〇ニ番目の四季〇
最新 最初 全
#295 [ゆり]
あたしは黙って彼の隣に座った。
どうせ強引に抱かれるんだろう
と思いながら。
すると手を握られた。
強かったけど、
とても優しく感じた。
「許してもらうつもりはないけど…
また信じさせるから」
下を向いたまま、
隼人はそう言った。
:06/06/03 11:26 :V703SH :ip8fjOhw
#296 [ゆり]
また信じさせる?
たった3時間で
一年間積み上げたものを
簡単に壊したくせに。
チャラ男だった隼人を
あたしは信じてなかった。
どうせ浮気するんだろうって諦めてた。
やっぱり裏切られた時に
傷付くのが恐かったから。
だけど隼人は本当に変わって、
毎日あたしを想ってくれてた。
だからいつの間にか信じていたんだ。
:06/06/03 11:28 :V703SH :ip8fjOhw
#297 [ゆり]
別に内緒で会った訳でも
キスした訳でも
体の関係があった訳でもない。
こんなの世間じゃ
浮気なんて言わないのかもしれない。
こんな些細な事で…って
周りだって思うだろうし
自分だって情けないよ。
だけどそれだけ信じてた。
信じてたから。
:06/06/03 11:30 :V703SH :ip8fjOhw
#298 [ゆり]
あたしは隼人にキスをして
舌を絡ませながら上にまたがった。
「…早くやれば?
どうせ最後にもう一回やってから別れたいんでしょ?」
あたしは冷めた声で言った。
こんな最後に
感動的な馴れ合いなんて必要ない。
:06/06/03 11:33 :V703SH :ip8fjOhw
#299 [ゆり]
男はそんなもん…
あたしはそれだけの女。
そうやって割り切っていた方が楽。
心まで求めるから、
こんな風に傷付く。
あたしはもうこんな生き方しか出来ないし、
きっとこんな愛し方しか出来ないんだ。
ごめんね。
いつからこんなに弱くなったんだろう。
:06/06/03 11:35 :V703SH :ip8fjOhw
#300 [ゆり]
「…待って…話し」
隼人の声が少し震えた。
胸が痛んだ。
だけどもう無理じゃん。
戻れないじゃん。
あたしは苛立ちとか
切なさとか
ぐちゃぐちゃな感情で
隼人にキスをした。
隼人は何かをぶつけるように
あたしを抱いた。
:06/06/03 11:37 :V703SH :ip8fjOhw
#301 [ゆり]
あたしの大好きな手で
どうして他の子に触れたの?
あたしの大好きな声で
どうして他の人の名前を呼ぶの?
あんな隼人の姿
見たくなかった。
「…じゃああたし帰るね」
「ゆり」
服を着てベットを下りようとするあたしを
呼び止める隼人の声。
何か伝えなきゃいけない、
そんな気持ちが伝わってきた。
:06/06/03 11:40 :V703SH :ip8fjOhw
#302 [ゆり]
「俺別れたくない」
「…」
あたしは立ち上がって
バックを手に取った。
もう涙が溢れていた。
隼人に背を向けて言った。
「…好きになってくれてありがと」
ドアノブに手をかけた。
「待って…俺はまだ愛してる」
:06/06/03 11:43 :V703SH :ip8fjOhw
#303 [ゆり]
やっぱり隼人の声は少し震えていた。
愛してる?
そうだね、きっと
あたしから隼人への気持ち。
こんな理解出来ないくらいの想いを
愛って言うんだろうね。
「あたしも…」
少し笑って言った。
これだけしか言えなくて、
あたしはホテルを出た。
:06/06/03 11:44 :V703SH :ip8fjOhw
#304 [ゆり]
許せなくてごめんね。
たいした女じゃないのに
プライドばっかり高くてごめんね。
上手に愛せなくて、
ごめんね。
ホテルから出た道端で
思いっきり泣いた。
息が出来ないくらい、
声を上げて泣いた。
あたしの指に、
もう二人の証は
光っていなかったから。
:06/06/03 15:33 :V703SH :ip8fjOhw
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194