人を嫌った犬の一生
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#51 [太郎]
「いや、それだけは勘弁してください!お願いします!」

俺とお母さんは何度も何度も謝った。犬と言っても、俺にとっては家族、いや弟のような存在であるゴン。そんなゴンを保健所につれて行くなんて、絶対にできなかった。

「では、治療費と慰謝料を払ってもらいます。」

おじさんが提示した金額は相当な額だった。犬が人を噛んだ場合の慰謝料は相場が11万、昔フリーダイヤル相談の弁護士が言っていたのを思い出した。

⏰:09/04/15 14:49 📱:D905i 🆔:NTagMB.Q


#52 [太郎]
しかし、おじさんは近隣に住む人。もしかするとこれから近所付き合いとしてまた会う事もあるかもしれない。相手の望む謝罪をしないと後味が悪い。お母さんはそう言った。

この件を別居中のお父さんに話した。結局、お金が絡んでくると、一家の大黒柱に頼むしかない。

お父さんはすぐに示談書を作り、相手が提示した分の慰謝料を持ってやってきた。

相手の家に行き、慰謝料を払い示談書を出した。そして、狂犬病の検査、及び予防接種をすぐに行う事を約束した。

⏰:09/04/15 14:57 📱:D905i 🆔:NTagMB.Q


#53 [太郎]
示談書におじさんがサインした事により、この事件は全て集結した。

しかしこれからが大変だ。約束した以上、検査と予防接種にはつれていかなければならない。

もちろん、ゴンが易々と注射などを許す訳がない。どうしたらつれていけるだろう。

とりあえずまず口輪をつけることにした。

口輪とは、犬の長い鼻の部分にはめて、口を開けれないようにする道具だ。

これをつける事さえ一苦労だった。

⏰:09/04/15 15:03 📱:D905i 🆔:NTagMB.Q


#54 [太郎]
お父さんはゴンの不意をついて、後ろから口輪をつけようとした。

その瞬間ゴンは怒り、お父さんの服の腕の部分に噛みついた。

「うぅ゙〜」と服を噛みちぎったゴン。慣れないものが怖かったのだろう。

それからは口輪をつけようとしてもゴンは警戒して、つける事はできなかった。

このままでは埒があかないので、近くの動物病院に電話し、相談してみた。

⏰:09/04/15 15:08 📱:D905i 🆔:NTagMB.Q


#55 [太郎]
今の状況を伝えると、獣医さんは少し悩んだ。それはそうだろう。いくら獣医と言えど凶暴な犬は怖いに決まっている。

しかし、

「何とかしましょう。とりあえず当院にゴンちゃんをつれてきてください。」

と返事をしてくれた。さすが獣医さんだ、と俺は思った。

早速縄をつなぎ、イヤがるゴンを車に無理やり乗せた。

ゴンは「ヘッヘッヘ」と荒い息をしながらベロを出していた。それが可愛くて笑いが出た。

⏰:09/04/15 21:45 📱:D905i 🆔:NTagMB.Q


#56 [太郎]
病院までは15分くらいの道のり。ゴンを病院につれて行くのは初めてで、ゴンも落ち着かない感じだ。もちろん俺もお母さんも不安でいっぱいだった。

病院につくと、女性の獣医さんが出迎えてくれた。案の定、その獣医さんにゴンは飛びかかろうとした。

ゴンの縄は俺が持っていた。ゴンはあっちこっちに行こうと引っ張ったが、俺の引っ張る強さの方が上だった。

獣医さんによると、今日は来診する動物が多いので少し待ってほしい、との事だ。

俺とお母さんとゴンは駐車場で順番を待つ事にした。

⏰:09/04/15 21:57 📱:D905i 🆔:NTagMB.Q


#57 [太郎]
駐車場には、次々と受診の終わった犬や猫が出てくる。その度にゴンは飛びかかろうとしたり、吠えたりした。

病院から出てくるペット達は、ヒステリーに吠えまくるゴンを蔑むように見ていく。

みんなおとなしくて、服を着たり、オシャレをしたり、上品なペットばかり。まるで飼い主の着せ替え人形だ。

そんな犬達を見ても、ゴンの可愛さに勝てる犬はいなかった。親バカならず、飼い主バカなのかな。

数10分して、先程の獣医さんがやってきた。

⏰:09/04/16 09:06 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#58 [太郎]
ゴンはまた飛びかかろうとした。獣医さんもどうやって検査・予防接種をするか悩んでいた。

今思えば悩んでも一緒だった。ゴンがおとなしくなる事などないのだから。

「不意をついて注射をするしかないですね。」

獣医さんは言った。正論だった。

まず持ってきたジャーキーをゴンの前においた。そして「待て」をさせて、ゴンの意識をジャーキーに向かせた。

静かに後ろから近づく獣医さん。まさに一瞬だった。

⏰:09/04/16 12:11 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#59 [太郎]
「よしっ」の声とともにゴンはジャーキーを食べる。それと同時に獣医さんは後ろからゴンの腰あたりに注射を刺した。一気に予防接種を打ち込み、即座に逃げるようにゴンから離れた。

ゴンはジャーキーに夢中だった。食い意地のはった犬だ。無事予防接種は終わった。

それから狂犬病検査なのだが…

申し訳ないが、どう検査したか覚えていない。

確か唾液かないかを採集しての検査だったと思う。

そしてゴンをまた車に乗せ、支払いを済ませてから家に戻った

⏰:09/04/16 12:47 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#60 [太郎]
検査結果。ゴンに狂犬病の疑いはなかった。それをゴンが噛んだおじさんに伝えると、ホッと胸をなで下ろしていた。

病院から帰ってきた俺はどっと疲れていた。ゴンと一緒に外出すると、歩行者などにかなりの注意をはらわなければならないので、俺の気の張り方は尋常じゃなかっただろう。

ましてや、先日他人を噛んだばかりだったから。


それから一時は、平和な日々が続いた。

その頃の俺は、フリーターとして何も考えずバイトをしていた。将来の事でお母さんと毎晩のように喧嘩していた。その喧嘩をゴンは玄関で聞いていただろう。

⏰:09/04/16 12:58 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#61 [太郎]
俺は一切勉強する気はなかった。一回道を踏み外したんだから、もう元の道には戻れない。…言い訳だった。

そんなどうしようもない俺でも、ゴンはやさしく接してくれた。全て分かっているような目で。

「ゴン、お前はやさしいなァ。」

そう言うと、ゴンは俺の肘をペロっと舐めた。ゴンはいつでも俺の味方だった。

そのまま一年以上たった。ゴンに大きな異変が起きた。

⏰:09/04/16 13:04 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#62 [太郎]
ゴンは左目を手でかきむしるようになった。かゆそうに目を気にしている。

今からバイトだったので、気にしながらもバイトに行った。

蜂にでも刺されたかな?

そんな事を考えながらバイトの終わった俺は、家に着いてゴンを見た瞬間驚いた。

左目の色が白く濁っている。平たく言えば、左目は死んでいた。

白内障。高年齢の犬がよくかかる病気だ。目が白く濁り、視界を奪われるとゆう恐ろしい病気。

「ゴンの左目はもう見えてないみたいよ。」

お母さんが言った。

⏰:09/04/16 13:10 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#63 [太郎]
確かに好物のジャーキーを投げてあげても、いつものように口でキャッチする事ができない。

片目を失った事で遠近感覚が取れないのだ。

それを見て、俺は涙が出た。昔から白内障の存在は知っていたが、このゴンがその病気にかかるなんて…。

ゴンは、半分になった目で俺を不思議そうに見つめていた。

もうゴンは、14歳になった。

⏰:09/04/16 13:15 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#64 [太郎]
視界が半分になろうと、ゴンは今までと変わらなかった。

訪問者にはヒステリーのように吠えるし、餌も山ほど食べるし、水もがぶ飲み。

その姿に俺は元気付けられた。その頃に知り合いに白内障の話をすると、「人間と違って、犬にとっての視力ってものは前感覚の20%くらいなんだよ。だから目が見えなくなる事は、あまり痛手ではないんだ。」

とおしえられた。

俺はやけにホッとした気分になった。やはり犬が一番恐れる事は、嗅覚がなくなる事なんだろう。

⏰:09/04/16 13:23 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#65 [太郎]
それから数日経った朝。ゴンは右目をかきむしっていた。

俺は青ざめた。病気とは残酷なものだ。

心配でたまらなかったがバイトを休む事はできず、俺は家を出た。

バイト中、ゴンの事ばかり考えていた。早く家に帰りたい。早くゴンに会いたい。

バイトを終えた俺は、すぐに家に帰った。

「ゴンっ!」

玄関に行くと、ゴンは壁に向かって座り壁を見ていた。いや、ゴンは「壁」を見る事さえできなくなっていた。

⏰:09/04/16 14:20 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#66 [太郎]
左目と同じ色に濁った右目。

「ゴン!こっちにおいで。」

俺が声をかけると、

「クゥゥン…」

と鳴いてそこを動かない。俺がどこにいるのか、どの方向にいるのか分からなかった。

俺は涙が溢れた。14年間付き添ったゴンは、もう俺の顔を見る事ができない。そう考えると胸がしめつけられた。そして寂しかった。

ゴンは急にパニックを起こしたように「キャンッキャンッ」と鳴きながら暴れだした。

俺の匂いはするのに姿は見えない。怖かったのだろう。

⏰:09/04/16 14:26 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#67 [太郎]
「ゴン!俺はここにおるよ!大丈夫!ここにおる!」

そう言いながらも俺は涙が止まらない。暴れるゴンをなだめようと、ゴンの横腹に触れるとゴンはビクッと驚いた。

「ゴン、俺はここにおるから大丈夫よ。怖がる事ないよ。」

何度も何度も言った。言う度に涙は流れ落ちた。次第に落ち着きを取り戻してきたゴンは、俺の腕をペロッと舐めた。

ジャーキーを投げてあげたが、見つける事ができない。今思えば、嗅覚も鈍っていたのかもしれない。

⏰:09/04/16 14:37 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#68 [太郎]
白内障。普通の犬なら手術をして治すという手もあっただろう。しかし、ゴンは他人に対し凶暴だ。麻酔という手もあるが、もうすぐ15歳とゆう高齢には体への負担が大き過ぎた。

家族の誰もが、手術という手は考えなかった。

それからしばらくして、目の見えない生活に慣れたゴンは、比較的元気に生活していた。たまに階段を踏み外したり、壁にぶつかったりする事もあったが、餌もガッツリ食べるし、水も飲む。骨型の硬いガムも一気に食べるほど。

その頃の俺は、バイトをしながら自動車学校に通っていた。自動車学校やバイトが休みの日は、将来の為の勉強を始めた。

⏰:09/04/16 14:52 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#69 [太郎]
お兄ちゃんは立派な社会人に。お母さんも仕事を始めた。お父さんは別居したままだが、両親のトラブルは減っていった。

まるでそれと比例するように、ゴンは弱りはじめた。

外を怖がるようになった。

前までは、ドアを開ける仕草をするだけで尻尾を振って喜んでいたゴンだが、視力を奪われてからは外に出るのをいやがった。縄を引っ張って外に出そうとしても、玄関から出ようとしなかった。

あれだけ元気で凶暴だったゴンは、見る影もなくなっていった。

⏰:09/04/16 15:00 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#70 [太郎]
歩き方もヨロヨロになった。しかしそれでも誰かが家に帰ってくるとヨロヨロと立ち上がり、尻尾を振って出迎える。

「出迎えなくていいよ。ゆっくり寝ときなさい」

そう言っても出迎えをやめなかった。それが愛しくて可愛かった。

俺は日に日に弱っていくゴンが目に見えて分かった。餌や水はよく摂取していたが、歩き方、表情、吐息、その全てから、昔のような元気さを感じ取る事はできなかった。

⏰:09/04/16 15:09 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#71 [太郎]
4月7日朝7時半。
なぜかいつもより早く目の覚めた俺は、玄関に行き、ゴンに骨型の硬いガムを一つ投げてあげた。

ゴンは少しヨロヨロとガムを探し、見つけて口にくわえると、自分専用のマットに乗って噛み始めた。

俺は朝食を済ませ、二階の部屋に戻った。今日の予定は昼過ぎから自動車学校だ。まだ時間はかなりあったので二度寝をした。

1時間後――朝8時半。

「ゴンの様子がおかしいみたい!ちょっときて!!」

お母さんの叫ぶ声で目が覚めた。

⏰:09/04/16 15:16 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#72 [太郎]
俺は飛び起きて、急いで玄関へ向かった。

「もうダメかもね…」

お母さんは何かを悟ったように言った。

ゴンは地面に倒れていた。口からは嘔吐物、おしりからは血便、目からは涙のようなものが出ていた。足は完全に伸びきり、ピクリとも動かない。

だが息はしている。

「ゴンが死ぬ訳ない…」

そう言った俺も、どこかで覚悟していた。

⏰:09/04/16 15:23 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#73 [太郎]
息はしているが少しも動かない。お母さんが言うには、急に倒れたらしい。

「ゴン!大丈夫よ!」

そう言って横腹をさすってあげた。ゴンの横腹には肋骨が浮き出ていた。

「小さくなったね…ゴン。」

お母さんの言葉に涙が溢れ出した。止まらなかった。

そのまま15分くらい経っただろうか。今日にゴンは鳴き声をあげた。

⏰:09/04/16 15:29 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#74 [太郎]
すみません。訂正です。
「今日に」ではなく「急に」です。

⏰:09/04/16 15:30 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#75 [太郎]
「うゔ〜うゔ〜ワン!」

鳴き声と言えたのだろうか。うめき声にも聞こえた。ゴンが声を発したのは、この一回きりだった。

30分が経った。ずっと倒れたまま動かないゴン。もう病院につれていくしかなかった。

以前に予防接種をしてもらった病院に電話し、今の状況を伝えると、「今すぐに連れてきてくださいっ!」と言われた。

このまま連れて行く訳にもいかない。何かに入れて連れて行かなければ。

俺は倉庫から大きめのクリアケースを持ってきた。

⏰:09/04/16 15:37 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#76 [太郎]
もし急に立ち上がり、獣医さんに噛みつくといけないので口輪をする事にした。

以前、口輪をつけるのに失敗したので、今回つけれるかどうか心配だった。

俺がゴンの長い鼻に口輪をあてる。ゴンは何も抵抗しなかった。抵抗する力もなかった。それを見てさらに涙が出た。

次に倉庫から持ってきたクリアケースにゴンを移した。毛布でくるんで寒くないように工夫した。

この時生まれて初めてゴンを担いだ。こんなに重いとは知らなかった。

⏰:09/04/16 15:43 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#77 [太郎]
そのまま車の後部座席に乗せ、病院へ急いだ。ゴンは動かない。

「このまま死ぬのか?ゴン…お願いだから死ぬな!」

そう話し掛け続けた。俺の涙は止まらなかった。

10分ほどで病院に着いた。獣医さんが駐車場で待ってくれていた。

「ではすぐに第一診察室に連れて行ってください!」

病院に入ると、診察を待つペットたちとその飼い主たちがいた。

皆こっちを見ていた。「あぁ…可哀想に…」どこからか声が聞こえた。その声に俺は再び涙が出た。

⏰:09/04/16 15:51 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#78 [太郎]
ゴンの入ったクリアケースをお母さんと二人がかりで診察室まで運んだ。

ゴンは獣医さんたちの手によって、診察台に乗せられる。家族以外がゴンに触れるなんて初めての光景だった。

すぐに獣医さんはこう言った。

「瞳孔が開いています。脳はもう機能していません。危篤状態と言えます。」

それを聞いた俺は涙でグチャグチャだったろう。そこから色々な検査が始まった。

⏰:09/04/16 15:57 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#79 [太郎]
注射で血液をぬかれても動かない、何をされても動かないゴン。もうそこには昔のゴンはいなかった。

エコーで心臓を見る。少ししか動いてない。血圧が異常に下がっていた。点滴を始める。

急に獣医さんが「こっちにきて、ゴンちゃんの足先を触ってみてください」と言った。

言われる通り触ると……冷たかった。

「血圧が非常に低い為、血液を足先にまで送る事がてきていないのです。大変危険な状態です。最悪の覚悟はしておいてください。」

⏰:09/04/16 16:05 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#80 [太郎]
そう言うと獣医さんはまたエコーで体内を見始めた。

「この子は我慢強いんでしょうね。この子が今日倒れたのは、急にきつくなった為ではないと思います。今までは段々ときつくなっていくのを我慢してたのでしょう。そして今日、我慢の限界がきたのでしょうね。」

お母さんも泣いていた。この言葉はつらかった。そんなにつらかったゴンに気付いてあげれなかった俺は、飼い主失格だと感じた。

「では、ゴンちゃんは今日1日入院させます。原因はまだ分かりませんが、やれる事は精一杯やりましょう。ただ、入院したからといって、治る保証はありません。先程も言いましたが、覚悟はしておいてください。」

⏰:09/04/16 16:17 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#81 [太郎]
獣医さんは入院室に連れて行こうとゴンを抱きかかえた。ゴンの手足、首はぐったりしていた。

「よろしくお願いします…。」

お母さんはそう言った。俺は言葉にならなかった。

ゴンを入れて持ってきたクリアケースを手にとり、診察室を出る。

待合室には、元気な犬や猫がいた。それを見ると悲しくなった。

俺とお母さんは家に帰り、ゴンのいた玄関を掃除した。掃除の途中、食べかけの骨型ガムが落ちていた。朝、俺がゴンに投げてあげたやつだ。

⏰:09/04/16 16:24 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#82 [太郎]
食べている途中にきつくなったんだろう。そう考えると胸が苦しくて涙が溢れた。

玄関の掃除を終えると、家の電話に一件の留守電が入っていた。俺とお母さんは再生ボタンを押した。

「○○動物病院です。先程12時50分に、ゴンちゃんの心臓、及び呼吸が停止しましたのでお電話しました。この留守電を聞かれましたらすぐに当院までご連絡ください。」

死神の声に聞こえた……

⏰:09/04/16 16:31 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#83 [太郎]
お母さんはすぐに動物病院に電話をした。

俺は部屋に駆け上がり、整理できない気持ちを涙にして流した。

あまりに急過ぎるゴンの死。白内障にかかった時からどこかで覚悟はしていたが、まさかこんなにあっけないものとは想像もしていなかった。

15年間の思い出が一気に蘇ってくる。この気持ちのやり場はどこにもなかった。

「ゴンを迎えに行くよ」

階段の下からお母さんの力無い声がした。

⏰:09/04/16 16:38 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#84 [太郎]
迎えに行く途中の車の中、お母さんが言った。

「ゴンは役目を終えたのよ。最近は家も落ち着いてきて、あんたも将来に向けて歩き出した。ゴンはきっと安心したんだと思うよ。もう自分がいなくなっても大丈夫だ、ってね。」

聞き耳をたてて、一番家の事を知っていたのがゴンなら、一番家の事を心配していたのもゴン。ゴタゴタが続く家族をなごましてくれたのもゴン。それがゴンの役目だったんだろう。

病院に着くと、ちょうどお昼の休診時間で来診客は誰もいなかった。

⏰:09/04/16 16:55 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#85 [太郎]
待合室で少し待っていると、獣医さん2人にかかえられ、クリアケースで眠るように横たわったゴンが帰ってきた。

涙が出た。朝まで寝息をたててたゴンが、今ではもう呼吸もしていない。

「ゴン!」

と呼んだら飛び起きそうに思えた。

死因は不明。年齢からしても老衰と思えた。

眠るゴンは首輪をつけていなかった。いつか俺が買ってあげた首輪だ。

⏰:09/04/16 17:02 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#86 [太郎]
「あの…首輪は…?」

とたずねると、獣医さんが布に包んだ首輪を渡してくれた。

「今日、ゴンちゃんは天国に旅立ちました。首輪をつけたままではお花畑を走りまわれませんので、外させていただきました。」

獣医さんは言った。

俺は今までこの首輪でお前の人生を我が家に縛り付けてきた。やっと自由に走り回れるんだな…。

そんな事を思っていた。

その場で獣医さんが華を手向け、合掌した。

そして持ってきた食べかけの骨型ガムを、口のそばに置いた。

⏰:09/04/16 17:08 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#87 [太郎]
ゴンは家に戻ってきた。ゴンをいつもの玄関に置いてあげ、華を添えた。

家に帰った俺は、やけ眠たかった。気を張り疲れていたのだろう。そのまま部屋で寝てしまった。

夜、目が覚めた。やけに家が静かだ。遠くの犬の鳴き声まで聞こえる。ゴンがいないだけで、こんなにも静かなんだ。改めてゴンの大きさを知った。

玄関の前を通ると、ゴンは出迎えてはくれなかった。また涙が出た。

もう一回だけでいいから、尻尾を振って出迎えてくれ。叶わない望みだった。

⏰:09/04/16 17:15 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#88 [太郎]
次の日、ゴンの火葬を行った。俺は行かなかった。きっと本当は最後まで見届けるのが飼い主の役目だろう。だが、俺には耐えれなかった。火葬の付き添いは、お母さん一人にまかせた。

バイトから家に帰ると、ゴンはお骨として玄関にいた。線香と生前の写真が飾ってあった。

写真には元気な頃のゴンが写っていた。また涙が出た。

もうゴンが出迎えてくれる事もない、落ち込んだ俺を癒やしてくれる事もない、ジャーキーをあげる事もない。

この時初めて、ゴンは死んだんだと実感できた。

⏰:09/04/16 17:24 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#89 [太郎]
ゴンには今まで散々迷惑をかけられた。人を噛んだり、庭を抜け出したり。本当に手の掛かる犬だった。

しかし、最後だけは迷惑をかけたくなかったのか、寝たきりになって介護を求めたりする事もなく、倒れてからすぐに逝ってしまった。

変な言い方だが、いさぎよい死に方だった。

今思えばだが、ゴンはまさに家族にとって忠犬だった。家族以外になつくことはなく、家族以外を家に入れないように必死で吠え。

ゴンのおかげで、家族は安心して眠れたのだ。

⏰:09/04/16 17:32 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#90 [ゆき]


涙がとまりません

私も15年連れ添った犬を亡くした経験があります。

小説の1節1節すべてに共感します。

⏰:09/04/16 19:39 📱:921SH 🆔:qd62A186


#91 [ち_たン(`pω・´)]
ゴンちゃん主さんに
愛されて幸せそお!!

ウチも最近.大好きだった
愛犬亡くしたから
共感して泣きながら
読みました(´pωq`)

_

⏰:09/04/16 20:14 📱:DM002SH 🆔:510dTydU


#92 [太郎]
ゴンが死んでから2日たった。心のどこかにポッカリ穴があいてしまったように俺は頭の回転が鈍っていた。こんな自分は初めてだ。

何とも例えようのない感覚。確かに悲しい、寂しいとゆう感情ではあった。でもそれだけではない。

それと同時に、ゴンとの15年間が奪われたような感覚に襲われる。

ゴンは我が家にきて幸せだったのだろうか。

「ゴン!」

玄関に言ってみた。

⏰:09/04/16 21:22 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#93 [太郎]
当たり前だけど、返事はなかった。

ゴン、またお前が犬に生まれ変わるなら、またお前が我が家に来たいと思うなら、いつか生まれ変わったら、またここに帰っておいで。

ゴンが残してくれたのは、思い出だけじゃない。命の大切さ、生き物の儚さ、数え切れないものを教え残してくれた。

ありがとう。ゆっくりおやすみなさい。

15年間に渡る波乱万丈な日々はこうして幕を閉じた。

「ゴン!」

俺は今でも、この名前を呼んでしまう。

END...

⏰:09/04/16 21:32 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#94 [太郎]
読んでくれた方、ありがとうございました

文章読み返してみると、めちゃくちゃですね笑

今ゴンは納骨堂で安らかに眠っています

きっとお花畑を走り回ってることでしょう

⏰:09/04/16 21:37 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#95 [太郎]
犬を亡くされた方って多いですね

犬は家族ですもんね

コメントくれた方もありがとうございました

⏰:09/04/16 21:46 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#96 [我輩は匿名である]
読みながらめっちゃ泣きました
うちにも11歳の高齢犬がいます
私ん家の愛犬もゴンちゃんみたいに他人を見ると噛もうとしたりで病院に連れて行っても大変です
でもこれからも精一杯可愛がってあげたいと思います

⏰:09/04/17 01:43 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#97 [まい]
ォツカレ様☆
ゴンは最高な愛犬ですネッ\(^o^)/

めっちゃ泣きました(;_;)
人間の事、言葉は動物にはわからんってゅーケド絶対ちゃいますよネッ!!!!
愛情をぁげて喋りかけたらわかってくれるっ!!

まいん家も犬飼っとんやケド人くるたび吠えまくって大変↓
でももしもの日が絶対くるから今を楽しんで愛情いっぱい注いでぁげたいって思った★

⏰:09/04/17 02:08 📱:P905i 🆔:OwtV08r6


#98 []
今初めて読んで涙が止まりませんでした。
ゴンちゃん、すごく立派ですね。あたしは犬や猫が苦手だったのですが最近犬を飼いたいと思ってました。でもやっぱり別れは辛いですね。生き物を飼うにはそれ相応な覚悟がいると改めて感じました。
ゴンちゃん15年間おつかれさまでした。

⏰:09/04/17 02:46 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#99 [ゆか]
>>1-100

⏰:09/04/17 03:04 📱:SH903i 🆔:☆☆☆


#100 [ゆか]
一気に読みました
感動しました(´;ω;`)

⏰:09/04/17 03:35 📱:SH903i 🆔:☆☆☆


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