〇ニ番目の四季〇
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#316 [ゆり]
拾って拾ってって
鳴いてばっかいるくせに
いざ抱き上げようとすると
噛み付く
って。
妙に納得したんだ。
甘えるのが
苦手だったから。
「あたしあの頃から
なーんも変わってないね」
あたしはそう言って
リビングを出た。
:06/06/03 20:22 :V703SH :ip8fjOhw
#317 [ゆり]
髪にワックスをつけて
寝癖アレンジして
軽くファンデつけて
でかサングラスつけて
コンビニに向かった。
雨は本降り。
なんか
空が代わりに泣いてくれてるみたいだった。
ご飯買って
家に帰った。
使い慣れた鍵を出して
ドアを開ける。
いつからだろう
「ただいま」って
言わなくなったのは。
:06/06/03 20:30 :V703SH :ip8fjOhw
#318 [ゆり]
あたしはこんな性格だから
不幸自慢みたいなのが嫌いで
自分はこんなに辛いんだよって
言うのが嫌で
平気な顔をする事が
強さだと思ってた。
だけど隼人を見てて思った。
自分の弱さを認めて
全部さらけ出せる
それ以上の強さって
きっとない。
:06/06/03 20:36 :V703SH :ip8fjOhw
#319 [ゆり]
それからのあたしは
隼人にだけ
弱音が吐ける様になった。
過去にあった辛い事も
本当は家に一人で
寂しい事も。
そしたら隼人は
毎日あたしが帰る時間に
「おかえり」のメールをくれた。
毎日。
それだけであたし
めちゃくちゃ救われたんだ。
:06/06/03 20:41 :V703SH :ip8fjOhw
#320 [ゆり]
春も夏も秋も冬も
一緒に過ごした。
隼人との時間は大き過ぎて
埋め方がわかんない。
こんな雨の日も
二人で一つの傘に入って
結局隼人はいっぱい濡れちゃってたよね。
「だから一人づつ傘さそーって言ったじゃーん」
って言うと
「ラブラブっぽいからいーじゃん!」
って隼人は笑った。
本当笑えるくらい
毎日優しかったね。
:06/06/03 20:48 :V703SH :ip8fjOhw
#321 [ゆり]
テレビを付ける気にもならなくて
無音の部屋で
ぼーっとしながら
おにぎりを食べた。
無意識に携帯を気にする自分がいる。
カチカチ…
画面に
隼人の名前を出して
少し眺めて
携帯を閉じた。
:06/06/03 20:53 :V703SH :ip8fjOhw
#322 [ゆり]
ピリリリリ♪
あたしは携帯に飛び付く。
受信メールは迷惑メール。
「はぁ…」
溜め息。
それからもずっと携帯をいじってた。
自分から離したくせに、
来てくれるのを待ってる。
今度こそ出よう。
そう思ってると
夜遅く携帯が鳴った。
:06/06/03 20:55 :V703SH :ip8fjOhw
#323 [ゆり]
着信
隼人
緊張して電話に出る。
「もしもし」
「あ、もしもし」
「何か用ですか?」
「あ、やー何してた?」
「別になんにも…」
「…そっか、えっと明日会えない?」
心臓がドキッとした。
:06/06/03 21:48 :V703SH :ip8fjOhw
#324 [ゆり]
「いいよ、何時にどこ行けばいい?」
平常心を装って
答える。
「じゃあ…昼にいつものとこで。大丈夫?」
「分かった、じゃあね」
ずっと待ってたくせに
素っ気なく終わらせてしまう。
素直じゃないというか可愛くない。
でもこれだけは素直に認めるよ、
あたしはまだ
隼人が好き。
:06/06/03 21:52 :V703SH :ip8fjOhw
#325 [ゆり]
次の日
曇り空の中
いつもの駅に降りた。
春なのに肌寒くて、
あたしは手に持ったバックを肩にかけ直し
ジャケットの前で腕を組んだ。
ホームの階段を上ると
見慣れた後ろ姿があった。
:06/06/03 21:54 :V703SH :ip8fjOhw
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