〇ニ番目の四季〇
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#136 [ゆり]
「あー…ゆりちゃんだ」
そう言って軽く笑った。
「なにそれ?笑」
「香水の香り、
抱きしめると微かにするんだよね」
普段は普通に香水をつけてるけど、
高橋さんに会う事になったら付けた場所洗ったりした。
助手席に香りが残るといけないと思ったから。
:06/05/30 07:22 :V703SH :vYkyxf/c
#137 [ゆり]
「いっぱい気遣わせたね、ごめんね」
気付いてくれてると思わなかった。
涙が溢れた。
今日はもう堪えずに泣いた。
高橋さんはただあたしを強く抱きしめて、
それ以上は何もしなかった。
:06/05/30 07:24 :V703SH :vYkyxf/c
#138 [ゆり]
正直、
別れを告げたら無理矢理抱かれると思ってた。
好き勝手に…
それで嫌いになれたらいいって思ってたの。
でもあたしは高橋さんを何も分かってなかったね。
辛いのはきっと
あたしだけじゃなかった。
高橋さんがくれた愛は本物だった。
あたしは一瞬でも、
確かに満たされたんだから。
:06/05/30 07:31 :V703SH :vYkyxf/c
#139 [ゆり]
何分くらい経っただろう、
二人黙ったままずっと抱きしめ合ってて、
雨音だけを聞いてた。
高橋さんの濡れた髪が
愛しくてたまらなかった。
バッテリーが上がる前に
車のエンジンを切った。
いつもエンジンが切られると
まだ一緒にいられるんだって
嬉しくなったっけ。
でも今日は苦しいよ。
:06/05/30 07:34 :V703SH :vYkyxf/c
#140 [ゆり]
あたし達は後部座席に手を繋いで座った。
さっきよりよく聞こえる雨音に合わせて、
あたしは口を開いた。
「もう…今日で最後にするね」
しばらく沈黙が続いた。
あたしは言葉を続けた。
:06/05/30 07:35 :V703SH :vYkyxf/c
#141 [ゆり]
「てか高橋さんさ、ひどいよね!笑
いっつも待たせてさ〜自分は女二人もいるなんて!
ひど過ぎるッ笑」
傷付けて遠ざけようと思ったんだ。
不器用だから、
上手にさよならが言えない。
「彼女さん大事にしなきゃ〜いつか痛い目みるよ!
あたしも都合良い女疲れちゃったし!もう高橋さんなんて懲り懲りッ笑」
:06/05/30 07:39 :V703SH :vYkyxf/c
#142 [ゆり]
繋いだ手に力が入る。
高橋さんからの力だ。
「…ほんと、ゆりちゃんは優しいな」
軽く笑った。
頭をよしよしされた。
この大きな掌も、
出会った時から大好きだった。
あたしは今日で消えるから
もうそんな悲しそうに笑わないで。
:06/05/30 07:43 :V703SH :vYkyxf/c
#143 [ゆり]
「高橋さんの事
本当に本当に大好きでした。
…いっぱい、ありがとう」
笑いたいのに笑えなかった。
涙声で精一杯伝えた。
「うん…」
頭に置かれた掌が
髪をなぞって顔に触れる。
:06/05/30 07:44 :V703SH :vYkyxf/c
#144 [ゆり]
「ほんと小っちゃい顔だな(笑)」
「それ褒めてる?」
「褒めてるよ」
そう言って唇が触れた。
息が苦しいくらい。
想いをぶつけ合う様に重ねた。
:06/05/30 07:46 :V703SH :vYkyxf/c
#145 [ゆり]
今まで高橋さんのあたしへの気持ちを疑わなかったのは、
キスに愛があったからだ。
好きだって言葉より信じられる、
不思議な力があったんだ。
:06/05/30 08:17 :V703SH :vYkyxf/c
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