〇ニ番目の四季〇
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#291 [ゆり]
唇を重ねて
全部なかった事にできたなら
どれだけ楽だろう。
あたしは涙が堪えられなかった。
もうどうしようもない
あたしだってなんとか出来るなら
なんとかしたい。
でももう戻れないよ。
:06/06/03 11:16 :V703SH :ip8fjOhw
#292 [ゆり]
子供みたいに泣くあたしを
隼人が無理矢理引っ張って
連れて入ったのはホテルだった。
適当に部屋番号を押して
エレベーターに乗った。
手は強く握られたままで、
目は合わさない。
隼人がこんなに強引になったのは初めてだ。
あたしはもう抵抗する気もなくなって、
黙って部屋に入った。
:06/06/03 11:19 :V703SH :ip8fjOhw
#293 [ゆり]
部屋に入ると
隼人は重い溜め息を吐いて
ベットに腰を下ろした。
「本当…ごめん」
その謝罪の言葉が
現実を連れて来て
あたしは唇を噛んだ。
ただ涙を堪えた。
:06/06/03 11:21 :V703SH :ip8fjOhw
#294 [ゆり]
こんな事くらいで泣きたくない
うるさく言いたくない
傷付いたなんて思いたくない。
これ以上涙を流さない事が
あたしのくだらないプライドを守る
精一杯だった。
さっきまでとは別人の様に
頭を抱えてうなだれる隼人がいた。
隼人は自分の隣を手で叩き、
来いと催促した。
:06/06/03 11:22 :V703SH :ip8fjOhw
#295 [ゆり]
あたしは黙って彼の隣に座った。
どうせ強引に抱かれるんだろう
と思いながら。
すると手を握られた。
強かったけど、
とても優しく感じた。
「許してもらうつもりはないけど…
また信じさせるから」
下を向いたまま、
隼人はそう言った。
:06/06/03 11:26 :V703SH :ip8fjOhw
#296 [ゆり]
また信じさせる?
たった3時間で
一年間積み上げたものを
簡単に壊したくせに。
チャラ男だった隼人を
あたしは信じてなかった。
どうせ浮気するんだろうって諦めてた。
やっぱり裏切られた時に
傷付くのが恐かったから。
だけど隼人は本当に変わって、
毎日あたしを想ってくれてた。
だからいつの間にか信じていたんだ。
:06/06/03 11:28 :V703SH :ip8fjOhw
#297 [ゆり]
別に内緒で会った訳でも
キスした訳でも
体の関係があった訳でもない。
こんなの世間じゃ
浮気なんて言わないのかもしれない。
こんな些細な事で…って
周りだって思うだろうし
自分だって情けないよ。
だけどそれだけ信じてた。
信じてたから。
:06/06/03 11:30 :V703SH :ip8fjOhw
#298 [ゆり]
あたしは隼人にキスをして
舌を絡ませながら上にまたがった。
「…早くやれば?
どうせ最後にもう一回やってから別れたいんでしょ?」
あたしは冷めた声で言った。
こんな最後に
感動的な馴れ合いなんて必要ない。
:06/06/03 11:33 :V703SH :ip8fjOhw
#299 [ゆり]
男はそんなもん…
あたしはそれだけの女。
そうやって割り切っていた方が楽。
心まで求めるから、
こんな風に傷付く。
あたしはもうこんな生き方しか出来ないし、
きっとこんな愛し方しか出来ないんだ。
ごめんね。
いつからこんなに弱くなったんだろう。
:06/06/03 11:35 :V703SH :ip8fjOhw
#300 [ゆり]
「…待って…話し」
隼人の声が少し震えた。
胸が痛んだ。
だけどもう無理じゃん。
戻れないじゃん。
あたしは苛立ちとか
切なさとか
ぐちゃぐちゃな感情で
隼人にキスをした。
隼人は何かをぶつけるように
あたしを抱いた。
:06/06/03 11:37 :V703SH :ip8fjOhw
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