禁断って何？

｢うん。今から帰るとこだよ♪一緒帰る？｣

ニヤリとしたつもりだったけど、楢木は茹でダコ未満レベルに顔が真っ赤になった。

｢柴崎さんって…可愛い…よね♪｣

｢はぁ？｣

モジモジしてる楢木にイラッときた。

｢何が言いたいの？｣

普通の女の子だったら素直に喜ぶ言葉だ。

でも、シバは変な所でひねくれてるのか知らないけど、可愛いと言われてイラッときた。
実際女の子らしい容姿じゃないから、お世辞もいい所だわ…

楢木のモジモジは最高潮に達した。

｢あのさ、俺…柴崎さんのこと、ずっと好きだったんだよね｣

｢え？///////｣

好き…？
シバのこと好きなの？
うっそ…
ホントに？
え～？
でも、シバとか…
え～？
マジで？

ひねくれ者の自分だけど、好きとか言われたのは初めて！
シバは照れくさいやら恥ずかしいやらで、モジモジしてしまった。

お互いモジったまま、しばらく沈黙が続いた。

可愛いはお世辞にしても、｢好き｣というストレートな言葉が嬉しかった。

顔が赤くなってることは、自分でも分かった。
茹でダコとは違った赤らみだったと思う。

｢俺と付き合ってくれない？｣

｢はい！｣

恥ずかしながら、ノリで即答してしまった。

楢木と付き合うことになった。
翌日、学校中が騒がしい…

シバが教室に入るなり、同じバスケ部やらバレー部やらハンド部やらサッカー部やら野球部やらの連中が飛びかかってきた。

｢シバ彼氏できたの？｣
｢楢木でしょ？そうでしょ？｣
｢どっちから？｣
｢シバに彼氏とか、超ウケるんだけど(笑)｣

びっくりして当然だと思う。

シバはショートカット一筋で生きてきた女だし、１日１回は、

｢柴崎！股を閉じろ！｣

って授業中に先生に怒られるくらいだし…

授業中に退屈を感じると、シバは足を開いてデーンと座るからだ。
無意識なんだけどなぁ…

まぁ、とりあえず

｢ヒューヒュー♪｣

と言われる立場になったワケだ。

いざ周りからヒューヒュー言われると、照れくさいし恥ずかしい。
…けど地味に嬉しい(笑)

廊下で楢木とすれ違う時は、お互いニヤニーヤ。

楢木秀平…

みんなからはナラッキーって呼ばれてる。
中学に上がってから身長がグーンと伸びて、１８０近くある。
陸上部のエースで、細マッチョboy。

顔はタイプじゃないけど、全体的にはかっこいいオーラが出てる。

それからは、楢木がものすごくカッコ良く見えた。
恋の力なのかな？

キャラ的に言えば、ワンピースのルフィみたいな奴でした。

でも、お互い部活が忙しくて２ヶ月で別れた。
楢木のことを、１度も『秀平』って呼んだことがなかった。

名前で呼び合うことがこの時の夢だったのに…

なんとまぁ、純粋な恋をしていたのだろうか。

中３になり、また彼氏ができた。
３年生は部活を引退してる時期だった。

男子バスケ部の原口宏哉(はらぐちひろなり・仮名)

宏哉も身長が高い。楢木に比べればだいぶ厳つい体格だけど、かなり純粋で優しい男。

毎日一緒に下校したり、休み時間に話したり…
あ～、ホント純粋な恋しかしてないなぁ…