人を嫌った犬の一生
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#1 [太郎]
この話は俺の家族だった愛犬の一生のお話です。
誤字脱字等は気にせず見てあげてください。
では
>>2から始まります。
:09/04/14 10:39
:D905i
:dDKpoZ0.
#2 [太郎]
出逢いはデパートの屋上広場だった。
人間から捨てられ、一つのゲージに詰められた小さな命たち。
里親を探していた。
ちょうど五歳だった俺はすごく動物が好きで、たまらなく犬が欲しかった。
お母さんに頼みこむと、この屋上広場に連れてこられたのだ。
:09/04/14 10:43
:D905i
:dDKpoZ0.
#3 [太郎]
子犬や子猫たちが一匹ずつ紹介されていく。
紹介された動物を欲しい人間達がジャンケンで誰が里親になるのか決める。
幼いながらも俺には不思議な光景に見えた。
そして、鼻の先が黒い雑種の子犬が紹介された。
俺は「ビビッ」ときた。
「あの犬が欲しい!!」
:09/04/14 10:47
:D905i
:dDKpoZ0.
#4 [太郎]
この子犬は人気だった。
里親希望の人間が8人ほど集まった。俺もその一人だった。
ジャンケンをする。
「ジャンケン…ポイ!!」
俺意外の7人はパー。
俺はチョキ。一人勝ちだった。
一緒にきてたお母さんと五歳上のお兄ちゃんで喜んだ。
本当に寝顔があいくるしい子犬だった。
:09/04/14 10:52
:D905i
:dDKpoZ0.
#5 [太郎]
違うブースで予防接種を受ける。注射をされても寝たまんまの子犬。
その可愛さに思わず笑ってしまった。
帰りの車の中、後部座席には俺と子犬で乗った。
子犬は臆病なのか、俺の腰の下にもぐりこもうと必死だった。
そして気付くと、また寝ていた。
この日から、この子と15年間にも渡る波乱万丈の生活が始まる。
:09/04/14 10:57
:D905i
:dDKpoZ0.
#6 [太郎]
11月25日、その子は俺の家族になった。まだ生まれて間もない、毛の生え揃ってないような子犬。
大きめの衣装ケースに、毛布とミルクを混ぜたドッグフード、水をおいてあげ、小さな犬小屋を風呂場の脱衣所に作ってあげた。
毎日、幼稚園から帰ってきた俺は子犬を撫でてあげた。
可愛くて仕方がなかった。
この時、名前はまだ無かった。
:09/04/14 11:04
:D905i
:dDKpoZ0.
#7 [太郎]
1ヶ月くらい経っただろうか。ヨチヨチ歩きながらも、衣装ケースの小屋から這い上がって出てきて、家の中を歩きまわるようになった。
そのたびに家族の誰かが小屋に戻してあげる。
また出てくる。
の繰り返しだった。
ある日テレビを見ていると、玄関から「ゴンッ」と音がした。
行ってみると、子犬が玄関の段差から落ちたようだ。
それを見て子犬の名前は決まった。
:09/04/14 11:16
:D905i
:dDKpoZ0.
#8 [太郎]
言うまでもないかな。
名前は「ゴン」。
家族満場一致の決定だった。
それから数ヶ月で、ゴンは外に出るようになった。
俺の家は山の中だったので、無駄に庭が広かった。のびのびとゴンが育つように、庭の中で放し飼いをするようにした。
もちろん庭から外に出ないように、色々な場所に柵を作って。
:09/04/14 11:20
:D905i
:dDKpoZ0.
#9 [太郎]
初めて歩くうちの庭に、ゴンは興味津々だった。
お母さんの作った花壇をめちゃめちゃに荒らしたり、玄関の目の前に糞をしたりと、イタズラな面もあった。
幼い俺はゴンを叱る事はせず、叱り役はもっぱらお母さんだった。
その頃のお父さんは、家の中でも浮いていた。
帰ってきても「ただいま」も言わず、部屋に入る。
たまに夜中、お母さんとお父さんの喧嘩する声が聞こえる事もあった。
:09/04/14 11:57
:D905i
:dDKpoZ0.
#10 [太郎]
うちの家庭は壊れていた。
お母さんとお父さんの不仲に始まり、お母さんとお父さんの実家の不仲、お母さんの俺やお兄ちゃんに対する過度な叱り方(虐待)など…。
しかしそんな中でもゴンの可愛い姿を見ると癒された。ムードメイカー、と言えたのかな。
お母さんに叱られ泣いているとゴンが近づいてその場に座り、不思議そうな表情で首をかしげてきた。
その表情を見てさらに涙が溢れた。
:09/04/14 13:47
:D905i
:dDKpoZ0.
#11 [太郎]
何年か経つと、そんなあいくるしいゴンが人に慣れてない事に気付く。
郵便屋さんにすごく吠えたり、散歩に行くと他の人や犬に飛びかかろうとしたり。
人里離れた山の中で家族意外と触れ合うこともなく数年を過ごしたゴンは、他の人間を見ると怖かったのかもしれない。
小学校一年生になったある日、俺は珍しく友達をうちによんだ。
お母さんがゴンを鎖で繋いでいたが、友達が俺やお母さんが目を離したすきにゴンを撫でようとした。
:09/04/14 13:53
:D905i
:dDKpoZ0.
#12 [太郎]
するとゴンは、その友達の腕に勢いよく噛みついた。
「ゴン!やめなさいっ!!」
お母さんが鎖をひっぱり、友達からゴンを引き離した。
「いたいいたい!」
友達は泣いていた。7歳の俺は何もできなかった。
帰り道、友達は何も話さず帰っていった。
お母さんと俺は、お菓子を持ってその友達の家に謝りに行った。
:09/04/14 13:57
:D905i
:dDKpoZ0.
#13 [太郎]
謝罪はしたが、その友達とはそれ以来一切口をきかなくなった。
あの時「ゴンには触らないでね。噛まれるからね。」
と念を押して何回も言ったのにそれでもゴンに触った友達が悪いんだ、とゴンを恨むことはなかった。
幸い傷はそんなに深くなく、謝罪に行った時は大袈裟な包帯をしていたが、次の日にはバンソウコウに変わっていた。
:09/04/14 14:01
:D905i
:dDKpoZ0.
#14 [太郎]
お母さんはゴンを怒った。俺にはなぜゴンが怒られるのか分からなかった。
洗濯物を叩く棒でゴンを叩いた。ゴンは「キャン」と痛そうな声をあげた。
かわいそうで仕方がなかった。
「ゴンは触られたから噛んだんよ。なんでゴンを叩くん?」
お母さんに聞くと、次は俺が怒られた。
「あんたの友達が噛まれたんよ!あんた友達を何と思っとるの!?」
:09/04/14 14:13
:D905i
:dDKpoZ0.
#15 [太郎]
髪を引っ張られ叩かれ蹴られ、またいつもの虐待が始まった。小さな俺はひたすら耐えるしかなかった。
そして怒られたあとは必ずゴンのいる庭へ行く。
ゴンは俺に対し、申し訳なさそうな表情をし、木の影からこっちを見ていた。
「ゴン、おいで!」
そう言うと走って寄ってきた。
「ゴンが悪いんじゃないよ。」
そう言うとゴンは俺の手をペロと舐めた。
:09/04/14 14:19
:D905i
:dDKpoZ0.
#16 [太郎]
他人には吠えたり噛んだりするゴンだったが、家族にはそんな事はしなかった。
隣に住む犬好きのおばさんが、「ゴンちゃんは、立派な番犬だね。」と言った。
まるで自分が褒められたようで嬉しかった。
そのおばさんが、ある日ゴールデンレトリーバーの雌のコノちゃんを買ってきた。
ゴンはコノちゃんを気に入ったのか、散歩で家の前を通るコノちゃんをジッと見つめていた。
たまにコノちゃんがうちの門まで来て、ゴンと門越しにジャレる事もあった。
:09/04/14 14:28
:D905i
:dDKpoZ0.
#17 [太郎]
他の犬には吠えるのに、コノちゃんには吠えもせず、ジッと見つめるだけ。恋してたのかな。
それから数年経ったある日、台風の影響で大荒れの天気の中、やっとの思いで学校から帰ってきた俺は家の異変に気付いた。
いつも門の前に座り出迎えてくれるゴンが今日は居ないのだ。
ビックリして家に入りお母さんに、「ゴンはどこ行ったん!?」と聞くと、「え?庭にいなかった!?」とお母さんも驚いた。
:09/04/14 14:34
:D905i
:dDKpoZ0.
#18 [太郎]
雨に濡れない為にどっかに入り込んでるんだろう、と庭中を探したが見つからない。
もしや、と思い家の裏の柵を見ると台風のせいか柵がくずれていた。
「きっとこの柵を乗り越えて庭を出たのね!」
お母さんと俺は車に乗り込み、散歩コースや家の周辺を探し回った。だが見つからない。
「まさか車に轢かれたりしてないよね…」
いやな想像が頭をよぎる。
:09/04/14 14:38
:D905i
:dDKpoZ0.
#19 [太郎]
結局見つからないまま家に戻ると、家の電話に留守電が入っていた。隣のおばさんからだ。
「ゴンちゃんがうちの庭にいますんで迎えにきてあげてください。」
驚いた俺とお母さんは、急いで隣のおばさんの家に行こうとすると、門の前にゴンがいた。
強風に乗り激しさを増す雨に打たれながら、目をすぼめながらゴンが帰ってきたのだ。
「ゴン!どこ行っとったんね!」
そう言ってお母さんが門を開けると自分から入ってきた。
:09/04/14 14:43
:D905i
:dDKpoZ0.
#20 [太郎]
どこで冒険したのか、体中泥だらけだった。
「このバカ犬がっ!」
お母さんはゴンを思い切り叩いた。ゴンはもう叩かれ慣れているのか鳴きもせず、ジッと叱られていた。
きっとコノちゃんに会いたかったんだろうなー。
俺はそんな事を考えていたと思う。
それからと言うもの、庭の抜け出し方を知ったゴンは、たびたび抜け出すようになる。
:09/04/14 14:47
:D905i
:dDKpoZ0.
#21 [太郎]
抜け出した時、誰か人を噛まないか心配だった。それだけが本当に心配だった。
あまりに大きなケガをさせてしまったとしたら…。『保健所』という場所を知っていたからだ。
きっとこの『保健所』という言葉は、犬を飼っている人にとってもっとも聞きたくない言葉だろう。
ゴンによる二人目の被害者は宅急便屋さんだった。
:09/04/14 14:59
:D905i
:dDKpoZ0.
#22 [ぁき]
読んでます

動物の話しは辛くなる場面が多くて弱ぃけど私も動物好きなんで最後まで読みたぃです


書き込み大変かもしれなぃけど最後まで頑張ってくださぃね

更新待ってます

:09/04/14 20:09
:P704i
:RYDqvBm2
#23 [太郎]
郵便屋の青年は、『猛犬注意』と門に看板を貼っているにも関わらず手を出し、指先を噛まれた。
今回も傷はそんなに深くなかった。すり傷程度だった。
またゴンはお母さんに叱られる。
言っておくがお母さんは叱るだけではない。一番ゴンを撫でたのもお母さんだろう。
この事件があったあと、ゴンは縄で繋がれる事になる。
広い庭の一角がゴンの縄張りとなった。
:09/04/14 20:13
:D905i
:dDKpoZ0.
#24 [太郎]
俺は小学校5年生になった。
突然お母さんはあまり部屋から出てこなくなった。1日中ベッドで寝ていた。
幼い俺にはよく分からなかったが、重度の鬱病にかかっていた事を知ったのは一年後だった。
小学校5年生の俺と高校一年生のお兄ちゃんには、どうすることもできず…というか、なぜ部屋から出てこないのかも分からなかった。
お父さんは相変わらず、帰ってきたらすぐ部屋に戻る。そのせいかお母さんの異変にすら気づかなかった。
:09/04/14 20:21
:D905i
:dDKpoZ0.
#25 [太郎]
:09/04/14 20:23
:D905i
:dDKpoZ0.
#26 [太郎]
その頃からだろうか。
ゴンは家の玄関の方を向いて聞き耳をたてるようになった。
我が家の構造上、廊下の窓から玄関の外側が見える。窓からふっと玄関を見るといつもゴンが耳を頻繁に動かしながら家の中の様子をうかがっていた。
今になって思うが、一番我が家の状況を知っていたのはゴンだったのではないだろうか。
お母さんが部屋からあまり出て来ない生活が始まって一年くらいが過ぎた。
:09/04/14 20:28
:D905i
:dDKpoZ0.
#27 [太郎]
家に帰っても、お母さんは部屋から出てこない。出てきたとしても八つ当たりのよう暴力。
俺は家が嫌いになった。門限を過ぎても友達と遊ぶようになった。
だがそのせいで、やっぱり家に帰ると怒られる。家に帰るのがイヤだった。
俺が家に帰ると、快く出迎えてくれるのはゴンだけだった。
つらかった。頼れるのは友達だけ。そんな風に感じていた。
:09/04/14 20:33
:D905i
:dDKpoZ0.
#28 [太郎]
そんな家族を、ゴンは玄関の前で見守ってくれていた。
中学一年になった俺は、あまり家に帰らなくなった。
お母さんの体調はだいぶ治ったが、もうすでに家庭はボロボロだった。
そんな家には帰りたくないと、毎日のように家出や夜遊びを始めた。不良に憧れた。
お母さんは帰らない俺を朝でも夜中でも探し回った。
何度も見つかり、家に連れ戻される。
門を入ると、ゴンはいつも駆け寄ってきて何もなかったように優しく出迎えてくれた。
:09/04/14 20:40
:D905i
:dDKpoZ0.
#29 [太郎]
中学二年生の夏休み前、俺は変わらず毎日ハメをはずして遊び回っていた。
そんな時だった。玄関の前で急にゴンが倒れた。手足は伸びきって痙攣していた。
ちょうど俺は家に帰っていて、その姿を目の当たりにした。
『このまま死ぬんじゃないか』
不安がこみ上げてきて涙が出た。どうしていいのか分からなかった。
数分経つとゴンは自力で立ち上がった。一時間後にはいつも通りに戻っていた。
:09/04/14 20:50
:D905i
:dDKpoZ0.
#30 [太郎]
何だったんだろう…貧血?
病院につれていっても、獣医さんに噛みつくに決まってる。そんな危険なゴンを病院に連れて行く事はできなかった。
それからはいつも通りのゴンに戻った。
俺は相変わらず家に帰らない日々を続けた。しかし、友達と遊んでいても、「もし俺が遊んでる間にまたゴンが倒れたら…」そう考えてしまい怖くなった。
:09/04/14 20:55
:D905i
:dDKpoZ0.
#31 [太郎]
ある日なぜか無償にゴンの事が気になり、友達とペットショップでゴンに似合いそうな首輪を買った。赤色でハートの柄。ゴンは雄だったが、やけにその首輪が似合いそうに感じた。
家に帰ってからゴンにつけてあげた。予想通りばっちり似合う。最初は新しくなった首輪に慣れなかったようだった。
それから間もなくして、またゴンが倒れた。それを聞いたのは倒れて2日たってからだった。
この前と同じように一時間後くらいにはまた普通に戻ったらしい。
:09/04/14 21:08
:D905i
:dDKpoZ0.
#32 [ぁき]
:09/04/14 22:01
:P704i
:RYDqvBm2
#33 [太郎]
こんな事が何回続いただろうか。
夏休みになった。友達と遊んで家に帰ると居間に中学校の担任教師と学年主任がいた。
「ここに座れ。」
担任教師がいつもにない真面目な顔で言った。お母さんもいる。
俺は訳が分からぬまま、言われた通りそこに座った。
「早速やけど、お前、夏休みの間今いる友達と離れてみらんか?」
学年主任が言った。
:09/04/14 22:29
:D905i
:dDKpoZ0.
#34 [太郎]
「は?意味わからんのやけど…」
俺は言ってる意味が理解できなかった。
「今お前のお母さんとも話してたんだが、夏休みの間どこか遠くに行って今の友達と距離をおいてみろ。今のままじゃお前は立ち直れなくなるぞ。」
なんで俺だけ?と思った。
それを鵜呑みに聞くお母さん。それを俺に話す時には、もう沖縄に一ヶ月間行く事は決定していた。
翌朝、心の整理もつかないまま出発。
:09/04/14 23:10
:D905i
:dDKpoZ0.
#35 [太郎]
出発の時、ゴンには何か分かっているみたいだった。やけにくっついてきて、悲しそうな表情をしていたのを覚えてる。
「ゴン、俺は一ヶ月くらい出掛けるけど元気でおれよ。」
確かそんな事を言っただろう。ゴンは、駐車場から出る俺が乗った車にずっと吠えていた。
でも俺には、ゴンの悲しそうな表情より、友達と離れる事の方が悲しかった。
この頃、ゴンは九歳だった。俺はゴンがいる事が当たり前になり、撫でてあげる回数も減っていたと思う。
:09/04/14 23:17
:D905i
:dDKpoZ0.
#36 [太郎]
一ヶ月たった。沖縄を出て、俺が帰りついたのは、今まで住んでいた家ではなかった。
俺が家にいなかった間、お父さんとお兄ちゃんで引っ越しをしていた。
引っ越しをする、と初めて聞いたのも決定してからだった。
知らない家。ゴンは狭い庭に繋がれていた。一ヶ月ぶりの再開にゴンは尻尾を大きく振った。
しかし、俺は納得できなかった。今までいた学校にサヨナラも言えず転校させられた事、一ヶ月だけと言っておきながら……と、恨みはつのっていった。
この家庭で俺の味方はゴンだけだと本気で思った。
:09/04/14 23:26
:D905i
:dDKpoZ0.
#37 [太郎]
俺は家に引きこもった。新しい中学校にも2日で行かなくなった。「何で俺が…」 今思えば、あの時の俺はおかしかった。
毎日家の中で暇を持て余した俺は、ゴンと遊ぶのが楽しみになった。
この頃のゴンは、急に倒れる事もなくなり元気だった。家の様子をうかがうのも相変わらずだった。
今まで家出やらで撫でてあげなかった分、いっぱい遊んだ。
新しい土地に友達もできなかった俺の心のより所は、ゴン意外の何者でもなかった。
ゴンが居なくなるなんて…考えるだけで涙が出た。
:09/04/14 23:33
:D905i
:dDKpoZ0.
#38 [太郎]
相変わらず我が家はゴタゴタ続き。両親の喧嘩は毎日になった。そんな怒号飛び交う家の庭で、俺はゴンと遊んでいた。
高校にも行かなかった。別に行きたい高校もなかったから、と理由をつけたが、めんどくさかっただけだ。
ある日、ゴンがまた倒れた。前の家でもあった倒れ方。また発作が出だした。
ここからゴンの異変は大きくなっていく……
:09/04/14 23:39
:D905i
:dDKpoZ0.
#39 [太郎]
一つ目の異変。
倒れてから数日たったある日、夜中急に庭からゴンの「クゥーンクゥーン」という悲しそうな鳴き声がした。
言ってみるとゴンは尻尾を巻き、こっちを見ていた。周りを見ても何事もなさそうなので、家に戻ると、また「クゥーンクゥーン」と鳴く。
たまに「ワンッ」と大きく吠えた。夜中とゆう事もあって近所迷惑になるだろうと思い、その夜は玄関に入れてあげる事にした。
翌日の夜、またゴンの鳴き声が。その日も玄関で寝かせた。
:09/04/15 00:26
:D905i
:NTagMB.Q
#40 [太郎]
次の日も、またその次の日も。ゴンは夜を怖がるようになった。
「ゴン、お前臆病になったな!」
と笑いながら俺は言った。
ゴンは変な表情をした。まるで俺の言ってる事が分かるように。
それから、我が家の夜の玄関はゴンの縄張りになった。ゴンは玄関でも聞き耳をたてていた。
それから少ししてだった。
:09/04/15 00:29
:D905i
:NTagMB.Q
#41 [太郎]
お父さんが別居を始めた。ある日急に仕事から帰ってこなくなったのだ。
俺にはどうでもよかった。両親が離婚しようが関係ない、なんて強がっていた。
そんな状況もゴンは知っていただろう。きっと。
あまり時間が経たない内に、ゴンに二つ目の異変が出た。
雷を怖がるようになったのだ。雷がなると、庭に居ようと玄関に居ようと「クゥーン…ワンッ」と鳴くようになった。
お母さんがその度にゴンを叱ったが、まるで子犬に戻ったかのように雷に怯えていた。
:09/04/15 00:35
:D905i
:NTagMB.Q
#42 [太郎]
そしてさらに三つ目の異変がすぐやってきた。
糞やオシッコを我慢できなくなった。
今まで、玄関に入れてあげると、糞やオシッコを玄関でする事は一切なかった。
朝、庭に出ると我慢してたものを一気に出す、とゆう感じだったのだが、我慢できず玄関で漏らすようになった。
それと同時に、水を異常なほどに欲しがるようになる。2リットルを一気に飲み干してしまうほどだ。それでも足りないと吠える時もあった。
ボケが始まったのだろうか…。
そんなある日事件は起きた。
:09/04/15 00:42
:D905i
:NTagMB.Q
#43 [太郎]
散歩は夜遅くに行く事にしていた。あまり早い時間に行くと、通行人が多い為ゴンが飛びかかる危険があるからだ。
その日は俺が散歩をしていた。いつものコースを歩き、俺は空を見上げていた。星が輝く夜だった。
その瞬間、ゴンは何かに飛びかかった。急な出来事に訳が分からない俺。ゴンが飛びかかったのは、ウォーキング中のおじさんだった。
ゴンの牙は、おじさんの横腹付近を思いっきり捕らえていた。
「ゴン!!!やめろっっ!!!!」
俺は縄を力いっぱい引っ張った。
:09/04/15 00:54
:D905i
:NTagMB.Q
#44 [太郎]
おじさんは「ぐぅわぁぁ」と声にならない声をあげ、その場に倒れた。
何十秒か経って、やっとゴンの牙は横腹を離した。ここで俺は何が起きたのか理解ができた。
気が動転したのか、縄を持つ手が震えている。
おじさんはヨロヨロと立ち上がり、「お前どこの子だ!親呼んでこいっ!」と俺に怒鳴った。
ゴンはおじさんに向かって吠え続けていた。
:09/04/15 01:00
:D905i
:NTagMB.Q
#45 [太郎]
俺はその場で携帯からお母さんに電話をかけた。
「ゴンが人を噛んだんやけど。」
お母さんは慌てて駆けつけた。
そのままお母さんの車で、おじさんを病院までつれていった。夜遅かったので病院を探すのに苦労した。
俺はゴンは家に連れ戻した。ゴンはどこか申し訳なさそうな表情をして、水を飲み始めた。
傷はかなり深かった。わき腹にくっきり歯形がつき、3針も縫う大怪我。
今まで何人か噛みついたゴンだが、ここまでは始めてだった。
:09/04/15 10:09
:D905i
:NTagMB.Q
#46 [ち_たン(`pω・´)]
ゴンちゃんかわゆ(´pωq`)
読んでますっ★
がんばってください!
:09/04/15 10:23
:DM002SH
:JRowZxhs
#47 [太郎]
「予防接種は毎年していますか?」
おじさんがたずねた。
予防接種…毎年行う事が義務になっているが、ゴンは予防接種につれていけるようなおとなしい犬ではなかった。
「何年か前に…」
「去年はしてないんですか!?」
「……はい」
言い訳すらなかった。本当にしてなかったのだから。
狂犬病は、今の日本ではここ何十年と発病した情報のないものだった。
……が、タイミングが悪かった。
:09/04/15 10:27
:D905i
:NTagMB.Q
#48 [ゆき]
続き気になります
病気か何かですか??
更新頑張って下さい
:09/04/15 10:30
:921SH
:LOt24KDo
#49 [太郎]
ちょうど数日前、中国で何十年ぶりに狂犬病が発病したとニュースでやっていたのだ。
そのニュースを俺も、お母さんも、そのおじさんも知っていた。
おじさんの怒りは爆発寸前だっただろう。
噛まれた痛み、狂犬病の恐怖。
「保健所で処分してください。」
おじさんはハッキリと言い放った。
:09/04/15 10:33
:D905i
:NTagMB.Q
#50 [太郎]
:09/04/15 14:44
:D905i
:NTagMB.Q
#51 [太郎]
「いや、それだけは勘弁してください!お願いします!」
俺とお母さんは何度も何度も謝った。犬と言っても、俺にとっては家族、いや弟のような存在であるゴン。そんなゴンを保健所につれて行くなんて、絶対にできなかった。
「では、治療費と慰謝料を払ってもらいます。」
おじさんが提示した金額は相当な額だった。犬が人を噛んだ場合の慰謝料は相場が11万、昔フリーダイヤル相談の弁護士が言っていたのを思い出した。
:09/04/15 14:49
:D905i
:NTagMB.Q
#52 [太郎]
しかし、おじさんは近隣に住む人。もしかするとこれから近所付き合いとしてまた会う事もあるかもしれない。相手の望む謝罪をしないと後味が悪い。お母さんはそう言った。
この件を別居中のお父さんに話した。結局、お金が絡んでくると、一家の大黒柱に頼むしかない。
お父さんはすぐに示談書を作り、相手が提示した分の慰謝料を持ってやってきた。
相手の家に行き、慰謝料を払い示談書を出した。そして、狂犬病の検査、及び予防接種をすぐに行う事を約束した。
:09/04/15 14:57
:D905i
:NTagMB.Q
#53 [太郎]
示談書におじさんがサインした事により、この事件は全て集結した。
しかしこれからが大変だ。約束した以上、検査と予防接種にはつれていかなければならない。
もちろん、ゴンが易々と注射などを許す訳がない。どうしたらつれていけるだろう。
とりあえずまず口輪をつけることにした。
口輪とは、犬の長い鼻の部分にはめて、口を開けれないようにする道具だ。
これをつける事さえ一苦労だった。
:09/04/15 15:03
:D905i
:NTagMB.Q
#54 [太郎]
お父さんはゴンの不意をついて、後ろから口輪をつけようとした。
その瞬間ゴンは怒り、お父さんの服の腕の部分に噛みついた。
「うぅ゙〜」と服を噛みちぎったゴン。慣れないものが怖かったのだろう。
それからは口輪をつけようとしてもゴンは警戒して、つける事はできなかった。
このままでは埒があかないので、近くの動物病院に電話し、相談してみた。
:09/04/15 15:08
:D905i
:NTagMB.Q
#55 [太郎]
今の状況を伝えると、獣医さんは少し悩んだ。それはそうだろう。いくら獣医と言えど凶暴な犬は怖いに決まっている。
しかし、
「何とかしましょう。とりあえず当院にゴンちゃんをつれてきてください。」
と返事をしてくれた。さすが獣医さんだ、と俺は思った。
早速縄をつなぎ、イヤがるゴンを車に無理やり乗せた。
ゴンは「ヘッヘッヘ」と荒い息をしながらベロを出していた。それが可愛くて笑いが出た。
:09/04/15 21:45
:D905i
:NTagMB.Q
#56 [太郎]
病院までは15分くらいの道のり。ゴンを病院につれて行くのは初めてで、ゴンも落ち着かない感じだ。もちろん俺もお母さんも不安でいっぱいだった。
病院につくと、女性の獣医さんが出迎えてくれた。案の定、その獣医さんにゴンは飛びかかろうとした。
ゴンの縄は俺が持っていた。ゴンはあっちこっちに行こうと引っ張ったが、俺の引っ張る強さの方が上だった。
獣医さんによると、今日は来診する動物が多いので少し待ってほしい、との事だ。
俺とお母さんとゴンは駐車場で順番を待つ事にした。
:09/04/15 21:57
:D905i
:NTagMB.Q
#57 [太郎]
駐車場には、次々と受診の終わった犬や猫が出てくる。その度にゴンは飛びかかろうとしたり、吠えたりした。
病院から出てくるペット達は、ヒステリーに吠えまくるゴンを蔑むように見ていく。
みんなおとなしくて、服を着たり、オシャレをしたり、上品なペットばかり。まるで飼い主の着せ替え人形だ。
そんな犬達を見ても、ゴンの可愛さに勝てる犬はいなかった。親バカならず、飼い主バカなのかな。
数10分して、先程の獣医さんがやってきた。
:09/04/16 09:06
:D905i
:l/weZALU
#58 [太郎]
ゴンはまた飛びかかろうとした。獣医さんもどうやって検査・予防接種をするか悩んでいた。
今思えば悩んでも一緒だった。ゴンがおとなしくなる事などないのだから。
「不意をついて注射をするしかないですね。」
獣医さんは言った。正論だった。
まず持ってきたジャーキーをゴンの前においた。そして「待て」をさせて、ゴンの意識をジャーキーに向かせた。
静かに後ろから近づく獣医さん。まさに一瞬だった。
:09/04/16 12:11
:D905i
:l/weZALU
#59 [太郎]
「よしっ」の声とともにゴンはジャーキーを食べる。それと同時に獣医さんは後ろからゴンの腰あたりに注射を刺した。一気に予防接種を打ち込み、即座に逃げるようにゴンから離れた。
ゴンはジャーキーに夢中だった。食い意地のはった犬だ。無事予防接種は終わった。
それから狂犬病検査なのだが…
申し訳ないが、どう検査したか覚えていない。
確か唾液かないかを採集しての検査だったと思う。
そしてゴンをまた車に乗せ、支払いを済ませてから家に戻った
:09/04/16 12:47
:D905i
:l/weZALU
#60 [太郎]
検査結果。ゴンに狂犬病の疑いはなかった。それをゴンが噛んだおじさんに伝えると、ホッと胸をなで下ろしていた。
病院から帰ってきた俺はどっと疲れていた。ゴンと一緒に外出すると、歩行者などにかなりの注意をはらわなければならないので、俺の気の張り方は尋常じゃなかっただろう。
ましてや、先日他人を噛んだばかりだったから。
それから一時は、平和な日々が続いた。
その頃の俺は、フリーターとして何も考えずバイトをしていた。将来の事でお母さんと毎晩のように喧嘩していた。その喧嘩をゴンは玄関で聞いていただろう。
:09/04/16 12:58
:D905i
:l/weZALU
#61 [太郎]
俺は一切勉強する気はなかった。一回道を踏み外したんだから、もう元の道には戻れない。…言い訳だった。
そんなどうしようもない俺でも、ゴンはやさしく接してくれた。全て分かっているような目で。
「ゴン、お前はやさしいなァ。」
そう言うと、ゴンは俺の肘をペロっと舐めた。ゴンはいつでも俺の味方だった。
そのまま一年以上たった。ゴンに大きな異変が起きた。
:09/04/16 13:04
:D905i
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#62 [太郎]
ゴンは左目を手でかきむしるようになった。かゆそうに目を気にしている。
今からバイトだったので、気にしながらもバイトに行った。
蜂にでも刺されたかな?
そんな事を考えながらバイトの終わった俺は、家に着いてゴンを見た瞬間驚いた。
左目の色が白く濁っている。平たく言えば、左目は死んでいた。
白内障。高年齢の犬がよくかかる病気だ。目が白く濁り、視界を奪われるとゆう恐ろしい病気。
「ゴンの左目はもう見えてないみたいよ。」
お母さんが言った。
:09/04/16 13:10
:D905i
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#63 [太郎]
確かに好物のジャーキーを投げてあげても、いつものように口でキャッチする事ができない。
片目を失った事で遠近感覚が取れないのだ。
それを見て、俺は涙が出た。昔から白内障の存在は知っていたが、このゴンがその病気にかかるなんて…。
ゴンは、半分になった目で俺を不思議そうに見つめていた。
もうゴンは、14歳になった。
:09/04/16 13:15
:D905i
:l/weZALU
#64 [太郎]
視界が半分になろうと、ゴンは今までと変わらなかった。
訪問者にはヒステリーのように吠えるし、餌も山ほど食べるし、水もがぶ飲み。
その姿に俺は元気付けられた。その頃に知り合いに白内障の話をすると、「人間と違って、犬にとっての視力ってものは前感覚の20%くらいなんだよ。だから目が見えなくなる事は、あまり痛手ではないんだ。」
とおしえられた。
俺はやけにホッとした気分になった。やはり犬が一番恐れる事は、嗅覚がなくなる事なんだろう。
:09/04/16 13:23
:D905i
:l/weZALU
#65 [太郎]
それから数日経った朝。ゴンは右目をかきむしっていた。
俺は青ざめた。病気とは残酷なものだ。
心配でたまらなかったがバイトを休む事はできず、俺は家を出た。
バイト中、ゴンの事ばかり考えていた。早く家に帰りたい。早くゴンに会いたい。
バイトを終えた俺は、すぐに家に帰った。
「ゴンっ!」
玄関に行くと、ゴンは壁に向かって座り壁を見ていた。いや、ゴンは「壁」を見る事さえできなくなっていた。
:09/04/16 14:20
:D905i
:l/weZALU
#66 [太郎]
左目と同じ色に濁った右目。
「ゴン!こっちにおいで。」
俺が声をかけると、
「クゥゥン…」
と鳴いてそこを動かない。俺がどこにいるのか、どの方向にいるのか分からなかった。
俺は涙が溢れた。14年間付き添ったゴンは、もう俺の顔を見る事ができない。そう考えると胸がしめつけられた。そして寂しかった。
ゴンは急にパニックを起こしたように「キャンッキャンッ」と鳴きながら暴れだした。
俺の匂いはするのに姿は見えない。怖かったのだろう。
:09/04/16 14:26
:D905i
:l/weZALU
#67 [太郎]
「ゴン!俺はここにおるよ!大丈夫!ここにおる!」
そう言いながらも俺は涙が止まらない。暴れるゴンをなだめようと、ゴンの横腹に触れるとゴンはビクッと驚いた。
「ゴン、俺はここにおるから大丈夫よ。怖がる事ないよ。」
何度も何度も言った。言う度に涙は流れ落ちた。次第に落ち着きを取り戻してきたゴンは、俺の腕をペロッと舐めた。
ジャーキーを投げてあげたが、見つける事ができない。今思えば、嗅覚も鈍っていたのかもしれない。
:09/04/16 14:37
:D905i
:l/weZALU
#68 [太郎]
白内障。普通の犬なら手術をして治すという手もあっただろう。しかし、ゴンは他人に対し凶暴だ。麻酔という手もあるが、もうすぐ15歳とゆう高齢には体への負担が大き過ぎた。
家族の誰もが、手術という手は考えなかった。
それからしばらくして、目の見えない生活に慣れたゴンは、比較的元気に生活していた。たまに階段を踏み外したり、壁にぶつかったりする事もあったが、餌もガッツリ食べるし、水も飲む。骨型の硬いガムも一気に食べるほど。
その頃の俺は、バイトをしながら自動車学校に通っていた。自動車学校やバイトが休みの日は、将来の為の勉強を始めた。
:09/04/16 14:52
:D905i
:l/weZALU
#69 [太郎]
お兄ちゃんは立派な社会人に。お母さんも仕事を始めた。お父さんは別居したままだが、両親のトラブルは減っていった。
まるでそれと比例するように、ゴンは弱りはじめた。
外を怖がるようになった。
前までは、ドアを開ける仕草をするだけで尻尾を振って喜んでいたゴンだが、視力を奪われてからは外に出るのをいやがった。縄を引っ張って外に出そうとしても、玄関から出ようとしなかった。
あれだけ元気で凶暴だったゴンは、見る影もなくなっていった。
:09/04/16 15:00
:D905i
:l/weZALU
#70 [太郎]
歩き方もヨロヨロになった。しかしそれでも誰かが家に帰ってくるとヨロヨロと立ち上がり、尻尾を振って出迎える。
「出迎えなくていいよ。ゆっくり寝ときなさい」
そう言っても出迎えをやめなかった。それが愛しくて可愛かった。
俺は日に日に弱っていくゴンが目に見えて分かった。餌や水はよく摂取していたが、歩き方、表情、吐息、その全てから、昔のような元気さを感じ取る事はできなかった。
:09/04/16 15:09
:D905i
:l/weZALU
#71 [太郎]
4月7日朝7時半。
なぜかいつもより早く目の覚めた俺は、玄関に行き、ゴンに骨型の硬いガムを一つ投げてあげた。
ゴンは少しヨロヨロとガムを探し、見つけて口にくわえると、自分専用のマットに乗って噛み始めた。
俺は朝食を済ませ、二階の部屋に戻った。今日の予定は昼過ぎから自動車学校だ。まだ時間はかなりあったので二度寝をした。
1時間後――朝8時半。
「ゴンの様子がおかしいみたい!ちょっときて!!」
お母さんの叫ぶ声で目が覚めた。
:09/04/16 15:16
:D905i
:l/weZALU
#72 [太郎]
俺は飛び起きて、急いで玄関へ向かった。
「もうダメかもね…」
お母さんは何かを悟ったように言った。
ゴンは地面に倒れていた。口からは嘔吐物、おしりからは血便、目からは涙のようなものが出ていた。足は完全に伸びきり、ピクリとも動かない。
だが息はしている。
「ゴンが死ぬ訳ない…」
そう言った俺も、どこかで覚悟していた。
:09/04/16 15:23
:D905i
:l/weZALU
#73 [太郎]
息はしているが少しも動かない。お母さんが言うには、急に倒れたらしい。
「ゴン!大丈夫よ!」
そう言って横腹をさすってあげた。ゴンの横腹には肋骨が浮き出ていた。
「小さくなったね…ゴン。」
お母さんの言葉に涙が溢れ出した。止まらなかった。
そのまま15分くらい経っただろうか。今日にゴンは鳴き声をあげた。
:09/04/16 15:29
:D905i
:l/weZALU
#74 [太郎]
すみません。訂正です。
「今日に」ではなく「急に」です。
:09/04/16 15:30
:D905i
:l/weZALU
#75 [太郎]
「うゔ〜うゔ〜ワン!」
鳴き声と言えたのだろうか。うめき声にも聞こえた。ゴンが声を発したのは、この一回きりだった。
30分が経った。ずっと倒れたまま動かないゴン。もう病院につれていくしかなかった。
以前に予防接種をしてもらった病院に電話し、今の状況を伝えると、「今すぐに連れてきてくださいっ!」と言われた。
このまま連れて行く訳にもいかない。何かに入れて連れて行かなければ。
俺は倉庫から大きめのクリアケースを持ってきた。
:09/04/16 15:37
:D905i
:l/weZALU
#76 [太郎]
もし急に立ち上がり、獣医さんに噛みつくといけないので口輪をする事にした。
以前、口輪をつけるのに失敗したので、今回つけれるかどうか心配だった。
俺がゴンの長い鼻に口輪をあてる。ゴンは何も抵抗しなかった。抵抗する力もなかった。それを見てさらに涙が出た。
次に倉庫から持ってきたクリアケースにゴンを移した。毛布でくるんで寒くないように工夫した。
この時生まれて初めてゴンを担いだ。こんなに重いとは知らなかった。
:09/04/16 15:43
:D905i
:l/weZALU
#77 [太郎]
そのまま車の後部座席に乗せ、病院へ急いだ。ゴンは動かない。
「このまま死ぬのか?ゴン…お願いだから死ぬな!」
そう話し掛け続けた。俺の涙は止まらなかった。
10分ほどで病院に着いた。獣医さんが駐車場で待ってくれていた。
「ではすぐに第一診察室に連れて行ってください!」
病院に入ると、診察を待つペットたちとその飼い主たちがいた。
皆こっちを見ていた。「あぁ…可哀想に…」どこからか声が聞こえた。その声に俺は再び涙が出た。
:09/04/16 15:51
:D905i
:l/weZALU
#78 [太郎]
ゴンの入ったクリアケースをお母さんと二人がかりで診察室まで運んだ。
ゴンは獣医さんたちの手によって、診察台に乗せられる。家族以外がゴンに触れるなんて初めての光景だった。
すぐに獣医さんはこう言った。
「瞳孔が開いています。脳はもう機能していません。危篤状態と言えます。」
それを聞いた俺は涙でグチャグチャだったろう。そこから色々な検査が始まった。
:09/04/16 15:57
:D905i
:l/weZALU
#79 [太郎]
注射で血液をぬかれても動かない、何をされても動かないゴン。もうそこには昔のゴンはいなかった。
エコーで心臓を見る。少ししか動いてない。血圧が異常に下がっていた。点滴を始める。
急に獣医さんが「こっちにきて、ゴンちゃんの足先を触ってみてください」と言った。
言われる通り触ると……冷たかった。
「血圧が非常に低い為、血液を足先にまで送る事がてきていないのです。大変危険な状態です。最悪の覚悟はしておいてください。」
:09/04/16 16:05
:D905i
:l/weZALU
#80 [太郎]
そう言うと獣医さんはまたエコーで体内を見始めた。
「この子は我慢強いんでしょうね。この子が今日倒れたのは、急にきつくなった為ではないと思います。今までは段々ときつくなっていくのを我慢してたのでしょう。そして今日、我慢の限界がきたのでしょうね。」
お母さんも泣いていた。この言葉はつらかった。そんなにつらかったゴンに気付いてあげれなかった俺は、飼い主失格だと感じた。
「では、ゴンちゃんは今日1日入院させます。原因はまだ分かりませんが、やれる事は精一杯やりましょう。ただ、入院したからといって、治る保証はありません。先程も言いましたが、覚悟はしておいてください。」
:09/04/16 16:17
:D905i
:l/weZALU
#81 [太郎]
獣医さんは入院室に連れて行こうとゴンを抱きかかえた。ゴンの手足、首はぐったりしていた。
「よろしくお願いします…。」
お母さんはそう言った。俺は言葉にならなかった。
ゴンを入れて持ってきたクリアケースを手にとり、診察室を出る。
待合室には、元気な犬や猫がいた。それを見ると悲しくなった。
俺とお母さんは家に帰り、ゴンのいた玄関を掃除した。掃除の途中、食べかけの骨型ガムが落ちていた。朝、俺がゴンに投げてあげたやつだ。
:09/04/16 16:24
:D905i
:l/weZALU
#82 [太郎]
食べている途中にきつくなったんだろう。そう考えると胸が苦しくて涙が溢れた。
玄関の掃除を終えると、家の電話に一件の留守電が入っていた。俺とお母さんは再生ボタンを押した。
「○○動物病院です。先程12時50分に、ゴンちゃんの心臓、及び呼吸が停止しましたのでお電話しました。この留守電を聞かれましたらすぐに当院までご連絡ください。」
死神の声に聞こえた……
:09/04/16 16:31
:D905i
:l/weZALU
#83 [太郎]
お母さんはすぐに動物病院に電話をした。
俺は部屋に駆け上がり、整理できない気持ちを涙にして流した。
あまりに急過ぎるゴンの死。白内障にかかった時からどこかで覚悟はしていたが、まさかこんなにあっけないものとは想像もしていなかった。
15年間の思い出が一気に蘇ってくる。この気持ちのやり場はどこにもなかった。
「ゴンを迎えに行くよ」
階段の下からお母さんの力無い声がした。
:09/04/16 16:38
:D905i
:l/weZALU
#84 [太郎]
迎えに行く途中の車の中、お母さんが言った。
「ゴンは役目を終えたのよ。最近は家も落ち着いてきて、あんたも将来に向けて歩き出した。ゴンはきっと安心したんだと思うよ。もう自分がいなくなっても大丈夫だ、ってね。」
聞き耳をたてて、一番家の事を知っていたのがゴンなら、一番家の事を心配していたのもゴン。ゴタゴタが続く家族をなごましてくれたのもゴン。それがゴンの役目だったんだろう。
病院に着くと、ちょうどお昼の休診時間で来診客は誰もいなかった。
:09/04/16 16:55
:D905i
:l/weZALU
#85 [太郎]
待合室で少し待っていると、獣医さん2人にかかえられ、クリアケースで眠るように横たわったゴンが帰ってきた。
涙が出た。朝まで寝息をたててたゴンが、今ではもう呼吸もしていない。
「ゴン!」
と呼んだら飛び起きそうに思えた。
死因は不明。年齢からしても老衰と思えた。
眠るゴンは首輪をつけていなかった。いつか俺が買ってあげた首輪だ。
:09/04/16 17:02
:D905i
:l/weZALU
#86 [太郎]
「あの…首輪は…?」
とたずねると、獣医さんが布に包んだ首輪を渡してくれた。
「今日、ゴンちゃんは天国に旅立ちました。首輪をつけたままではお花畑を走りまわれませんので、外させていただきました。」
獣医さんは言った。
俺は今までこの首輪でお前の人生を我が家に縛り付けてきた。やっと自由に走り回れるんだな…。
そんな事を思っていた。
その場で獣医さんが華を手向け、合掌した。
そして持ってきた食べかけの骨型ガムを、口のそばに置いた。
:09/04/16 17:08
:D905i
:l/weZALU
#87 [太郎]
ゴンは家に戻ってきた。ゴンをいつもの玄関に置いてあげ、華を添えた。
家に帰った俺は、やけ眠たかった。気を張り疲れていたのだろう。そのまま部屋で寝てしまった。
夜、目が覚めた。やけに家が静かだ。遠くの犬の鳴き声まで聞こえる。ゴンがいないだけで、こんなにも静かなんだ。改めてゴンの大きさを知った。
玄関の前を通ると、ゴンは出迎えてはくれなかった。また涙が出た。
もう一回だけでいいから、尻尾を振って出迎えてくれ。叶わない望みだった。
:09/04/16 17:15
:D905i
:l/weZALU
#88 [太郎]
次の日、ゴンの火葬を行った。俺は行かなかった。きっと本当は最後まで見届けるのが飼い主の役目だろう。だが、俺には耐えれなかった。火葬の付き添いは、お母さん一人にまかせた。
バイトから家に帰ると、ゴンはお骨として玄関にいた。線香と生前の写真が飾ってあった。
写真には元気な頃のゴンが写っていた。また涙が出た。
もうゴンが出迎えてくれる事もない、落ち込んだ俺を癒やしてくれる事もない、ジャーキーをあげる事もない。
この時初めて、ゴンは死んだんだと実感できた。
:09/04/16 17:24
:D905i
:l/weZALU
#89 [太郎]
ゴンには今まで散々迷惑をかけられた。人を噛んだり、庭を抜け出したり。本当に手の掛かる犬だった。
しかし、最後だけは迷惑をかけたくなかったのか、寝たきりになって介護を求めたりする事もなく、倒れてからすぐに逝ってしまった。
変な言い方だが、いさぎよい死に方だった。
今思えばだが、ゴンはまさに家族にとって忠犬だった。家族以外になつくことはなく、家族以外を家に入れないように必死で吠え。
ゴンのおかげで、家族は安心して眠れたのだ。
:09/04/16 17:32
:D905i
:l/weZALU
#90 [ゆき]
涙がとまりません
私も15年連れ添った犬を亡くした経験があります。
小説の1節1節すべてに共感します。
:09/04/16 19:39
:921SH
:qd62A186
#91 [ち_たン(`pω・´)]
ゴンちゃん主さんに
愛されて幸せそお!!
ウチも最近.大好きだった
愛犬亡くしたから
共感して泣きながら
読みました(´pωq`)
_
:09/04/16 20:14
:DM002SH
:510dTydU
#92 [太郎]
ゴンが死んでから2日たった。心のどこかにポッカリ穴があいてしまったように俺は頭の回転が鈍っていた。こんな自分は初めてだ。
何とも例えようのない感覚。確かに悲しい、寂しいとゆう感情ではあった。でもそれだけではない。
それと同時に、ゴンとの15年間が奪われたような感覚に襲われる。
ゴンは我が家にきて幸せだったのだろうか。
「ゴン!」
玄関に言ってみた。
:09/04/16 21:22
:D905i
:l/weZALU
#93 [太郎]
当たり前だけど、返事はなかった。
ゴン、またお前が犬に生まれ変わるなら、またお前が我が家に来たいと思うなら、いつか生まれ変わったら、またここに帰っておいで。
ゴンが残してくれたのは、思い出だけじゃない。命の大切さ、生き物の儚さ、数え切れないものを教え残してくれた。
ありがとう。ゆっくりおやすみなさい。
15年間に渡る波乱万丈な日々はこうして幕を閉じた。
「ゴン!」
俺は今でも、この名前を呼んでしまう。
END...
:09/04/16 21:32
:D905i
:l/weZALU
#94 [太郎]
読んでくれた方、ありがとうございました

文章読み返してみると、めちゃくちゃですね


笑
今ゴンは納骨堂で安らかに眠っています


きっとお花畑を走り回ってることでしょう


:09/04/16 21:37
:D905i
:l/weZALU
#95 [太郎]
:09/04/16 21:46
:D905i
:l/weZALU
#96 [我輩は匿名である]
読みながらめっちゃ泣きました

うちにも11歳の高齢犬がいます

私ん家の愛犬もゴンちゃんみたいに他人を見ると噛もうとしたりで病院に連れて行っても大変です

でもこれからも精一杯可愛がってあげたいと思います


:09/04/17 01:43
:P904i
:☆☆☆
#97 [まい]
ォツカレ様☆
ゴンは最高な愛犬ですネッ\(^o^)/
めっちゃ泣きました(;_;)
人間の事、言葉は動物にはわからんってゅーケド絶対ちゃいますよネッ!!!!
愛情をぁげて喋りかけたらわかってくれるっ!!
まいん家も犬飼っとんやケド人くるたび吠えまくって大変↓
でももしもの日が絶対くるから今を楽しんで愛情いっぱい注いでぁげたいって思った★
:09/04/17 02:08
:P905i
:OwtV08r6
#98 [
]
今初めて読んで涙が止まりませんでした。
ゴンちゃん、すごく立派ですね。あたしは犬や猫が苦手だったのですが最近犬を飼いたいと思ってました。でもやっぱり別れは辛いですね。生き物を飼うにはそれ相応な覚悟がいると改めて感じました。
ゴンちゃん15年間おつかれさまでした。
:09/04/17 02:46
:P904i
:☆☆☆
#99 [ゆか]
:09/04/17 03:04
:SH903i
:☆☆☆
#100 [ゆか]
一気に読みました
感動しました(´;ω;`)
:09/04/17 03:35
:SH903i
:☆☆☆
★コメント★
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