Chaotic
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#10 [まなか]
「んっ…あぁ」


棗は自分の心臓がものすごい速さで拍動するのがわかった。


ガタガタとトイレ全体が揺れているかのように男女の動きに合わせて激しい音が立つ。


女の喘ぎ声は段々と大きくなり、同時に棗は自分の下腹部が熱くなる感覚をひどく憎んだ。

⏰:07/06/20 22:11 📱:N703iD 🆔:KW05ByfI


#11 [まなか]
「あああぁ!イク!イクう!」

そう叫び声にも近い荒い声が聞こえると、それまでは息遣いだけの存在だった男が小さな声で
「中に出すぞ」と切れ切れに言った。

⏰:07/06/20 22:14 📱:N703iD 🆔:KW05ByfI


#12 [まなか]
暫くして激しい揺れが治まり、また始めのように男女の荒い息遣いだけが聞こえるようになった。

息を殺すことも困難なほど、胸が苦しく、いじめられても泣かない棗の目が少し潤んだ。

⏰:07/06/20 22:20 📱:N703iD 🆔:KW05ByfI


#13 [まなか]
あまりの苦しさに少しふらついた瞬間、足元に転がる、染みの着いたトイレットペーパーを踏みつけ、
「あっ」と間抜けな声が出た。





急いで息を止め、存在を消そうとしたが遅かった。

⏰:07/06/20 22:24 📱:N703iD 🆔:KW05ByfI


#14 [まなか]
斜め向かいのドアが再び鈍い音を立てると、足音が棗とトイレットペーパーの小部屋に近づいてきた。

コンコン

「大丈夫。出てきなよ。」
優しい声がする。
久しく聞かない優しい声だ。

心拍が急に穏やかになった。



棗はドアをそっと押した。

⏰:07/06/20 22:27 📱:N703iD 🆔:KW05ByfI


#15 [まなか]
視線をあげると、長いまつ毛と大きな瞳があった。

さっきまであんな激しい声をあげていたとは思えない整った口角があがり、
「一緒にする?」
そう一言が放たれ、棗の湿った手にひんやりと注射器があたった。

⏰:07/06/20 22:34 📱:N703iD 🆔:KW05ByfI


#16 [まなか]
後ろには見知らぬ男がたっている。
彼も整った顔立ちと長身、細身。

まさにお似合い。



そう一瞬思うと、急に彼らに近づきたくなった。

彼らが砂漠の中で神々しく輝く一本のミネラルウォーターの入ったペットボトルのように感じられた。




棗は小さく頷き、注射器を握った。

⏰:07/06/20 22:39 📱:N703iD 🆔:KW05ByfI


#17 [まなか]
男が手慣れた様子でガラスの小瓶をライターの火で炙ると、中の半透明な結晶が見る見る液化していくのが見えた。

きらきらと光を透かし、棗には美しいとも感じられた。




女が待ちきれないのか足をバタバタと鳴らすと、男は微笑み、棗を手招きした。

⏰:07/06/20 22:58 📱:N703iD 🆔:KW05ByfI


#18 [まなか]
恐る恐る男に近づくと、香水の匂いがふっと鼻腔を擦り抜けた。


男の細い指が棗の手を包み、導くようにして注射器のピストンを引いた。



すーっとなめらかに液体が入ってゆく。



男がすっと棗の手を引き、「あっこれくらいでいいのか」
と呑気なことを棗は思った。



早く、早くと女が急かし、男は棗の手から注射器を抜き取ると、にやにやと笑う女の白い腕に針を挿れた。

⏰:07/06/20 23:04 📱:N703iD 🆔:KW05ByfI


#19 [まなか]
液体は針の中心にある細い道を通り、女の体に流れる。

不思議な儀式を棗はただ眺めるだけだった。






針を抜くと、女は首をうなだれ、低く唸った。

⏰:07/06/20 23:06 📱:N703iD 🆔:KW05ByfI


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