〇ニ番目の四季〇
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#126 [ゆり]
バタンッ
高橋さんは降りて、
助手席のドアを開けた。
そしてあの日と同じ笑顔で言った。
「着きましたよお姫様♪」
…離れられなかったのはこれかもしれない
:06/05/30 06:04 :V703SH :vYkyxf/c
#127 [ゆり]
毎日が目まぐるしく変わっていく中で
高橋さんと会う夜だけは
時間が止まっているみたいだった。
変わらない時間が心地良かった。
そんな日々がずっと
変わらない様に願っていたのに
変わらないんじゃなくて
変えられないんだと気付いてしまった。
もう時間は動き出してるんだ。
:06/05/30 06:06 :V703SH :vYkyxf/c
#128 [ゆり]
「…ありがとう…王子様♪」
あたしは手を重ねて下りた。
最後くらいお姫様と王子様の夢が見たい。
丘の上に着くと
ポツポツと雨が降ってきた。
「あー雨だ…」
あたしは空を見上げて言った。
:06/05/30 06:10 :V703SH :vYkyxf/c
#129 [ゆり]
高橋さんは何も言わなかった。
いつもそうだったよね
何も言わないで抱きしめてくれる。
どんな言葉を言われるより安心できた。
こんな偽りだらけの二人でも
鼓動だけは本物だから。
苦しいくらい高橋さんの抱きしめる腕に力が入る。
:06/05/30 06:12 :V703SH :vYkyxf/c
#130 [ゆり]
「高橋さん…あたし…」
「…うん…」
今日は唇塞がないの?
自分に都合悪くなると
すぐにキスして黙らせるくせに。
「…塞がないと言っちゃうよ…?」
あたしはこの日初めて高橋さんの前で泣いた。
:06/05/30 06:14 :V703SH :vYkyxf/c
#131 [ゆり]
高橋さんの肩が震えてるのがわかった。
完璧な高橋さんが
初めて見せた弱さだった。
あたしが言おうとしてる事気付いてるんだ…
あたしが最後を口にするのが恐くて、
あたしの言葉を遮ったの?
あたしが話すヒマないくらい
ずっとしゃべり続けていたの?
初めて来た場所に、
連れてきてくれたの?
:06/05/30 06:16 :V703SH :vYkyxf/c
#132 [ゆり]
「高橋さん…今日は天気悪いから…キラキラ見えないじゃん…」
胸に顔を押し付けて
声にならないような声で言った。
切なくてたまんなかった。
「うん…」
また強く抱きしめられる。
高橋さんだけ雨に濡れていて、
あたしは守られてるみたいだった。
:06/05/30 06:18 :V703SH :vYkyxf/c
#133 [ゆり]
だんだん雨脚が強くなる。
「車…戻ろ?」
あたしの声で高橋さんは身体を離して
コートを脱いであたしの頭にかぶせた。
「え?」
「いいから」
足早に車まで行き、
後部座席に乗り込んだ。
:06/05/30 06:19 :V703SH :vYkyxf/c
#134 [ゆり]
高橋さんは後部座席から体を乗り出し
エンジンをかけて暖房を入れた。
雨は本降りだ。
ザァーザァー
窓ガラスに雨が当たる。
「高橋さん…大丈夫?」
「うん…てか、俺いつもゆりちゃんにそーやって聞いてきたよね、
大丈夫な訳なかったよな」
雨なのか涙なのかわからない雫が落ちる。
:06/05/30 07:19 :V703SH :vYkyxf/c
#135 [ゆり]
「…大丈夫だったよ、
…あたし幸せだったから」
ただの強がりじゃなかった
幸せを守る為に強がってたんだよ。
「おいで」
あの日と同じ
優しい声と切ない表情。
あたしは素直に首に腕を回して抱き着いた。
二人共最後だってわかってた。
:06/05/30 07:21 :V703SH :vYkyxf/c
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