〇ニ番目の四季〇
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#410 [ゆり]
家に着き
鍵を開けドアを開ける。
玄関の電気をつけて
「ただいま」
って言ってみた。
いつも通りの静まり返った家。
今日はやけに
寂しく感じた。
:06/06/08 21:42 :V703SH :PKNwmvDo
#411 [ゆり]
リビングに行き
にゃんこの皿にエサを入れる。
「遅くなってごめんね…
寂しかった?」
お皿に顔を沈める頭を撫でながら聞いた。
意味わかんないけど
何故か涙が出た。
寂しいって言葉に出すと
ダメだなやっぱり。
あたしは自分の情けなさに少し笑った。
:06/06/08 21:45 :V703SH :PKNwmvDo
#412 [ゆり]
部屋に入って
隼人に「家着いたよ」ってメールする。
おかえりって返事をくれる。
そんな毎日の日課が
あたしの涙を止めてくれた。
:06/06/08 21:47 :V703SH :PKNwmvDo
#413 [ゆり]
次の日
携帯のアラームより早く目が覚める。
起こしてくれる人がいないから
自然に目が覚める体になったみたい。
「よッしゃ、起きよ」
顔を洗って
歯を磨いて
にゃんこにエサをあげて
夜に干した洗濯物をたたむ。
部屋に戻るとテレビを付けて
化粧をして髪をセットする。
毎日同じ繰り返し。
こんな当たり前の毎日の中に
隼人が現れたんだ。
:06/06/08 21:51 :V703SH :PKNwmvDo
#414 [ゆり]
あたしの存在を願ってくれる人がいる。
あたしの存在を求めてくれる場所がある。
それだけで
あたしは眠れず
自分の体に傷を刻んだ夜を
越える事ができたのかもしれない。
:06/06/08 21:53 :V703SH :PKNwmvDo
#415 [ゆり]
人は所詮孤独だし
ひとりだって思う事はきっと
仕方ない。
それでも誰かを求めて
求めてもらえた時
絶対にどこかが埋まる。
諦めなければ変わる。
綺麗事が嫌いなあたしが
自分で見つけた答え。
傷は酷く痛むけど
意外に浅いかもしれない。
:06/06/08 21:55 :V703SH :PKNwmvDo
#416 [ゆり]
「ゆり〜おはよ〜」
「う〜わ眠そうだね」
爽やかな気分が
隼人の寝ぼけた顔で笑いに変わる。
駅から学校までの道を二人で歩いていると
後ろから声がした。
「隼人〜!?」
ビクッとする。
振り返ると
忘れもしない
あの金髪ギャルが立っていた。
:06/06/08 21:57 :V703SH :PKNwmvDo
#417 [ゆり]
隼人と付き合う前
二人が一緒に歩いてるのを見た事がある。
あえて聞いてないけど
多分元カノ…かな。
今すぐこの場を去りたい。
でも動けない。
「まい…」
隼人は驚いた声で言った。
絶対に聞きたくなかった。
違う女の子の名前を呼ぶ声。
:06/06/08 22:01 :V703SH :PKNwmvDo
#418 [ゆり]
「まいだよ〜ッ♪めっちゃ久しやない!?
何してんのー!?」
ショートパンツにビーサンで
黒い肌に痛んだ髪を指でいじりながら近付いてくる。
あたしはとりあえず笑顔だったと思う。
「友達?」
隼人を見上げて聞く。
「あ…うん」
隼人は焦った様に答えた。
:06/06/08 22:04 :V703SH :PKNwmvDo
#419 [ゆり]
「あたし先行ってるね」
「え…ちょっと待って」
笑顔でそう言って
隼人の言葉を聞かずに
彼女に軽く頭を下げて
学校に向かって歩き出した。
背筋を伸ばして歩く事が
精一杯。
「もーやだ…」
青い空と白い雲が滲む。
涙を堪える。
隼人の過去が
まだあたしに纏わり付く。
振りほどけない。
:06/06/08 22:07 :V703SH :PKNwmvDo
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