〇ニ番目の四季〇
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#285 [ゆり]
「離して」

あたしは冷たい声でそう言った。

それでも隼人は手首を強く握り
離さなかった。


あたしはもう
言葉で言えない感情に支配されてて

涙を堪える事だけに必死だった。


「何怒ってんの?」

息が整わないまま隼人が言う。

「…もういいから、離して」
 

⏰:06/06/03 10:50 📱:V703SH 🆔:ip8fjOhw


#286 [ゆり]
不快。

この無神経な言葉も

強く握られる手の感触も

1年の女の子達も

メアド交換してた先輩も

今向けられてる視線も

街のネオンも
車のクラクションの音も
排気ガスの匂いも

全部が不快。
 

⏰:06/06/03 10:55 📱:V703SH 🆔:ip8fjOhw


#287 [ゆり]
崩れちゃったね

二人に1番必要だった

二人を繋いでた

信頼が。


「話し聞けって…」

そう言って隼人はあたしを裏道に連れて行った。

不快な音や匂いが消えた。

だけど手の感触だけが残ってる。

「あたしは話す事なんてないよ」
 

⏰:06/06/03 10:57 📱:V703SH 🆔:ip8fjOhw


#288 [ゆり]
その言葉に
最初隼人は逆切れした。

何もしてない、だとか
楽しめって言ったのはお前だろ、とか。

あたしは黙って聞いた。
聞くだけ情けなくなった。


何も言わないあたしに
今度は謝りだした。

調子乗りすぎた、だとか
皆を盛り上げたかったんだ、とか。
 

⏰:06/06/03 10:59 📱:V703SH 🆔:ip8fjOhw


#289 [ゆり]
あたしは黙って聞いてたけど、

もう馬鹿馬鹿しくって、


薬指の証を外した。

生まれて初めてのペアリングだった。


別れの言葉と一緒に
隼人に投げた。
 

⏰:06/06/03 11:01 📱:V703SH 🆔:ip8fjOhw


#290 [ゆり]
悲しい?
虚しい?
ううん、何より悔しい。

あたしにだって女としてのプライドがあるから。


隼人はコンクリートに落ちた指輪を無視して
背を向けたあたしの手を取った。


離して、と言う言葉も無視して
無理矢理キスをした。
 

⏰:06/06/03 11:13 📱:V703SH 🆔:ip8fjOhw


#291 [ゆり]
唇を重ねて
全部なかった事にできたなら
どれだけ楽だろう。


あたしは涙が堪えられなかった。


もうどうしようもない

あたしだってなんとか出来るなら

なんとかしたい。

でももう戻れないよ。
 

⏰:06/06/03 11:16 📱:V703SH 🆔:ip8fjOhw


#292 [ゆり]
子供みたいに泣くあたしを
隼人が無理矢理引っ張って
連れて入ったのはホテルだった。

適当に部屋番号を押して
エレベーターに乗った。


手は強く握られたままで、
目は合わさない。

隼人がこんなに強引になったのは初めてだ。

あたしはもう抵抗する気もなくなって、
黙って部屋に入った。
 

⏰:06/06/03 11:19 📱:V703SH 🆔:ip8fjOhw


#293 [ゆり]
部屋に入ると
隼人は重い溜め息を吐いて
ベットに腰を下ろした。

「本当…ごめん」

その謝罪の言葉が
現実を連れて来て

あたしは唇を噛んだ。

ただ涙を堪えた。
 

⏰:06/06/03 11:21 📱:V703SH 🆔:ip8fjOhw


#294 [ゆり]
こんな事くらいで泣きたくない

うるさく言いたくない

傷付いたなんて思いたくない。


これ以上涙を流さない事が
あたしのくだらないプライドを守る
精一杯だった。


さっきまでとは別人の様に
頭を抱えてうなだれる隼人がいた。

隼人は自分の隣を手で叩き、
来いと催促した。
 

⏰:06/06/03 11:22 📱:V703SH 🆔:ip8fjOhw


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