星とぽんず
最新 最初 🆕
#1 [七瀬]
どうも、初カキです!!
未熟者だけど
がんばります(´∀`)

趣味として書きますので
更新は遅くなる時も
あります↓↓
ご理解ください。

また中傷、荒らしは
止めてね(ノд<。)゜。

⏰:09/02/26 21:27 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#2 [七瀬]
「柚子はすごいなあ」

あのおじいちゃんの
顔が今でも忘れられない。

あれから10年。
今の私は…。

⏰:09/02/26 21:31 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#3 [七瀬]
「おーっ!!
やっぱり松田は最高だ。」
松田柚子(マツダユズ)
中3。

今、先生のヒグマに
誉められてます。

みんなの目も
私に向けられている。

イェイ!!

⏰:09/02/26 21:36 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#4 [七瀬]
今は技術の授業中。

私の作ったイスは
小さいけれど凝っていて、自分でいうけれど
中々いい出来だ。

ほんとは本立ての
つもりだったんだけど、
余ってる木を見たら
勿体なくって。


作っちゃいました。

⏰:09/02/26 21:43 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#5 [七瀬]
こんくらい
チョロい。チョロい。
全然よゆーっ!!

技術だけは2年間
好成績をキープしている。今年も楽勝だな。

と思っていると……

バチッ
『痛っ』

「まったく勝手に使って。」とちょっと睨むヒグマ。

⏰:09/02/26 21:50 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#6 [七瀬]
『えーっ。
誉めてくれたじゃん。』

「まあ確かに
切れ味も綺麗だし、
細かい所も出来てる。」

ヒグマの睨みが強くなる。

「でもなぁ…。」

キンコンカーンコーン

ナイスタイミング!!
ラッキー!!
と思ったのも束の間。

にやっと笑うヒグマ。
「松田。放課後、技術室な」

さいあーくっ!!

⏰:09/02/26 21:56 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#7 [七瀬]
『はぁ…。』
ため息をついてると、

横から「最悪だなーっ」
と高い声。

林原だ。

『うん、最悪』
げんなりと言うと、

「また掃除だろー??
お前、ヒグマのお気に入りだもんなあ。まっ、頑張れよーっ」
と軽く去っていた。


まるで嵐のようだった。

⏰:09/02/26 22:02 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#8 [七瀬]
なんなんだ。笑
あいつは。

林原幸夫(ハヤシバラユキオ)
同じく中3。

私の友達??
かなあ?

わかんないわ。


掴み所なくて、
普段はぼぉーっとしてる。

謎男。

でも良いヤツだよ。

⏰:09/02/26 22:06 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#9 [七瀬]
放課後。
嫌々、技術室へ。

「来たか、松田
掃除手伝ってくれ。」

ヒグマと一緒に
広い技術室に散らばる
木のくずを掃く。

するとヒグマがいきなり、
「お前、高校はやっぱり
工業科にするのか?」
といきなり真面目な質問。

⏰:09/02/26 22:11 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#10 [七瀬]
んー。受験かあ。
全然、頭に無かった私は、

『そうですね、
まだ考え中だけど
親と相談してみます。』

と適当に返事をした。

ふーん、と
自分から言いだしたくせにそもそも担任なのに
興味なさげにヒグマは返した。

30分後、
解放された私は帰宅した。

⏰:09/02/26 22:17 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#11 [七瀬]
『ただいまー。』

「お帰り。」
お母さんが台所で言った。

父、母、姉、私。

父は普通のサラリーマン。母は専業主婦。
姉は高校2年生。

ふと窓の外を見ると、
工場があった。

「松田鉄工業」の看板が
無くなってるなあ、
淋しくなる。

去年までもう一人、
私たち松田一家にはおじいちゃんという家族がいた。

⏰:09/02/26 22:24 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#12 [七瀬]
部屋に行き、
制服も着替えず、ベットに倒れこむ。
一気に目を閉じる。



記憶が蘇ってきた。





12年前の3歳。
はじめて見た灰色の景色。油の匂いが鼻をつく。

⏰:09/02/26 22:29 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#13 [七瀬]
私はおじいちゃんに
連れられて初めて
「松田鉄工業」に来た。

3歳ながら、
私は胸が高鳴った。

機会が同じリズムで動く音がとても心地よかった。

おじいちゃんは笑顔だった。


お母さんの危ないという声を無視してほぼ毎日、工場に行った。

といっても
やっぱり危ないので
端っこで見てるだけだったけど。

⏰:09/02/26 22:35 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#14 [七瀬]
小さい工場でおじいちゃんと従業員、2人ぐらいで働いていた。

おじいちゃんは昔から私みたいに技術が大好きだった。そして建築の仕事をしたくて工業全般の勉強をらしい。

けれども結局、挫折してしまい、勉強したことを生かし、この工場を作った。

という話をお父さんから聞いた。

お父さんはまったく工業には興味はなかったから、工業は継がなかったし、
おじいちゃんも無理強いはしなかった。

⏰:09/02/26 22:42 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#15 [七瀬]
でも私には色々教えてくれた。

なんでだろう。
また工場に行ったから?

わからない。
けれどおじいちゃんは
いつも優しい笑顔で教えてくれた。

5歳になる頃には私は、ノコギリを使って木を切れるようになってた。

とはいえ、まだ5歳だし小さくて細い木を小さいノコギリで切っただけだけど。
でも誉められてうれしかったし、
ますます技術が好きになった。

でも去年おじいちゃんは
亡くなった。

⏰:09/02/26 22:47 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#16 [七瀬]
今でも信じらんない。

あんなに元気だったおじいちゃんが。
急に。

78歳にはとても見えない様子でおじいちゃんは毎日、大きな機械を動かしてた。
なのに、あっという間だった。


おじいちゃんがいなくなった今、工場は閉鎖され、従業員も、もちろん首になった。

今も着々と工場の取り壊しが進んでいる。


私はそれを見るたび、
憂うつになる。

⏰:09/02/26 22:53 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#17 [七瀬]
     
  
       

7月の中間。
第2回進路懇談が行われた。

第1回は私とお母さんの口喧嘩、そしてヒグマとの睨み合いで終わってしまった。


今回はなんとかしないと。

「どっか行きたいところはないのか。」
ヒグマの言葉の後、
沈黙が続く。

とうとう観念した私は口を開いた。

⏰:09/02/26 22:58 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#18 [七瀬]
『笑わないでね。』
私はお母さんとヒグマを軽く威嚇した。

笑わないよ、いうように2人はうなずく。

『私……、
 
 
電気工学を学びたい!!』

2人を見ると、
目を見開き、口はあんぐりしていた。

「電気……工学??」
とお母さん。

「お前本気か。」
とヒグマ。

⏰:09/02/26 23:05 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#19 [七瀬]
「工業科だろうとは思っていたけど、まさか電気工学とはなあ。」と口元に薄ら笑みを浮かべるヒグマ。

お母さんは相変わらず、目を大きく見開いている。


私の住んでいるところは田舎だけれど近くに工業で有名な高校が一高あった。

J高校。

他にも工業科があるところはあるけれどJ高校ほどではない。

⏰:09/02/26 23:16 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#20 [七瀬]
それに工業科にしては、賢い。

私の成績じゃあ足りない!!

でも、それ以外にも理由があった。

それは
     
   
  
“ほぼ男子校”
  
 
“ほぼ”というのは、

共学だけども女子で工業科を受ける子がほとんどいないからだ。


建築デザインや、
理数工学ならまだしも、

機械や電気については
去年は0。
その去年も0。
そのその去年も0。

それについては、J高だけでなく工業科についはみんな同じだけれども。

⏰:09/02/26 23:24 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#21 [七瀬]
  

 
 
さ…
さ、さ……
34点!!


なんなんだ、これは!
いくらなんでもひどいっ
ひどいぃーっ!!

今、英語のテスト
撃沈中です。

ほんと泣きそう

先生の解説を聞かず、
机に顔を伏せる。

⏰:09/02/26 23:38 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#22 [七瀬]
楽しい楽しい夏休みが明けいきなりの課題テスト。

一気に夢から現実へ。

まったく勉強しなかったわけじゃない。

宿題はきちんと自分の力でしたし、復習だってしたつもりなのに〜!!

とふと前の席の林原を見ると同じく顔を伏せていた。
なんだ、あいつもかあ〜っと安心し声をかけてみることに。

⏰:09/02/26 23:43 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#23 [七瀬]
『はやしっばら!!』と妙に声が高くなり、バカみたいな声が出てしまった。

林原はマイペースに振り向くと、いつもの高い声ではなく少しかすれた声で「何?」と聞いただけだった。
『英語、何点??』

林原はしばらく黙り込んだ後、無表情で

「松田は?」と聞いた。

ギクっ!!

⏰:09/02/26 23:49 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#24 [七瀬]
『あっ!!
どこの高校受けるか決めた?』と話をそらすことに。

林原は話題転換に気にも留めず、ダルそうな声で
「あ〜、J高」
と言った。


え!?
まじでっ??という驚きが、つい口から出てしまった。

「うん、まじで。」と林原は言った後、また机に顔を伏せてしまった。

⏰:09/02/26 23:54 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#25 [七瀬]
なんだ。ライバルが1人、増えてしまったではないか。

窓の外で1年女子の体育を見ながら、ぼんやり考える。

ってか林原って、J高ほど賢かったっけと、またヤツに視線をもどすと、机の隙間から、


79点


と英語の答案用紙が顔を出していた。

⏰:09/02/26 23:59 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#26 [七瀬]
ちぇっ、嫌味なヤツ!!と
ちょっと舌を出して
あっかんべーをする。

が、その後で
元気のない小さなため息が私の口から出た。


はぁ。


何やってんだろ。
わたし。

途端に情けない気持ちが、襲い掛かってきた。

⏰:09/02/27 00:08 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#27 [七瀬]
家に帰るやいなや、
私は机に猛ダッシュした。
靴を投げ捨て、
廊下をダダダーン。
階段をドンドンと音を立てて上がってった。
そしてドアをバンッと閉めた。

隣の部屋からお姉ちゃん「うるさーい」という、少しヒステリック?な
声が聞こえたけれど、とりあえず無視した。


机に向かい、中1からの教科書を引っ張りだし、無造作に広げた。

勝負の始まりだ。

⏰:09/02/27 00:15 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#28 [七瀬]
今から夕食の7時まで2時間、英語の復習だっ!!

自分に言い放つ。

2時間後に私の目の前にあるのは、真っ黒な手と鉛筆、独特の匂いの染みたノートだっ!!

心でかたくなに誓った。


そして2時間後、
私の目の前には………。

⏰:09/02/27 00:21 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#29 [七瀬]
  
 
 
ベタベタの手とヨダレ臭いノートだった。



「ごはんよー。」
お母さんの声が一階から聞こえる。

肉の良い匂いがした。
ハンバーグだなーっ

私はわくわくして下へおりた。

⏰:09/02/27 00:24 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#30 [七瀬]
うっそーん!?

予想は見事にはずれ、今目の前にあるのは、赤い口紅をしたオムレツだった。


はぁ。


ここでも、またため息。

なんか最近は付いてないな、とオムレツぐらいで、気分が下がる。

「どうしたの?」と
お姉ちゃんが問い掛けてきた。

⏰:09/02/27 00:29 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#31 [七瀬]
今日は更新STOPします!!

遅くなりましたが、
これは一応、ジャンルは恋愛です(><)

まだまだ先になる予定ですが…。

温かく見守ってくださいな(o‘∀‘o)

では
おやすみなさい(ρ_-)ノ

⏰:09/02/27 00:43 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#32 [七瀬]
『う〜ん』と
元気のない返事をすると、

「どーせまた、テストが悪かったんでしょ」
と鋭い指摘。


「もう、何点だったのよ。柚子。」
お母さんの追い討ち。

こりゃ、隠し通せないな。
でも…。
でもでもでもっ!!

⏰:09/02/27 14:00 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#33 [七瀬]
言うべきだろうか。

49、55、57、47、34。

前から順に
国語、数学、理科、社会。そして英語……。

言ってもいいのだろうか。

お母さんの眼力とお姉ちゃんの含み笑いが私の頭を痛くする。

が、隠し続けれる話じゃないしなあ。


がちゃ。

⏰:09/02/27 14:06 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#34 [七瀬]
「あらお父さんが帰ってきたわ。」
「おかえりー。」

これまたナイスタイミングでお父さんが帰ってき、2人の視線が私から離れた。

お父さんありがとーっ。

と喜んでいると、

「さっき飛田先生に会ったぞ。柚子、成績ガタ落ちらしいじゃないか。」

⏰:09/02/27 14:11 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#35 [七瀬]
  
お父さーん!
ヒグマぁーっ!!

お父さんはのほほんとした笑顔で5秒ぐらい時間をかけて言った。

視線が私に元通り。
空気よんでね。


結局、私は成績を披露するはめになった。

⏰:09/02/27 14:15 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#36 [七瀬]
たっぷり叱られ、バカにされ…、

お風呂に逃げ込んだ。


チャポン。
『ふぅ。』

疲れが溶けていく気がした。


そして今日ヒグマに言われたことを思い出した。
  
  
  

⏰:09/02/27 14:18 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#37 [七瀬]
  
「おーい。松田ぁー。」

例の件で落ち込む私を呼ぶヒグマ。

『はい〜。なんですか??』
「ふむ、あのなぁせっかく悲しみに入り浸っているところを悪いんだが、
この成績でJ高って舐めてんのか?」 

はっきり言われた。


黙っている私を見てヒグマは続けた。

⏰:09/02/27 14:24 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#38 [七瀬]
「こんなこと言いたくないけどなぁ、お前の成績じゃ無理だ。」

いやいや、めちゃくちゃはっきり言ってるじゃないすか。

という心の中のツッコミは押さえて、黙る。



「それでな、俺の行ってたG高はどうだ?」

⏰:09/02/27 14:28 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#39 [七瀬]
G……高??
聞いたこともない。

私がよほど目をハテナにしてたのだろう。


「そこになら電気や機械について学べるぞ。それに松田の成績でも行ける。ただちょっと遠いんだよなあ。
それに…。」


それに?

⏰:09/02/27 14:32 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#40 [七瀬]
ヒグマは目を伏せながら言った。


「それに、ちょっと変わってんだよ。その高校。」

変わってる??
え、どういうふうに?

荒れてるってこと??

頭に次々と浮かぶ疑問。


『その、それは荒れてる…ということですかね?』


 

⏰:09/02/27 14:37 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#41 [七瀬]
「んー、荒れてるというかなんと言うか……。やっぱ男ばっかなんだよな。

まぁ、初めっから工業科に行きたいということは、それくらい分かってたとは思うけど。」


へ?
それだけ?

『分かっています。男子校潜入!!って気分で通うつもりです!!』

とちょっとふざけてみた。

⏰:09/02/27 14:42 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#42 [七瀬]
そんな私のおふざけをスルーしヒグマは言った。

「やっぱ元々、男臭いところなんだ。それにいる奴もクセがあるというか…。」


よく意味がわからなかった。


『遠いってどれくらいかかるんですか?』
と質問を変えてみた。

⏰:09/02/27 14:47 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#43 [七瀬]
「えーと、お前んちからだと、1時間半くらいじゃないか?」と
これにはあっさりと答えた。

1時間半!?

それはさすがに
ちょっとなぁ……。
と思っていると、

「けれど電気、機械の技術についてだとJ高にも負けないぞ。
もしかしたら、こっちの方が上かもしれない。」と
目を怪しく光らせるヒグマ。

⏰:09/02/27 14:53 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#44 [七瀬]
  
 
 
「まだ入ってるのー?」と
お母さんの声。

湯船から急いで出て、頭や体を笑い、お風呂から上がった。


髪もよく乾かさず、2階へと向かった。


よほど疲れていたのか、夕食前にあんなに寝たのに、すんなりと睡眠に入れた。

⏰:09/02/27 14:57 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#45 [七瀬]
 
翌朝。

私はハッと目を覚ました。

時計をみると、短い針と長い針。両方とも5時を差していた。

5時25分。

久々、こんなに早起きをした。

昨日は夢の一つも見なかった。
いや見たけど忘れてしまったのかもしれないな。

⏰:09/02/27 15:02 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#46 [七瀬]
「柚子、今日はえらく早起きなのね。」

『うん。なんか目が覚めちゃってさ。』


顔を洗い、制服を来た。
トーストとサラダを食べる。

「ちゃんと勉強しなさいよ。」
昨日、死ぬほど聞かされたことをまた言われ、
うんざりした。

『わかってる。』
ぶすっとした表情で返す。

これ以上、お母さんの小言が出ない内に行こ。

少し早いけれど家を出た。『いってきまーす。』

⏰:09/02/27 15:10 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#47 [七瀬]
少し歩くと松田鉄工場が見えた。

今はもう機械もほとんど処理されてるんだろうなあ。


「松田ーっ!!」

あの高い声は林原だな。

「おはよ。」
『はよ。』

私の隣を少し追い越した。

⏰:09/02/27 15:15 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#48 [七瀬]
林原の近い後ろ姿を見ながら、ふと思った。

背、高くなったなあ。

中1の時は前から数えた方が早かったのに、
今は前から数えても、後ろから数えても、同じだもんなあ。

身長が伸びても林原は背は高いほうではなかったけれど、
私とは比べものにならないんだろうなぁ。

って当たり前か。
私がちっちゃすぎるのか。
私は小学生の時から、前ならえはずっと前だった。

⏰:09/02/27 15:22 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#49 [七瀬]
そんなことをぼんやり考えていると、
林原がいきなり
「お前もJ高、受けんだってな。」と言った。


『まだ考え中だけど…。
って何で知ってんの?』

「え、ああ、悪ぃ。お前の懇談、聞いちまった。」
悪びれる様子も無く言う。

『なにそれ。まあいいけど、別に大した話じゃないしね。』

⏰:09/02/27 15:27 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#50 [七瀬]
へらへら笑っている私に、林原は
「そんなんで受かんの?」

『え??』

「だーかーらっ!!英語、34点の奴が受かるわけねーじゃん!」
とちょっと真剣な林原。


『なっ…。あんた私の答案用紙、見たの!??』

「ちげーよ。人聞き悪いな。落ちてたから拾ってやったんだろーが。」

『それだったら良いけど
ってかむしろありがと。』

⏰:09/02/27 15:33 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#51 [七瀬]
「おう。」

さっきまで、ちょっと声荒げてたのに急に黙ってしまった。
やっぱわかんないヤツだわ、林原は。


ちょっと笑ってしまった。


『ってかなんで林原はそんなに早く学校いくわけ?』
ふと疑問に思った。

⏰:09/02/27 15:36 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#52 [七瀬]
「俺、日直だから。」


『ぶっ!』

無愛想な顔して真面目なこと言うから笑ってしまったではないか。


「何、笑ってんの?」
スローで答える林原。

相変わらずのマイペースぶりに、少し癒されてしまった。


調子狂うな、もう。

⏰:09/02/27 15:41 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#53 [七瀬]
 
その日、私はG高校は受けない、J高にする
とヒグマに告げた。

今までは憧れでJ高を目指してた。

けれども今日、なぜか自分の意志で行きたいと思った。


それはやっぱり林原のおかげだと思う。



悔しいけれど。

⏰:09/02/27 16:23 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#54 [七瀬]
 
 
 
あれから10月になり、みんなで盛り上がった体育祭も終わり、

気付けば、11月に入る直前だった。



そして、とうとう始まってしまった。


第3回目の恐怖の進路懇談が……。

⏰:09/02/27 16:27 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#55 [七瀬]
 
お母さんは激怒した。



私は何も言わずJ高に決めてしまったからだ。

2回目の懇談の時はJ高は一応、視野にいれておこうということで保留になっていた。


が今回、何も相談せずに勝手に進路希望調査に“J高”と記入したのを

お母さんはグダグダ言っている。

⏰:09/02/27 16:33 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#56 [七瀬]
ほんとに参った。

でも参ってしまったのは私じゃなくヒグマの方みたいだ。


ようやく肌寒くなってきた季節だけど、昼は暑い。
日がよく差し込むこの教室は
冬はあったかい、
夏はくそ暑い。
と批評されている。


ヒグマはまさに、直射日光の位置。

元々、ぽっちゃり?
筋肉質?な
ヒグマのこめかみからは
大量の汗が溢れていた。

⏰:09/02/27 16:40 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#57 [七瀬]
「え、えーと、ではお母さまはG高については何も聞いていないわけですね。」 
細い目を一段と細めて、ヒグマは言った。


「G…高?」
お母さんの目付きが厳しくなるのが見なくても分かった。

暑いのに冷や汗が流れているのがわかる。

やばいよーっ!!


ヒグマは恐る恐る話しだした。

⏰:09/02/27 18:38 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#58 [七瀬]
「……というわけで、僕は柚子さんにG高を勧めたわけです、はい。」

ほぼ私に話したことをそのままお母さんに説明していた。
ただ“変わった”高校だということは除いて。

けどそんなことよりヒグマの「僕」と「柚子さん」が面白くって、そっちに気が向いてしまったけれど。


ただ話を聞いた後のお母さんの顔は確実に和らいでいた。

⏰:09/02/27 18:49 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#59 [七瀬]
「なんだ柚子、良かったじゃないの。
やだ、この娘ったら何にも言わないから。すいませんねぇ、先生。
柚子、そこにしましょ。
G高校でしたっけ。」


ちょ、ちょ
ちょっと待ってよ!

『お母さん、やだっ!私、J高がいい!!』

だだをこねる私。

ヒグマは安心した顔になったのもつかの間、すぐ心配顔になっていた。

⏰:09/02/27 18:55 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#60 [七瀬]
「松田……。」
ヒグマが何か言い掛けた時、お母さんが口を挟む。

「いいんです、先生。私が説得しますから。
今日はありがとうございました。柚子、行きましょ。先生さようなら。」

一方的で、言い終わるまでには、すでに腰を上げていたお母さん。

私は無理矢理、手を引かれ、連れて帰られた。

まるでスーパーでお菓子買ってとすがる幼稚園児を連れて帰るように。

⏰:09/02/27 19:02 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#61 [七瀬]
 
 
家に帰った後、
お母さんは話を初めた。

「よく聞いてね。私は柚子には、G高に行ってほしい。受験でつらい思いさせたくないしね。」


お母さんの悲しげな瞳を見ていると、さっきまでの気持ちはしおれてしまった。
『お母さん…。』


けれど次の瞬間、ちょっとでもお母さんに弱みを見せたことを後悔することになる。



「ねぇ、だからお母さんと賭けをしてみない?」

⏰:09/02/27 19:13 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#62 [七瀬]
『賭け?』

「そう。賭け。」
ニヤニヤしながらお母さんは続ける。



「この二学期中に5教科の評定を全部、上げて。1でもいいから、ね?」


「1でもいいから」って、そんなのむりむり!!

自分で言っても説得力ないけど、やっぱり受験は積み重ねだし。

評定を1上げるのは、テストの点をただ単に10点上げることとは訳が違う。

⏰:09/02/27 19:18 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#63 [七瀬]
 
お母さんはできないこと承知で言ってるんだ……。

私はだんだんムカついてきた。

大人のくせに卑怯なことして。



やってやろーじゃんか。


『っしゃ、やってやる!!』
お母さんに宣言し約束した。


本気で頑張るっ!!

⏰:09/02/27 19:22 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#64 [七瀬]
……とはいいつつも、二学期のテストの内、すでに課題テストが、散々な結果で終わってしまう。


後は中間と期末。
そして2回の実力テストで良い結果を出すしかない。

出遅れた分、取り戻さないと。


2週間後の実力テストに向け、勉強を初めた。

⏰:09/02/27 19:27 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#65 [七瀬]
 
 
 
 
今、私の目の前にはラッキーセブンが2つならんでいる。

ふと今日の朝、テレビで見たラッキーナンバーは7だということを思い出す。





英語77点。

⏰:09/02/27 19:30 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#66 [七瀬]
 
 
泣いても、いーですか。

まだ結果は英語だけしか出てない。
でも77点…。

幸先いーな、こりゃ。 


一気に自信がついた。



前を見ると林原がまた寝ていた。

⏰:09/02/27 19:32 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#67 [七瀬]
また答案用紙が机から顔を出している。



78点。

やっと追い付きました。
やっと!やっと!!




めちゃくちゃうれしーっ。

⏰:09/02/27 19:35 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#68 [七瀬]
 
 
家に帰宅した私を待っていたものは、


「おかえりーっ!!」
ルンルン気分のお母さんだった。


リビングを通って部屋へ行こうとすると、

「テストはー?」

フッ、
やっとこの時が来た。

⏰:09/02/27 19:41 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#69 [七瀬]
私は堂々と英語の答案用紙をテーブルに!!

さすがのお母さんも驚いている。


やった!
ついに見返したぞっ!!


「で?」


『へ??』
 

⏰:09/02/27 19:44 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#70 [七瀬]
 
「だから、他のは??」



……ばれちゃいました。


観念し、カバンから4枚の紙を並べた。


52、61、60、55

左から
国語、数学、理科、社会。


『えへっ』

「はぁ。えへっじゃないでしょ。」


『………。』


ごめんなさい。

⏰:09/02/27 19:57 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#71 [七瀬]
 
 
とりあえず
1回目のテストが終わった。もちろん、この成績は担任のヒグマにも伝わっている。

そして今、私はヒグマとにらめっこ中。

「なるほどなあ。そんな約束したのか。」

ヒグマが口を開き、
「お前は頑張ったなあ。」
と珍しく誉める。

⏰:09/02/27 20:30 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#72 [七瀬]
でも誉め言葉で終わるような空気じゃなかった。

「でもな、やっぱJ高は厳しい。精神的なこともあるし。オススメすることは出来ないな。
だから一回、見に行ってみないか?G高に。」



私は頷くしかなかった。

悔しいけれど、J高は無理だと改めて実感した。
それに私はこの時点で薄々、気付いてたんだ。

私はG高へ行くんだろうなということを。

⏰:09/02/27 20:38 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#73 [七瀬]
 
 
2週間後、私はお母さんと“G高校第4回学校説明会”へ足を運んでいた。


「なかなかきれいじゃない。」お母さんが言う。


確かに築50年にしては綺麗かもなあ。

他に来ている生徒はみんな男子で教師もほとんど男だった。

⏰:09/02/27 20:42 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#74 [七瀬]
見た目は色々あるけど、そんなに変に見えないけどな。
ヒグマの大げさ。



確かに機械は設備が整っていてこれならJ高にも負けないだろうな。

私は結構、満足した。
それに、前よりこの高校に興味が湧いた。
  

⏰:09/02/27 20:45 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#75 [七瀬]
そして運命の第4回進路懇談の日がやって来た。

なぜ運命かって?
だって二学期の通知表も見せられるしもん。


朝から心臓がドクドク動いてる〜!!
っとかないし、
全然、緊張してないよん。
だって、お母さんとの賭けは絶対、私の負けだし。

「上がってるかな?」と
一々、ドキドキする必要なしっ!!

⏰:09/02/27 22:00 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#76 [七瀬]
 
 
ただいま懇談中です。


通知表見ました。



思わず笑ってしまいました。

なぜかって?




だって逆に成績下がってたしぃ〜。

⏰:09/02/27 22:02 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#77 [七瀬]
 
ヒグマ曰く、
この時期はみんな勉強するから平均が上がる。だから頑張っても、成績は中々、上がらないらしい。

ヒグマは申し訳なさそうに言った。



しかも下がってたのは




技術だった。

⏰:09/02/27 22:06 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#78 [七瀬]
勉強してたから、技術をおろそかにしていた。



中途半端に勉強して、技術を落とすなら、勉強なんかしなきゃ良かった。

悲しかった。
悔しかった。



涙が出そうになった。

⏰:09/02/27 22:11 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#79 [七瀬]
 

 
 
 
結局、私はG高を受けることに決まった。


賭けで負けたこともあったけど、
情けない気持ちがいっぱい何も言えなかった。
 
 

⏰:09/02/28 12:10 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#80 [七瀬]
 
 
家へ帰る途中、
お母さんは買い物へ行くと言って別れた。


私は帰りたくなかった。


帰ってもお姉ちゃんとかいるし。
1人になりたかった。



帰路にある公園へと向かった。

⏰:09/02/28 12:14 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#81 [七瀬]
 
この公園は、とても小さくって小さなブランコと狭い砂場しかない。


だからよく幼稚園児くらいまで私もそこで遊んでいた。



がちょっと大きい公園が少し遠いが、自転車で行ける距離なので、小3ぐらいから、誰もここにはこなくなった。

⏰:09/02/28 12:22 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#82 [七瀬]
 
案の定、誰もいなくて安心した。


ブランコに腰をかける。
昔はイスとおしりの間もスカスカだったのに、
今は少しきつい。






『……うっ、うっ、うぇぇん!!』
私は大声を上げて泣きだした。

⏰:09/02/28 12:26 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#83 [七瀬]
5分くらいかな?

『うわぁぁん!うぇぇん!』
と泣く私。
すると






ポンッ
なにか温かいものが
ほっぺに感じた。

⏰:09/02/28 12:29 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#84 [七瀬]
『うぇ??』



「何、泣いてんの?」
林原が目を丸めて聞く。

驚きで一瞬、涙が止まった。

が温かいものが缶のミルクティーだと分かったときは、また目から涙が溢れていた。

⏰:09/02/28 12:33 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#85 [七瀬]
林原は私の隣のブランコに座るって缶コーヒーを飲みだした。



もう、少しずつ日が沈み初め、少し寒くなってきていた。



けれど私は、せっかく林原がくれたミルクティーに口を付けずに
また泣きだした。

⏰:09/02/28 12:37 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#86 [七瀬]
林原は私の隣のブランコに座わって缶コーヒーを飲みだした。



もう、少しずつ日が沈みはじめ、少し寒くなってきていた。



けれど私は、せっかく林原がくれたミルクティーに口を付けずに
また泣きだした。

⏰:09/02/28 12:37 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#87 [七瀬]
『うっ、うぅ〜』
ぐずり泣きする。



そんな私に、林原は
「大丈夫?」
「何があったの?」も聞かずただ座っているだけ。

でも今は、そっちの方がありがたかった。


それに不器用な林原の優しさにも見えた。

⏰:09/02/28 12:41 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#88 [七瀬]
 
 
静かな公園に私の泣き声だけが響く中、林原は声を発した。

「なあ、この公園1月から取り壊され始めて、
3月の中旬には、もうないんだって。」


林原が突然、話しだしたのと、その話に驚いた。



けれど私は何も言えなかった。

⏰:09/02/28 12:46 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#89 [七瀬]
 
 
林原が公園で発した言葉はそれだけだった。




次の日、学校で林原と昨日のことについての話は全くしなかったし、
普通に話せた。



ほんとに分かんないヤツ。

⏰:09/02/28 14:25 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#90 [七瀬]
 
合唱コンクールに奇跡的に我がクラスが優勝した、文化祭も終わり、



とうとう冬休みに。

私はあんまり勉強しなかった。
元からやる気が無いのと、G高にはほぼ100l受かると言われたので
さらにやる気が無くなった。


そしてやる気のないまま、新年を迎えた。

⏰:09/02/28 14:30 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#91 [七瀬]
「ハッピーニューイヤー!」テレビの中のタレント達が次々と言っている。

私はこたつでテレビを見ている。


「明けましておめでとう」
お姉ちゃんが言う。

「あらあら、もう明けちゃったの〜?」と
のんきなお母さん。

お父さんは
「今年もみんな健康に過ごせますように」と
仏壇のおじいちゃん祈っていた。

⏰:09/02/28 14:34 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#92 [七瀬]
おじいちゃん……。

私は心の中でおじいちゃんに言う。

明けましておめでとう。
もう工場も壊されて、跡形も無くなっちゃったよ。
淋しいなあ。

おじいちゃん、そっちはどう?
って淋しくないよね。
天国にはおばあちゃんもいるしね。

⏰:09/02/28 14:38 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#93 [七瀬]
 
 
冬休みがおわり三学期の始業式。

校長の“受験”についての長話しは、もう15分近くも続いている。


長いなあ。
うんざりする。

後ろから、たくさんの欠伸が聞こえる。


空気よんでよ〜!!

⏰:09/02/28 14:42 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#94 [七瀬]
校長の長話しが終わると、始業式はスムーズに流れて行き、 
あっという間に、終わってしまった。



教室へ。

なんか冬休み前とは空気が全然違った。

みんな、受験モードになっていた。


だから私だけ浮いていた。

⏰:09/02/28 14:46 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#95 [七瀬]
いや、私だけじゃない。

前の林原も、いつもと変わらず、マイペースでぼぉーっとしていた。


ホッとした。

林原がいなかったら大げさだけど、
私は希望が見えなかったと思う。


ありがとう、林原。

⏰:09/02/28 14:49 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#96 [七瀬]
 
 
 
 
2月24日。

“G工業高校 入試会場”という所へ私は足を踏み入れていた。


余裕とはいえ、やはり緊張はする。

試験内容は
国、数、英の3教科。
そして実技。


試験教室へと迎う。

⏰:09/02/28 14:53 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#97 [七瀬]
まわりは、やっぱり男だらけで、
すごくでかい。
そして筋肉もりもりだ。

怖くなった。



3教科を終え、実技に移るため、並ぶ。

実技は5人ずつで行うという。
受験番号185番。
181番、182番、183番、184番につづき、私も入る。

『失礼します。』

⏰:09/02/28 14:58 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#98 [七瀬]
内容は普通で、
ノコギリで木を一本、切るというだけだった。

「手際さ、切れた木の断面、さらには道具の置き方まで見られるぞ。」
というヒグマの声を思い出す。



私は自分のだけ集中し、
他の奴らには目もくれなかった。


ふぅ。
終わった〜。

⏰:09/02/28 15:03 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#99 [七瀬]
余裕という感じで、
他を見ると、必死で切っていた。


少し優越感に浸っていると私の別にも切り終わっている人を発見した。

目を見張る。
すごいっ!!

木の断面ザラザラは全くなく、まるで機械を使ったようだ。

私は見とれてしまった。

⏰:09/02/28 15:07 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#100 [七瀬]
私の2つ前だから183番かな?

なんてことを考えながらボンヤリ眺めていると、
そいつと目が会ってしまった。



またしても目を奪われてしまう。

切れ長の目に鼻筋の通った鼻。
少し黒い肌はキャラメルを連想させた。

⏰:09/02/28 15:11 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#101 [七瀬]
そいつは、すぐ目を離したけれど、私はしばらく見ていた。


実技が終わり、みんな立つ。

あ、背結構、高いんだ。



名前を知ろうと思い帰り道、探したけれどたくさんの人の中、見つけられなかった。

⏰:09/02/28 15:15 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#102 [七瀬]
長い電車の中、私はドキドキが止まらなかった。

電車を降りた後も、頭の中はさっきの奴でいっぱいだった。

帰り道の1時間半。
ちっとも退屈しなかった。



『ただいま。』

「おかえりー。どうだった?」


お母さんの質問にも耳を通さず、自分の部屋へ向かった。

⏰:09/02/28 15:19 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#103 [七瀬]
しばらく、放心状態の私。


思い浮かぶ。
さっきの男の子。




あんなきれいな切れ味と
あんなきれいな顔……。



じゃなくって!!

⏰:09/02/28 15:22 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#104 [七瀬]
 
違う違う!!

顔じゃなくって!!



この気持ちはなに??


好き?
何にも知らない彼のことが?


ううん。
違う。きれいな顔してたから。それだけ。


でも、あの技術には惚れたかもなぁ。

⏰:09/02/28 15:25 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#105 [七瀬]
 
  
 
  
3月3日。
 


松田柚子、
見事に合格しましたっ!

あ、もちろんG高にね。


あぁ〜、これで受験戦争からはいち早く、抜けることが出来た。

⏰:09/02/28 16:01 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#106 [七瀬]
私はルンルン気分で登校。



でもまだ、
教室、いや学校全体は受験モードから抜け出せていなかった。

だってまだ後期選抜が残ってるしなぁ。

普通科や、前期に落ちた子は大変だな〜。

⏰:09/02/28 16:04 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#107 [七瀬]
のんきに考える。


私立や前期に受かって、喜んでいる私たちも、
命懸けの受験戦争に飲み込まれそうだ。



とはいえ、まぁ、
心の中は高校生活への期待でいっぱいだろうけど。


私もその一人だしね。

⏰:09/02/28 16:08 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#108 [七瀬]
 
 
あの男の子も受かっているていいなぁ〜。

そんなことを考えてると、林原が登校してきた。


私は緩んでいた顔が、瞬時に引き締まるを感じた。



「百面相。」

私に向かっていう林原。

⏰:09/02/28 16:12 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#109 [七瀬]
そう言う林原は、いつもみたいに無表情だけど、
どこか機嫌が良さそうだ。

あ、そうか。
林原も前期だもんね。
J高だし。

ってことは受かったのかな?


聞いてみた。
『受かったの?』

「お前は?」
またまた、聞き返された。

⏰:09/02/28 16:15 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#110 [七瀬]
『イェイ!』
Vサインをつくり
満面の笑みで答える。


「ふーん、良かったじゃん。」と林原。

『まーね。で林原は?』

「俺?俺も余裕だけど??」
ニヤニヤ答える林原。


自分の時の合格の時より、うれしかった。

⏰:09/02/28 16:20 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#111 [七瀬]
 
気付いてしまう。

これだ。
私が林原を見た瞬間、顔が引き締まった理由。



林原に他の男のことを考えて、喜んでる姿を見せたくなかったんだ。



最近の私、変だよ。

2人にドキドキしてる。

⏰:09/02/28 16:24 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#112 [七瀬]
 
林原と、



名前も知らないヤツ…。





「どうした?」
林原の声で、我にかえる。

『ん、なんでもない。』
とごまかす。

⏰:09/02/28 16:26 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#113 [七瀬]
「ふーん。なんか松田、へん。」

『そんなことないよ。』


必死にごまかすも、
林原の大きな瞳が、じっと私の目を見る。


何もかも見透かしてるような、目。



あぁ、ダメだ。
隠し通せない。

⏰:09/02/28 16:29 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#114 [七瀬]
「おーい、席に着けー。」
ヒグマが教室に入ってきた。


と同時に林原は前を向いた。



あーっ、助かったー。



バレちゃうかと思った。
私の気持ち。

⏰:09/02/28 16:32 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#115 [七瀬]
 
 
 
 

 
私の気持ち?

って
どんな気持ち??

“林原に私が他の男のことを考えて、喜んでる姿を見せたくない”
という気持ち?


それとも




林原にひかれてる
って気持ち??

⏰:09/02/28 16:35 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#116 [七瀬]
 
 
 
 
今、自分の部屋の中。


あれから帰るまで、
ボンヤリしてた私。


だって分かんない。

林原のことが好き?
あの子のことが好き?



なにそれ。


分かんないよ。

⏰:09/02/28 16:38 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#117 [七瀬]
ただ確かなことは……、





私は2人にドキドキしてるということだけ。




 

⏰:09/02/28 16:41 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#118 [七瀬]
 
 
 
「蛍のひかーり
  窓のゆうーきー」

今、卒業式の一番、盛り上がる部分。


女子のほとんどが泣いている。
中には大粒の涙を流し、歌声になってない。
男子は目をウルっとさしているか、妙に割り切っているかのどっちかだ。



そんな私は、人間観察してるぐらいだから、
結構冷めてるのかも。

⏰:09/02/28 16:50 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#119 [七瀬]
まったく悲しくない訳でもない。




ただ実感がないんだ。


“私、卒業するんだ”、
“明日から、この学校には来ないんだ”

というイメージが湧かない。
だから泣けない。
それだけ。

⏰:09/02/28 16:54 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#120 [七瀬]
 
 
 
 
実感が湧かないくらい、
現実じゃないような卒業式だった。


歌い終わった


「3年2組、起立!」

最後に1、2年に見送られ、卒業証書を手に、
自分の教室へと戻る。

⏰:09/02/28 16:58 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#121 [七瀬]
 
教室ではヒグマが、ごっつい肩を揺らし、泣いていた。


こんなこと言うなんてホントに冷めてるのかもしれないけど




ちょっと引いた。

⏰:09/02/28 17:00 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#122 [七瀬]
でも周りを見てみると、みんなも同じ気持ちみたい。

さっきまで泣いてた子も、固まってヒグマをガン見してるし。笑



よかった。
思ったより、私は冷めていなかった。


でもヒグマも最後まで面白いなぁ。
と、しみじみする。

⏰:09/02/28 17:04 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#123 [七瀬]
そんなヒグマも最後の言葉を終え、
また教室中は悲しいに包まれた。




みんながそれぞれ最後の思い出に写真を撮っている。


私も何人かの友達と撮った。

⏰:09/02/28 17:07 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#124 [七瀬]
そして、辺りを見回す。



林原、どこだろう?

あいつは、こういうのが苦手なヤツ。
別に、嫌いなわけじゃなく、照れてるんだ。

あいつのああいう、不器用な優しさに、
何回ドキドキさせられただろう。
 

⏰:09/02/28 17:10 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#125 [七瀬]
 
あれ?
いない。


卒業式には、ちゃんといたの、見たのに。



嘘!?なんでいないのよ〜。
今じゃなくても言える。
けど今、言いたいのに。


なんで肝心な時にいないのよぉ〜!

⏰:09/02/28 17:14 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#126 [七瀬]
このままなんて、やだ! 
 
『やだやだやだ!!』





「フッ、何がやなんだよ。」

この声は……
林原!


後ろを振り向くと林原が笑っていた。

⏰:09/02/28 17:17 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#127 [七瀬]
林原…。

私はいきなりのことに、
びっくりした。



「どーしたんだよ、松田。」あの目でいう林原。


何もかも見透かしてしまうような目。
茶色くって大きな瞳。

なんか犬みたい。



そして私の大好きな目。

⏰:09/02/28 17:20 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#128 [七瀬]
「だから、どーしたの?
ぼぉーっとして、熱でもあんの?」
ともう一度、聞いてくる。

い、言わないと……。
ちゃんと自分の気持ち。


林原にぼぉーっとしてるなんて言われたくない。



……じゃなくって!!

⏰:09/02/28 17:24 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#129 [七瀬]
 
 
あぁーっ、もう!!
じれったいなぁ!


なんか自分にイラついてきた。



あの日、じっくり考えたことを、そのまま言えばいいんだ!


言おう!
言うんだ、柚子!!

⏰:09/02/28 17:27 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#130 [七瀬]
『あのね、私ね……』

決意した私は言う。
恥ずかしくって、林原の顔を見れず下を向く。



『私はね、林原のことが、す、すす……

あいつは私の言葉を遮る。


「俺もだよ。俺も同じ気持ち。」

⏰:09/02/28 17:31 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#131 [七瀬]
『へ……?』

思わず耳を疑う。

同じ気持ち??
林原も?

涙が出た。
一粒だけ。気付かないくらい小さい涙。



卒業式では泣けなかったのにな…。

⏰:09/02/28 17:44 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#132 [七瀬]
 
 
『ホントに?』

「ああ、本当。」


『ホントのホント?』

「フッ、しつこいな。
ホントのホント。」

言いながらも林原は笑顔のまま。

⏰:09/02/28 17:47 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#133 [七瀬]
 
 
 
 
 


 

 
「松田は俺のすごくいいライバルだよ。」
 
 
 

⏰:09/02/28 20:05 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#134 [七瀬]
 
 
 
 
 
 
え?



ライバル??



目を大きく開いた。
 
 

⏰:09/02/28 20:06 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#135 [七瀬]
林原は続けた。

「俺、技術ではお前に1度も勝てなかったんだ。
だから高校も同じ工業科を選んだ。」



あ…、そうか
だからJ高にしたんだ。

「だからお互い、高校で頑張ろうな。」

林原は、今まで見たことない、爽やかな笑顔で言う。

⏰:09/02/28 20:11 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#136 [七瀬]
 
 
 
 
帰り道。



さっき林原に言われたことを思い出す。


私はフラれたのだろうか?

でもショックというよりも驚きが頭の中を支配している。

⏰:09/02/28 20:13 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#137 [七瀬]
林原があんなことを思ってたなんて。


やっぱり何を考えるか分かんないヤツ。







そして
私は思い出したように走りだした。
 
 

⏰:09/02/28 20:17 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#138 [七瀬]
 
 
 
 
あの公園に。




林原の言うとおり、もうあの公園は空っぽになっていた。



私はつっ立ったまま、夕焼けで赤く染まった、ただの土地を見ていた。

⏰:09/02/28 20:24 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#139 [七瀬]
 
 
 
 
 
4月に入り、今日はとうとう入学式。



私は朝から、
いや一昨日から緊張していた。


だって、あの男の子にまた、会えるかもしれないから。

⏰:09/02/28 23:36 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#140 [七瀬]
林原に告白しようと思っていたくせに、
と思うけれど。

やっぱり心臓はどくどくとうるさい。


あの子いるかなぁ…。



……いるといいな。


クラス表に目を向ける。
 

⏰:09/02/28 23:39 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#141 [七瀬]
“1ー2 松田柚子”


見っけ。

また2組かあ。
中学の時も、三年間ずっと2組だったしなぁ。






「また松田は2組だな。」

隣から懐かしい声が聞こえた。

⏰:09/02/28 23:43 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#142 [七瀬]
この声。
ほんと懐かしいなあ。


……って、





『林原ぁ!?』

「よっ。」

平然と答える林原。


なんで?
なんでなんで!?

⏰:09/02/28 23:46 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#143 [七瀬]
『なんで?どういうこと??なんでここにいんの!?』

テンパる私。


「ちょ、お前、落ち着けよ。」

そう言われ、少し息を整える。


「俺、J高、受けんの止めて、このG高にしたんだよ。」
 
 

⏰:09/02/28 23:59 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#144 [七瀬]
え、そうなの!?



……でも、
それはそれで意味わかんない。


なんで賢いJ高から、遠くて、こんなG高にしたわけ?


林原の頭ならJ高だっていけただろうし。


ますます分からなくなってきた。

⏰:09/03/01 00:02 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#145 [七瀬]
「俺は3組だからクラスは違うけど、
また三年間よろしくなー。」


私の疑問はほったらかしにされたまま、

林原は去っていった。



まっ、いっか。

また林原と三年間、過ごせると思うと
ちょっとうれしくなった。

⏰:09/03/01 00:07 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#146 [七瀬]
4階まで長い長い階段を上った。


はぁ、疲れた〜。



これから毎日、1時間半もかけて、ここに来て、この階段を上るのかぁ……。

気が重くなった。



“1ー2”

教室の中へ入った。 
 
 

⏰:09/03/01 00:13 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#147 [凛]
おもしろいです∩・∀・∩
続き気になる♪

⏰:09/03/01 00:24 📱:N706i 🆔:hzGFLs8s


#148 [七瀬]
ありがとうございます。

頑張るねっ('∀'●)

⏰:09/03/01 01:01 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#149 [七瀬]
私は出席番号、34番。

窓際で奥の一番いい席。



ふぅ。
一息ついた。




えっ!?

うそ!うそうそっ!!
うそでしょーっ!?

⏰:09/03/01 01:05 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#150 [七瀬]
 
 
 
 
 
前にはあの男の子!!


素直にうれしい。
今はこれしか言えない。

その子は頬杖をつき、窓の外を見ている。


ほんときれいな顔。


つい、その横顔に見とれてしまった。

⏰:09/03/01 01:09 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#151 [七瀬]
 
 
 
 
 
そろそろ始業式が始まるみたい。


上履き袋を持って、廊下に並ぶ。



周りが男ばっかで、並ぶと小さい私はスッポリと埋まってしまった。

⏰:09/03/01 01:12 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#152 [七瀬]
 
 
縦も横にも大きくて、ヒグマタイプの男の子。

背が高くって、ヒョロリとした男の子。

小さいけれど、筋肉があると制服を着ていても分かる男の子。



私は完璧、浮いていた。

当たり前か、
“ほぼ”男子校だし。


不安になってきた。

⏰:09/03/01 01:16 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#153 [七瀬]
 
 
 
そんなことを考えてると、体育館に着いた。


広いなぁ。



席に着いた。

校長の話は中学の時とは違い、
あっさりとしていて聞きやすかったし、短かった。

⏰:09/03/01 01:20 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#154 [七瀬]
「えー、それでは各学年、組の担任、副担任を紹介しましょう。
まず3年1組、担任の…」


それから2年、1ー1が紹介され、

とうとう1ー2の番に。


私は身を乗り出す。
やっぱ気になるし!

⏰:09/03/01 01:24 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#155 [七瀬]
でも、見えない!!


周りは男だっかだし、
私は後ろの方の席だし。




体を少し強引に横に傾ける。
すると前の奴の頭と頭の間から小さく、見えた。



ん?

⏰:09/03/01 01:27 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#156 [七瀬]
「担任の牧田宏介先生だ。」


ん?
あの人が私の担任??


私の目の先には


今日は曇りだし、
ってか室内なのに、
サングラスをかけている、少し小太りでチビなおっさん。


なんだありゃ。

私だけでなく、他の生徒も少しびっくりして、見ている。

⏰:09/03/01 01:32 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#157 [七瀬]
するとサングラスを外し、

「これから1年間、
お前らの担任をする、牧田宏介だ。
基本は電気、機械が専門だ。まぁよろしく。」

い、いかつい。

牧田宏介(マキタコウスケ)かぁ。



ってかサングラス外すと、結構、かわいい目をしていた。笑

⏰:09/03/01 01:37 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#158 [七瀬]
 
 
 
 
担任と共に教室へと戻って行く。



ってか、さっきから
あの子、見ないなぁ…。

少し心配してしまう。



席に着く。


やっぱいない。

⏰:09/03/01 01:42 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#159 [七瀬]
そんな私の心配とは裏腹に担任は話をしだした。


「さっき校長先生がおっしゃったが
副担の長江先生だが今日は生憎、お休みだ。」


そんなこと言ってたっけ?

ってかアンタのキャラが濃すぎて、
最後ら辺はなんも覚えてないよ。

⏰:09/03/01 01:48 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#160 [七瀬]
 
話を続ける、サングラス先生。

「あと、俺のことは
マッキーでも、コウちゃんでも、好きなように呼んでくれ。」


あ、そんな顔で冗談とか言うんだ。


「じゃあ、ヤクザ先生って呼んでいーすか?」

誰かがふざけて言う。

⏰:09/03/01 01:52 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#161 [七瀬]
ドッと笑いが起こる、


…はずだった。

が教室は冷たい空気が漂っていた。

「なぁにぃ?」
サングラス先生……。
いや、牧田先生が、その生徒を睨む。

怯えるその生徒。


そして息を呑んで見守る私たち。

⏰:09/03/01 01:56 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#162 [七瀬]
 
 
 
 
 
「お前、なかなか面白いな。」



ん?

目を丸くする私たち。

それは誉めているのかな?


ホッと胸を撫で下ろす、可哀想な生徒君。

⏰:09/03/01 02:02 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#163 [七瀬]
うん、これは誉めてるんだね、彼なりに。


そう解釈するのに時間がかかってしまった。

だって、めちゃくちゃ怖い顔してんだもん。

目はかわいーけど。笑



この日から牧田先生のあだ名はヤクザ……、
ではなくマッキーになった。

ほんとは、そう呼んでほしかったみたい。

⏰:09/03/01 02:06 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#164 [七瀬]
 
 
 
 
そんな感じで始業式を終えた。



結局、最後までアイツは現われなかった。


どこ行ったんだろ?
 
 

⏰:09/03/01 02:57 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#165 [七瀬]
 
 
 
登校2日目。


今度は来てるかな??

もうワクワクしている自分がいた。

また、あの技術が見たい!


そして、なにより


顔が見たかった。

⏰:09/03/01 03:00 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#166 [七瀬]
 
 
 
……が、
私の期待は見事に裏切られることとなる。



ヤツは来なかった。

今日だけじゃなく

明日も明後日も。


その次の日も……。

⏰:09/03/01 03:02 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#167 [七瀬]
 
 
1週間が経った。


が私は始業式以来、アイツを見ていない。

こんなに休んで、留年する気か!?


じゃっ、私も留年しちゃおっかなあ〜
とバカなことを考えた。

もちろん冗談だけど。
 
 

⏰:09/03/01 03:05 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#168 [七瀬]
 
 
 
 
授業が始まった。



つまんないし、苦手な英語の授業。



今朝、林原と話したことを思い出していた。
 
 
 

⏰:09/03/01 03:07 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#169 [七瀬]
『おーい。林原あーっ!』

たまたま電車で一緒になった。

「松田、久しぶりだな。」

ほんと久しぶり。
私たちは、高校に入ってから、
クラスが違うこともあり、全然、会わなかった。



そんな中、少しの間、沈黙が出来る。

⏰:09/03/01 03:12 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#170 [七瀬]
自分から声かけたくせに、何か話さないと。


この沈黙のワケは自分が一番、理解していた。


私が妙に緊張してるからだ。

林原は普通だ。
いつもの、ぼぉーっとした林原だ。


だって何、話したらいいか分かんない。

⏰:09/03/01 03:16 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#171 [七瀬]
 
 
この沈黙を破ったのは林原。

「なあ、松田んとこの担任、強烈だな。」


『うんっ!すごいでしょ!?こないだなんてね……』

マッキーネタのおかげで、また、いつもの私たちになった。



ありがと、マッキー!!
 
 

⏰:09/03/01 03:19 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#172 [七瀬]
 
マッキーで柔らかいだ雰囲気の中、林原が話しだした。
「あんなこの前、
俺らの技術の時間に初めて、技術室に行ってよ〜」


えっ!?
なにそれ。


私のクラスの技術は、
ただのマッキーの長い話でいつも終わっている。
まあ、面白いけど。


とりあえず技術室なんて、一度も行ったことない!

⏰:09/03/01 03:26 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#173 [七瀬]
 
 
 
その後、林原は
技術室で機械の名前や、それはどのように使うのか、学んだらしい。




うらやましいなぁ。
また近々、私のクラスも連れてってもらえるよね?


1時間半はあっという間に過ぎた。

⏰:09/03/01 13:55 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#174 [七瀬]
 
 
 
キーンコンカーンコン
 
2限目  技術



「よーし、始めるぞー。」

マッキーの言葉でみんな、席に着く。



あれから、電気について説明してたけど、
途中からマッキーの大学時代の話になっていた。

⏰:09/03/01 13:59 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#175 [七瀬]
 
 
 
いつもこんな感じ。


3分の1はマッキー自身の話が占めている。

まあ、そのおかげで
授業中、睡魔に襲われずにすむんだけど。


マッキーは、そういう意味では天才だなぁ。

あ、話する天才ね。


なんか自然と耳を傾けてしまうんだよなー。

⏰:09/03/01 14:03 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#176 [七瀬]
 
 
 
 
キーンコンカーンコン

2限目、終わりの合図。


「起立。」
日直が言う。

みんなが立った。


「あ、今日は5限目も技術だからな。忘れんなよー。」



そっかまた技術なんだ。

⏰:09/03/01 14:07 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#177 [七瀬]
やっぱり工業科だし、
技術の時間が多い。


ほぼ毎日あるし、
今日みたいに2時間あるところもある。

だから国、数、英、理、社はもちろん少なくなる。


しかも、今習ってることは中学生レベル。

数学は今、因数分解です。

苦手な英語、
なんか余裕だと思ったんだよね。

⏰:09/03/01 14:12 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#178 [七瀬]
 
 
 
だから、大学とかでは、ちょっとバカ扱いされる。

でもその分、機械、使わしたら誰も勝てないだろうけどね。



だから工業科の高校出身はあなどれない。

ヒグマとか、いい例だしね。
 
 

⏰:09/03/01 14:17 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#179 [七瀬]
 
 
 
 
一学期までは、みんな同じことを学ぶ。



技術という一くくりの授業。


建築についても、
機械、電気についても、
理数についても。

そして二学期から、
それぞれ興味が、あるものを選び、学んで行く。
 

⏰:09/03/01 14:21 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#180 [七瀬]
 
 
 
だから今はつまんない。



技術室にも
行ける気配ないし!


それに授業だけでなく、





学校生活も……。

⏰:09/03/01 14:23 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#181 [七瀬]
やっぱ男ばっかだし、なんか汗臭いし!!



それにチビで女の私はクラスでかなり浮いてる。


周りは私を、バカにするような目をする。

女だからって舐めんなよ!



それにアイツもこないしなぁ……。

⏰:09/03/01 15:36 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#182 [七瀬]
 
 
 
 
 
昼休みになった。

お弁当の時間だぁー!



でも楽しいようで、
悲しい。

だって1人ぼっちだし。


今日も1人で食べるのかぁ、と少し憂うつになってさまう。

⏰:09/03/01 15:39 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#183 [七瀬]
 
 
「松田、いる?」


ん?

この声は林原!!


「あ、いたいた。
一緒に食べよーぜ。」


ポカーンとしてる
私と周りの男ども。


「何やってんの?
お弁当、忘れたの?」

首をかしげる林原。

⏰:09/03/01 15:43 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#184 [七瀬]
 
 
 
いやいや、そんなワケないじゃん。


と思ってると、

「ヒューッ!!ラブラブだなぁ、お前ら。
付き合ってんの?」

クラスのお調子者が言い出す。

なっ!

『んなわけないじゃん!』

⏰:09/03/01 15:46 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#185 [七瀬]
 
 
 
「だよな。
食いしん坊のお前がお弁当、忘れるなんてありえねーよな。」

のほほんと林原。



そうじゃなくって!



こうして私と林原は一緒に食べることになった。
 

⏰:09/03/01 15:49 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#186 [七瀬]
 
 
まだ、
“ヒューッ”とか
“ラブラブー”とか、

後ろから聞こえる中、私たちは中庭に向かった。



が中庭は広いのに、
大きな体の男たちで、とても暑そうに見えた。

まだ春なのに。


こんなとこで食べても、
食欲が湧かない……。

⏰:09/03/01 15:53 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#187 [七瀬]
林原も同じみたいで、
食堂に向かう。


が食堂も同じ状態。

『んー、どうしよっか?』


「俺、あっこがいい。」


林原が指さす先は


……屋上?

⏰:09/03/01 15:56 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#188 [七瀬]
『え、あそこ?』



「うん。」

楽しそうにする林原に何も言えなかった。


仕方なく屋上へ移動。




思った通り、誰もいない。

⏰:09/03/01 15:59 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#189 [七瀬]
 
 

 
私は食欲がまったく湧かなかった。

さっきの男集団のせいと、


林原と二人っきりだから。

ドキドキが止まらない。
 
 

⏰:09/03/01 16:01 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#190 [七瀬]
今までは二人っきりでも、なんとも思わなかった。



…ただ!!

あんな冷やかされたら、
嫌でも意識してしまうではないか!

あーっ、あいつらのバカ!私のバカっ!!




そんな私の気持ちとは裏腹に林原は相変わらずだ。

⏰:09/03/01 16:04 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#191 [七瀬]
 
 
 
『屋上は日が差し込んでて気持ちーね。』

気を紛らわすため、林原に話し掛ける。


『ん、そーだな。
ってか、さっきのことなんだけどさぁ。』



さっきのこと!?

⏰:09/03/01 20:06 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#192 [七瀬]
 
 
『い、いや全然、気にしてないから!
ホントに全く気にしてな……』



「俺は気にしてるよ。」


え?





「朝の電車でのこと。」

⏰:09/03/01 20:08 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#193 [七瀬]
 
 
 
 
はぁ。
なんだ、朝のことね。


卒業式での勘違い事件以来、私は林原の
思わせ振り?発言には
なれてしまった。


ま、私が勝手に勘違いしてるだけで
林原にそんな気はないだろうけど。

⏰:09/03/01 20:11 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#194 [七瀬]
とりあえず、私の緊張は、ほぐれた。



「お前んとこは、まだ技術室も行ってないんだよなぁ。」 

『うん。そうだよ。
林原が羨ましい。』

「1組も俺たちのとこも行ったし、
2組だけだろ?行ってないの。」


そーなんだよね。

⏰:09/03/01 20:15 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#195 [七瀬]
 
 
ぼんやり考えてると、なぜか林原のお弁当が目に入った。



かわいい。

たこさんウィンナーに
色とりどりの野菜たち。

たわら型のおにぎりは、ふりかけで着飾っている。

冷凍食品らしきものも
見当たらない。


手作り感で溢れている。

⏰:09/03/01 22:00 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#196 [七瀬]
 
 
 
林原のお母さんって、
どんな人なんだろう。


こんなかわいいお弁当を作れて、
こんなヤツを育てた人。



会ってみたいな。

っていうか、長い付き合いなのに、林原のことは、何も知らないんだな、私。

⏰:09/03/01 22:05 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#197 [七瀬]
 
 
林原の家族。

趣味、特技。


恋人
……は、多分いないと思うけど。


とりあえず何も知らない。

知ってるのは、
変わったヤツだということだけ。


なんか悲しい。

⏰:09/03/01 22:09 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#198 [七瀬]
 
 
そんなことを思っていると、
「ってかさぁ、松田んとこの担任、牧田宏介だっけ?
ヒグマの同級生らしいな。」

と、いきなりのびっくり発言。

『そうなの!?』


「うん。」

卵焼きを突きながら、林原は言う。

⏰:09/03/01 23:14 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#199 [七瀬]
 
「だからさ、ヒグマに聞けば分かるんじゃないの?」

『なにが?』

「技術室に連れてってくんない理由。」


あっ、そうか!


林原、勘良い!!

⏰:09/03/01 23:18 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#200 [七瀬]
 
そんなことを話してる内に林原は食べおわった。

「悪ぃけど、俺は先に行くわ。
やらなきゃなんない、課題あるし。」


え?

『あっありがと。
ってか、それだけのために、お弁当誘ってくれたの?』


また心臓が激しくなる気配。

⏰:09/03/01 23:22 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#201 [七瀬]
「うん。まーな。
でも、それだけじゃない。

また、松田と話したかったから。」



それはどういう意味?

「じゃーな、また今度。」

『あ、うん…。』

手を振る林原に、手を振り返した。
 
 

⏰:09/03/01 23:26 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#202 [七瀬]
 
 
 
『どういうこと?』



今、問いただし中の私。
思わず目付きがきつくなる。


「ちょ、久々に会ったのに、そんな怖い顔しなくても…。」

焦るヒグマ。

⏰:09/03/01 23:30 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#203 [七瀬]
「少し、落ち着け。」 

ヒグマに促され、興奮を押さえる。




「なるほどなぁ、そーゆうこと。」

事情を話し終えた。

愉快そうに笑うヒグマを見て、かなりイラつく。

⏰:09/03/01 23:33 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#204 [七瀬]
 
 
「まぁ、そんな顔するな。ってか、言ってなかったか?
俺の知り合いがいるってこと。」




そんなの聞いてないっ!

って目をしてヒグマを睨む。


フッと笑いながら、続けるヒグマ。

⏰:09/03/01 23:36 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#205 [七瀬]
「確かに牧田は俺の同級生だ。
ってか永遠のライバルと言った方がいいかな?」



なにそれ??

「まぁ、牧田は昔っから、中途半端な技術が大っ嫌いな奴なんだ。

だからお前らを連れていかないんじゃないか?
技術室に。」


は?

⏰:09/03/01 23:41 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#206 [七瀬]
いや、でも
授業中は自分の話ばっかだよ?



疑問をぶつけるとヒグマは一人、笑いだした。

「相変わらずだなぁ、あいつも。」

いやいや、笑ってる場合じゃないし!
こっちにとっちゃ、重大問題だし!! 
 

⏰:09/03/01 23:44 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#207 [七瀬]
「昔から技術としゃべりだけは最高だった。


まぁ気にするな。俺から言っといてやるよ。
松田は俺のお墨付きの生徒だってことをな。」


その言葉に鳥肌が立つ。

ありがた迷惑だし!



もう帰ろ。

⏰:09/03/01 23:48 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#208 [七瀬]
 
 
収穫なしかぁ。



「おい、ちょっと待て!」

ヒグマの声が私を引き止める。


『はい、まだ何か?』

答える私。

⏰:09/03/01 23:51 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#209 [七瀬]
「この前、林原に会ったんだ。駅のホームで。」



林原に?

「学校の帰りだったみたいだ。
牧田のことを話すと、あいつもしつこく聞いてきた。」


なんで?
あんたは3組だし、関係ないじゃん??

⏰:09/03/01 23:54 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#210 [七瀬]
 
 
 
「あいつ、ほんと変わった奴だよなぁ。

進路だって急に変更しだしたし。
“J高は止めたい、G高に行きたい”って。
それも願書提出の前日に。」



どういうこと!?

私は頭が痛くなった。

⏰:09/03/01 23:59 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#211 [七瀬]
 
 
 
 
 
 
 
 
私は走りだした。




林原の元へ。
 
 
 
 

⏰:09/03/02 07:10 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#212 [七瀬]
 
 
 
 

昨日、林原と初めて喧嘩をした。



理由は

……分からない。



ただ、あんな林原は初めて見た。
 

⏰:09/03/02 07:12 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#213 [七瀬]
 
 
 
 
ピンポーン。

チャイムを鳴らした。



目の前には“林原”の表札。


私は、林原の家に初めて来た。
 
 

⏰:09/03/02 07:14 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#214 [七瀬]
 
中学の友達を片っ端に回って、林原の住所を聞いてたら、

もう日も暮れて、こんな時間。


突然の訪問だし、非常識かな、と思った。


けれど、どうしても確かめたいことがあった。

躊躇してるヒマはなかった。

⏰:09/03/02 17:01 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#215 [七瀬]
 
 
あれ?出ない。

留守かな?



そういえば、林原のこと何にも知らないんだな、私。


そんなことを考えると、
「はぁーい。」

中から女性の声。

⏰:09/03/02 17:04 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#216 [七瀬]
ガチャン。
ドアが開く。

「どなた?」

『こんな時間にすみません。私、林原…、
じゃなくって、
幸夫くんの同級生の松田と言います。
幸夫くんはご在宅でしょうか。』

緊張する。


が、
私は次の瞬間、より一層、緊張が増すことになる。

⏰:09/03/02 17:07 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#217 [七瀬]
き、きれいな人……。


私のお母さんと同じ歳くらいだろうけど、
全然違う!

こう、なんというか、
歳に合った、品のある感じ。
肌も歳相応のシワはあるものの、張りがあり、シミもあまり見当たらなかった。


昔はお嬢さまだったんだろうなぁ。

ほんと、うちのお母さんと同じ女性だと思えない!

⏰:09/03/02 17:13 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#218 [七瀬]
そういえばこの家、かなりデカい。

昔からあるような、貫禄のある家。


木造建築でまさに日本風。

松や池がある庭まで、ちゃっかり座っている。


でも修復は結構してるんだろなぁ。
どんな丈夫な家でも時間が経つと、やっぱりボロは出てくるし、
修復跡がいくつかあるのも発見した。

⏰:09/03/02 17:18 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#219 [七瀬]
 
 
 
「幸夫のお友達?
あの子、まだ帰ってきてないの。部活じゃないかしら?
とりあえず中に入って、待ってて。」



お言葉に甘え、中で待たせてもらうことにした。


玄関に頭を通すと、
木の良い香りがした。

⏰:09/03/02 17:22 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#220 [七瀬]
 
 
「ここでお待ち下さい。
今、お茶を入れてくるわ。」

林原の部屋へと案内された。

『あの、お構い無く。』

すると、林原のお母さん?は微笑んで、出ていった。
ほんと、きれいな人。



憧れる。

⏰:09/03/02 17:26 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#221 [七瀬]
 
 
 
ってか、ここが林原の部屋かぁ…。

片付いてるかと思ったら、下には、お菓子の袋が落ちてたりする。

じゃあ、散らかってるのか、と言われると
机の上は、きちんと整理整頓されている。


あいつは部屋ん中も、よく分かんないんだなあ。

少し、笑みがこぼれる。

⏰:09/03/02 17:31 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#222 [七瀬]
 
 
すると林原のお母さん?がお茶を持ってきてくれた、ちょうど、その時に

「ただいま。」

林原が帰ってきた。



また緊張が戻ってきた。
 
 

⏰:09/03/02 17:33 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#223 [七瀬]
林原のお母さん?から事情を聞いたらしく、

「どうしたの?」

と林原が部屋に入ってきた。


緊張をほぐすため、
目の前のお茶に手をのばす。


色からして緑茶だな。
湯気が立つたびに
緑茶独特の匂いが、心地よく鼻を刺激する。

⏰:09/03/02 17:38 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#224 [七瀬]
 
 
『きれーな人だね、林原のお母さん。』

まずは、別の話をしてから本題に移ろうと考えていた。



「ああ、あれおばちゃんだし。」


えぇぇっ!?

……ますます憧れる!!

⏰:09/03/02 17:41 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#225 [七瀬]
 
 
もっとおばあちゃんのことを聞きたかった。

美の秘訣とか、




林原のお母さんは?
とか。


でも林原は、その話をさせてくれなかった。
 

⏰:09/03/02 17:44 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#226 [七瀬]
露骨に嫌な雰囲気を出すのではなく、

林原が
その話を受け付けない空気を体の全体で発した。


ほんの数秒だけど、

林原の犬のような目に、そんな光が見えたことを、
私は見逃さなかった。


今、思うと
この時から、林原の少し違った感じと、

いやな予感がしてたんだ。

⏰:09/03/02 17:51 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#227 [七瀬]
 
話題転換のため、
少し焦りつつ、私は言う。

『そういえば、林原って部活、入ってるらしーじゃん。何部なの?』

「剣道。」


そんなちっちゃい体で剣道とかするんだ。

これには素直に感心した。

でも林原はかなりご機嫌ナナメだった。

⏰:09/03/02 17:56 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#228 [七瀬]
『へ、へぇー。すごいねぇ。私なんか帰宅部だよぉ。』

余計に焦る。

なんとか、持ち上げてみるが、林原はますます、仏頂面になってゆく。

なんとかしないと!



「なぁ、松田。ほんとは俺に何を聞きに来たワケ?」

とうとう、林原の堪忍袋の緒が切れたみたい。

⏰:09/03/02 18:01 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#229 [七瀬]
 
 
少しばかりの沈黙。



どうする、柚子!?
こればかりは、ごまかせないっ!

林原の何もかもを、見透してしまう目が私に向けられている。


あーっ!
そんな目で見ないでよーっ!!

⏰:09/03/02 18:04 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#230 [七瀬]
 
 
 
なあ、
と林原の口がもう一度、開きかけた時に、


『あ、あのさ』

私は、口を開く。



林原の目は、ずっと私を睨んでいる。

一時も離さずに。

⏰:09/03/02 18:08 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#231 [七瀬]
 
 
『あ、あのさ。
その……、何でJ高を止めて、G高受けたの?』



恐る恐る、林原の顔を見上げる。





あ…れ?
 
 

⏰:09/03/02 18:36 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#232 [七瀬]
 
   
 
林原は明らか、動揺していた。


大きな目を、さらに大きく広げ、
口をへの字にして固まっている。




「な、なんで今さら、そんなこと聞くんだよ。」

力なく言う、林原。

⏰:09/03/02 18:40 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#233 [七瀬]
『なんでって……。
林原が言うから今日、会いに行ったの、ヒグマに。


それでヒグマが言ってた。
林原は願書提出の前日に、G高に変更したんだって。』



顔が青くなりだした林原。はじめっから、羨ましいほどの白い顔が
より、白くなった。

まるで豆腐のよう。

⏰:09/03/02 18:46 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#234 [七瀬]
 
 
 
 
 
「帰れ。」


え?

『今、なんて?』

「帰れっつったの。」

ボソッという林原の声は、いつもの高い声じゃなくって低く、冷たかった。

⏰:09/03/02 18:48 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#235 [七瀬]
 
『なんでっ!まだ何も聞いてない!』

少し声を荒げる。



が林原は


「帰れ!」

その何倍も声を荒げて、私に言い放った。
 
 

⏰:09/03/02 18:51 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#236 [七瀬]
 
 
誰?
あの人は誰なの??

私の知ってる林原じゃない。



私は気付いたら、走って家の前まで帰ってきていた。


まだ頭が混乱してる。

ヒグマの話を聞いた後よりも、
頭痛がひどくなっていた。

⏰:09/03/02 18:54 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#237 [七瀬]
 
 
 
 
 
……っと、こんな感じ。

こんな感じで林原と初ケンカしてしまった。


走馬灯のように思い出す。

今も、あの怖い顔した林原を鮮明に思い出せる。

思い出したくないのに。


あぁ、早く忘れたい。

⏰:09/03/02 18:58 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#238 [七瀬]
 
 
 
学校、行きたくないな。

正確に言うと林原に会いたくない。



電車に乗る。

幸い、今日は林原と同じ電車には、ならなかった。
 
 
ふぅ。
良かったぁ。

⏰:09/03/02 19:01 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#239 [七瀬]
満員電車の中、思う。
 
 

林原の家に初めて行って、初めて、部屋に入って、

念願のお母さん、
じゃなくておばあちゃんにも会って。


そして

初めて、焦ってる林原見て、



初めて、怒った顔を見た。

⏰:09/03/02 19:05 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#240 [七瀬]
 
 
 
初めてだらけで、
ちょっとは林原のことを知れて。


幸せなはずなのに。


後者を除いて……。
 
 
 

⏰:09/03/02 19:07 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#241 [七瀬]
 
 
 
行きたくない、とはいっても、
やはり学校には着いてしまう。




しぶしぶ4階へ、足を踏み入れる。


林原に会わないように、願いながら。

⏰:09/03/02 19:10 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#242 [七瀬]
 
 
これまた、幸いにも林原には会わず。

教室へ入る。



一瞬、林原と喧嘩したことを忘れてしまう。






アイツがいたから。
 

⏰:09/03/02 19:14 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#243 [七瀬]
 
 
少し震えながら、足を踏み出す。


これは恐怖で震えてるのではなく、

感動で震えてるのだと思う。



席に着く。

前にはアイツ。

⏰:09/03/02 19:17 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#244 [七瀬]
次、会ったら絶対に声をかけよう、
と決めていた。





どうしよう。

いざという時に、迷ってしまう。


よしっ!
決めたぞ!!

立ち上がった。

⏰:09/03/02 19:22 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#245 [七瀬]
そして深呼吸。


『あの……。』




ピンポーンパンポーン

“松田、松田。
1ー2 松田柚子ー。
大至急、職員室へ来なさい。牧田先生が呼んでいます。”

もぉー!!

⏰:09/03/02 19:26 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#246 [七瀬]
 
 
『なんですか。』

「いや、昨日な飛田から電話があったんだよー。
何年ぶりだろうなぁ。
ほんと懐かしくて、つい昔話しちまったよ。」



それから散々、ヒグマとの学生時代を聞かされるはめとなった。

興味ないしー!
やっぱ面白いけど?笑


とりあえず
ヒグマのせいだーっ!!

⏰:09/03/02 19:31 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#247 [七瀬]
 
 
しかも、
肝心の技術室のことは、全く会話に出てくることはなかった。


なんのために電話したのよ、ヒグマ。

役立たず。



疲れた表情で職員室から出る。

⏰:09/03/02 19:35 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#248 [七瀬]
 
教室へ急ごうとする。

だって早く行かないと、またアイツが、どっかに行っちゃうかも、

と不安だったから。


が、階段へ体を向けた瞬間、すでに私は反対側の階段へと、向かっていた。

⏰:09/03/02 19:39 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#249 [七瀬]
 
 
 
 
だって、

林原が登校して来てたから。


びっくりした。

林原が、こっちを見た気がしたから。


気付いてないよね?
 

⏰:09/03/02 19:41 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#250 [凛]
気になるーっ><
まじおもしろい♪

感想板ってありますか?

⏰:09/03/02 21:51 📱:N706i 🆔:FIoHv/gg


#251 [七瀬]
毎回ありがとっ(´∀`)

やる気でます↑↑

感想板って、
どうやって作るんですか? 

⏰:09/03/02 22:23 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#252 [凛]
皆さんは総合の方で
つくっておられますよ♪

⏰:09/03/02 22:27 📱:N706i 🆔:FIoHv/gg


#253 [七瀬]
 
 
教室へと戻り、
ホッと一息。


その一息は、
なんとか林原に会わずに済んだのと、

ちゃんとアイツがいたから。

やっぱり窓の外を見ている、名前も知らないアイツ。


よし!
今日は名前を知ることが目標!!

⏰:09/03/02 22:43 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#254 [七瀬]
一時限目が始まる。

まだ得意な数学だけど、長く感じた。

早く終わってよーっ!!

休み時間が待ち遠しくて仕方ない。

だって、こんな近いのに、声もかけらんない。

⏰:09/03/02 22:54 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#255 [七瀬]
凛さん、ありがとっ!!

えーと、作ってみようと思ったんだけど、
ちょっと待たなくてはいけないみたいなので、

また明日、やってみますね(●´∀`●)/

作ったら必ずお知らせします。

とりあえず今は、更新を頑張るよーっ(o>ω<o)

⏰:09/03/02 22:58 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#256 [七瀬]
 
 
終わりのチャイムが鳴る。

「ありがとうござました。」

授業終了のあいさつでさえ、うざったく感じる。


先生が教室から出て行くと、すぐさま、アイツも席を立った。

どこいくんだろう?

⏰:09/03/02 23:02 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#257 [七瀬]
 
 
しばらく後を付いていくと、



中庭?

そいつは中庭へ向かって行く。

私も追い掛ける。

私はストーカーか?
と少し、自虐的な笑みをこぼす。

するとヤツは中庭の、一番端っこのイスに腰掛けた。

⏰:09/03/02 23:06 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#258 [七瀬]
 
 
何か見てる?

アイツは下の方を、ジッと見ている。



何を見てるんだろう。

気になる……。


気になる!
気になる!!


私は彼に近づいた。

⏰:09/03/02 23:09 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#259 [七瀬]
よほど熱心に見ているのか、私の近づく気配にまったく気付かない。


3メートルほどの距離になると、さすがに気付いたみたい。

私の方に目を移動させ、すぐに、下に戻す。


あの時と同じ。

初めて会った、入試の実技テストの時と……。

私は胸が高鳴っていくのを感じた。

⏰:09/03/02 23:14 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#260 [七瀬]
 
 
私がずっと見てるのが、気味悪いのか、
ヤツは立って中庭を出ようとした。


こっちに歩いてくる。


すれ違う。



『あのっ!』

たまらず声を掛けてしまった。

⏰:09/03/02 23:17 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#261 [七瀬]
「何?」



初めて聞く声。

深みがあって、ずっと聞いていたくなる。

そして、その深みのさらなる奧に
温かさがあるような声だった。



が、その反面、
目はかなり冷たかった。
 

⏰:09/03/02 23:20 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#262 [七瀬]
 
 
そのギャップに少し、戸惑いながら、私は聞いた。

『あの、名前…。
名前、教えて下さい!』


頑張ったぞ、私!!

と自画自賛していると、


「あのさぁ、人に名前を聞く時はさ、
まず自分から名乗るってのが常識なんじゃないの?」

⏰:09/03/02 23:25 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#263 [七瀬]
 
と、またまた冷たい目が私を惑わせる。



なんかムカつくかも。

ちょっとヤなヤツ?

いやいや、私が悪いのね?

一人、心の中で考える。


なんか思ってたのと違う。

⏰:09/03/02 23:29 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#264 [七瀬]
 
 
すると、何も言わずに立ち去ろうとする、アイツ。


待って、待って!!

『柚子っ!松田柚子!!』


あわてて言う。

すると、男は振り向いた。 
 
まぶしい。

⏰:09/03/02 23:32 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#265 [七瀬]
太陽が急に差し込んできて、視界を邪魔する。



でも見えた。

私には見えた。


太陽に負けないくらい、まぶしい彼の笑顔が。

冷たい目とは、全然違っていて、

声と比例するほど温かい笑顔。

⏰:09/03/02 23:35 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#266 [七瀬]
 
 
 
そんな温かすぎる笑顔で、

「ふーん、よろしくな。


ぽんずちゃん。」

と意地悪く言って、去って行く背中を

ただただ見つめていた。
呆然と立ち尽くして。
 

⏰:09/03/02 23:38 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#267 [七瀬]
 
 
ぽんず……ちゃん?

ぽんずって何?

あぁ、あの酸っぱくて、醤油とはまた違った奴かぁ。

豆腐サラダにかけると美味しいよね〜。


……じゃなぁーいっ!

ぽんずちゃんの

“ぽんず”がポン酢ということを理解するのには、
かなり時間がかかった。

⏰:09/03/02 23:43 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#268 [七瀬]
どうも、お待たせしました。
七瀬の感想板ができましたヽ(´▽`)/

また感想ちょーだいね!

ごめんなさい(*с*)
貼り方が分かりません。

総合の方で
“七瀬 感想板”で検索していただけると、見つかると思います。

これからも長いお付き合いをお願いしますm(__)m

⏰:09/03/02 23:52 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#269 [凛]
貼れるか微妙やけど…

↓感想板
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4276/

⏰:09/03/02 23:56 📱:N706i 🆔:FIoHv/gg


#270 [七瀬]
 
あくびが出る。


そんな今は、
2時間目の社会。

あくびで涙目になりながら、前のアイツを見る。

さっきの意地悪顔に似合わず、
マジメにノートをとっている。

そんな私は、アイツとは正反対。

先生は耳をするりと、
通り抜けてゆく。

⏰:09/03/03 18:48 📱:N703iD 🆔:Fiiu.ZXI


#271 [七瀬]
 
私の頭の中は、謎でぎゅうぎゅうだった。



なんで、ポン酢ちゃん?

あと、


あなたの名前は?


こんなことが、ぐるぐると脳裏を回っている。

あれから
ずっと、だ。

⏰:09/03/03 18:52 📱:N703iD 🆔:Fiiu.ZXI


#272 [七瀬]
 
マジメな姿を見ていると、無性に邪魔をしたくなってきた。


悪魔が私の心に芽生えた。

“ねぇ、ねえ。”
とでも、言うように
私はシャーペンでアイツの背中をつつく。



あれ、
ムシですか。

⏰:09/03/03 18:59 📱:N703iD 🆔:Fiiu.ZXI


#273 [七瀬]
まるで、何も知らないように、ノートを書き続けている。


気付いてないのかな?


いいや、そんなはずはない。

もっと強く押してみる。

知らんぷりしてるな、こいつ。

腹が立ってきた。 
 

⏰:09/03/03 19:01 📱:N703iD 🆔:Fiiu.ZXI


#274 [七瀬]
 
粘り続けること、約5分。

まだ知らん顔するアイツ。


そろそろ、手も疲れてきた。

もう諦めよ。
また休み時間に声かけよ。



すると、

スッとアイツの手が後ろに伸びてきて、
私の机に何かを置いた。

⏰:09/03/03 19:06 📱:N703iD 🆔:Fiiu.ZXI


#275 [七瀬]
なんだろ?


すると、そこにはノートの切れ端をクシャクシャに丸めたものがあった。



それを開いてみる。

“まだ何か用?”

と、それだけ。
 

さっそく返事を書く私。

手紙を書いてくれただけのに、心は笑っていた。

⏰:09/03/03 19:10 📱:N703iD 🆔:Fiiu.ZXI


#276 [七瀬]
“名前、教えてよ。”

“ひつけーな。ぽんずちゃんには関係ないだろ?”

“ぽんずじゃないし!なんで教えてくんないの?”

“個人情報保護法に基づいて。
てかそんなに名前、知りたがるなんて、俺のこと好きなの?”

“ぜんっぜん!!”

“またまた、強がっちゃってー。”
 

⏰:09/03/03 19:15 📱:N703iD 🆔:Fiiu.ZXI


#277 [七瀬]
こんな、やりとりが続く。
はぁ、だめだこりゃ。


すぐ話題を反らそうとするアイツ。

そして、それに流されてしまう私。


これじゃキリないよ。
教えてもらえる空気じゃないし。



そんなうちに、2時限目も終了。

⏰:09/03/03 19:20 📱:N703iD 🆔:Fiiu.ZXI


#278 [七瀬]
 
 
『ねぇ!なんで教えてくんないの、名前。』


「ん、そのほうが面白いでしょ。」



こいつは私以上に悪魔が心に住み着いていた。

もう、あの温かい目はしないのかな?

また、してよ。

⏰:09/03/04 12:43 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#279 [七瀬]
 
 
 
結局、教えてもらえないまま学校が終わってしまった。

林原とも、会わなかった。



が、私の謎は思わぬ所で解消されることになる。


家に到着。 
 

⏰:09/03/04 12:47 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#280 [七瀬]
ただいま、
と言おうとしたけれど、
下を見ると、お母さんの靴がない。

買い物でも言ってるのかな?

お姉さんはまだ学校だな。



これはチャンス!!

昨日の夕飯のおかずを、
つまみ食いしようとキッチンへ

ガチャ

⏰:09/03/04 12:51 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#281 [七瀬]
「柚子ー。帰って来てるのー?」


チッ。
心の中で舌打ちをする。


「柚子ー。ちょっと来てー。」

お母さんの大声は静かな家に響き渡る。


2階の自分の部屋にいたら、聞こえないフリも出来たけれど、
台所は玄関のすぐ近く。

⏰:09/03/04 12:57 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#282 [七瀬]
もう!!


エビフライに伸びていた私の手は、それにたどり着くことはなく、

お母さんの元へ。


お母さんは、すごい数のビニール袋を持っていた。

「柚子っ!やっと来た。
はい、これを台所に運んで。」

一つ一つの中身も重たい。

お母さんこれ全部、一人で運んだワケ?

さすが怪力。

⏰:09/03/04 13:03 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#283 [七瀬]
 
運び終わると、
次は「あの棚になおして。」「冷蔵庫に入れて」

と、散々コキ使われた。


「これは使うから、冷蔵庫に入れなくていいわ。」

『わかった。』

と目線を向けた。



“ゆずポン酢”

⏰:09/03/04 13:07 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#284 [七瀬]
 
 
ゆず…ポン酢。

唖然とする。



「どうしたの、柚子。」

「あの、これは……。」

「今日はゆずポンが安かったのよー。
いつもは違うのだけど、たまにはいいでしょ?」


ゆずポン酢を私は初めて見た。

⏰:09/03/04 13:12 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#285 [七瀬]
 
「もう、ママがいつもいつも、一番安いポン酢買ってるから柚子がゆずポンも知らないんだからなー。」

とお父さんが上機嫌でいう。

「だって、10円がもったいないんだものー。」

とニコニコ答えるお母さん。


この二人のラブラブぶりには、
娘の私たちはいつも恥ずかしく、寒気がする。

⏰:09/03/04 13:18 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#286 [七瀬]
この時だけは、お姉さんと以心伝心できる。
 
 
「ってゆーか、柚子はゆずポン知らなかったんだ。」

『うん。お姉さんは知ってるの?』

「昔はうちも、ゆずポンだったしねー。」


そうなんだ。

「パパが、ゆずポン派だったしね。」

⏰:09/03/04 13:22 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#287 [七瀬]
お姉ちゃんは続ける。

「でも、いつからか10円安いやつになってた。」

声を潜め、私に耳打ちするお姉ちゃん。

「お父さんは全く気付かないしね。
ほら、うちのお父さんは味オンチじゃん?」


そうだったんだ。

「柚子の名前の由来はゆずポンから来てるんだぞー。」

⏰:09/03/04 13:27 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#288 [七瀬]
 
と少し酔ってるお父さんは、いつものおっとり口調ではなく、さらりと言った。



が、私には衝撃的な事実だった。

私の名前って一体なんなのよ〜!!

「やだ、あなたったら〜!」

お母さんは笑ってる。

さっきまで以心伝心だったお姉ちゃんまでも、大笑い。

⏰:09/03/04 13:32 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#289 [七瀬]
 
 
 
そんな、ちょっと複雑な真実を知った私。

初めて食べたゆずポンの味は、いつものやつよりも濃くって、

今の私には苦かった。


あれから、お風呂にも入って、
今は髪を乾かして、クシで、とかしていた。

⏰:09/03/04 13:37 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#290 [七瀬]
 
 
鏡に写った自分を見る。

短い髪。
幼稚園の時は背中まで、あったのになあ。
でも小学校にあがってから、ずっとこのショートヘアー。



そして、少し小麦色の肌。

私には、これがコンプレックスだった。

⏰:09/03/04 13:42 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#291 [七瀬]
だって、お母さんもお父さんもお姉ちゃんも、みんな真っ白な肌。


私だけ。

小学生の時、おじいちゃんに聞いたことがある。

『どうして私の肌はお母さん達と違うの?』

「柚子は、わしに似たんだなぁ。」


おじいちゃんは、小麦色の顔で優しく言った。

⏰:09/03/04 13:50 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#292 [七瀬]
この話には続きがある。

この後、おじいちゃんは

「それに柚子とわしの肌はなぁ、太陽をたくさん浴びた証拠なんだよ。
たから、ちっとも恥ずかしがることはない。」

と言った。

これで私のコンプレックスは消えた。


……はずなのに。

またあの当時の、苦しい気持ちが蘇ってきてる。

⏰:09/03/04 13:56 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#293 [七瀬]
 
なんでだろう。



「どしたの?柚子。
鏡ばっかり見て、好きな子でも出来たの?」

いきなりお姉ちゃんが現れた。

『もう!からかわないでよ!!』



私は、部屋に戻り、ベッドに倒れこんだ。

⏰:09/03/04 14:01 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#294 [七瀬]
 
 
さっきのお姉ちゃんの言葉が耳を離れない。

“好きな子でも出来たの?”




ふと、アイツのことを思い出す。

アイツもきれいな小麦色だったなあ。
 

⏰:09/03/04 14:05 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#295 [七瀬]
 
 
今度こそ!
今度こそ、名前を知る!!

固く決心して、元気良く、家を出る。

んー、朝の空気が清々しいなあ。

駅へと、私の足はルンルンと歩いて行く。


アイツのことを考えると、自然と楽しくなる。
 

⏰:09/03/04 14:32 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#296 [七瀬]
 
 
が、 
私の気持ちは、一気に暗くなった。

だって、






駅に林原がいたから。
 
 

⏰:09/03/04 14:34 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#297 [七瀬]
切符を買っているらしい林原は、私には気付いていない。


なんか懐かしい。

一昨日、会ったのになぁ。


私が2日前に見た林原は、普段の林原じゃなかった。


だから今見てる、いつもの林原がとても懐かしく感じたかな。

息が苦しくなった。

⏰:09/03/04 14:38 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#298 [七瀬]
私はやっぱり林原に声をかけられず仕方なく一本、後の電車に乗った。




「おーい、遅刻だぞ。」

教室に着くころには、1時限目の授業を5分、過ぎたところだった。

技術の授業だったみたいでマッキーの声が私に向けられる。

『すいません。』

私は席に着いた。

⏰:09/03/04 14:45 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#299 [七瀬]
私はボンヤリと朝のことを考えていた。


前にアイツがいるのに、ちっとも、心は弾まない。

どうしちゃったんだろ、私?

自分でもわからない。



マッキーの話は相変わらずなのに
私は全然、頭に入ってこない。

⏰:09/03/04 14:49 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#300 [七瀬]
“どうかしたのか?”

そんな手紙が前から、送られてきた。

アイツが私を見ている。
あの温かい目で。


なんでもないよ、
という風に首を振った。

心配してくれてるのかな?


ちょっぴり元気が出た。

⏰:09/03/04 14:53 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


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