人を嫌った犬の一生
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#72 [太郎]
俺は飛び起きて、急いで玄関へ向かった。
「もうダメかもね…」
お母さんは何かを悟ったように言った。
ゴンは地面に倒れていた。口からは嘔吐物、おしりからは血便、目からは涙のようなものが出ていた。足は完全に伸びきり、ピクリとも動かない。
だが息はしている。
「ゴンが死ぬ訳ない…」
そう言った俺も、どこかで覚悟していた。
:09/04/16 15:23
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#73 [太郎]
息はしているが少しも動かない。お母さんが言うには、急に倒れたらしい。
「ゴン!大丈夫よ!」
そう言って横腹をさすってあげた。ゴンの横腹には肋骨が浮き出ていた。
「小さくなったね…ゴン。」
お母さんの言葉に涙が溢れ出した。止まらなかった。
そのまま15分くらい経っただろうか。今日にゴンは鳴き声をあげた。
:09/04/16 15:29
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#74 [太郎]
すみません。訂正です。
「今日に」ではなく「急に」です。
:09/04/16 15:30
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#75 [太郎]
「うゔ〜うゔ〜ワン!」
鳴き声と言えたのだろうか。うめき声にも聞こえた。ゴンが声を発したのは、この一回きりだった。
30分が経った。ずっと倒れたまま動かないゴン。もう病院につれていくしかなかった。
以前に予防接種をしてもらった病院に電話し、今の状況を伝えると、「今すぐに連れてきてくださいっ!」と言われた。
このまま連れて行く訳にもいかない。何かに入れて連れて行かなければ。
俺は倉庫から大きめのクリアケースを持ってきた。
:09/04/16 15:37
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#76 [太郎]
もし急に立ち上がり、獣医さんに噛みつくといけないので口輪をする事にした。
以前、口輪をつけるのに失敗したので、今回つけれるかどうか心配だった。
俺がゴンの長い鼻に口輪をあてる。ゴンは何も抵抗しなかった。抵抗する力もなかった。それを見てさらに涙が出た。
次に倉庫から持ってきたクリアケースにゴンを移した。毛布でくるんで寒くないように工夫した。
この時生まれて初めてゴンを担いだ。こんなに重いとは知らなかった。
:09/04/16 15:43
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#77 [太郎]
そのまま車の後部座席に乗せ、病院へ急いだ。ゴンは動かない。
「このまま死ぬのか?ゴン…お願いだから死ぬな!」
そう話し掛け続けた。俺の涙は止まらなかった。
10分ほどで病院に着いた。獣医さんが駐車場で待ってくれていた。
「ではすぐに第一診察室に連れて行ってください!」
病院に入ると、診察を待つペットたちとその飼い主たちがいた。
皆こっちを見ていた。「あぁ…可哀想に…」どこからか声が聞こえた。その声に俺は再び涙が出た。
:09/04/16 15:51
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#78 [太郎]
ゴンの入ったクリアケースをお母さんと二人がかりで診察室まで運んだ。
ゴンは獣医さんたちの手によって、診察台に乗せられる。家族以外がゴンに触れるなんて初めての光景だった。
すぐに獣医さんはこう言った。
「瞳孔が開いています。脳はもう機能していません。危篤状態と言えます。」
それを聞いた俺は涙でグチャグチャだったろう。そこから色々な検査が始まった。
:09/04/16 15:57
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#79 [太郎]
注射で血液をぬかれても動かない、何をされても動かないゴン。もうそこには昔のゴンはいなかった。
エコーで心臓を見る。少ししか動いてない。血圧が異常に下がっていた。点滴を始める。
急に獣医さんが「こっちにきて、ゴンちゃんの足先を触ってみてください」と言った。
言われる通り触ると……冷たかった。
「血圧が非常に低い為、血液を足先にまで送る事がてきていないのです。大変危険な状態です。最悪の覚悟はしておいてください。」
:09/04/16 16:05
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#80 [太郎]
そう言うと獣医さんはまたエコーで体内を見始めた。
「この子は我慢強いんでしょうね。この子が今日倒れたのは、急にきつくなった為ではないと思います。今までは段々ときつくなっていくのを我慢してたのでしょう。そして今日、我慢の限界がきたのでしょうね。」
お母さんも泣いていた。この言葉はつらかった。そんなにつらかったゴンに気付いてあげれなかった俺は、飼い主失格だと感じた。
「では、ゴンちゃんは今日1日入院させます。原因はまだ分かりませんが、やれる事は精一杯やりましょう。ただ、入院したからといって、治る保証はありません。先程も言いましたが、覚悟はしておいてください。」
:09/04/16 16:17
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#81 [太郎]
獣医さんは入院室に連れて行こうとゴンを抱きかかえた。ゴンの手足、首はぐったりしていた。
「よろしくお願いします…。」
お母さんはそう言った。俺は言葉にならなかった。
ゴンを入れて持ってきたクリアケースを手にとり、診察室を出る。
待合室には、元気な犬や猫がいた。それを見ると悲しくなった。
俺とお母さんは家に帰り、ゴンのいた玄関を掃除した。掃除の途中、食べかけの骨型ガムが落ちていた。朝、俺がゴンに投げてあげたやつだ。
:09/04/16 16:24
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