ｰＡ&Ｒ-

｢りょうはさ
何かに迷ったり
人の意見に
惑わされないよね。
自分が決めたものは
ずっと貫くって感じ。
羨ましいな。
そういうの。｣

｢そっか？｣

｢うん。
あたしは駄目だ。
弱いから。
人の目を気にしちゃう。
人にこっちの方がいいよ
って言われたら
そっちにしちゃうし。
自分て何なんだろう
って時々思うよ。｣

｢ふ～ん。｣

｢りょうはさ
こいつ羨ましいな～
って思った人いる？｣

｢いるよ。｣

｢いるの？
りょうでも？｣

｢失礼な。
いるよ。
うちと同じ位
自由奔放ででも
自己中って感じじゃなくて。
絵がすっげー上手くて
馬鹿ばっかする奴。｣

｢へ～。
会ってみたいな。｣

｢いつかな。｣

｢うん。｣

｢じゃな。｣

｢ばいばい。｣

あの話の
羨ましいなって
思ってた奴は
もちろんあさ。

沙千は僕のこと
迷わない
人に惑わされない
って言ったけど
そんなの嘘。

僕はずっと
あさみたいになりたかった。
あさが羨ましかった。
あさみたいに
孤独を愛し
気高く生きたかった。

あさはずっと
左耳に１つだけ
ﾋﾟｱｽをしていた。
空けたのは
僕よりずっとずっと前。
沙千の穴の埋まった
耳を見たら
何故だか
あさのこと
思い出した。

あさの耳には
まだﾋﾟｱｽが
光っているのだろうか。

なんてことを
思いながら
ゆっくり家路に着いた。

次の日から
それは始まった。

ｲｼﾞﾒ。

ｼｶﾄ･わざとらしい悪口

手は出してこないが
ある意味
｢暴力｣より
｢暴力的｣だった。