『ごめんなさい』なんて、言いたかねぇよ
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#11 [黒猫◆JUDE8gLNR.]
カルマ
僕がくしゃみをする事で
どこかの誰かが傷ついたり
僕が食事をする事で
どこかの誰かが餓え死んだり
僕が舌打ちをする事で
どこかの誰かが憤ったり
そんな事を考えると
僕は何も出来なくなって
息を止めてみたりするけれど
テレビの中の戦場では
相変わらず人が死んでいて
それでも腹は減るから
飯の度に罪悪を感じて
ごめんなさい
僕は知らない誰かの命を救う為に
餓死も出来ない人間です
なんだか辻褄の合わない
訳の分からない気持ちが
胸の中で内部紛争
動悸がうるさい
僕がこんな事で頭を 抱えて
もうずっと眠れないのは
きっと地球の裏側で
誰かがくしゃみをしたせいだ
:12/06/13 18:59
:T006
:WgKr8JGs
#12 [黒猫◆JUDE8gLNR.]
奇跡
僕の奇跡は言い訳だ
どうしようもない状況で
救いようも無くて
それでもまだ
どうにかしたいと願う力だけが残っているなら
全てが奇跡だと言い張るしかないじゃないか
些細な事で傷つく弱さも
すれ違いざま肩がぶつかった男の舌打ちも
どこか遠い国の戦争も
季節の変わり目に止まらない咳も
ふがいない自分も
全てが奇跡だと言い張るしかないじゃないか
でも
全てが奇跡なら
奇跡なんか無いってのと同じだな
って、気が付いたのはつい最近
何も変わらねぇな
って言いながら
何も変わらねぇな
って言えている自分に驚いた
:12/06/13 18:59
:T006
:WgKr8JGs
#13 [黒猫◆JUDE8gLNR.]
クリスマス
人は生きている間
毎秒罪を犯しているとして
一分で
六十の罪があるとして
一時間で
三千六百の罪があるとして
一日で
八万六千四百の罪があるとして
三百六十五日で
三千百五十三万六千の罪があるとして
それを洗い流すのが
年明け前に降る雪だとしたら
新年に皆が清々しい顔をして笑っているのも
無理やり頷けない事も無いな
だから僕は
雪の降る街が好きなんだよ
罪悪だらけだもんな
:12/06/13 18:59
:T006
:WgKr8JGs
#14 [黒猫◆JUDE8gLNR.]
ポルノ映画の看板の下で
空虚な目で見れば
そりゃ世界は空虚だ
空虚な目で見て
空虚な足で歩き
空虚な無学さで
空虚な憂いを歌い
空虚な褒め言葉を頂いて
空虚な自尊心をやっとこさ満たし
空虚なこの街で
空虚な女の子と
空虚な人生の岐路で
すれ違う事も良くある空虚
僕が見ている世界と
同じ世界を彼女は見ているのだ
という過敏な自意識も
だらしない程にまた空虚
:12/06/13 19:00
:T006
:WgKr8JGs
#15 [黒猫◆JUDE8gLNR.]
ワンルーム叙事詩
中村橋駅徒歩十分
僕の愛しいボロアパート
ここ三日
扉も開けず
誰とも話さず
僕を縛り付けて
身動き取れなくさせる記憶が
必ずしも悪いものではない事に絶望するよ
退出時に支払う費用は
この数年溜め込んだ楽観で
ベランダに積んだ資源ゴミは
ふとした時、顔を出す感傷で
眠れない夜に数えた天井の染みは
癖になった溜息で
換気扇の薄茶けた油汚れは
必死になって追いかけた馬鹿な夢だ
なんにしたって
どこへ逃げるにしたって
扉は開けなくては
:12/06/13 19:00
:T006
:WgKr8JGs
#16 [黒猫◆JUDE8gLNR.]
真っ白な世界
朝、目が覚めたら雪が降っていて
路上ライブに出かけようと思っていた僕は
舌打ちをしながら車のエンジンをかける
青森駅までの二時間半
窓を柔らかく打つ追慕
打ちのめされて
打ちのめされて
それでも
それでもって
足を引き摺って
何とか踏み出したのはいいけれど
一向に光は射さず
そんなあれこれを
ワイパーが開き直りの速度で蹴り飛ばし
やらなくちゃと言う脅迫観念だけで
僕の生活は一方通行の命を前進する
夕方六時
いつもの場所で
いつもの歌を歌う頃
そこは真っ白な世界
:12/06/13 19:00
:T006
:WgKr8JGs
#17 [黒猫◆JUDE8gLNR.]
アノミー
僕は自由を手に入れた
一仕事終えた後の一服の自由を手に入れた
朝露のビールを飲む自由を手に入れた
晴天のどこまでも続く荒野で、
東西南北、何処へでも歩き出す自由を手に入れた
むなしい歌を好きなだけ歌う自由を手に入れた
自分を殺す自由を手に入れた
咎める人は誰も居ない
阻む物は何もない
そんな自由を手に入れた
僕らは孤独をおもちゃのようにもてあそんで
さもそれが、与えられた免罪符かのように
自慢げに見せ付けるけれど
君の自由は誰かの自由ではないか
君の脳みそがインターネットではなく、
君の脳みそがワイドショーではなく、
君の脳みそが週刊誌ではなく、
家族や、友人や、恋人や、
君自身が愛するものであることを願う
:12/06/13 19:00
:T006
:WgKr8JGs
#18 [黒猫◆JUDE8gLNR.]
さくら
僕らは、望んだものの半分も成し遂げられないまま
大人になった
それでも、まだ終わっていないよ
まだ息はしているし
走る事だって出来る
あれから学んだことも多いし
それが武器になる事だって知っている
必死になって転んだ時ほど
滑稽だって事も知っているし
笑われる事が、傷つくに値しない事も知っている
唯一つ
諦めたってだけじゃないか
いずれにしても立ち去らなければならない
あるいは「旅立つ」に変えてもいいし、
「逃げ出す」でも別に構わない
好きにしたらいいよ
君の都合が良いように
僕らに必要な言い訳を早く選んで
ここじゃないどこかへ行く為に
:12/06/13 19:01
:T006
:WgKr8JGs
#19 [黒猫◆JUDE8gLNR.]
ピアノ泥棒
投げやりになって
何かをしでかしたいと思った
どうせ、のたれ死ぬだけの
くそったれの人生
結果なんてどうでも良くて
ただ、逆恨みと顕示欲だけの
どうしようもない情動
自分自身のせいか
世界のせいか
結果は大分違うだろう
どちらにしろ、酷いものだけれど
その境界線付近をうろつく
ろくでもない無垢な幼児性どもが
それでも幸福にすがりつく様を
無様と笑うかい
しくじったこの場所で終わるか
いずれ来るはずの、
満たされた幸福のうちに終わるか
ハッピーエンドってのは
僕らの墓石に刻む
日付ほどの価値しかない
だったら僕の終わりは
もう少し先でいい
:12/06/13 19:01
:T006
:WgKr8JGs
#20 [黒猫◆JUDE8gLNR.]
この街で生きている
あれから色々あって
また振り出しに戻ったよ
昨日新しかった街が
今日は懐かしい街になってしまった
「懐かしい」が増えていって
「懐かしい」が入れ替わって
新しい「懐かしい」に戸惑いながら
歩いている今日、この場所でさえ
いずれ「懐かしい」になってしまうんだから
この、戸惑いながらの一歩でさえ大事にしなくちゃな
懐かしい歩道橋を渡り切って
懐かしい駅前にある
懐かしいタクシーロータリーの
懐かしい喫煙所で
そんな事を考えていたよ
君は今どこだ?
僕はここだ
「懐かしい」ではない
この街で生きている
:12/06/13 19:01
:T006
:WgKr8JGs
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