話があった。
初めの言葉は、「元気にしてるか?」ではなく、冷たい言い方。
「話したい事があるから近々家に来なさい」
一方的に電話を切られた。
:07/05/08 07:52 :W43CA :☆☆☆
#329 [林奈]
“今更なに?”
父の素っ気ない言い方に腹が立った。
次の日仕方なく何年振りに実家に戻ってみた。
相変わらず兄はまだ引きこもり。
変わらぬ家の中に、急に安心感を覚えたんだ。
:07/05/09 10:34 :W43CA :☆☆☆
#330 [林奈]
父に会い、私の顔を見て、突然話し出した。
「ひぃばあちゃんが体調悪い。もう98にもなるし医者は時間の問題って言うんだけど、お父さんは仕事でなかなか看病できないからお前に帰ってきてほしい」
初めて私に頭を下げた父。
:07/05/09 10:37 :W43CA :☆☆☆
#331 [のり]
毎日読んでるよ!がんばってぇぇ!
:07/05/09 10:42 :N702iD :☆☆☆
#332 [林奈]
のりさんありがとね!がんばるね!
:07/05/09 13:49 :W43CA :☆☆☆
#333 [林奈]
私は迷った。
今更って思った。祖々母にも可愛がられた記憶はない。
“あんなばぁさんどうなってもいい”
そう思うのに・・。迷う自分がいた。
:07/05/09 13:56 :W43CA :☆☆☆
#334 [林奈]
私はノブヒロに相談した。
ノブヒロの家に行き、アヤさんにも聞いてもらった。
するとノブヒロは私に言う。
「もう帰ったほうがいいんじゃないか?いい機会だし。お父さん、ほんとは淋しいんだと思うぞ」
「淋しいわけないやん。久しぶりに電話してきても、元気か?の一言もないんだよ?」
「お前バカだな。久しぶりだから言えなかったんだよ。お父さんも迷ったんじゃないかな。帰ってやれよ」
:07/05/09 14:01 :W43CA :☆☆☆
#335 [林奈]
私はノブヒロの説得で家に帰ることにしたんだ。
トモミとヒロコは寂しそうにしてくれたけど、ずっと実家にいるつもりはなかった。
実家に戻った時、父は少し笑顔だった。
:07/05/09 14:05 :W43CA :☆☆☆
#336 [林奈]
何年か前まではありえない表情。
しかもよく見たら会わないうちに、痩せて老けた感じがしたんだ。
何かふと、申し訳なく思えた・・。
:07/05/09 14:13 :W43CA :☆☆☆
#337 [あやめ]
頑張れ
:07/05/09 22:05 :SH702iS :☆☆☆
#338 [林奈]
父が言った初めての「ごめん」は何だか切ないけど暖かい気がした。
私は家事全般をすることになった。
昔の自分ではありえない心の変化。
それは“この家にいてもいいかも”っていつしか思うようになってた。
:07/05/09 23:26 :W43CA :☆☆☆
#339 [林奈]
家にいる間、兄と話す時間も増えてく。たわいもないテレビの話やご飯のメニュー。
兄はいつしか笑うようにもなった。
それは些細な事で、私が小さなミスをしたりするってだけの理由。
:07/05/09 23:29 :W43CA :☆☆☆
#340 [林奈]
実家に戻り1ヶ月経った頃、祖々母の様子がおかしくなった。ご飯なんてあんまり口にしなかったのに、昔好きだったお肉が食べたいと言い出したんだ。
:07/05/09 23:31 :W43CA :☆☆☆
#341 [林奈]
テレビで見たことがある。
亡くなる前、人はそれを分かってるから好きなモノを最後に口にしたいと言うらしい。
“もしかして”
私はそう思った。しきりにお肉が食べたいと言う祖々母に、私は脂気の少ないお肉を食べさせた。
:07/05/09 23:33 :W43CA :☆☆☆
#342 [林奈]
あやめさん、いつも応援ありがとうメ
また少し書いてくね
:07/05/09 23:37 :W43CA :☆☆☆
#343 [林奈]
「おいしい、おいしい」
と言いながら目に涙を溜める祖々母。
私に対して嫌がらせや嫌みを言ってた時の面影はなく、ほんとにほんとに優しい表情をしてた。
食べて終わり、片付けに行こうとした私の手を、祖々母が握ってきた。
:07/05/09 23:40 :W43CA :☆☆☆
#344 [林奈]
「どうしたの?」
驚く私に祖々母は言った。
「あんたには色々苦労させたね。今さらだけどね、あんたの事は可愛くて仕方なかったんだ。こんなカサカサな手にさせちゃってごめんね」
初めて聞いた優しい言葉。
大粒の涙を流しながら言った祖々母。
胸が締め付けられてた。
:07/05/09 23:44 :W43CA :☆☆☆
#345 [繭]
今までの読みました…
ほんまに感動する…
ほんまの小説にしたらいいのに…
小さい事で悩んでる自分がバカみたいで恥ずかしくなりました…
これからも書き続けて下さい★
最後まで読みます☆
:07/05/10 01:06 :P902i :☆☆☆
#346 [林奈]
》345さん、名前の漢字が難しくて読めないのごめんなさいmmありがとう!本にするつもりはないです。ただこんな生き方もあるって伝えたいだけで・・。最後まで頑張るね☆
:07/05/10 01:10 :W43CA :☆☆☆
#347 [林奈]
後片付けをしていた時、祖々母の言葉が蘇る。
気付いたら私も泣いてた・・。
頑固で融通がきかない人が、泣いてた。
私も大粒の涙が溢れて止まらなかった。
:07/05/10 01:13 :W43CA :☆☆☆
#348 [林奈]
祖々母はその二日後、息を引き取った。眠るように、優しい顔をして・・・。
葬儀の日、私は後悔してた。
“何でもっと大事にしてあげられなかったんだろう”
厳しさの裏にあった優しさに、私は気付きもしなかった。
:07/05/10 01:17 :W43CA :☆☆☆
#349 [林奈]
幼すぎた自分。
私がもっと大人ならよかった・・・。
祖々母の部屋の机から見つかった写真と手紙・・・。
そこには赤ちゃんの頃の私が祖々母に抱かれてる姿が写ってたんだ・・。
:07/05/10 01:19 :W43CA :☆☆☆
#350 [林奈]
写真と一緒にあった手紙を読んだ。
「林奈、今あんたは幸せかい?ちゃんと笑ってるかい?手紙を読んだってことはもうわしはいないんだろうけど、あんたは大事な大事な子やからな。血のつながりなど関係ない。お父さんにちゃんと甘えなさい」
日付が私が出ていった時だった。
:07/05/10 01:24 :W43CA :☆☆☆
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194