【携帯小説】書き手の語り場V【集まれ(・⌒・)】
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#625 [◆vzApYZDoz6]
第一章〜プロローグの例〜
ピピピピピピピピピピ…
「………ん…」
布団の中から、手探りで目覚まし時計を探しだす。
瞼はまだ開かない。手先に触れるのはタタミの感触のみ。
ピピピピピピピピピピ…
何時にセットしたっけ。
そんな脈絡もない事を考えながら捜索する目覚まし時計。
耳にうるさいノイジーな電子音。
「早く止めて二度寝しよ…」
「フザけんなてめぇ」
呟いた瞬間に頭蓋骨に直撃した言葉と衝撃。
手には鳴りやまない目覚まし時計。
今しがた俺の頭に激突したものだ。
ああくそう、と嘆息吐いて起き上がる。
「なにすんだよ!」
「アンタが起きないのが悪いんでしょーが!!」
いつも通りのサイクルで、いつも通りのやりとりで、いつも通りの僕らの1日が始まる。
:08/07/22 04:55 :P903i :IR/H5Uy.
#626 [◆vzApYZDoz6]
パターン1『至極どうでもいい日常』
なんつーか、ベタな感じ。上の例みたく朝、目覚まし時計から始まる場合が多い。幼なじみがいる場合も多い。
学園物や世界系でよく見る、つうかそれぐらいしか使い道がないのかも。
このタイプのプロローグは、主人公の境遇や習慣を読み手にすんなり受け入れてもらえる、というメリットがある。
そういう意味では導入部として最適。
ただし、雰囲気的に使えるジャンルが限られる。ミステリーとかでは絶対使えなさそう。
そしてインパクトが弱い。読者を引き込むには押しが足りない。だって『どうでもいい日常』だもん。
でもこれが好きな奴も意外といるので(俺とか)、まぁ物は使いようって感じ。安定感はある。
:08/07/22 04:56 :P903i :IR/H5Uy.
#627 [◆vzApYZDoz6]
「おめでとう、君達は選ばれし者だ」
「訳の判らないままここへ来て、訳の判らないままここで死ぬ。それだけは、絶対に御免だ!!」
「三日以内に、この島のどこかにいる『内通者』を探し出せ。それが唯一のルールだ」
「もがいたって無駄さ…このゲームの優勝者は、最初から決まってる」
「ああ、だろうな……どう考えても、裏切り者がいる!」
「ふん、流石は川上京介だな。……いや、『調停者』と呼ぶのが正しいか?」
「生きるの! アンタは生きなきゃならないのよ! だから、行って! 行って、生きて帰ってきなさい!!」
――さぁ、ゲームスタートだ――
:08/07/22 04:56 :P903i :IR/H5Uy.
#628 [◆vzApYZDoz6]
パターン2『本編の会話の虫食いプロローグ』
これは、なんといっても引き込む力が強い。
個人で好き嫌いはあるだろうが、俺は好き。個人的に。
本編にプロローグの台詞が出てくるとアツい。
ただし、プロローグに出てきた台詞や単語によって、物語に制限が出る場合もあるので、そこは注意したいところ。
プロットはきっちり立てときたい。
早い話が、「台詞内で重要そうな語句を出したら、それを本編にも出さなきゃならないよねー」って事。
具体的には、中程の台詞にある『川上京介』と『調停者』。
川上京介という人物に、調停者という一種の『縛り』が出てくるわけだ。
そしてこのプロローグ最大の欠点が、話の含みを持たせられない、という点。
世界観や人物背景の説明がどうしても足りなくなってしまう。
本編でこの欠点をどう補うかが、作者の腕の見せ所。
でも引き込む力は抜群なので、個人的にはオススメ。
:08/07/22 04:57 :P903i :IR/H5Uy.
#629 [◆vzApYZDoz6]
ここに世界を滅ぼす事のできるスイッチがある。
裁断できるのは、目の前の彼だけだ。
「俺は死にたくないし押さなーい」
そこへ通りがけの猫がポチッとな!
「ネ、ネ、ネコスイッチぃぃぃぃぃぃ!?」
どっかーん。
こうして200X年、世界は核の炎に包まれましたとさ。
ちゃんちゃん♪
パターン3『いきなり系』
いきなり系と言っても、上の例のように『いきなり幕』がほとんど。いきなり主人公が死んだり。
もはやプロローグかどうかも怪しい。
ギャグ小説によく見られる。
意味が通じる文章があればいい方。大抵はワケワカメ。
インパクトを求めすぎてあらぬ方向へ行っちゃった感じだろうか。
しかし作者の腕(というかギャグセンス)次第で神作品にもなりうる。
実際、このパターンの神小説を俺は見た事があるが、もはや奇才。
まともな小説を書こうとするあなたにはオススメしないが、インパクトだけでいくならこれだろうか。
いや、それでも読み手としては感心できない。
:08/07/22 04:58 :P903i :IR/H5Uy.
#630 [◆vzApYZDoz6]
走っていた。
自分は逃げているのか、もしかすると追っているのかもしれない。
何のために走っているのか分からない。
脳が手足の制御に手一杯で思考を拒絶し、これ以上考えられない。
「はぁ……っ、はぁ……はぁ……」
よろめく事はあっても、転倒する事は許されない。
私はいつもと違うルートで家路につこうとしたのを、今更ながら後悔していた。
――『アレ』を見たとき、考えたのはそれだけだった。
女の腹から見えているアスファルト、地面に滴る赤い液体。
そしてその死体を片腕で持ち上げ口へ運ぶ、得体の知れぬもの。
確か私は、それが何なのか、赤い液体は何なのか、を悟る前に逃げ出した。
コンマ1秒足を竦めた後、すぐにその場から逃亡したのだ。
――『ソレ』を見たとき、考えたのはそれだけだった。
ため息まじりの大きな息を吐き、鎌首をもたげ前を見たとき。
もう2度と視覚したくなかったものが、2つ先の電柱の下で。
不規則に揺らめき、街灯に照らされ、私を見据えていた。
:08/07/22 04:59 :P903i :IR/H5Uy.
#631 [◆vzApYZDoz6]
パターン4『本筋に直接関係ない人の視点から始まるプロローグ』
うん、例だけじゃ本筋に関係あるかどうかなんてわかんないね。まぁ想像でなんとかしてくれ。
サスペンスとか、あとはバトルものなんかに起用されてる、ような気がする。
大抵はプロローグに出てくる人は死んでるか殺されてるか。
本編は警察の現場検証のシーンから始まったりとか。
この場合、主人公がどちら側にいるかが重要。
一般人か『アレ』側にいるのか。
一般人側なら『アレ』と戦うバトルもの。
『アレ』側なら空腹と理性の葛藤的な話。
:08/07/22 04:59 :P903i :IR/H5Uy.
#632 [◆vzApYZDoz6]
「計画は順調に進んでいる」
ビルとビルの間。町の喧騒から一歩遠退いた場所から、奴は言った。
表情は見えないが、声の響きからして厳格そうな雰囲気は伝わってくる。
「内々に事をすませるつもりか?」
路地の雑貨ビルの壁に背を預け、言い返す。
長い沈黙のあとに、重低音が返ってくる。
「それがあんたの望みだろう」
私は思わず笑い出す。
「……確かにな」
「俺はもう行く。…決行の日時は変えないぞ」
それだけ言って、男はまた道路へ歩を進めた。
無言で見送り、摩天楼を仰ぎ見る。
星一つない夜空が、吸い込むような黒味だけを身にまとっていた。
排気ガスの臭いが鼻をつく。
あの男からもこんな匂いがしていた気がする。
:08/07/22 05:00 :P903i :IR/H5Uy.
#633 [◆vzApYZDoz6]
パターン5『誰の視点か分からないプロローグ』
ミステリーや推理小説なんかの、『誰の視点か』が重要になってくる物語に最適。
『プロローグの持つ意味』が断然深まるプロローグ。
これを使いこなせれば一人前かもしれない。
パターン2と比べて引き込む力には欠けるが、それでもプロローグの意味をばらしたときの『なるほど感』はピカイチ。
二度読みした時はもう、プロローグだけですごいと思っちゃう。いや本当に。
パターン2と組み合わせて使うのもいいかもしんない。
インパクトを取るか、もしくはスロースターターな深みを取るか、作者の配分で変えてみても面白い。
余談だが、バブル期までは盛んだったこの手法は、バブル崩壊と共に減っていった。
不景気の煽りで小説というもの自体が書きづらくなったからだろうか。
しかし近年は景気の上擦りや金原ひとみ・綿矢りさらの直木賞受賞といった若手の台頭に乗せられて、小説の再燃と合わせこのパターンのプロローグが再び増え始めている。
流行に乗ってみるのもいいかもしんない。
:08/07/22 05:01 :P903i :IR/H5Uy.
#634 [◆vzApYZDoz6]
「ああっ、くそ丸太の……」
罠だ。そう言い切る前には既にPS2の電源ボタンへ手が伸びていた。
フッ、と真っ黒に染まるテレビ画面に、気だるそうな俺の顔が写った。
これで何回死んだっけ、俺のシレン。
モンスターハウスに丸太に落とし穴。その度に何回電源を落としただろうか。
「死ななば死ねぬ、電源落としてコンティニュー、っと」
ゲームって楽だなー。ぼやきつつ、気分転換にリモコンを手にとる。
ボタンを押して画面を切り替えると、スピーカーから流れてくるのは生真面目そうな男の声。なんだ、ニュースかよ。
『今年の自殺者の総数は5万を超え……』
「この世にゃコンティニューなんてねーもんなー」
とりあえず合掌してセンチメンタルに浸かってみる。
そんな、なんでもない風景。どうでもいい日常。
本当に、こんなものどうでもよかった。そのはずだった。
俺のPS2が目映いまでの光を放ち、俺があの──風来のシレンの世界に、飛ぶまでは。
─『world,continue?』─
:08/07/22 05:02 :P903i :IR/H5Uy.
#635 [◆vzApYZDoz6]
パターン6『突然崩壊する日常』
これは(パターン4あたりもそうなんだけど)実在する小説やネット小説から拝借した。無断使用ごめんなさい。
ファンタジーや危機系(世界崩壊など)のプロローグで見られる。
トリップ系(主人公が別世界に飛ぶ類の小説)では、このパターンが定石になっている。
プロローグは日常描写(いつも通り)から始まる。
その方が非日常の『異常さ』を際立たせられるからだろうか。
本編が一人称の場合と、三人称の場合がある。
この場合、本編が一人称なら謎解きなんかのミステリー要素が強くなり、三人称ならモンスターと戦うなどバトル要素が強くなる。
とにかく、可もなく不可もなくって感じ。
インパクトも含みもそれほどではないが、無難にいくならこれがいいかもしんない。
簡単なプロローグなので素人にもオススメ。
ただしプロット0でも書けちゃうプロローグなので、安易に書き始めると詰まる。まぁ普通そんなことはないだろうけど。一応、ね。
:08/07/22 05:02 :P903i :IR/H5Uy.
#636 [◆vzApYZDoz6]
「覚えているか? お前は昔から無茶ばかりしていたよな」
誰かの墓前で、男、内藤篤史は豪快に笑う。
墓に捧げるための花束だろうか。それを大きな肩に担ぎ上げ、荒くれ者の格好をした内藤は自分の無精髭を撫で付けた。
そして内藤は目を閉じる。
死者に黙祷を捧げるためだろうか。
いや、それもあるかもしれないが、本当は――
「まぁ、今になってみればいい思い出だ」
墓に眠る、死者との思い出を回想しているのだろう。
クックッと思い出し笑いにも似た含み笑いが漏れる。
ウォルサーの要塞の時は最悪だったな。ああ勿論、歌箱の戦いも忘れちゃいない…
呟くように、ぽつりぽつりと言葉を漏らす。
背後から足音と人声の喧騒がやって来る。
内藤は、やっとお出ましか、と頭を掻いた。
「なぁ、川上」
内藤に呼応するように、墓場に一陣の風が駆け抜ける。
もう秋口だというのに、その風は春先の、芽吹きのそれとよく似ていた。
3年前の春、川上と内藤が、初めて出会ったあの時の──
:08/07/22 05:03 :P903i :IR/H5Uy.
#637 [◆vzApYZDoz6]
パターン7『未来から始まるプロローグ』
ファンタジーや冒険活劇によく見られる。
本編は、プロローグで登場する人物の回想として進む場合が多い。
幕間として回想者(語り手)や重要な登場人物の現在が語られる場合も。
個人的に大好物のプロローグ。
回想する場所は酒場だったり墓場だったりそれぞれ違いは出てくるが、大抵の場合、語り手は相当の手練れ。
プロローグでセピアな感じを出すにはちょうどいいからだろうか。
ただし、このプロローグを使うと、重要人物の安否が知れてしまう。
この場合だと、内藤は最終的に生き延び、川上は最終的に死ぬ事がプロローグの時点で決定してしまう。
つまり、語り手である内藤が絶体絶命のピンチに陥っても、絶対に助かると暗に読者に知れてしまうのだ。(プロローグで語り手の過去の回想だって言ってるわけだから)
山場の盛り上がりが少し欠ける場合があるので、そこら辺は注意点として留意しておきたいところ。
そして回想なわけだから、やはりプロットをきちんと立てておかないと後々困る事になるので注意すること。
でもこのプロローグは個人的に好きなのでオススメ。
:08/07/22 05:04 :P903i :IR/H5Uy.
#638 [◆vzApYZDoz6]
「──こんな話をご存知ですかな?」
声がする。声の主の姿は見えない。
暗闇、否、私は今『黒』の中にいた。
「──あらゆる場所に扉は繋がっている」
男か女か、少年か青年かの区別すらつかない、没個性的な声。
私は、私の指標すら掴めず、黒の中にいた。
「──例えば部屋、例えば外、例えば迷宮。例えば──ここ」
お話をしましょうか。そう言って声は笑う。
私は今自分がどんな姿勢なのかすら分からずにいるのに、確かなのは不確かな声だけ。
「──扉の時空は、簡単にズレてしまうものなのですよ」
今回はそんなお話です、と声は言った。
ここには多分、声と私と黒しかいない。
:08/07/22 05:05 :P903i :IR/H5Uy.
#639 [◆vzApYZDoz6]
パターン8『ストーリーテラーを交えたプロローグ』
ミステリーなんかに多く見られる。
有名所を挙げるなら『世にも奇妙な物語』がこれ。
この場合でいう『声』が、世にも(ry でいう『タモリ』にあたる。
短編集の前フリには有効な手段(というか『世にも(ry』がまさにそれ)。勿論、長編にも使える。
長編の場合だと、ストーリーテラーはプロローグの他に幕間、エピローグに登場する。
使おうと思えばファンタジーにも当てはめられるし、意外とオールマイティーなプロローグ。
この手法によって、物語の奇妙さ・不思議さを全面に出せるのが最大の利点。
『私』とストーリーテラーとの会話形式にすれば雰囲気が柔らかくなるので、他のジャンルにも使いようはある。
欠点らしい欠点も特に見当たらない、『万能型』のプロローグと言えるかもしれない。
:08/07/22 05:06 :P903i :IR/H5Uy.
#640 [◆vzApYZDoz6]
1992年3月4日
後に国際テロ組織『ウォルサー』の代表となるグラシア、生誕。
2002年9月19日
『ウォルサー』による無差別同時多発テロ発生、日本国首都・東京に大打撃。
同日、『ウォルサー』犯行声明文発表。
2006年7月31日
『空白の1日』。
後に『世界平和最終日』。
2008年7月31日
ソ連の戦艦『フライシャーク』アメリカ進撃。
〃 8月2日
アメリカ、これをうけて報復。航空母艦『エアロ』東京入港。
〃 8月4日
これに反対運動。死者に多数を出した抗議デモが麻布にて行われる。
〃 9月19日
米露戦争が激化の一途を辿る。
〃 10月21日
自衛隊の一部が『解放軍』として独立。
〃 12月24日
渋谷・浅草・新宿の3区にて武装蜂起。後の『ブラッディ・クリスマスイブ』。
2009年 1月 1日
東 京 、 独 立 。
──不毛な世界に生まれ、僕達は出会った。
それでも僕達は生きている。『東京』で、毎日を生きている。
:08/07/22 05:07 :P903i :IR/H5Uy.
#641 [◆vzApYZDoz6]
パターン9『年表・歴史表から始まるプロローグ』
戦争ものや、アクションものに多く見られる。
小難しい印象を与えるかもしれないが、硬い戦争ものならば一番フィットするプロローグ。
現代を舞台にした戦争ものやなら、第二次世界大戦で日本が勝利していたりなど、ある地点から歴史が変化している場合が多々ある。
このタイプのプロローグは作品の幅を狭める行為だと言う人が多い。
確かに年表を使うと過去の出来事をガチガチに固めることになるし、よもすれば作品の幅(というより登場人物の行動の幅)を狭める事に繋がり得る。
だがこの手法は、世界情勢を端的かつ率直に伝えられるもの。
『この作品はこういう雰囲気なんです』っていうのをストレートに伝えられるという、含みに関しては最大のメリットがある。
ある程度のデメリットは確かにあるが、そこはストーリーの展開にすべてが懸かっている。
上手い人がこの手法を使えば、効果的な伏線にもなる。
要は『肉を切らせて骨を絶つ』って感じ。
歴史表でストーリーの大まかな流れを読み手が知る事になるので、それを逆手に取って、いかに『読み手を(いい意味で)裏切る』かが重要ポイント。
使いこなせれば強いタイプの手法で、展開力・演出力があるような玄人向けのプロローグの1つ。
個人的にはかなり好きなプロローグ。
:08/07/22 05:08 :P903i :IR/H5Uy.
#642 [◆vzApYZDoz6]
『モノがついているかついていないかは問題ではない。それはただの小さな問題でしかない。
女は、女であるが故に女なのだ。』
──男なのに女子校に入学しちゃった!?──
パターン10『言葉で始まるプロローグ』
俗に『エピグラム』と呼ばれる手法。
実在した偉人、あるいは物語上のキーワードが当てはめられる事が多い。
パターン2の亜種と捉える人もいる。
このプロローグの注意点はただ1つ。
『プロローグの言葉が全編に渡って共通されていなければならない』という事。
早い話が、プロローグの言葉と本編とを結び付けた方がいい、ということ。
それにはキーワードを繰り返すのが一番手っ取り早い。
最終話にプロローグの言葉が出てくるとかなりアツい。
決定的なキーワードを読み手に植え付けられるのが強み。
つーか誰かこんなハーレム物書いてくれ。
:08/07/22 05:11 :P903i :IR/H5Uy.
#643 [◆vzApYZDoz6]
瓦礫と爆音のみで埋め尽くされた廃墟の町に立つ男の姿があった。
満身創痍。肩の力は既に無く、腕が力なくぶら下がっている。
遠くの方で聞こえてくる爆音、銃撃音、剣檄音。
味方のものか、敵のものかすら分からない。
思考が形を成す前に、ワルツのように崩れていく。
不意に、直立不動だった姿勢が予兆もなしに崩れ落ちた。
そのまま大地に体を打ち付け、爆風で砕けたコンクリートの瓦礫だけを視界におさめ、川上は小さく息を吐いた。
「──…やく、そく…」
それを果たすには少しばかり時間がかかりそうだ。
否、一眠りしてからでも間に合うかもしれない。
疲労しきった頭がそんな思考を勝手に描く。
だがここで遅れる訳にはいかなかった。
必ず、彼女の元へと行かなければならない。
「約束は……守るから……」
血と硝煙の匂いだけが鼻につく戦場で、疲労した手足を励まして、騙し騙しに立ち上がる。
人1人の重量すら支えきれずに折れそうになる足を、前のめりになって踏ん張る。
その拍子に、配給された安全帽がズレ落ちて、視界に黒い幕が降ちた。
そうして思った。
そういえば、と。
普段の涼しさをかなぐり捨てて、約束してくれと万一にすらない可能性に自分に縋った彼女との出会いも。
丁度こんな感じの、血と硝煙と瓦礫にまみれた、クソッタレの戦場だった。
:08/07/22 05:11 :P903i :IR/H5Uy.
#644 [◆vzApYZDoz6]
パターン11『山場から始まるプロローグ』
冒険ものや戦争ものでよく見る。大抵が主人公の一人称だったりする。
パターン7の亜種と捉える人もいる。
一人称の場合、回想から始まる場合が多い。
回想から始まるプロローグの注意点についてはパターン7に言及してある。参考程度に。
この手のプロローグでパターン7と決定的に違うのは、語り手の境遇にある。
パターン7ではある程度の事が終わってからになるが、これでは山場、つまり語り手がこのあとどうなるか分からない状況にあるという事になる。
ぶっちゃけ、この直後に主人公が死んだって構わない。
:08/07/22 05:12 :P903i :IR/H5Uy.
#645 [◆vzApYZDoz6]
まず『存在』という概念を作り、続いて何もない空間を造って、世界を創った。
全てはただの暇潰し。
この世は卓上のボードゲーム。
対戦相手は勿論、憎さ余って可愛さ100倍のお前ら人類。
さぁ、始めようか。生きるか死ぬか、デッドオアアライブな生き残りゲームを。
所詮はただの暇潰しだ。
──カミサマのゲーム──
パターン12『神による三人称』
とりあえず厨設定ごめんなさい。
語り手が『神』の三人称プロローグ。
パターン8の亜種として捉えてもよし。
ミステリーの特に日常を主軸にした生き残りものだとか、推理ものだとかによく見られる。
このプロローグの利点は、人知を超えた者の存在とそれに連なる展開を読み手に知らせられる、という点。
ただあんまりやりすぎると厨臭さが出てしまうので注意。
それを逆手に取るかどうかまでは知らないので勝手にやってくれ。
あとこれ系って、絶対最後に小説タイトル持ってくるよね。
:08/07/22 05:12 :P903i :IR/H5Uy.
#646 [◆vzApYZDoz6]
「セリナ…お前にプログラムした命令は『俺の命令を守る事』だ」
消毒液臭い手術室の前で、今しがた手術を終えたばかりの私に男はそう告げた。
説明されてもどうせ抗えないのに何を今更、と言いそうになる口を抑えて、返事の代わりとばかりに自分の左腕を見た。
病院着のようなシャツの袖から、金属の腕が出ている。
「私は──一体、何者だ?」
「お前の『個』は既に失われた。今のお前は、ただただ命令に従い殺戮の限りを尽くすであろう、罪深き死人だ」
にやつきながら言う男の正面を向くのに嫌気がさし、自分の隣のベッドに視線を移す。
ちょうど自分と同じような改造を施された男が、昏々と眠り続けていた。
「それならば、ここにあるのは全てただの屍。……無機物に法は通らんよ」
「ハハァ、開き直ったもんだな、セリナよ」
「ふん」
目の前の男とこれ以上会話を続ける気にはなれなかった。
隣のベッドに眠る男の頬に無意識に触れていたのは、その意思の現れかもしれない。
不意に、眠っていた男の瞼がぴくりと動く。
新たな屍が、目を醒まそうとしていた。
:08/07/22 05:14 :P903i :IR/H5Uy.
#647 [◆vzApYZDoz6]
パターン13『悪役視点から始まるプロローグ』
ヒーローものやアクションものに見られる。
本編はうって変わって正義サイドから始まるのがセオリーだが、例外もある。
それが上の例のような、主人公(この場合セリナ)が悪役サイドにいる場合は、この限りではない。
主人公が正義サイドの場合
・大きな陰謀臭
・正統派仮面ライダー的な
主人公が悪役サイドの場合・悪にも悪でいろいろある
・ヒールなりの葛藤
な物語展開や雰囲気を、何となく読み手に印象付けられる。
欠点は特にないけど、使えるジャンルはある程度限られるので、万能型とは言いづらい。
でも使いやすい。プロット段階で敵味方がハッキリしてるなら使ってもいいかも。
:08/07/22 05:14 :P903i :IR/H5Uy.
#648 [◆vzApYZDoz6]
Humpty Dumpty sat on a wall,
ハンプティダンプティ塀の上
Humpty Dumpty had a great fall.
ハンプティダンプティ落っこちた。
All the king's horses,
王様の馬を全部集めても
And all the king's men,
王様の兵隊を全部集めても
Couldn't put Humpty togetheragain.
ハンプティは元に戻せない。
パターン14『歌や詩から始まるプロローグ』
とりあえず、無断拝借ごめんなさい。
有名所に『ひぐらし』がある。
有名じゃないって? 知らないね。勝手にやってくれそんな話。
パターン10のエピグラムに似た、というか同じ手法。パターン10の亜種と考えてよし。
パターン10みたいなただの言葉よりも少し複雑化するので、読み手が汲み取れるプロローグの『意味』がパターン10に比べると少ない。
しかしある種謎かけのようなこの詞を本編に取り込めて、なおかつ綺麗に意味を消化できれば、読み終わったあとの満足感というか『納得感』みたいなのは格段に上がる。
それにはやはり展開力と構成力が必要不可欠。
パターン7と同じく、畳み掛けるような展開力がある玄人向けのプロローグ。
素人が安易に手を出しがちだけど、あんまりオススメできない。
:08/07/22 05:15 :P903i :IR/H5Uy.
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