星とぽんず
最新 最初 🆕
#1 [七瀬]
どうも、初カキです!!
未熟者だけど
がんばります(´∀`)

趣味として書きますので
更新は遅くなる時も
あります↓↓
ご理解ください。

また中傷、荒らしは
止めてね(ノд<。)゜。

⏰:09/02/26 21:27 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#2 [七瀬]
「柚子はすごいなあ」

あのおじいちゃんの
顔が今でも忘れられない。

あれから10年。
今の私は…。

⏰:09/02/26 21:31 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#3 [七瀬]
「おーっ!!
やっぱり松田は最高だ。」
松田柚子(マツダユズ)
中3。

今、先生のヒグマに
誉められてます。

みんなの目も
私に向けられている。

イェイ!!

⏰:09/02/26 21:36 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#4 [七瀬]
今は技術の授業中。

私の作ったイスは
小さいけれど凝っていて、自分でいうけれど
中々いい出来だ。

ほんとは本立ての
つもりだったんだけど、
余ってる木を見たら
勿体なくって。


作っちゃいました。

⏰:09/02/26 21:43 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#5 [七瀬]
こんくらい
チョロい。チョロい。
全然よゆーっ!!

技術だけは2年間
好成績をキープしている。今年も楽勝だな。

と思っていると……

バチッ
『痛っ』

「まったく勝手に使って。」とちょっと睨むヒグマ。

⏰:09/02/26 21:50 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#6 [七瀬]
『えーっ。
誉めてくれたじゃん。』

「まあ確かに
切れ味も綺麗だし、
細かい所も出来てる。」

ヒグマの睨みが強くなる。

「でもなぁ…。」

キンコンカーンコーン

ナイスタイミング!!
ラッキー!!
と思ったのも束の間。

にやっと笑うヒグマ。
「松田。放課後、技術室な」

さいあーくっ!!

⏰:09/02/26 21:56 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#7 [七瀬]
『はぁ…。』
ため息をついてると、

横から「最悪だなーっ」
と高い声。

林原だ。

『うん、最悪』
げんなりと言うと、

「また掃除だろー??
お前、ヒグマのお気に入りだもんなあ。まっ、頑張れよーっ」
と軽く去っていた。


まるで嵐のようだった。

⏰:09/02/26 22:02 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#8 [七瀬]
なんなんだ。笑
あいつは。

林原幸夫(ハヤシバラユキオ)
同じく中3。

私の友達??
かなあ?

わかんないわ。


掴み所なくて、
普段はぼぉーっとしてる。

謎男。

でも良いヤツだよ。

⏰:09/02/26 22:06 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#9 [七瀬]
放課後。
嫌々、技術室へ。

「来たか、松田
掃除手伝ってくれ。」

ヒグマと一緒に
広い技術室に散らばる
木のくずを掃く。

するとヒグマがいきなり、
「お前、高校はやっぱり
工業科にするのか?」
といきなり真面目な質問。

⏰:09/02/26 22:11 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#10 [七瀬]
んー。受験かあ。
全然、頭に無かった私は、

『そうですね、
まだ考え中だけど
親と相談してみます。』

と適当に返事をした。

ふーん、と
自分から言いだしたくせにそもそも担任なのに
興味なさげにヒグマは返した。

30分後、
解放された私は帰宅した。

⏰:09/02/26 22:17 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#11 [七瀬]
『ただいまー。』

「お帰り。」
お母さんが台所で言った。

父、母、姉、私。

父は普通のサラリーマン。母は専業主婦。
姉は高校2年生。

ふと窓の外を見ると、
工場があった。

「松田鉄工業」の看板が
無くなってるなあ、
淋しくなる。

去年までもう一人、
私たち松田一家にはおじいちゃんという家族がいた。

⏰:09/02/26 22:24 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#12 [七瀬]
部屋に行き、
制服も着替えず、ベットに倒れこむ。
一気に目を閉じる。



記憶が蘇ってきた。





12年前の3歳。
はじめて見た灰色の景色。油の匂いが鼻をつく。

⏰:09/02/26 22:29 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#13 [七瀬]
私はおじいちゃんに
連れられて初めて
「松田鉄工業」に来た。

3歳ながら、
私は胸が高鳴った。

機会が同じリズムで動く音がとても心地よかった。

おじいちゃんは笑顔だった。


お母さんの危ないという声を無視してほぼ毎日、工場に行った。

といっても
やっぱり危ないので
端っこで見てるだけだったけど。

⏰:09/02/26 22:35 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#14 [七瀬]
小さい工場でおじいちゃんと従業員、2人ぐらいで働いていた。

おじいちゃんは昔から私みたいに技術が大好きだった。そして建築の仕事をしたくて工業全般の勉強をらしい。

けれども結局、挫折してしまい、勉強したことを生かし、この工場を作った。

という話をお父さんから聞いた。

お父さんはまったく工業には興味はなかったから、工業は継がなかったし、
おじいちゃんも無理強いはしなかった。

⏰:09/02/26 22:42 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#15 [七瀬]
でも私には色々教えてくれた。

なんでだろう。
また工場に行ったから?

わからない。
けれどおじいちゃんは
いつも優しい笑顔で教えてくれた。

5歳になる頃には私は、ノコギリを使って木を切れるようになってた。

とはいえ、まだ5歳だし小さくて細い木を小さいノコギリで切っただけだけど。
でも誉められてうれしかったし、
ますます技術が好きになった。

でも去年おじいちゃんは
亡くなった。

⏰:09/02/26 22:47 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#16 [七瀬]
今でも信じらんない。

あんなに元気だったおじいちゃんが。
急に。

78歳にはとても見えない様子でおじいちゃんは毎日、大きな機械を動かしてた。
なのに、あっという間だった。


おじいちゃんがいなくなった今、工場は閉鎖され、従業員も、もちろん首になった。

今も着々と工場の取り壊しが進んでいる。


私はそれを見るたび、
憂うつになる。

⏰:09/02/26 22:53 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#17 [七瀬]
     
  
       

7月の中間。
第2回進路懇談が行われた。

第1回は私とお母さんの口喧嘩、そしてヒグマとの睨み合いで終わってしまった。


今回はなんとかしないと。

「どっか行きたいところはないのか。」
ヒグマの言葉の後、
沈黙が続く。

とうとう観念した私は口を開いた。

⏰:09/02/26 22:58 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#18 [七瀬]
『笑わないでね。』
私はお母さんとヒグマを軽く威嚇した。

笑わないよ、いうように2人はうなずく。

『私……、
 
 
電気工学を学びたい!!』

2人を見ると、
目を見開き、口はあんぐりしていた。

「電気……工学??」
とお母さん。

「お前本気か。」
とヒグマ。

⏰:09/02/26 23:05 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#19 [七瀬]
「工業科だろうとは思っていたけど、まさか電気工学とはなあ。」と口元に薄ら笑みを浮かべるヒグマ。

お母さんは相変わらず、目を大きく見開いている。


私の住んでいるところは田舎だけれど近くに工業で有名な高校が一高あった。

J高校。

他にも工業科があるところはあるけれどJ高校ほどではない。

⏰:09/02/26 23:16 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#20 [七瀬]
それに工業科にしては、賢い。

私の成績じゃあ足りない!!

でも、それ以外にも理由があった。

それは
     
   
  
“ほぼ男子校”
  
 
“ほぼ”というのは、

共学だけども女子で工業科を受ける子がほとんどいないからだ。


建築デザインや、
理数工学ならまだしも、

機械や電気については
去年は0。
その去年も0。
そのその去年も0。

それについては、J高だけでなく工業科についはみんな同じだけれども。

⏰:09/02/26 23:24 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#21 [七瀬]
  

 
 
さ…
さ、さ……
34点!!


なんなんだ、これは!
いくらなんでもひどいっ
ひどいぃーっ!!

今、英語のテスト
撃沈中です。

ほんと泣きそう

先生の解説を聞かず、
机に顔を伏せる。

⏰:09/02/26 23:38 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#22 [七瀬]
楽しい楽しい夏休みが明けいきなりの課題テスト。

一気に夢から現実へ。

まったく勉強しなかったわけじゃない。

宿題はきちんと自分の力でしたし、復習だってしたつもりなのに〜!!

とふと前の席の林原を見ると同じく顔を伏せていた。
なんだ、あいつもかあ〜っと安心し声をかけてみることに。

⏰:09/02/26 23:43 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#23 [七瀬]
『はやしっばら!!』と妙に声が高くなり、バカみたいな声が出てしまった。

林原はマイペースに振り向くと、いつもの高い声ではなく少しかすれた声で「何?」と聞いただけだった。
『英語、何点??』

林原はしばらく黙り込んだ後、無表情で

「松田は?」と聞いた。

ギクっ!!

⏰:09/02/26 23:49 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#24 [七瀬]
『あっ!!
どこの高校受けるか決めた?』と話をそらすことに。

林原は話題転換に気にも留めず、ダルそうな声で
「あ〜、J高」
と言った。


え!?
まじでっ??という驚きが、つい口から出てしまった。

「うん、まじで。」と林原は言った後、また机に顔を伏せてしまった。

⏰:09/02/26 23:54 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#25 [七瀬]
なんだ。ライバルが1人、増えてしまったではないか。

窓の外で1年女子の体育を見ながら、ぼんやり考える。

ってか林原って、J高ほど賢かったっけと、またヤツに視線をもどすと、机の隙間から、


79点


と英語の答案用紙が顔を出していた。

⏰:09/02/26 23:59 📱:N703iD 🆔:V1qRCp82


#26 [七瀬]
ちぇっ、嫌味なヤツ!!と
ちょっと舌を出して
あっかんべーをする。

が、その後で
元気のない小さなため息が私の口から出た。


はぁ。


何やってんだろ。
わたし。

途端に情けない気持ちが、襲い掛かってきた。

⏰:09/02/27 00:08 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#27 [七瀬]
家に帰るやいなや、
私は机に猛ダッシュした。
靴を投げ捨て、
廊下をダダダーン。
階段をドンドンと音を立てて上がってった。
そしてドアをバンッと閉めた。

隣の部屋からお姉ちゃん「うるさーい」という、少しヒステリック?な
声が聞こえたけれど、とりあえず無視した。


机に向かい、中1からの教科書を引っ張りだし、無造作に広げた。

勝負の始まりだ。

⏰:09/02/27 00:15 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#28 [七瀬]
今から夕食の7時まで2時間、英語の復習だっ!!

自分に言い放つ。

2時間後に私の目の前にあるのは、真っ黒な手と鉛筆、独特の匂いの染みたノートだっ!!

心でかたくなに誓った。


そして2時間後、
私の目の前には………。

⏰:09/02/27 00:21 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#29 [七瀬]
  
 
 
ベタベタの手とヨダレ臭いノートだった。



「ごはんよー。」
お母さんの声が一階から聞こえる。

肉の良い匂いがした。
ハンバーグだなーっ

私はわくわくして下へおりた。

⏰:09/02/27 00:24 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#30 [七瀬]
うっそーん!?

予想は見事にはずれ、今目の前にあるのは、赤い口紅をしたオムレツだった。


はぁ。


ここでも、またため息。

なんか最近は付いてないな、とオムレツぐらいで、気分が下がる。

「どうしたの?」と
お姉ちゃんが問い掛けてきた。

⏰:09/02/27 00:29 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#31 [七瀬]
今日は更新STOPします!!

遅くなりましたが、
これは一応、ジャンルは恋愛です(><)

まだまだ先になる予定ですが…。

温かく見守ってくださいな(o‘∀‘o)

では
おやすみなさい(ρ_-)ノ

⏰:09/02/27 00:43 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#32 [七瀬]
『う〜ん』と
元気のない返事をすると、

「どーせまた、テストが悪かったんでしょ」
と鋭い指摘。


「もう、何点だったのよ。柚子。」
お母さんの追い討ち。

こりゃ、隠し通せないな。
でも…。
でもでもでもっ!!

⏰:09/02/27 14:00 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#33 [七瀬]
言うべきだろうか。

49、55、57、47、34。

前から順に
国語、数学、理科、社会。そして英語……。

言ってもいいのだろうか。

お母さんの眼力とお姉ちゃんの含み笑いが私の頭を痛くする。

が、隠し続けれる話じゃないしなあ。


がちゃ。

⏰:09/02/27 14:06 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#34 [七瀬]
「あらお父さんが帰ってきたわ。」
「おかえりー。」

これまたナイスタイミングでお父さんが帰ってき、2人の視線が私から離れた。

お父さんありがとーっ。

と喜んでいると、

「さっき飛田先生に会ったぞ。柚子、成績ガタ落ちらしいじゃないか。」

⏰:09/02/27 14:11 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#35 [七瀬]
  
お父さーん!
ヒグマぁーっ!!

お父さんはのほほんとした笑顔で5秒ぐらい時間をかけて言った。

視線が私に元通り。
空気よんでね。


結局、私は成績を披露するはめになった。

⏰:09/02/27 14:15 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#36 [七瀬]
たっぷり叱られ、バカにされ…、

お風呂に逃げ込んだ。


チャポン。
『ふぅ。』

疲れが溶けていく気がした。


そして今日ヒグマに言われたことを思い出した。
  
  
  

⏰:09/02/27 14:18 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#37 [七瀬]
  
「おーい。松田ぁー。」

例の件で落ち込む私を呼ぶヒグマ。

『はい〜。なんですか??』
「ふむ、あのなぁせっかく悲しみに入り浸っているところを悪いんだが、
この成績でJ高って舐めてんのか?」 

はっきり言われた。


黙っている私を見てヒグマは続けた。

⏰:09/02/27 14:24 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#38 [七瀬]
「こんなこと言いたくないけどなぁ、お前の成績じゃ無理だ。」

いやいや、めちゃくちゃはっきり言ってるじゃないすか。

という心の中のツッコミは押さえて、黙る。



「それでな、俺の行ってたG高はどうだ?」

⏰:09/02/27 14:28 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#39 [七瀬]
G……高??
聞いたこともない。

私がよほど目をハテナにしてたのだろう。


「そこになら電気や機械について学べるぞ。それに松田の成績でも行ける。ただちょっと遠いんだよなあ。
それに…。」


それに?

⏰:09/02/27 14:32 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#40 [七瀬]
ヒグマは目を伏せながら言った。


「それに、ちょっと変わってんだよ。その高校。」

変わってる??
え、どういうふうに?

荒れてるってこと??

頭に次々と浮かぶ疑問。


『その、それは荒れてる…ということですかね?』


 

⏰:09/02/27 14:37 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#41 [七瀬]
「んー、荒れてるというかなんと言うか……。やっぱ男ばっかなんだよな。

まぁ、初めっから工業科に行きたいということは、それくらい分かってたとは思うけど。」


へ?
それだけ?

『分かっています。男子校潜入!!って気分で通うつもりです!!』

とちょっとふざけてみた。

⏰:09/02/27 14:42 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#42 [七瀬]
そんな私のおふざけをスルーしヒグマは言った。

「やっぱ元々、男臭いところなんだ。それにいる奴もクセがあるというか…。」


よく意味がわからなかった。


『遠いってどれくらいかかるんですか?』
と質問を変えてみた。

⏰:09/02/27 14:47 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#43 [七瀬]
「えーと、お前んちからだと、1時間半くらいじゃないか?」と
これにはあっさりと答えた。

1時間半!?

それはさすがに
ちょっとなぁ……。
と思っていると、

「けれど電気、機械の技術についてだとJ高にも負けないぞ。
もしかしたら、こっちの方が上かもしれない。」と
目を怪しく光らせるヒグマ。

⏰:09/02/27 14:53 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#44 [七瀬]
  
 
 
「まだ入ってるのー?」と
お母さんの声。

湯船から急いで出て、頭や体を笑い、お風呂から上がった。


髪もよく乾かさず、2階へと向かった。


よほど疲れていたのか、夕食前にあんなに寝たのに、すんなりと睡眠に入れた。

⏰:09/02/27 14:57 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#45 [七瀬]
 
翌朝。

私はハッと目を覚ました。

時計をみると、短い針と長い針。両方とも5時を差していた。

5時25分。

久々、こんなに早起きをした。

昨日は夢の一つも見なかった。
いや見たけど忘れてしまったのかもしれないな。

⏰:09/02/27 15:02 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#46 [七瀬]
「柚子、今日はえらく早起きなのね。」

『うん。なんか目が覚めちゃってさ。』


顔を洗い、制服を来た。
トーストとサラダを食べる。

「ちゃんと勉強しなさいよ。」
昨日、死ぬほど聞かされたことをまた言われ、
うんざりした。

『わかってる。』
ぶすっとした表情で返す。

これ以上、お母さんの小言が出ない内に行こ。

少し早いけれど家を出た。『いってきまーす。』

⏰:09/02/27 15:10 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#47 [七瀬]
少し歩くと松田鉄工場が見えた。

今はもう機械もほとんど処理されてるんだろうなあ。


「松田ーっ!!」

あの高い声は林原だな。

「おはよ。」
『はよ。』

私の隣を少し追い越した。

⏰:09/02/27 15:15 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#48 [七瀬]
林原の近い後ろ姿を見ながら、ふと思った。

背、高くなったなあ。

中1の時は前から数えた方が早かったのに、
今は前から数えても、後ろから数えても、同じだもんなあ。

身長が伸びても林原は背は高いほうではなかったけれど、
私とは比べものにならないんだろうなぁ。

って当たり前か。
私がちっちゃすぎるのか。
私は小学生の時から、前ならえはずっと前だった。

⏰:09/02/27 15:22 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#49 [七瀬]
そんなことをぼんやり考えていると、
林原がいきなり
「お前もJ高、受けんだってな。」と言った。


『まだ考え中だけど…。
って何で知ってんの?』

「え、ああ、悪ぃ。お前の懇談、聞いちまった。」
悪びれる様子も無く言う。

『なにそれ。まあいいけど、別に大した話じゃないしね。』

⏰:09/02/27 15:27 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#50 [七瀬]
へらへら笑っている私に、林原は
「そんなんで受かんの?」

『え??』

「だーかーらっ!!英語、34点の奴が受かるわけねーじゃん!」
とちょっと真剣な林原。


『なっ…。あんた私の答案用紙、見たの!??』

「ちげーよ。人聞き悪いな。落ちてたから拾ってやったんだろーが。」

『それだったら良いけど
ってかむしろありがと。』

⏰:09/02/27 15:33 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#51 [七瀬]
「おう。」

さっきまで、ちょっと声荒げてたのに急に黙ってしまった。
やっぱわかんないヤツだわ、林原は。


ちょっと笑ってしまった。


『ってかなんで林原はそんなに早く学校いくわけ?』
ふと疑問に思った。

⏰:09/02/27 15:36 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#52 [七瀬]
「俺、日直だから。」


『ぶっ!』

無愛想な顔して真面目なこと言うから笑ってしまったではないか。


「何、笑ってんの?」
スローで答える林原。

相変わらずのマイペースぶりに、少し癒されてしまった。


調子狂うな、もう。

⏰:09/02/27 15:41 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#53 [七瀬]
 
その日、私はG高校は受けない、J高にする
とヒグマに告げた。

今までは憧れでJ高を目指してた。

けれども今日、なぜか自分の意志で行きたいと思った。


それはやっぱり林原のおかげだと思う。



悔しいけれど。

⏰:09/02/27 16:23 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#54 [七瀬]
 
 
 
あれから10月になり、みんなで盛り上がった体育祭も終わり、

気付けば、11月に入る直前だった。



そして、とうとう始まってしまった。


第3回目の恐怖の進路懇談が……。

⏰:09/02/27 16:27 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#55 [七瀬]
 
お母さんは激怒した。



私は何も言わずJ高に決めてしまったからだ。

2回目の懇談の時はJ高は一応、視野にいれておこうということで保留になっていた。


が今回、何も相談せずに勝手に進路希望調査に“J高”と記入したのを

お母さんはグダグダ言っている。

⏰:09/02/27 16:33 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#56 [七瀬]
ほんとに参った。

でも参ってしまったのは私じゃなくヒグマの方みたいだ。


ようやく肌寒くなってきた季節だけど、昼は暑い。
日がよく差し込むこの教室は
冬はあったかい、
夏はくそ暑い。
と批評されている。


ヒグマはまさに、直射日光の位置。

元々、ぽっちゃり?
筋肉質?な
ヒグマのこめかみからは
大量の汗が溢れていた。

⏰:09/02/27 16:40 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#57 [七瀬]
「え、えーと、ではお母さまはG高については何も聞いていないわけですね。」 
細い目を一段と細めて、ヒグマは言った。


「G…高?」
お母さんの目付きが厳しくなるのが見なくても分かった。

暑いのに冷や汗が流れているのがわかる。

やばいよーっ!!


ヒグマは恐る恐る話しだした。

⏰:09/02/27 18:38 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#58 [七瀬]
「……というわけで、僕は柚子さんにG高を勧めたわけです、はい。」

ほぼ私に話したことをそのままお母さんに説明していた。
ただ“変わった”高校だということは除いて。

けどそんなことよりヒグマの「僕」と「柚子さん」が面白くって、そっちに気が向いてしまったけれど。


ただ話を聞いた後のお母さんの顔は確実に和らいでいた。

⏰:09/02/27 18:49 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#59 [七瀬]
「なんだ柚子、良かったじゃないの。
やだ、この娘ったら何にも言わないから。すいませんねぇ、先生。
柚子、そこにしましょ。
G高校でしたっけ。」


ちょ、ちょ
ちょっと待ってよ!

『お母さん、やだっ!私、J高がいい!!』

だだをこねる私。

ヒグマは安心した顔になったのもつかの間、すぐ心配顔になっていた。

⏰:09/02/27 18:55 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#60 [七瀬]
「松田……。」
ヒグマが何か言い掛けた時、お母さんが口を挟む。

「いいんです、先生。私が説得しますから。
今日はありがとうございました。柚子、行きましょ。先生さようなら。」

一方的で、言い終わるまでには、すでに腰を上げていたお母さん。

私は無理矢理、手を引かれ、連れて帰られた。

まるでスーパーでお菓子買ってとすがる幼稚園児を連れて帰るように。

⏰:09/02/27 19:02 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#61 [七瀬]
 
 
家に帰った後、
お母さんは話を初めた。

「よく聞いてね。私は柚子には、G高に行ってほしい。受験でつらい思いさせたくないしね。」


お母さんの悲しげな瞳を見ていると、さっきまでの気持ちはしおれてしまった。
『お母さん…。』


けれど次の瞬間、ちょっとでもお母さんに弱みを見せたことを後悔することになる。



「ねぇ、だからお母さんと賭けをしてみない?」

⏰:09/02/27 19:13 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#62 [七瀬]
『賭け?』

「そう。賭け。」
ニヤニヤしながらお母さんは続ける。



「この二学期中に5教科の評定を全部、上げて。1でもいいから、ね?」


「1でもいいから」って、そんなのむりむり!!

自分で言っても説得力ないけど、やっぱり受験は積み重ねだし。

評定を1上げるのは、テストの点をただ単に10点上げることとは訳が違う。

⏰:09/02/27 19:18 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#63 [七瀬]
 
お母さんはできないこと承知で言ってるんだ……。

私はだんだんムカついてきた。

大人のくせに卑怯なことして。



やってやろーじゃんか。


『っしゃ、やってやる!!』
お母さんに宣言し約束した。


本気で頑張るっ!!

⏰:09/02/27 19:22 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#64 [七瀬]
……とはいいつつも、二学期のテストの内、すでに課題テストが、散々な結果で終わってしまう。


後は中間と期末。
そして2回の実力テストで良い結果を出すしかない。

出遅れた分、取り戻さないと。


2週間後の実力テストに向け、勉強を初めた。

⏰:09/02/27 19:27 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#65 [七瀬]
 
 
 
 
今、私の目の前にはラッキーセブンが2つならんでいる。

ふと今日の朝、テレビで見たラッキーナンバーは7だということを思い出す。





英語77点。

⏰:09/02/27 19:30 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#66 [七瀬]
 
 
泣いても、いーですか。

まだ結果は英語だけしか出てない。
でも77点…。

幸先いーな、こりゃ。 


一気に自信がついた。



前を見ると林原がまた寝ていた。

⏰:09/02/27 19:32 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#67 [七瀬]
また答案用紙が机から顔を出している。



78点。

やっと追い付きました。
やっと!やっと!!




めちゃくちゃうれしーっ。

⏰:09/02/27 19:35 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#68 [七瀬]
 
 
家に帰宅した私を待っていたものは、


「おかえりーっ!!」
ルンルン気分のお母さんだった。


リビングを通って部屋へ行こうとすると、

「テストはー?」

フッ、
やっとこの時が来た。

⏰:09/02/27 19:41 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#69 [七瀬]
私は堂々と英語の答案用紙をテーブルに!!

さすがのお母さんも驚いている。


やった!
ついに見返したぞっ!!


「で?」


『へ??』
 

⏰:09/02/27 19:44 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#70 [七瀬]
 
「だから、他のは??」



……ばれちゃいました。


観念し、カバンから4枚の紙を並べた。


52、61、60、55

左から
国語、数学、理科、社会。


『えへっ』

「はぁ。えへっじゃないでしょ。」


『………。』


ごめんなさい。

⏰:09/02/27 19:57 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#71 [七瀬]
 
 
とりあえず
1回目のテストが終わった。もちろん、この成績は担任のヒグマにも伝わっている。

そして今、私はヒグマとにらめっこ中。

「なるほどなあ。そんな約束したのか。」

ヒグマが口を開き、
「お前は頑張ったなあ。」
と珍しく誉める。

⏰:09/02/27 20:30 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#72 [七瀬]
でも誉め言葉で終わるような空気じゃなかった。

「でもな、やっぱJ高は厳しい。精神的なこともあるし。オススメすることは出来ないな。
だから一回、見に行ってみないか?G高に。」



私は頷くしかなかった。

悔しいけれど、J高は無理だと改めて実感した。
それに私はこの時点で薄々、気付いてたんだ。

私はG高へ行くんだろうなということを。

⏰:09/02/27 20:38 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#73 [七瀬]
 
 
2週間後、私はお母さんと“G高校第4回学校説明会”へ足を運んでいた。


「なかなかきれいじゃない。」お母さんが言う。


確かに築50年にしては綺麗かもなあ。

他に来ている生徒はみんな男子で教師もほとんど男だった。

⏰:09/02/27 20:42 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#74 [七瀬]
見た目は色々あるけど、そんなに変に見えないけどな。
ヒグマの大げさ。



確かに機械は設備が整っていてこれならJ高にも負けないだろうな。

私は結構、満足した。
それに、前よりこの高校に興味が湧いた。
  

⏰:09/02/27 20:45 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#75 [七瀬]
そして運命の第4回進路懇談の日がやって来た。

なぜ運命かって?
だって二学期の通知表も見せられるしもん。


朝から心臓がドクドク動いてる〜!!
っとかないし、
全然、緊張してないよん。
だって、お母さんとの賭けは絶対、私の負けだし。

「上がってるかな?」と
一々、ドキドキする必要なしっ!!

⏰:09/02/27 22:00 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#76 [七瀬]
 
 
ただいま懇談中です。


通知表見ました。



思わず笑ってしまいました。

なぜかって?




だって逆に成績下がってたしぃ〜。

⏰:09/02/27 22:02 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#77 [七瀬]
 
ヒグマ曰く、
この時期はみんな勉強するから平均が上がる。だから頑張っても、成績は中々、上がらないらしい。

ヒグマは申し訳なさそうに言った。



しかも下がってたのは




技術だった。

⏰:09/02/27 22:06 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#78 [七瀬]
勉強してたから、技術をおろそかにしていた。



中途半端に勉強して、技術を落とすなら、勉強なんかしなきゃ良かった。

悲しかった。
悔しかった。



涙が出そうになった。

⏰:09/02/27 22:11 📱:N703iD 🆔:DfpWCp/w


#79 [七瀬]
 

 
 
 
結局、私はG高を受けることに決まった。


賭けで負けたこともあったけど、
情けない気持ちがいっぱい何も言えなかった。
 
 

⏰:09/02/28 12:10 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#80 [七瀬]
 
 
家へ帰る途中、
お母さんは買い物へ行くと言って別れた。


私は帰りたくなかった。


帰ってもお姉ちゃんとかいるし。
1人になりたかった。



帰路にある公園へと向かった。

⏰:09/02/28 12:14 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#81 [七瀬]
 
この公園は、とても小さくって小さなブランコと狭い砂場しかない。


だからよく幼稚園児くらいまで私もそこで遊んでいた。



がちょっと大きい公園が少し遠いが、自転車で行ける距離なので、小3ぐらいから、誰もここにはこなくなった。

⏰:09/02/28 12:22 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#82 [七瀬]
 
案の定、誰もいなくて安心した。


ブランコに腰をかける。
昔はイスとおしりの間もスカスカだったのに、
今は少しきつい。






『……うっ、うっ、うぇぇん!!』
私は大声を上げて泣きだした。

⏰:09/02/28 12:26 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#83 [七瀬]
5分くらいかな?

『うわぁぁん!うぇぇん!』
と泣く私。
すると






ポンッ
なにか温かいものが
ほっぺに感じた。

⏰:09/02/28 12:29 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#84 [七瀬]
『うぇ??』



「何、泣いてんの?」
林原が目を丸めて聞く。

驚きで一瞬、涙が止まった。

が温かいものが缶のミルクティーだと分かったときは、また目から涙が溢れていた。

⏰:09/02/28 12:33 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#85 [七瀬]
林原は私の隣のブランコに座るって缶コーヒーを飲みだした。



もう、少しずつ日が沈み初め、少し寒くなってきていた。



けれど私は、せっかく林原がくれたミルクティーに口を付けずに
また泣きだした。

⏰:09/02/28 12:37 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#86 [七瀬]
林原は私の隣のブランコに座わって缶コーヒーを飲みだした。



もう、少しずつ日が沈みはじめ、少し寒くなってきていた。



けれど私は、せっかく林原がくれたミルクティーに口を付けずに
また泣きだした。

⏰:09/02/28 12:37 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#87 [七瀬]
『うっ、うぅ〜』
ぐずり泣きする。



そんな私に、林原は
「大丈夫?」
「何があったの?」も聞かずただ座っているだけ。

でも今は、そっちの方がありがたかった。


それに不器用な林原の優しさにも見えた。

⏰:09/02/28 12:41 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#88 [七瀬]
 
 
静かな公園に私の泣き声だけが響く中、林原は声を発した。

「なあ、この公園1月から取り壊され始めて、
3月の中旬には、もうないんだって。」


林原が突然、話しだしたのと、その話に驚いた。



けれど私は何も言えなかった。

⏰:09/02/28 12:46 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#89 [七瀬]
 
 
林原が公園で発した言葉はそれだけだった。




次の日、学校で林原と昨日のことについての話は全くしなかったし、
普通に話せた。



ほんとに分かんないヤツ。

⏰:09/02/28 14:25 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#90 [七瀬]
 
合唱コンクールに奇跡的に我がクラスが優勝した、文化祭も終わり、



とうとう冬休みに。

私はあんまり勉強しなかった。
元からやる気が無いのと、G高にはほぼ100l受かると言われたので
さらにやる気が無くなった。


そしてやる気のないまま、新年を迎えた。

⏰:09/02/28 14:30 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#91 [七瀬]
「ハッピーニューイヤー!」テレビの中のタレント達が次々と言っている。

私はこたつでテレビを見ている。


「明けましておめでとう」
お姉ちゃんが言う。

「あらあら、もう明けちゃったの〜?」と
のんきなお母さん。

お父さんは
「今年もみんな健康に過ごせますように」と
仏壇のおじいちゃん祈っていた。

⏰:09/02/28 14:34 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#92 [七瀬]
おじいちゃん……。

私は心の中でおじいちゃんに言う。

明けましておめでとう。
もう工場も壊されて、跡形も無くなっちゃったよ。
淋しいなあ。

おじいちゃん、そっちはどう?
って淋しくないよね。
天国にはおばあちゃんもいるしね。

⏰:09/02/28 14:38 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#93 [七瀬]
 
 
冬休みがおわり三学期の始業式。

校長の“受験”についての長話しは、もう15分近くも続いている。


長いなあ。
うんざりする。

後ろから、たくさんの欠伸が聞こえる。


空気よんでよ〜!!

⏰:09/02/28 14:42 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#94 [七瀬]
校長の長話しが終わると、始業式はスムーズに流れて行き、 
あっという間に、終わってしまった。



教室へ。

なんか冬休み前とは空気が全然違った。

みんな、受験モードになっていた。


だから私だけ浮いていた。

⏰:09/02/28 14:46 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#95 [七瀬]
いや、私だけじゃない。

前の林原も、いつもと変わらず、マイペースでぼぉーっとしていた。


ホッとした。

林原がいなかったら大げさだけど、
私は希望が見えなかったと思う。


ありがとう、林原。

⏰:09/02/28 14:49 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#96 [七瀬]
 
 
 
 
2月24日。

“G工業高校 入試会場”という所へ私は足を踏み入れていた。


余裕とはいえ、やはり緊張はする。

試験内容は
国、数、英の3教科。
そして実技。


試験教室へと迎う。

⏰:09/02/28 14:53 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#97 [七瀬]
まわりは、やっぱり男だらけで、
すごくでかい。
そして筋肉もりもりだ。

怖くなった。



3教科を終え、実技に移るため、並ぶ。

実技は5人ずつで行うという。
受験番号185番。
181番、182番、183番、184番につづき、私も入る。

『失礼します。』

⏰:09/02/28 14:58 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#98 [七瀬]
内容は普通で、
ノコギリで木を一本、切るというだけだった。

「手際さ、切れた木の断面、さらには道具の置き方まで見られるぞ。」
というヒグマの声を思い出す。



私は自分のだけ集中し、
他の奴らには目もくれなかった。


ふぅ。
終わった〜。

⏰:09/02/28 15:03 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#99 [七瀬]
余裕という感じで、
他を見ると、必死で切っていた。


少し優越感に浸っていると私の別にも切り終わっている人を発見した。

目を見張る。
すごいっ!!

木の断面ザラザラは全くなく、まるで機械を使ったようだ。

私は見とれてしまった。

⏰:09/02/28 15:07 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#100 [七瀬]
私の2つ前だから183番かな?

なんてことを考えながらボンヤリ眺めていると、
そいつと目が会ってしまった。



またしても目を奪われてしまう。

切れ長の目に鼻筋の通った鼻。
少し黒い肌はキャラメルを連想させた。

⏰:09/02/28 15:11 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#101 [七瀬]
そいつは、すぐ目を離したけれど、私はしばらく見ていた。


実技が終わり、みんな立つ。

あ、背結構、高いんだ。



名前を知ろうと思い帰り道、探したけれどたくさんの人の中、見つけられなかった。

⏰:09/02/28 15:15 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#102 [七瀬]
長い電車の中、私はドキドキが止まらなかった。

電車を降りた後も、頭の中はさっきの奴でいっぱいだった。

帰り道の1時間半。
ちっとも退屈しなかった。



『ただいま。』

「おかえりー。どうだった?」


お母さんの質問にも耳を通さず、自分の部屋へ向かった。

⏰:09/02/28 15:19 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#103 [七瀬]
しばらく、放心状態の私。


思い浮かぶ。
さっきの男の子。




あんなきれいな切れ味と
あんなきれいな顔……。



じゃなくって!!

⏰:09/02/28 15:22 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#104 [七瀬]
 
違う違う!!

顔じゃなくって!!



この気持ちはなに??


好き?
何にも知らない彼のことが?


ううん。
違う。きれいな顔してたから。それだけ。


でも、あの技術には惚れたかもなぁ。

⏰:09/02/28 15:25 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#105 [七瀬]
 
  
 
  
3月3日。
 


松田柚子、
見事に合格しましたっ!

あ、もちろんG高にね。


あぁ〜、これで受験戦争からはいち早く、抜けることが出来た。

⏰:09/02/28 16:01 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#106 [七瀬]
私はルンルン気分で登校。



でもまだ、
教室、いや学校全体は受験モードから抜け出せていなかった。

だってまだ後期選抜が残ってるしなぁ。

普通科や、前期に落ちた子は大変だな〜。

⏰:09/02/28 16:04 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#107 [七瀬]
のんきに考える。


私立や前期に受かって、喜んでいる私たちも、
命懸けの受験戦争に飲み込まれそうだ。



とはいえ、まぁ、
心の中は高校生活への期待でいっぱいだろうけど。


私もその一人だしね。

⏰:09/02/28 16:08 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#108 [七瀬]
 
 
あの男の子も受かっているていいなぁ〜。

そんなことを考えてると、林原が登校してきた。


私は緩んでいた顔が、瞬時に引き締まるを感じた。



「百面相。」

私に向かっていう林原。

⏰:09/02/28 16:12 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#109 [七瀬]
そう言う林原は、いつもみたいに無表情だけど、
どこか機嫌が良さそうだ。

あ、そうか。
林原も前期だもんね。
J高だし。

ってことは受かったのかな?


聞いてみた。
『受かったの?』

「お前は?」
またまた、聞き返された。

⏰:09/02/28 16:15 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#110 [七瀬]
『イェイ!』
Vサインをつくり
満面の笑みで答える。


「ふーん、良かったじゃん。」と林原。

『まーね。で林原は?』

「俺?俺も余裕だけど??」
ニヤニヤ答える林原。


自分の時の合格の時より、うれしかった。

⏰:09/02/28 16:20 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#111 [七瀬]
 
気付いてしまう。

これだ。
私が林原を見た瞬間、顔が引き締まった理由。



林原に他の男のことを考えて、喜んでる姿を見せたくなかったんだ。



最近の私、変だよ。

2人にドキドキしてる。

⏰:09/02/28 16:24 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#112 [七瀬]
 
林原と、



名前も知らないヤツ…。





「どうした?」
林原の声で、我にかえる。

『ん、なんでもない。』
とごまかす。

⏰:09/02/28 16:26 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#113 [七瀬]
「ふーん。なんか松田、へん。」

『そんなことないよ。』


必死にごまかすも、
林原の大きな瞳が、じっと私の目を見る。


何もかも見透かしてるような、目。



あぁ、ダメだ。
隠し通せない。

⏰:09/02/28 16:29 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#114 [七瀬]
「おーい、席に着けー。」
ヒグマが教室に入ってきた。


と同時に林原は前を向いた。



あーっ、助かったー。



バレちゃうかと思った。
私の気持ち。

⏰:09/02/28 16:32 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#115 [七瀬]
 
 
 
 

 
私の気持ち?

って
どんな気持ち??

“林原に私が他の男のことを考えて、喜んでる姿を見せたくない”
という気持ち?


それとも




林原にひかれてる
って気持ち??

⏰:09/02/28 16:35 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#116 [七瀬]
 
 
 
 
今、自分の部屋の中。


あれから帰るまで、
ボンヤリしてた私。


だって分かんない。

林原のことが好き?
あの子のことが好き?



なにそれ。


分かんないよ。

⏰:09/02/28 16:38 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#117 [七瀬]
ただ確かなことは……、





私は2人にドキドキしてるということだけ。




 

⏰:09/02/28 16:41 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#118 [七瀬]
 
 
 
「蛍のひかーり
  窓のゆうーきー」

今、卒業式の一番、盛り上がる部分。


女子のほとんどが泣いている。
中には大粒の涙を流し、歌声になってない。
男子は目をウルっとさしているか、妙に割り切っているかのどっちかだ。



そんな私は、人間観察してるぐらいだから、
結構冷めてるのかも。

⏰:09/02/28 16:50 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#119 [七瀬]
まったく悲しくない訳でもない。




ただ実感がないんだ。


“私、卒業するんだ”、
“明日から、この学校には来ないんだ”

というイメージが湧かない。
だから泣けない。
それだけ。

⏰:09/02/28 16:54 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#120 [七瀬]
 
 
 
 
実感が湧かないくらい、
現実じゃないような卒業式だった。


歌い終わった


「3年2組、起立!」

最後に1、2年に見送られ、卒業証書を手に、
自分の教室へと戻る。

⏰:09/02/28 16:58 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#121 [七瀬]
 
教室ではヒグマが、ごっつい肩を揺らし、泣いていた。


こんなこと言うなんてホントに冷めてるのかもしれないけど




ちょっと引いた。

⏰:09/02/28 17:00 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#122 [七瀬]
でも周りを見てみると、みんなも同じ気持ちみたい。

さっきまで泣いてた子も、固まってヒグマをガン見してるし。笑



よかった。
思ったより、私は冷めていなかった。


でもヒグマも最後まで面白いなぁ。
と、しみじみする。

⏰:09/02/28 17:04 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#123 [七瀬]
そんなヒグマも最後の言葉を終え、
また教室中は悲しいに包まれた。




みんながそれぞれ最後の思い出に写真を撮っている。


私も何人かの友達と撮った。

⏰:09/02/28 17:07 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#124 [七瀬]
そして、辺りを見回す。



林原、どこだろう?

あいつは、こういうのが苦手なヤツ。
別に、嫌いなわけじゃなく、照れてるんだ。

あいつのああいう、不器用な優しさに、
何回ドキドキさせられただろう。
 

⏰:09/02/28 17:10 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#125 [七瀬]
 
あれ?
いない。


卒業式には、ちゃんといたの、見たのに。



嘘!?なんでいないのよ〜。
今じゃなくても言える。
けど今、言いたいのに。


なんで肝心な時にいないのよぉ〜!

⏰:09/02/28 17:14 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#126 [七瀬]
このままなんて、やだ! 
 
『やだやだやだ!!』





「フッ、何がやなんだよ。」

この声は……
林原!


後ろを振り向くと林原が笑っていた。

⏰:09/02/28 17:17 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#127 [七瀬]
林原…。

私はいきなりのことに、
びっくりした。



「どーしたんだよ、松田。」あの目でいう林原。


何もかも見透かしてしまうような目。
茶色くって大きな瞳。

なんか犬みたい。



そして私の大好きな目。

⏰:09/02/28 17:20 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#128 [七瀬]
「だから、どーしたの?
ぼぉーっとして、熱でもあんの?」
ともう一度、聞いてくる。

い、言わないと……。
ちゃんと自分の気持ち。


林原にぼぉーっとしてるなんて言われたくない。



……じゃなくって!!

⏰:09/02/28 17:24 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#129 [七瀬]
 
 
あぁーっ、もう!!
じれったいなぁ!


なんか自分にイラついてきた。



あの日、じっくり考えたことを、そのまま言えばいいんだ!


言おう!
言うんだ、柚子!!

⏰:09/02/28 17:27 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#130 [七瀬]
『あのね、私ね……』

決意した私は言う。
恥ずかしくって、林原の顔を見れず下を向く。



『私はね、林原のことが、す、すす……

あいつは私の言葉を遮る。


「俺もだよ。俺も同じ気持ち。」

⏰:09/02/28 17:31 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#131 [七瀬]
『へ……?』

思わず耳を疑う。

同じ気持ち??
林原も?

涙が出た。
一粒だけ。気付かないくらい小さい涙。



卒業式では泣けなかったのにな…。

⏰:09/02/28 17:44 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#132 [七瀬]
 
 
『ホントに?』

「ああ、本当。」


『ホントのホント?』

「フッ、しつこいな。
ホントのホント。」

言いながらも林原は笑顔のまま。

⏰:09/02/28 17:47 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#133 [七瀬]
 
 
 
 
 


 

 
「松田は俺のすごくいいライバルだよ。」
 
 
 

⏰:09/02/28 20:05 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#134 [七瀬]
 
 
 
 
 
 
え?



ライバル??



目を大きく開いた。
 
 

⏰:09/02/28 20:06 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#135 [七瀬]
林原は続けた。

「俺、技術ではお前に1度も勝てなかったんだ。
だから高校も同じ工業科を選んだ。」



あ…、そうか
だからJ高にしたんだ。

「だからお互い、高校で頑張ろうな。」

林原は、今まで見たことない、爽やかな笑顔で言う。

⏰:09/02/28 20:11 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#136 [七瀬]
 
 
 
 
帰り道。



さっき林原に言われたことを思い出す。


私はフラれたのだろうか?

でもショックというよりも驚きが頭の中を支配している。

⏰:09/02/28 20:13 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#137 [七瀬]
林原があんなことを思ってたなんて。


やっぱり何を考えるか分かんないヤツ。







そして
私は思い出したように走りだした。
 
 

⏰:09/02/28 20:17 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#138 [七瀬]
 
 
 
 
あの公園に。




林原の言うとおり、もうあの公園は空っぽになっていた。



私はつっ立ったまま、夕焼けで赤く染まった、ただの土地を見ていた。

⏰:09/02/28 20:24 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#139 [七瀬]
 
 
 
 
 
4月に入り、今日はとうとう入学式。



私は朝から、
いや一昨日から緊張していた。


だって、あの男の子にまた、会えるかもしれないから。

⏰:09/02/28 23:36 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#140 [七瀬]
林原に告白しようと思っていたくせに、
と思うけれど。

やっぱり心臓はどくどくとうるさい。


あの子いるかなぁ…。



……いるといいな。


クラス表に目を向ける。
 

⏰:09/02/28 23:39 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#141 [七瀬]
“1ー2 松田柚子”


見っけ。

また2組かあ。
中学の時も、三年間ずっと2組だったしなぁ。






「また松田は2組だな。」

隣から懐かしい声が聞こえた。

⏰:09/02/28 23:43 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#142 [七瀬]
この声。
ほんと懐かしいなあ。


……って、





『林原ぁ!?』

「よっ。」

平然と答える林原。


なんで?
なんでなんで!?

⏰:09/02/28 23:46 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#143 [七瀬]
『なんで?どういうこと??なんでここにいんの!?』

テンパる私。


「ちょ、お前、落ち着けよ。」

そう言われ、少し息を整える。


「俺、J高、受けんの止めて、このG高にしたんだよ。」
 
 

⏰:09/02/28 23:59 📱:N703iD 🆔:p45OiH1g


#144 [七瀬]
え、そうなの!?



……でも、
それはそれで意味わかんない。


なんで賢いJ高から、遠くて、こんなG高にしたわけ?


林原の頭ならJ高だっていけただろうし。


ますます分からなくなってきた。

⏰:09/03/01 00:02 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#145 [七瀬]
「俺は3組だからクラスは違うけど、
また三年間よろしくなー。」


私の疑問はほったらかしにされたまま、

林原は去っていった。



まっ、いっか。

また林原と三年間、過ごせると思うと
ちょっとうれしくなった。

⏰:09/03/01 00:07 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#146 [七瀬]
4階まで長い長い階段を上った。


はぁ、疲れた〜。



これから毎日、1時間半もかけて、ここに来て、この階段を上るのかぁ……。

気が重くなった。



“1ー2”

教室の中へ入った。 
 
 

⏰:09/03/01 00:13 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#147 [凛]
おもしろいです∩・∀・∩
続き気になる♪

⏰:09/03/01 00:24 📱:N706i 🆔:hzGFLs8s


#148 [七瀬]
ありがとうございます。

頑張るねっ('∀'●)

⏰:09/03/01 01:01 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#149 [七瀬]
私は出席番号、34番。

窓際で奥の一番いい席。



ふぅ。
一息ついた。




えっ!?

うそ!うそうそっ!!
うそでしょーっ!?

⏰:09/03/01 01:05 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#150 [七瀬]
 
 
 
 
 
前にはあの男の子!!


素直にうれしい。
今はこれしか言えない。

その子は頬杖をつき、窓の外を見ている。


ほんときれいな顔。


つい、その横顔に見とれてしまった。

⏰:09/03/01 01:09 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#151 [七瀬]
 
 
 
 
 
そろそろ始業式が始まるみたい。


上履き袋を持って、廊下に並ぶ。



周りが男ばっかで、並ぶと小さい私はスッポリと埋まってしまった。

⏰:09/03/01 01:12 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#152 [七瀬]
 
 
縦も横にも大きくて、ヒグマタイプの男の子。

背が高くって、ヒョロリとした男の子。

小さいけれど、筋肉があると制服を着ていても分かる男の子。



私は完璧、浮いていた。

当たり前か、
“ほぼ”男子校だし。


不安になってきた。

⏰:09/03/01 01:16 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#153 [七瀬]
 
 
 
そんなことを考えてると、体育館に着いた。


広いなぁ。



席に着いた。

校長の話は中学の時とは違い、
あっさりとしていて聞きやすかったし、短かった。

⏰:09/03/01 01:20 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#154 [七瀬]
「えー、それでは各学年、組の担任、副担任を紹介しましょう。
まず3年1組、担任の…」


それから2年、1ー1が紹介され、

とうとう1ー2の番に。


私は身を乗り出す。
やっぱ気になるし!

⏰:09/03/01 01:24 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#155 [七瀬]
でも、見えない!!


周りは男だっかだし、
私は後ろの方の席だし。




体を少し強引に横に傾ける。
すると前の奴の頭と頭の間から小さく、見えた。



ん?

⏰:09/03/01 01:27 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#156 [七瀬]
「担任の牧田宏介先生だ。」


ん?
あの人が私の担任??


私の目の先には


今日は曇りだし、
ってか室内なのに、
サングラスをかけている、少し小太りでチビなおっさん。


なんだありゃ。

私だけでなく、他の生徒も少しびっくりして、見ている。

⏰:09/03/01 01:32 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#157 [七瀬]
するとサングラスを外し、

「これから1年間、
お前らの担任をする、牧田宏介だ。
基本は電気、機械が専門だ。まぁよろしく。」

い、いかつい。

牧田宏介(マキタコウスケ)かぁ。



ってかサングラス外すと、結構、かわいい目をしていた。笑

⏰:09/03/01 01:37 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#158 [七瀬]
 
 
 
 
担任と共に教室へと戻って行く。



ってか、さっきから
あの子、見ないなぁ…。

少し心配してしまう。



席に着く。


やっぱいない。

⏰:09/03/01 01:42 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#159 [七瀬]
そんな私の心配とは裏腹に担任は話をしだした。


「さっき校長先生がおっしゃったが
副担の長江先生だが今日は生憎、お休みだ。」


そんなこと言ってたっけ?

ってかアンタのキャラが濃すぎて、
最後ら辺はなんも覚えてないよ。

⏰:09/03/01 01:48 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#160 [七瀬]
 
話を続ける、サングラス先生。

「あと、俺のことは
マッキーでも、コウちゃんでも、好きなように呼んでくれ。」


あ、そんな顔で冗談とか言うんだ。


「じゃあ、ヤクザ先生って呼んでいーすか?」

誰かがふざけて言う。

⏰:09/03/01 01:52 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#161 [七瀬]
ドッと笑いが起こる、


…はずだった。

が教室は冷たい空気が漂っていた。

「なぁにぃ?」
サングラス先生……。
いや、牧田先生が、その生徒を睨む。

怯えるその生徒。


そして息を呑んで見守る私たち。

⏰:09/03/01 01:56 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#162 [七瀬]
 
 
 
 
 
「お前、なかなか面白いな。」



ん?

目を丸くする私たち。

それは誉めているのかな?


ホッと胸を撫で下ろす、可哀想な生徒君。

⏰:09/03/01 02:02 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#163 [七瀬]
うん、これは誉めてるんだね、彼なりに。


そう解釈するのに時間がかかってしまった。

だって、めちゃくちゃ怖い顔してんだもん。

目はかわいーけど。笑



この日から牧田先生のあだ名はヤクザ……、
ではなくマッキーになった。

ほんとは、そう呼んでほしかったみたい。

⏰:09/03/01 02:06 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#164 [七瀬]
 
 
 
 
そんな感じで始業式を終えた。



結局、最後までアイツは現われなかった。


どこ行ったんだろ?
 
 

⏰:09/03/01 02:57 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#165 [七瀬]
 
 
 
登校2日目。


今度は来てるかな??

もうワクワクしている自分がいた。

また、あの技術が見たい!


そして、なにより


顔が見たかった。

⏰:09/03/01 03:00 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#166 [七瀬]
 
 
 
……が、
私の期待は見事に裏切られることとなる。



ヤツは来なかった。

今日だけじゃなく

明日も明後日も。


その次の日も……。

⏰:09/03/01 03:02 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#167 [七瀬]
 
 
1週間が経った。


が私は始業式以来、アイツを見ていない。

こんなに休んで、留年する気か!?


じゃっ、私も留年しちゃおっかなあ〜
とバカなことを考えた。

もちろん冗談だけど。
 
 

⏰:09/03/01 03:05 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#168 [七瀬]
 
 
 
 
授業が始まった。



つまんないし、苦手な英語の授業。



今朝、林原と話したことを思い出していた。
 
 
 

⏰:09/03/01 03:07 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#169 [七瀬]
『おーい。林原あーっ!』

たまたま電車で一緒になった。

「松田、久しぶりだな。」

ほんと久しぶり。
私たちは、高校に入ってから、
クラスが違うこともあり、全然、会わなかった。



そんな中、少しの間、沈黙が出来る。

⏰:09/03/01 03:12 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#170 [七瀬]
自分から声かけたくせに、何か話さないと。


この沈黙のワケは自分が一番、理解していた。


私が妙に緊張してるからだ。

林原は普通だ。
いつもの、ぼぉーっとした林原だ。


だって何、話したらいいか分かんない。

⏰:09/03/01 03:16 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#171 [七瀬]
 
 
この沈黙を破ったのは林原。

「なあ、松田んとこの担任、強烈だな。」


『うんっ!すごいでしょ!?こないだなんてね……』

マッキーネタのおかげで、また、いつもの私たちになった。



ありがと、マッキー!!
 
 

⏰:09/03/01 03:19 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#172 [七瀬]
 
マッキーで柔らかいだ雰囲気の中、林原が話しだした。
「あんなこの前、
俺らの技術の時間に初めて、技術室に行ってよ〜」


えっ!?
なにそれ。


私のクラスの技術は、
ただのマッキーの長い話でいつも終わっている。
まあ、面白いけど。


とりあえず技術室なんて、一度も行ったことない!

⏰:09/03/01 03:26 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#173 [七瀬]
 
 
 
その後、林原は
技術室で機械の名前や、それはどのように使うのか、学んだらしい。




うらやましいなぁ。
また近々、私のクラスも連れてってもらえるよね?


1時間半はあっという間に過ぎた。

⏰:09/03/01 13:55 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#174 [七瀬]
 
 
 
キーンコンカーンコン
 
2限目  技術



「よーし、始めるぞー。」

マッキーの言葉でみんな、席に着く。



あれから、電気について説明してたけど、
途中からマッキーの大学時代の話になっていた。

⏰:09/03/01 13:59 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#175 [七瀬]
 
 
 
いつもこんな感じ。


3分の1はマッキー自身の話が占めている。

まあ、そのおかげで
授業中、睡魔に襲われずにすむんだけど。


マッキーは、そういう意味では天才だなぁ。

あ、話する天才ね。


なんか自然と耳を傾けてしまうんだよなー。

⏰:09/03/01 14:03 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#176 [七瀬]
 
 
 
 
キーンコンカーンコン

2限目、終わりの合図。


「起立。」
日直が言う。

みんなが立った。


「あ、今日は5限目も技術だからな。忘れんなよー。」



そっかまた技術なんだ。

⏰:09/03/01 14:07 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#177 [七瀬]
やっぱり工業科だし、
技術の時間が多い。


ほぼ毎日あるし、
今日みたいに2時間あるところもある。

だから国、数、英、理、社はもちろん少なくなる。


しかも、今習ってることは中学生レベル。

数学は今、因数分解です。

苦手な英語、
なんか余裕だと思ったんだよね。

⏰:09/03/01 14:12 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#178 [七瀬]
 
 
 
だから、大学とかでは、ちょっとバカ扱いされる。

でもその分、機械、使わしたら誰も勝てないだろうけどね。



だから工業科の高校出身はあなどれない。

ヒグマとか、いい例だしね。
 
 

⏰:09/03/01 14:17 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#179 [七瀬]
 
 
 
 
一学期までは、みんな同じことを学ぶ。



技術という一くくりの授業。


建築についても、
機械、電気についても、
理数についても。

そして二学期から、
それぞれ興味が、あるものを選び、学んで行く。
 

⏰:09/03/01 14:21 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#180 [七瀬]
 
 
 
だから今はつまんない。



技術室にも
行ける気配ないし!


それに授業だけでなく、





学校生活も……。

⏰:09/03/01 14:23 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#181 [七瀬]
やっぱ男ばっかだし、なんか汗臭いし!!



それにチビで女の私はクラスでかなり浮いてる。


周りは私を、バカにするような目をする。

女だからって舐めんなよ!



それにアイツもこないしなぁ……。

⏰:09/03/01 15:36 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#182 [七瀬]
 
 
 
 
 
昼休みになった。

お弁当の時間だぁー!



でも楽しいようで、
悲しい。

だって1人ぼっちだし。


今日も1人で食べるのかぁ、と少し憂うつになってさまう。

⏰:09/03/01 15:39 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#183 [七瀬]
 
 
「松田、いる?」


ん?

この声は林原!!


「あ、いたいた。
一緒に食べよーぜ。」


ポカーンとしてる
私と周りの男ども。


「何やってんの?
お弁当、忘れたの?」

首をかしげる林原。

⏰:09/03/01 15:43 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#184 [七瀬]
 
 
 
いやいや、そんなワケないじゃん。


と思ってると、

「ヒューッ!!ラブラブだなぁ、お前ら。
付き合ってんの?」

クラスのお調子者が言い出す。

なっ!

『んなわけないじゃん!』

⏰:09/03/01 15:46 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#185 [七瀬]
 
 
 
「だよな。
食いしん坊のお前がお弁当、忘れるなんてありえねーよな。」

のほほんと林原。



そうじゃなくって!



こうして私と林原は一緒に食べることになった。
 

⏰:09/03/01 15:49 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#186 [七瀬]
 
 
まだ、
“ヒューッ”とか
“ラブラブー”とか、

後ろから聞こえる中、私たちは中庭に向かった。



が中庭は広いのに、
大きな体の男たちで、とても暑そうに見えた。

まだ春なのに。


こんなとこで食べても、
食欲が湧かない……。

⏰:09/03/01 15:53 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#187 [七瀬]
林原も同じみたいで、
食堂に向かう。


が食堂も同じ状態。

『んー、どうしよっか?』


「俺、あっこがいい。」


林原が指さす先は


……屋上?

⏰:09/03/01 15:56 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#188 [七瀬]
『え、あそこ?』



「うん。」

楽しそうにする林原に何も言えなかった。


仕方なく屋上へ移動。




思った通り、誰もいない。

⏰:09/03/01 15:59 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#189 [七瀬]
 
 

 
私は食欲がまったく湧かなかった。

さっきの男集団のせいと、


林原と二人っきりだから。

ドキドキが止まらない。
 
 

⏰:09/03/01 16:01 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#190 [七瀬]
今までは二人っきりでも、なんとも思わなかった。



…ただ!!

あんな冷やかされたら、
嫌でも意識してしまうではないか!

あーっ、あいつらのバカ!私のバカっ!!




そんな私の気持ちとは裏腹に林原は相変わらずだ。

⏰:09/03/01 16:04 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#191 [七瀬]
 
 
 
『屋上は日が差し込んでて気持ちーね。』

気を紛らわすため、林原に話し掛ける。


『ん、そーだな。
ってか、さっきのことなんだけどさぁ。』



さっきのこと!?

⏰:09/03/01 20:06 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#192 [七瀬]
 
 
『い、いや全然、気にしてないから!
ホントに全く気にしてな……』



「俺は気にしてるよ。」


え?





「朝の電車でのこと。」

⏰:09/03/01 20:08 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#193 [七瀬]
 
 
 
 
はぁ。
なんだ、朝のことね。


卒業式での勘違い事件以来、私は林原の
思わせ振り?発言には
なれてしまった。


ま、私が勝手に勘違いしてるだけで
林原にそんな気はないだろうけど。

⏰:09/03/01 20:11 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#194 [七瀬]
とりあえず、私の緊張は、ほぐれた。



「お前んとこは、まだ技術室も行ってないんだよなぁ。」 

『うん。そうだよ。
林原が羨ましい。』

「1組も俺たちのとこも行ったし、
2組だけだろ?行ってないの。」


そーなんだよね。

⏰:09/03/01 20:15 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#195 [七瀬]
 
 
ぼんやり考えてると、なぜか林原のお弁当が目に入った。



かわいい。

たこさんウィンナーに
色とりどりの野菜たち。

たわら型のおにぎりは、ふりかけで着飾っている。

冷凍食品らしきものも
見当たらない。


手作り感で溢れている。

⏰:09/03/01 22:00 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#196 [七瀬]
 
 
 
林原のお母さんって、
どんな人なんだろう。


こんなかわいいお弁当を作れて、
こんなヤツを育てた人。



会ってみたいな。

っていうか、長い付き合いなのに、林原のことは、何も知らないんだな、私。

⏰:09/03/01 22:05 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#197 [七瀬]
 
 
林原の家族。

趣味、特技。


恋人
……は、多分いないと思うけど。


とりあえず何も知らない。

知ってるのは、
変わったヤツだということだけ。


なんか悲しい。

⏰:09/03/01 22:09 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#198 [七瀬]
 
 
そんなことを思っていると、
「ってかさぁ、松田んとこの担任、牧田宏介だっけ?
ヒグマの同級生らしいな。」

と、いきなりのびっくり発言。

『そうなの!?』


「うん。」

卵焼きを突きながら、林原は言う。

⏰:09/03/01 23:14 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#199 [七瀬]
 
「だからさ、ヒグマに聞けば分かるんじゃないの?」

『なにが?』

「技術室に連れてってくんない理由。」


あっ、そうか!


林原、勘良い!!

⏰:09/03/01 23:18 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#200 [七瀬]
 
そんなことを話してる内に林原は食べおわった。

「悪ぃけど、俺は先に行くわ。
やらなきゃなんない、課題あるし。」


え?

『あっありがと。
ってか、それだけのために、お弁当誘ってくれたの?』


また心臓が激しくなる気配。

⏰:09/03/01 23:22 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#201 [七瀬]
「うん。まーな。
でも、それだけじゃない。

また、松田と話したかったから。」



それはどういう意味?

「じゃーな、また今度。」

『あ、うん…。』

手を振る林原に、手を振り返した。
 
 

⏰:09/03/01 23:26 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#202 [七瀬]
 
 
 
『どういうこと?』



今、問いただし中の私。
思わず目付きがきつくなる。


「ちょ、久々に会ったのに、そんな怖い顔しなくても…。」

焦るヒグマ。

⏰:09/03/01 23:30 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#203 [七瀬]
「少し、落ち着け。」 

ヒグマに促され、興奮を押さえる。




「なるほどなぁ、そーゆうこと。」

事情を話し終えた。

愉快そうに笑うヒグマを見て、かなりイラつく。

⏰:09/03/01 23:33 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#204 [七瀬]
 
 
「まぁ、そんな顔するな。ってか、言ってなかったか?
俺の知り合いがいるってこと。」




そんなの聞いてないっ!

って目をしてヒグマを睨む。


フッと笑いながら、続けるヒグマ。

⏰:09/03/01 23:36 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#205 [七瀬]
「確かに牧田は俺の同級生だ。
ってか永遠のライバルと言った方がいいかな?」



なにそれ??

「まぁ、牧田は昔っから、中途半端な技術が大っ嫌いな奴なんだ。

だからお前らを連れていかないんじゃないか?
技術室に。」


は?

⏰:09/03/01 23:41 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#206 [七瀬]
いや、でも
授業中は自分の話ばっかだよ?



疑問をぶつけるとヒグマは一人、笑いだした。

「相変わらずだなぁ、あいつも。」

いやいや、笑ってる場合じゃないし!
こっちにとっちゃ、重大問題だし!! 
 

⏰:09/03/01 23:44 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#207 [七瀬]
「昔から技術としゃべりだけは最高だった。


まぁ気にするな。俺から言っといてやるよ。
松田は俺のお墨付きの生徒だってことをな。」


その言葉に鳥肌が立つ。

ありがた迷惑だし!



もう帰ろ。

⏰:09/03/01 23:48 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#208 [七瀬]
 
 
収穫なしかぁ。



「おい、ちょっと待て!」

ヒグマの声が私を引き止める。


『はい、まだ何か?』

答える私。

⏰:09/03/01 23:51 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#209 [七瀬]
「この前、林原に会ったんだ。駅のホームで。」



林原に?

「学校の帰りだったみたいだ。
牧田のことを話すと、あいつもしつこく聞いてきた。」


なんで?
あんたは3組だし、関係ないじゃん??

⏰:09/03/01 23:54 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#210 [七瀬]
 
 
 
「あいつ、ほんと変わった奴だよなぁ。

進路だって急に変更しだしたし。
“J高は止めたい、G高に行きたい”って。
それも願書提出の前日に。」



どういうこと!?

私は頭が痛くなった。

⏰:09/03/01 23:59 📱:N703iD 🆔:v.i2gOkA


#211 [七瀬]
 
 
 
 
 
 
 
 
私は走りだした。




林原の元へ。
 
 
 
 

⏰:09/03/02 07:10 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#212 [七瀬]
 
 
 
 

昨日、林原と初めて喧嘩をした。



理由は

……分からない。



ただ、あんな林原は初めて見た。
 

⏰:09/03/02 07:12 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#213 [七瀬]
 
 
 
 
ピンポーン。

チャイムを鳴らした。



目の前には“林原”の表札。


私は、林原の家に初めて来た。
 
 

⏰:09/03/02 07:14 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#214 [七瀬]
 
中学の友達を片っ端に回って、林原の住所を聞いてたら、

もう日も暮れて、こんな時間。


突然の訪問だし、非常識かな、と思った。


けれど、どうしても確かめたいことがあった。

躊躇してるヒマはなかった。

⏰:09/03/02 17:01 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#215 [七瀬]
 
 
あれ?出ない。

留守かな?



そういえば、林原のこと何にも知らないんだな、私。


そんなことを考えると、
「はぁーい。」

中から女性の声。

⏰:09/03/02 17:04 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#216 [七瀬]
ガチャン。
ドアが開く。

「どなた?」

『こんな時間にすみません。私、林原…、
じゃなくって、
幸夫くんの同級生の松田と言います。
幸夫くんはご在宅でしょうか。』

緊張する。


が、
私は次の瞬間、より一層、緊張が増すことになる。

⏰:09/03/02 17:07 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#217 [七瀬]
き、きれいな人……。


私のお母さんと同じ歳くらいだろうけど、
全然違う!

こう、なんというか、
歳に合った、品のある感じ。
肌も歳相応のシワはあるものの、張りがあり、シミもあまり見当たらなかった。


昔はお嬢さまだったんだろうなぁ。

ほんと、うちのお母さんと同じ女性だと思えない!

⏰:09/03/02 17:13 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#218 [七瀬]
そういえばこの家、かなりデカい。

昔からあるような、貫禄のある家。


木造建築でまさに日本風。

松や池がある庭まで、ちゃっかり座っている。


でも修復は結構してるんだろなぁ。
どんな丈夫な家でも時間が経つと、やっぱりボロは出てくるし、
修復跡がいくつかあるのも発見した。

⏰:09/03/02 17:18 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#219 [七瀬]
 
 
 
「幸夫のお友達?
あの子、まだ帰ってきてないの。部活じゃないかしら?
とりあえず中に入って、待ってて。」



お言葉に甘え、中で待たせてもらうことにした。


玄関に頭を通すと、
木の良い香りがした。

⏰:09/03/02 17:22 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#220 [七瀬]
 
 
「ここでお待ち下さい。
今、お茶を入れてくるわ。」

林原の部屋へと案内された。

『あの、お構い無く。』

すると、林原のお母さん?は微笑んで、出ていった。
ほんと、きれいな人。



憧れる。

⏰:09/03/02 17:26 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#221 [七瀬]
 
 
 
ってか、ここが林原の部屋かぁ…。

片付いてるかと思ったら、下には、お菓子の袋が落ちてたりする。

じゃあ、散らかってるのか、と言われると
机の上は、きちんと整理整頓されている。


あいつは部屋ん中も、よく分かんないんだなあ。

少し、笑みがこぼれる。

⏰:09/03/02 17:31 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#222 [七瀬]
 
 
すると林原のお母さん?がお茶を持ってきてくれた、ちょうど、その時に

「ただいま。」

林原が帰ってきた。



また緊張が戻ってきた。
 
 

⏰:09/03/02 17:33 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#223 [七瀬]
林原のお母さん?から事情を聞いたらしく、

「どうしたの?」

と林原が部屋に入ってきた。


緊張をほぐすため、
目の前のお茶に手をのばす。


色からして緑茶だな。
湯気が立つたびに
緑茶独特の匂いが、心地よく鼻を刺激する。

⏰:09/03/02 17:38 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#224 [七瀬]
 
 
『きれーな人だね、林原のお母さん。』

まずは、別の話をしてから本題に移ろうと考えていた。



「ああ、あれおばちゃんだし。」


えぇぇっ!?

……ますます憧れる!!

⏰:09/03/02 17:41 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#225 [七瀬]
 
 
もっとおばあちゃんのことを聞きたかった。

美の秘訣とか、




林原のお母さんは?
とか。


でも林原は、その話をさせてくれなかった。
 

⏰:09/03/02 17:44 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#226 [七瀬]
露骨に嫌な雰囲気を出すのではなく、

林原が
その話を受け付けない空気を体の全体で発した。


ほんの数秒だけど、

林原の犬のような目に、そんな光が見えたことを、
私は見逃さなかった。


今、思うと
この時から、林原の少し違った感じと、

いやな予感がしてたんだ。

⏰:09/03/02 17:51 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#227 [七瀬]
 
話題転換のため、
少し焦りつつ、私は言う。

『そういえば、林原って部活、入ってるらしーじゃん。何部なの?』

「剣道。」


そんなちっちゃい体で剣道とかするんだ。

これには素直に感心した。

でも林原はかなりご機嫌ナナメだった。

⏰:09/03/02 17:56 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#228 [七瀬]
『へ、へぇー。すごいねぇ。私なんか帰宅部だよぉ。』

余計に焦る。

なんとか、持ち上げてみるが、林原はますます、仏頂面になってゆく。

なんとかしないと!



「なぁ、松田。ほんとは俺に何を聞きに来たワケ?」

とうとう、林原の堪忍袋の緒が切れたみたい。

⏰:09/03/02 18:01 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#229 [七瀬]
 
 
少しばかりの沈黙。



どうする、柚子!?
こればかりは、ごまかせないっ!

林原の何もかもを、見透してしまう目が私に向けられている。


あーっ!
そんな目で見ないでよーっ!!

⏰:09/03/02 18:04 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#230 [七瀬]
 
 
 
なあ、
と林原の口がもう一度、開きかけた時に、


『あ、あのさ』

私は、口を開く。



林原の目は、ずっと私を睨んでいる。

一時も離さずに。

⏰:09/03/02 18:08 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#231 [七瀬]
 
 
『あ、あのさ。
その……、何でJ高を止めて、G高受けたの?』



恐る恐る、林原の顔を見上げる。





あ…れ?
 
 

⏰:09/03/02 18:36 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#232 [七瀬]
 
   
 
林原は明らか、動揺していた。


大きな目を、さらに大きく広げ、
口をへの字にして固まっている。




「な、なんで今さら、そんなこと聞くんだよ。」

力なく言う、林原。

⏰:09/03/02 18:40 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#233 [七瀬]
『なんでって……。
林原が言うから今日、会いに行ったの、ヒグマに。


それでヒグマが言ってた。
林原は願書提出の前日に、G高に変更したんだって。』



顔が青くなりだした林原。はじめっから、羨ましいほどの白い顔が
より、白くなった。

まるで豆腐のよう。

⏰:09/03/02 18:46 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#234 [七瀬]
 
 
 
 
 
「帰れ。」


え?

『今、なんて?』

「帰れっつったの。」

ボソッという林原の声は、いつもの高い声じゃなくって低く、冷たかった。

⏰:09/03/02 18:48 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#235 [七瀬]
 
『なんでっ!まだ何も聞いてない!』

少し声を荒げる。



が林原は


「帰れ!」

その何倍も声を荒げて、私に言い放った。
 
 

⏰:09/03/02 18:51 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#236 [七瀬]
 
 
誰?
あの人は誰なの??

私の知ってる林原じゃない。



私は気付いたら、走って家の前まで帰ってきていた。


まだ頭が混乱してる。

ヒグマの話を聞いた後よりも、
頭痛がひどくなっていた。

⏰:09/03/02 18:54 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#237 [七瀬]
 
 
 
 
 
……っと、こんな感じ。

こんな感じで林原と初ケンカしてしまった。


走馬灯のように思い出す。

今も、あの怖い顔した林原を鮮明に思い出せる。

思い出したくないのに。


あぁ、早く忘れたい。

⏰:09/03/02 18:58 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#238 [七瀬]
 
 
 
学校、行きたくないな。

正確に言うと林原に会いたくない。



電車に乗る。

幸い、今日は林原と同じ電車には、ならなかった。
 
 
ふぅ。
良かったぁ。

⏰:09/03/02 19:01 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#239 [七瀬]
満員電車の中、思う。
 
 

林原の家に初めて行って、初めて、部屋に入って、

念願のお母さん、
じゃなくておばあちゃんにも会って。


そして

初めて、焦ってる林原見て、



初めて、怒った顔を見た。

⏰:09/03/02 19:05 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#240 [七瀬]
 
 
 
初めてだらけで、
ちょっとは林原のことを知れて。


幸せなはずなのに。


後者を除いて……。
 
 
 

⏰:09/03/02 19:07 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#241 [七瀬]
 
 
 
行きたくない、とはいっても、
やはり学校には着いてしまう。




しぶしぶ4階へ、足を踏み入れる。


林原に会わないように、願いながら。

⏰:09/03/02 19:10 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#242 [七瀬]
 
 
これまた、幸いにも林原には会わず。

教室へ入る。



一瞬、林原と喧嘩したことを忘れてしまう。






アイツがいたから。
 

⏰:09/03/02 19:14 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#243 [七瀬]
 
 
少し震えながら、足を踏み出す。


これは恐怖で震えてるのではなく、

感動で震えてるのだと思う。



席に着く。

前にはアイツ。

⏰:09/03/02 19:17 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#244 [七瀬]
次、会ったら絶対に声をかけよう、
と決めていた。





どうしよう。

いざという時に、迷ってしまう。


よしっ!
決めたぞ!!

立ち上がった。

⏰:09/03/02 19:22 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#245 [七瀬]
そして深呼吸。


『あの……。』




ピンポーンパンポーン

“松田、松田。
1ー2 松田柚子ー。
大至急、職員室へ来なさい。牧田先生が呼んでいます。”

もぉー!!

⏰:09/03/02 19:26 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#246 [七瀬]
 
 
『なんですか。』

「いや、昨日な飛田から電話があったんだよー。
何年ぶりだろうなぁ。
ほんと懐かしくて、つい昔話しちまったよ。」



それから散々、ヒグマとの学生時代を聞かされるはめとなった。

興味ないしー!
やっぱ面白いけど?笑


とりあえず
ヒグマのせいだーっ!!

⏰:09/03/02 19:31 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#247 [七瀬]
 
 
しかも、
肝心の技術室のことは、全く会話に出てくることはなかった。


なんのために電話したのよ、ヒグマ。

役立たず。



疲れた表情で職員室から出る。

⏰:09/03/02 19:35 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#248 [七瀬]
 
教室へ急ごうとする。

だって早く行かないと、またアイツが、どっかに行っちゃうかも、

と不安だったから。


が、階段へ体を向けた瞬間、すでに私は反対側の階段へと、向かっていた。

⏰:09/03/02 19:39 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#249 [七瀬]
 
 
 
 
だって、

林原が登校して来てたから。


びっくりした。

林原が、こっちを見た気がしたから。


気付いてないよね?
 

⏰:09/03/02 19:41 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#250 [凛]
気になるーっ><
まじおもしろい♪

感想板ってありますか?

⏰:09/03/02 21:51 📱:N706i 🆔:FIoHv/gg


#251 [七瀬]
毎回ありがとっ(´∀`)

やる気でます↑↑

感想板って、
どうやって作るんですか? 

⏰:09/03/02 22:23 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#252 [凛]
皆さんは総合の方で
つくっておられますよ♪

⏰:09/03/02 22:27 📱:N706i 🆔:FIoHv/gg


#253 [七瀬]
 
 
教室へと戻り、
ホッと一息。


その一息は、
なんとか林原に会わずに済んだのと、

ちゃんとアイツがいたから。

やっぱり窓の外を見ている、名前も知らないアイツ。


よし!
今日は名前を知ることが目標!!

⏰:09/03/02 22:43 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#254 [七瀬]
一時限目が始まる。

まだ得意な数学だけど、長く感じた。

早く終わってよーっ!!

休み時間が待ち遠しくて仕方ない。

だって、こんな近いのに、声もかけらんない。

⏰:09/03/02 22:54 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#255 [七瀬]
凛さん、ありがとっ!!

えーと、作ってみようと思ったんだけど、
ちょっと待たなくてはいけないみたいなので、

また明日、やってみますね(●´∀`●)/

作ったら必ずお知らせします。

とりあえず今は、更新を頑張るよーっ(o>ω<o)

⏰:09/03/02 22:58 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#256 [七瀬]
 
 
終わりのチャイムが鳴る。

「ありがとうござました。」

授業終了のあいさつでさえ、うざったく感じる。


先生が教室から出て行くと、すぐさま、アイツも席を立った。

どこいくんだろう?

⏰:09/03/02 23:02 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#257 [七瀬]
 
 
しばらく後を付いていくと、



中庭?

そいつは中庭へ向かって行く。

私も追い掛ける。

私はストーカーか?
と少し、自虐的な笑みをこぼす。

するとヤツは中庭の、一番端っこのイスに腰掛けた。

⏰:09/03/02 23:06 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#258 [七瀬]
 
 
何か見てる?

アイツは下の方を、ジッと見ている。



何を見てるんだろう。

気になる……。


気になる!
気になる!!


私は彼に近づいた。

⏰:09/03/02 23:09 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#259 [七瀬]
よほど熱心に見ているのか、私の近づく気配にまったく気付かない。


3メートルほどの距離になると、さすがに気付いたみたい。

私の方に目を移動させ、すぐに、下に戻す。


あの時と同じ。

初めて会った、入試の実技テストの時と……。

私は胸が高鳴っていくのを感じた。

⏰:09/03/02 23:14 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#260 [七瀬]
 
 
私がずっと見てるのが、気味悪いのか、
ヤツは立って中庭を出ようとした。


こっちに歩いてくる。


すれ違う。



『あのっ!』

たまらず声を掛けてしまった。

⏰:09/03/02 23:17 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#261 [七瀬]
「何?」



初めて聞く声。

深みがあって、ずっと聞いていたくなる。

そして、その深みのさらなる奧に
温かさがあるような声だった。



が、その反面、
目はかなり冷たかった。
 

⏰:09/03/02 23:20 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#262 [七瀬]
 
 
そのギャップに少し、戸惑いながら、私は聞いた。

『あの、名前…。
名前、教えて下さい!』


頑張ったぞ、私!!

と自画自賛していると、


「あのさぁ、人に名前を聞く時はさ、
まず自分から名乗るってのが常識なんじゃないの?」

⏰:09/03/02 23:25 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#263 [七瀬]
 
と、またまた冷たい目が私を惑わせる。



なんかムカつくかも。

ちょっとヤなヤツ?

いやいや、私が悪いのね?

一人、心の中で考える。


なんか思ってたのと違う。

⏰:09/03/02 23:29 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#264 [七瀬]
 
 
すると、何も言わずに立ち去ろうとする、アイツ。


待って、待って!!

『柚子っ!松田柚子!!』


あわてて言う。

すると、男は振り向いた。 
 
まぶしい。

⏰:09/03/02 23:32 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#265 [七瀬]
太陽が急に差し込んできて、視界を邪魔する。



でも見えた。

私には見えた。


太陽に負けないくらい、まぶしい彼の笑顔が。

冷たい目とは、全然違っていて、

声と比例するほど温かい笑顔。

⏰:09/03/02 23:35 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#266 [七瀬]
 
 
 
そんな温かすぎる笑顔で、

「ふーん、よろしくな。


ぽんずちゃん。」

と意地悪く言って、去って行く背中を

ただただ見つめていた。
呆然と立ち尽くして。
 

⏰:09/03/02 23:38 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#267 [七瀬]
 
 
ぽんず……ちゃん?

ぽんずって何?

あぁ、あの酸っぱくて、醤油とはまた違った奴かぁ。

豆腐サラダにかけると美味しいよね〜。


……じゃなぁーいっ!

ぽんずちゃんの

“ぽんず”がポン酢ということを理解するのには、
かなり時間がかかった。

⏰:09/03/02 23:43 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#268 [七瀬]
どうも、お待たせしました。
七瀬の感想板ができましたヽ(´▽`)/

また感想ちょーだいね!

ごめんなさい(*с*)
貼り方が分かりません。

総合の方で
“七瀬 感想板”で検索していただけると、見つかると思います。

これからも長いお付き合いをお願いしますm(__)m

⏰:09/03/02 23:52 📱:N703iD 🆔:krcqc4nw


#269 [凛]
貼れるか微妙やけど…

↓感想板
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4276/

⏰:09/03/02 23:56 📱:N706i 🆔:FIoHv/gg


#270 [七瀬]
 
あくびが出る。


そんな今は、
2時間目の社会。

あくびで涙目になりながら、前のアイツを見る。

さっきの意地悪顔に似合わず、
マジメにノートをとっている。

そんな私は、アイツとは正反対。

先生は耳をするりと、
通り抜けてゆく。

⏰:09/03/03 18:48 📱:N703iD 🆔:Fiiu.ZXI


#271 [七瀬]
 
私の頭の中は、謎でぎゅうぎゅうだった。



なんで、ポン酢ちゃん?

あと、


あなたの名前は?


こんなことが、ぐるぐると脳裏を回っている。

あれから
ずっと、だ。

⏰:09/03/03 18:52 📱:N703iD 🆔:Fiiu.ZXI


#272 [七瀬]
 
マジメな姿を見ていると、無性に邪魔をしたくなってきた。


悪魔が私の心に芽生えた。

“ねぇ、ねえ。”
とでも、言うように
私はシャーペンでアイツの背中をつつく。



あれ、
ムシですか。

⏰:09/03/03 18:59 📱:N703iD 🆔:Fiiu.ZXI


#273 [七瀬]
まるで、何も知らないように、ノートを書き続けている。


気付いてないのかな?


いいや、そんなはずはない。

もっと強く押してみる。

知らんぷりしてるな、こいつ。

腹が立ってきた。 
 

⏰:09/03/03 19:01 📱:N703iD 🆔:Fiiu.ZXI


#274 [七瀬]
 
粘り続けること、約5分。

まだ知らん顔するアイツ。


そろそろ、手も疲れてきた。

もう諦めよ。
また休み時間に声かけよ。



すると、

スッとアイツの手が後ろに伸びてきて、
私の机に何かを置いた。

⏰:09/03/03 19:06 📱:N703iD 🆔:Fiiu.ZXI


#275 [七瀬]
なんだろ?


すると、そこにはノートの切れ端をクシャクシャに丸めたものがあった。



それを開いてみる。

“まだ何か用?”

と、それだけ。
 

さっそく返事を書く私。

手紙を書いてくれただけのに、心は笑っていた。

⏰:09/03/03 19:10 📱:N703iD 🆔:Fiiu.ZXI


#276 [七瀬]
“名前、教えてよ。”

“ひつけーな。ぽんずちゃんには関係ないだろ?”

“ぽんずじゃないし!なんで教えてくんないの?”

“個人情報保護法に基づいて。
てかそんなに名前、知りたがるなんて、俺のこと好きなの?”

“ぜんっぜん!!”

“またまた、強がっちゃってー。”
 

⏰:09/03/03 19:15 📱:N703iD 🆔:Fiiu.ZXI


#277 [七瀬]
こんな、やりとりが続く。
はぁ、だめだこりゃ。


すぐ話題を反らそうとするアイツ。

そして、それに流されてしまう私。


これじゃキリないよ。
教えてもらえる空気じゃないし。



そんなうちに、2時限目も終了。

⏰:09/03/03 19:20 📱:N703iD 🆔:Fiiu.ZXI


#278 [七瀬]
 
 
『ねぇ!なんで教えてくんないの、名前。』


「ん、そのほうが面白いでしょ。」



こいつは私以上に悪魔が心に住み着いていた。

もう、あの温かい目はしないのかな?

また、してよ。

⏰:09/03/04 12:43 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#279 [七瀬]
 
 
 
結局、教えてもらえないまま学校が終わってしまった。

林原とも、会わなかった。



が、私の謎は思わぬ所で解消されることになる。


家に到着。 
 

⏰:09/03/04 12:47 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#280 [七瀬]
ただいま、
と言おうとしたけれど、
下を見ると、お母さんの靴がない。

買い物でも言ってるのかな?

お姉さんはまだ学校だな。



これはチャンス!!

昨日の夕飯のおかずを、
つまみ食いしようとキッチンへ

ガチャ

⏰:09/03/04 12:51 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#281 [七瀬]
「柚子ー。帰って来てるのー?」


チッ。
心の中で舌打ちをする。


「柚子ー。ちょっと来てー。」

お母さんの大声は静かな家に響き渡る。


2階の自分の部屋にいたら、聞こえないフリも出来たけれど、
台所は玄関のすぐ近く。

⏰:09/03/04 12:57 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#282 [七瀬]
もう!!


エビフライに伸びていた私の手は、それにたどり着くことはなく、

お母さんの元へ。


お母さんは、すごい数のビニール袋を持っていた。

「柚子っ!やっと来た。
はい、これを台所に運んで。」

一つ一つの中身も重たい。

お母さんこれ全部、一人で運んだワケ?

さすが怪力。

⏰:09/03/04 13:03 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#283 [七瀬]
 
運び終わると、
次は「あの棚になおして。」「冷蔵庫に入れて」

と、散々コキ使われた。


「これは使うから、冷蔵庫に入れなくていいわ。」

『わかった。』

と目線を向けた。



“ゆずポン酢”

⏰:09/03/04 13:07 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#284 [七瀬]
 
 
ゆず…ポン酢。

唖然とする。



「どうしたの、柚子。」

「あの、これは……。」

「今日はゆずポンが安かったのよー。
いつもは違うのだけど、たまにはいいでしょ?」


ゆずポン酢を私は初めて見た。

⏰:09/03/04 13:12 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#285 [七瀬]
 
「もう、ママがいつもいつも、一番安いポン酢買ってるから柚子がゆずポンも知らないんだからなー。」

とお父さんが上機嫌でいう。

「だって、10円がもったいないんだものー。」

とニコニコ答えるお母さん。


この二人のラブラブぶりには、
娘の私たちはいつも恥ずかしく、寒気がする。

⏰:09/03/04 13:18 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#286 [七瀬]
この時だけは、お姉さんと以心伝心できる。
 
 
「ってゆーか、柚子はゆずポン知らなかったんだ。」

『うん。お姉さんは知ってるの?』

「昔はうちも、ゆずポンだったしねー。」


そうなんだ。

「パパが、ゆずポン派だったしね。」

⏰:09/03/04 13:22 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#287 [七瀬]
お姉ちゃんは続ける。

「でも、いつからか10円安いやつになってた。」

声を潜め、私に耳打ちするお姉ちゃん。

「お父さんは全く気付かないしね。
ほら、うちのお父さんは味オンチじゃん?」


そうだったんだ。

「柚子の名前の由来はゆずポンから来てるんだぞー。」

⏰:09/03/04 13:27 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#288 [七瀬]
 
と少し酔ってるお父さんは、いつものおっとり口調ではなく、さらりと言った。



が、私には衝撃的な事実だった。

私の名前って一体なんなのよ〜!!

「やだ、あなたったら〜!」

お母さんは笑ってる。

さっきまで以心伝心だったお姉ちゃんまでも、大笑い。

⏰:09/03/04 13:32 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#289 [七瀬]
 
 
 
そんな、ちょっと複雑な真実を知った私。

初めて食べたゆずポンの味は、いつものやつよりも濃くって、

今の私には苦かった。


あれから、お風呂にも入って、
今は髪を乾かして、クシで、とかしていた。

⏰:09/03/04 13:37 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#290 [七瀬]
 
 
鏡に写った自分を見る。

短い髪。
幼稚園の時は背中まで、あったのになあ。
でも小学校にあがってから、ずっとこのショートヘアー。



そして、少し小麦色の肌。

私には、これがコンプレックスだった。

⏰:09/03/04 13:42 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#291 [七瀬]
だって、お母さんもお父さんもお姉ちゃんも、みんな真っ白な肌。


私だけ。

小学生の時、おじいちゃんに聞いたことがある。

『どうして私の肌はお母さん達と違うの?』

「柚子は、わしに似たんだなぁ。」


おじいちゃんは、小麦色の顔で優しく言った。

⏰:09/03/04 13:50 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#292 [七瀬]
この話には続きがある。

この後、おじいちゃんは

「それに柚子とわしの肌はなぁ、太陽をたくさん浴びた証拠なんだよ。
たから、ちっとも恥ずかしがることはない。」

と言った。

これで私のコンプレックスは消えた。


……はずなのに。

またあの当時の、苦しい気持ちが蘇ってきてる。

⏰:09/03/04 13:56 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#293 [七瀬]
 
なんでだろう。



「どしたの?柚子。
鏡ばっかり見て、好きな子でも出来たの?」

いきなりお姉ちゃんが現れた。

『もう!からかわないでよ!!』



私は、部屋に戻り、ベッドに倒れこんだ。

⏰:09/03/04 14:01 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#294 [七瀬]
 
 
さっきのお姉ちゃんの言葉が耳を離れない。

“好きな子でも出来たの?”




ふと、アイツのことを思い出す。

アイツもきれいな小麦色だったなあ。
 

⏰:09/03/04 14:05 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#295 [七瀬]
 
 
今度こそ!
今度こそ、名前を知る!!

固く決心して、元気良く、家を出る。

んー、朝の空気が清々しいなあ。

駅へと、私の足はルンルンと歩いて行く。


アイツのことを考えると、自然と楽しくなる。
 

⏰:09/03/04 14:32 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#296 [七瀬]
 
 
が、 
私の気持ちは、一気に暗くなった。

だって、






駅に林原がいたから。
 
 

⏰:09/03/04 14:34 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#297 [七瀬]
切符を買っているらしい林原は、私には気付いていない。


なんか懐かしい。

一昨日、会ったのになぁ。


私が2日前に見た林原は、普段の林原じゃなかった。


だから今見てる、いつもの林原がとても懐かしく感じたかな。

息が苦しくなった。

⏰:09/03/04 14:38 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#298 [七瀬]
私はやっぱり林原に声をかけられず仕方なく一本、後の電車に乗った。




「おーい、遅刻だぞ。」

教室に着くころには、1時限目の授業を5分、過ぎたところだった。

技術の授業だったみたいでマッキーの声が私に向けられる。

『すいません。』

私は席に着いた。

⏰:09/03/04 14:45 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#299 [七瀬]
私はボンヤリと朝のことを考えていた。


前にアイツがいるのに、ちっとも、心は弾まない。

どうしちゃったんだろ、私?

自分でもわからない。



マッキーの話は相変わらずなのに
私は全然、頭に入ってこない。

⏰:09/03/04 14:49 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#300 [七瀬]
“どうかしたのか?”

そんな手紙が前から、送られてきた。

アイツが私を見ている。
あの温かい目で。


なんでもないよ、
という風に首を振った。

心配してくれてるのかな?


ちょっぴり元気が出た。

⏰:09/03/04 14:53 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#301 [七瀬]
マジメに授業を受けよう。

不謹慎だけど、
アイツのおかげで、そう思えた。

ノートを開く。


シャーペンで、マッキーの乱雑な字を移し始める。

あ、間違えた。

消しゴムを出そうと、筆箱をさぐる。


あれ?

⏰:09/03/04 14:57 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#302 [七瀬]
 
 
消しゴムがない。

もぉー!
どっかに落としたのかな?


そんなことを考えてると、

コロン

と私の目の前に消しゴムが転がってきた。
 

⏰:09/03/04 14:59 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#303 [七瀬]
 
アイツの消しゴム。

すぐに前を向いちゃうから顔は見えなかったけれど、

あの温かい目をしてるんだと、見なくてもわかった。



ただ、消しゴムを貸してくれただけなのに、
涙が出そうになった。
 
 

⏰:09/03/04 15:03 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#304 [七瀬]
 
 
一言でも話すと、涙が溢れそうだから、私は何も言わず、黙ってた。


消しゴムを見ると、



“八田歩志”

と書いてあった。 
 
 
きれいな字……。

⏰:09/03/04 15:06 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#305 [七瀬]
 
なんて、読むんだろう。

はった……



ほし?

ん〜、わかんない。

そんなことを考えていて、結局、マジメに授業を受けれずに終わってしまった。


アイツのせいだよ、もう!

と思いながらも、うれさが心を占めていた。

⏰:09/03/04 15:12 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#306 [七瀬]
 
 
授業が終わって、私はアイツに話かける。


『ね、ねぇ!
消しゴムありがと。』


あーっ!!
私ってなんで、こんなにかわいくないんだろう。


「どーいたしまして。」

そんな私の反応を楽しむようなアイツの目つき。

⏰:09/03/04 15:29 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#307 [七瀬]
消しゴムを返すと、

「俺の名前、知られちゃったな。」

と言うアイツ。

『う、うん。
えっと、そのはった…、

ほし??』


「あゆし。」

『え!?』

「あ・ゆ・し。
歩く志って書いて、あゆしって読むの。」

⏰:09/03/04 15:34 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#308 [七瀬]
 
立ち上がって、どっかに行こうとするアイツ。


じゃなくて
八田歩志(ハッタアユシ)……。

『ちょっと!
あ、あのほんとにありがとう、消しゴム。』

「さっきから、ありがとう言いすぎ。」

笑って言う歩志。


今度は、かわいく言えたかな?

⏰:09/03/04 15:39 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#309 [七瀬]
 
 
 
名前…、
知ることが出来た。

うれしい。


歩志のことを考えると、いちいち心臓がうるさくって困る。


これじゃ、心臓が保たないよ。

なんて、
一人で考えて、顔が熱くなる。

⏰:09/03/04 15:44 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#310 [七瀬]
 
 
 
お弁当の時間がやってきた。

もちろん林原とは気まずいし、一緒に食べてない。



アイツはどこで、誰と食べるんだろう?

またまた私はストーカーになることにした。笑
 

⏰:09/03/04 15:49 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#311 [七瀬]
 
歩志の後を着いていこう。




「何着いてきてんの?」


バレちゃいました。

廊下を歩いていた、歩志は軽くにらみながら言う。


蛇に睨まれるカエル
ってこういうこと?

⏰:09/03/04 16:41 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#312 [七瀬]
「俺と、ごはん食べたいなら、そう言えば?
ストーカーぽんずちゃん。」


私はぽんずちゃんから
ストーカーぽんずちゃんに
昇格?した。



何か言い返したかったけれど、アイツの言うとおりなので、黙って着いていった。

悔しいけど。

⏰:09/03/04 16:44 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#313 [七瀬]
 
 
着いた先は、中庭。

相変わらず、男だらけ。


お日さまいっぱいの光が差し込んでいる。

花草もたくさんで、楽しくなる。


人気なワケは分かる。

でも女の私には、かなりキツいし男臭い。

⏰:09/03/04 23:00 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#314 [七瀬]
 
そんなことは構わずに歩志は、どんどん奧へと進んで行く。


ちょっとぐらい待ってくれてもいいのに。

冷たい奴。


そういえば、昨日もここに来てたよね。

なんで、わざわざこんなとこで、
ごはんを食べるんだろう。

食欲湧かないじゃん。

⏰:09/03/04 23:04 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#315 [七瀬]
 
すると、歩志はまた一番端っこのイスに座って、お弁当を食べ始めた。


また何か見てる。

私も歩志の隣にちょこんと座った。

『何、見てんの?』



無視ですか、歩志クン。
 

⏰:09/03/04 23:07 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#316 [七瀬]
 
私は、仕方なく歩志の真剣な目線と同じところに目を向ける。



技術室?

歩志の目先には、窓から見える技術室。


中では機械たちが、規則的に動いてるのが、ちょっとだけ見えている。
 

⏰:09/03/04 23:11 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#317 [七瀬]
 
すると、しばらくして機械は止まった。

先生たちが機械の様子を見ていることから、
定期検査でも、しているんだろうか。


私は初めて見る技術室に、胸が高鳴った。



歩志は、機械が止まったのを確認すると、
お弁当に目を戻した。
 

⏰:09/03/04 23:16 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#318 [七瀬]
『ね、なんで技術室見てたの?』

「…。」

またまた無視。


『ねぇ!ねぇってば〜!!』

ムキになる私。

そんな私を、スルーし続ける歩志。

『もう!歩志!!なんで無視するのよ!』

とうとうキレてしまった。

⏰:09/03/04 23:20 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#319 [七瀬]
「プッ、ハハハハハ…。」

いきなり笑いだす歩志に、訳の分からない私。


何笑ってんの、こいつ!?

余計に腹が立つ。


私はすねて歩志に背中を向けた。

「ごめんごめーん。
いや〜。初めて俺の名前呼んだなぁ、と思って。」

振り返って、歩志を見る私。

⏰:09/03/04 23:25 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#320 [七瀬]
「なんなの、その目。
そんな怒らなくってもいーでしょ?ぽんずちゃん。」 

歩志を睨んだ。

すると歩志は私の顔に、これでもか!
ていうくらいに顔を近付け言った。

「ちょっと意地悪してみたくなっただけ。」


こいつってやつは〜!!

⏰:09/03/04 23:29 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#321 [七瀬]
私は多分、ゆでタコみたいに真っ赤だったと思う。

「かーわいっ」


そういってアイツは、顔を戻し、またお弁当を食べ始めた。


なんなんだ、アイツは。

ドキドキうるさい胸。


なんなんだ、この気持ちは。

⏰:09/03/04 23:33 📱:N703iD 🆔:xIwV6ta2


#322 [七瀬]
 
 
 
 
あれから私は何も言えなくって、
時間だけが過ぎた。


歩志も何も言わずに、
ドキドキしっぱなしの私を見て、喜んでた。


アイツは本当の悪魔だ。

そのおかげで、私はお弁当の味がよく分からなかった。

⏰:09/03/05 16:17 📱:N703iD 🆔:k5.OS8TM


#323 [七瀬]
 
 
 
6限目の技術。

マッキーが私を睨んだ。



殺されるかと思った。

今も生きた心地がしない。


とりあえず
生きているけど……。
 
 

⏰:09/03/05 16:22 📱:N703iD 🆔:k5.OS8TM


#324 [七瀬]
 
 
マッキーは教室に入ってきた時から、異様な雰囲気だった。

日直が起立を言おうとした時、

「この中に俺の授業に文句がある奴がいるようだ。」

と言った。

教室が凍った瞬間だった。

ヤバっ!

私はマッキーから顔を背ける。

⏰:09/03/05 16:26 📱:N703iD 🆔:k5.OS8TM


#325 [七瀬]
顔を背けていても、マッキーが私を睨んでいるのが分かる。

マッキーの眼力は強烈だ。


うぅ〜。
どうしよぉ。


ビビりまくる。

だって、めちゃくちゃ怖いんだもん!!
 

⏰:09/03/05 16:29 📱:N703iD 🆔:k5.OS8TM


#326 [七瀬]
 
 
「そいつは、俺が技術室に連れていかないのが気に入らないらしい。」

もう終わった。
私の人生は終わってしまった。



「…が、
俺に意見するなんて、良い根性しているじゃないか。」


あれ?
助かった??

⏰:09/03/05 16:44 📱:N703iD 🆔:k5.OS8TM


#327 [七瀬]
 
 
「その根性に免じて、今回は許してやろう。」


とりあえず助かったみたい。



やっぱ技術室には連れてってくれないのかな?

ま、命があっただけ良かったよね。

贅沢は止めとこ。

⏰:09/03/05 16:47 📱:N703iD 🆔:k5.OS8TM


#328 [七瀬]
「だから今日は、お前らに技術室に連れてってやる、チャンスをやろう。」


チャ…ンス……?

うそ!
あのマッキーが?

やった、やったー!!

教室からも、嬉しそうな声が飛びかっていた。


教室中が歓喜に浸っていた。

なのに…。

⏰:09/03/05 16:52 📱:N703iD 🆔:k5.OS8TM


#329 [七瀬]
 
 
マッキーは何かを配り始めた。


前から後ろの私の席まで、送られてくる。



鉄?

それは長さ50センチくらい、太さは5センチくらいの鉄の棒だった。


なにこれ。

⏰:09/03/05 17:15 📱:N703iD 🆔:k5.OS8TM


#330 [七瀬]
 
 
みんなポカーンとしてる。

私もその一人。



「お前らは、これで“ぶんちん”を作ってくれ。」

は?
ぶんちん……??


ぶんちんって


何ですか?

⏰:09/03/05 17:19 📱:N703iD 🆔:k5.OS8TM


#331 [七瀬]
 
 
前の歩志は真剣な様子。

『“ぶんちん”ってなぁに?』

「は?お前、ぶんちんも知らねぇの?」


『…うん。
だから!“ぶんちん”って何なのよ!!』

「小学生の時に使ったろ。書道の時間に。」

呆れたような歩志。

⏰:09/03/05 17:52 📱:N703iD 🆔:k5.OS8TM


#332 [七瀬]
あぁ、なんだ。

あの書道の時に、紙がズレないようにするために、置くやつのことかあ。


歩志に言われ、
ようやく“ぶんちん”という平仮名が
“文鎮”という漢字になった。




…でも、どうやって作るんだろう。

新たな謎が生まれた。

⏰:09/03/05 17:57 📱:N703iD 🆔:k5.OS8TM


#333 [七瀬]
 
 
「じゃ、今日はそれをどうやって文鎮にするのか、考えてろ。
考えが固まったら、俺のところへ来い。
技術室へ連れてってやるよ。」

マッキーはそれだけ言うと、出ていってしまった。



どうしよ。
全然わかんない。

⏰:09/03/05 18:02 📱:N703iD 🆔:k5.OS8TM


#334 [七瀬]
私は机の上で、ただの鉄を転がしてみる。

丸まっていて、よく転がる。


これを四角くしなきゃなぁ。
それに取っ手もいる。

その前に、もっと短く細くしなくっちゃ。
これじゃ、長すぎる。


考えれば考えるほど、やらなければならない試練が増えてゆく。

⏰:09/03/05 18:05 📱:N703iD 🆔:k5.OS8TM


#335 [七瀬]
20分ほど、鉄の棒とにらめっこ。



ダメだ。
ほんとわからない。

周りを見てみると、みんなも同じのようだ。

ジーっと、にらめっこ中。


少し安心した。

でも前のヤツは、周りと違って、分かったように余裕な感じ。

⏰:09/03/05 18:08 📱:N703iD 🆔:k5.OS8TM


#336 [七瀬]
『ねえ、分かったの?文鎮の作り方。』

「ん、まぁ大体な。」

『どうやって!?』

「そんなもん自分で考えろ。」


冷たいなあ。


でもうらやましい。

ほんとに分かったのかな?

⏰:09/03/05 18:12 📱:N703iD 🆔:k5.OS8TM


#337 [七瀬]
『鉄を溶かすの?』

「それじゃ、取っ手が出来ないじゃん。」

『じゃあ打つの?』

「それじゃ、やっぱり一回は溶かさないとダメだしー。」


はぐらかす歩志。


『もう、教えてよっ』
 

⏰:09/03/05 18:14 📱:N703iD 🆔:k5.OS8TM


#338 [七瀬]
「しょーがないなぁ。教えてあげる。

みんなには内緒だよ?ぽんずちゃんだけだから。」


うん、と頷く。






「削るんだよ。」

削る…?
 

⏰:09/03/05 18:43 📱:N703iD 🆔:k5.OS8TM


#339 [七瀬]
『削る……
ってどうやって?』

「もー、教科書185ページ開いてみ?」

『……教科書忘れた。』

「はぁ。」

歩志は本当に呆れたように、机に手を入れた。

「はい、どうぞ。」

『…ありがと。』

歩志の出してくれた教科書を見る。

⏰:09/03/05 20:53 📱:N703iD 🆔:k5.OS8TM


#340 [七瀬]
そこには、カンナの写真。

カンナは木の面を削って、平らにする大工道具。



でも、これは鉄だよ?

というように、歩志を見る。

「鉄とかの金属を削るカンナもあるんだよ。」

私の思いを感じ取ったらしく、そう教えてくれた。


そうなんだ。

⏰:09/03/05 23:56 📱:N703iD 🆔:k5.OS8TM


#341 [七瀬]
私は木を切ったり、それで何かを作ったりするのは得意。


だけどそれ以外は、ほとんど無知で、こんな道具があることさえ知らなかった。


機械について勉強したいと思ったのも、おじいちゃんに影響されただけだし。


恥ずかしくなる。

こんなことで、技術に自信があったなんて。

⏰:09/03/06 00:01 📱:N703iD 🆔:T7heHAt6


#342 [七瀬]
でも、
なんでこいつは、こんなに詳しいんだろう。

学校を1日も休んでいない私と、
1週間以上、出遅れている歩志。


何が、こんなにも差をつけるのだろう。

思い切って聞いてみる。

『なんで、こんなに詳しいの?』

歩志の切れ長の目をジッと見つめた。

⏰:09/03/06 00:06 📱:N703iD 🆔:T7heHAt6


#343 [七瀬]
歩志は見返してくる。
思わず吸い込まれそう。


見とれていると、

「俺んち、

オヤジが大工。」


へぇ、そうなんだ。

「学校に1週間以上、来れなかったのも、
オヤジを手伝ってたから。」


歩志はすごい。

⏰:09/03/06 00:11 📱:N703iD 🆔:T7heHAt6


#344 [七瀬]
「うちのオヤジ、今近所の家を建て直してんの。
昔、オヤジが建てた家なんだけど、だいぶボロが来ちまったみたいで。

そんで、人手が足りなかったから俺が手伝ってたワケ。」


そういう歩志は、とても誇らしげだった。

『自慢のお父さんなんだね。』

私は優しい気持ちがあふれ出て、
自然と口が動いていた。

⏰:09/03/06 00:15 📱:N703iD 🆔:T7heHAt6


#345 [七瀬]
歩志はちょっと驚いてたけど、
「まーな。」

と笑った。


あの温かい目で。



まるで、パズルのピースが一つ一つ埋まっていくように、
歩志のことを知ると、
私まで心が温かくなる。

なんか幸せ。

⏰:09/03/06 00:19 📱:N703iD 🆔:T7heHAt6


#346 [七瀬]
「だけど、
うちのオヤジは頑固者で、未だに機械もほとんど使わず、手作業でやってる。

だから、俺がオヤジのために勉強しよっかなと思ってこの学校に入った。」

歩志は照れてた。


「ま、オヤジには
そんなもんはいらーん!
って怒られちまったけどな。」

白い歯を見せて、ニカッと笑う歩志。

⏰:09/03/06 00:23 📱:N703iD 🆔:T7heHAt6


#347 [七瀬]
 
 
 
それから、やり方の分かった私たちは、マッキーの元へ。


「ほぉ、本当に分かったのか?」

マッキーは信じられない様子。


私は念願の技術室へ行けるので、心が浮き足立っていた。

歩志は真剣だった。

⏰:09/03/06 07:10 📱:N703iD 🆔:T7heHAt6


#348 [七瀬]
『わー、めちゃくちゃ広ーい。』

「当たり前じゃないか、松田。
ここには、たくさんの機械があるんだからな。」

『へぇー!!』

私は機械に手を触れようとした時、

「こらっ!」

マッキーの怒声。

「勝手に触んな!」

『ごめんなさーい。』

⏰:09/03/06 07:15 📱:N703iD 🆔:T7heHAt6


#349 [七瀬]
「お前ら、どうやって文鎮を作る気?」


歩志の言う奴だと、機械は一切使わないしなぁ。

なんかつまんない。



嘘ついちゃおっかなぁ。

『はい、機械を使って……』
「カンナ貸してください。」
歩志の声に遮られた。

⏰:09/03/06 07:19 📱:N703iD 🆔:T7heHAt6


#350 [七瀬]
マッキーの目が光った。

「ちょっと待ってろ。
松田、何も触んじゃねぇぞ。」

『は、はいっ!!』


マッキーは技術室の奧へと消えてった。


「嘘、つくなよ。」

歩志の冷たい目。


『…ごめんなさい。』

⏰:09/03/06 07:22 📱:N703iD 🆔:T7heHAt6


#351 [七瀬]
すると、笑顔に戻って

「安心しろ。すぐに俺が、技術室に行けるようにしてやるよ。」




ドキッ!

心臓が一気に跳ねた。


『わ、私も頑張るし!』

「カンナ使うの初めてでしょ?
ぽんずちゃんには難しいよ。」

⏰:09/03/06 07:27 📱:N703iD 🆔:T7heHAt6


#352 [七瀬]
『木には使ったことあるもん。』

「あー、全然違うよ。
ザラザラしてるし、もっと堅いし。」



なんか意地悪?


冷たくなったり、
優しくなったり、
意地悪になったり…。


歩志は忙しいなぁ。

と笑う私。

⏰:09/03/06 07:31 📱:N703iD 🆔:T7heHAt6


#353 [七瀬]
「何笑ってんの?」

『べーつにっ!』

「本当になんで?」

『だーからっ!何でもないって!!』


今度は私が意地悪をしてやる。

ざまあみろ。笑



歩志は自分はするのに、されたら必死。

⏰:09/03/06 07:34 📱:N703iD 🆔:T7heHAt6


#354 [七瀬]
 
 
しばらくして、マッキーがカゴを持って出てきた。



「正解。」

そういってマッキーは、私たちを連れて、技術室から出た。


どこに行くんだろう?

連れていかれた先は、体育館だった。

⏰:09/03/07 01:46 📱:N703iD 🆔:ml8DPkWM


#355 [七瀬]
「ここで作業しろ。」

とマッキーが言った。


『えーっ!技術室でじゃ、ないの!?』

「ボケ。
大切な機械がたくさんあるところにお前らを放っておけるか。」

『そんなぁ。』


私とマッキーが、こんなやりとりをしている中でも、

アイツは真剣な眼差し。

⏰:09/03/07 01:52 📱:N703iD 🆔:ml8DPkWM


#356 [七瀬]
「じゃーなぁ。」

マッキーは、そう言って出ていった。


もう!!
とふてくされる。

私が、そんなことをしている間にも、歩志は作業に取り掛かっていた。

さっきと違って、全然しゃべらない。


私もやろうかな。

歩志の横に座った。

⏰:09/03/07 01:58 📱:N703iD 🆔:ml8DPkWM


#357 [七瀬]
…といっても、
やり方分かんないし!


仕方なく、歩志の作業を観察する。

やっぱりカンナで鉄を削ってる。


よぉーし!
私もやってみよう!!

見よう見まねで、鉄とカンナを手に持つ。


頑張るぞぉー!

⏰:09/03/07 02:01 📱:N703iD 🆔:ml8DPkWM


#358 [七瀬]
1時間…、

いや2時間が経ったんじゃないだろうか。


私の作業は全然、進んでいない。

ってゆーか飽きた。

だって、ずーっと同じことばっか、してるんだもん。

ずっと削りっぱなし。

もう手が痛い。
肩も凝ったし。

⏰:09/03/07 02:04 📱:N703iD 🆔:ml8DPkWM


#359 [七瀬]
これ、かなり地味で地道な作業。

ほんとに、ただ削るだけ。

ほんとに堅くって、木と全然違う。

もうやだ。


横の歩志を見ると、まだやってる。

飽きないのかな?
手は痛くならないの?
肩は?

⏰:09/03/07 02:09 📱:N703iD 🆔:ml8DPkWM


#360 [七瀬]
そんな疑問が生まれた。


きれいな横顔に汗が、滝のように流れている。

私は拭いてあげたくなったけれど、出来なかった。



歩志は、私とは違う。
劣等感を覚えた。

軽い嫉妬みたいな感情。

でも、甘くてほろ苦さが胸に染みた。

⏰:09/03/07 02:13 📱:N703iD 🆔:ml8DPkWM


#361 [七瀬]
 
 
 
 
 
「おーい。起きろ。」


『んっ…』

ん!?

「お前、いつまで寝てんの?」

『歩志…。あれ、私……?』

「あれから、寝てたんだよ。ずーっと。」

⏰:09/03/07 17:18 📱:N703iD 🆔:ml8DPkWM


#362 [七瀬]
『えぇぇえ!?』

私は起き上がる。

体育館の外は、日が暮れて暗くなっていた。

『今、何時…?』

「7時過ぎ。」

『うそっ!!早く帰らないと!』


慌てて起き上がる。

っていうか、
『なんで起こしてくれなかったの!?』

⏰:09/03/07 17:23 📱:N703iD 🆔:ml8DPkWM


#363 [七瀬]
「だって、俺は作業に没頭してたし。
お前も気持ち良さそうに寝てたし。」

うぅ…。
今から帰ったら、8時半過ぎるじゃん。


「しゃーねぇなあ、送ってやるよ。」

『え、いいの!?』

「うん。」
 
こうして歩志に送ってもらうことになった。

⏰:09/03/07 17:29 📱:N703iD 🆔:ml8DPkWM


#364 [七瀬]
二人で学校を出た。

「すごい爆睡してたね、ぽんずちゃん。
ヨダレだらだら。」

『もうっ!言わないでよっ!!』



駅に着いた。

「ぽんずちゃんは、どこで降りるの?」

『私は、この駅。』

切符売場の上の表に指を差して言った。

⏰:09/03/07 22:44 📱:N703iD 🆔:ml8DPkWM


#365 [七瀬]
「じゃあ、俺と反対方向じゃん。」

『へぇ、送ってくれてありがとう。
じゃっ、また明日!』


切符を機械に通そうとした瞬間……。




「待って!」

振り向くと、

「家まで、送るよ。」

⏰:09/03/08 01:03 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#366 [七瀬]
『え…。』

「送るよ。」

『い、いいよ!
悪いし!!歩志が帰るの遅くなっちゃうよ。』

すると歩志は

「いーよ。
女の子を夜道の中、一人で歩かせるような男じゃないし。」


そういって、強引に切符を機械に入れた。

⏰:09/03/08 01:06 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#367 [七瀬]
「ぽんずちゃんも一応、女の子だしね〜。」

『一応じゃないっ!
かわいいかわいい女の子ですっ!』

「ハハハっ」


そう無邪気に笑う歩志。



ムカつくけど、うれしい。

ダメだ。
どんどん歩志にハマっていく。

⏰:09/03/08 01:10 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#368 [七瀬]
 
 
 
 
「松田…?」








『林…原。』


私はとっさに歩志の後ろに身を隠していた。

⏰:09/03/08 01:13 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#369 [七瀬]
「久しぶりだな。」

目を反らしながらいう林原。

そんな目、しないでよ。

「そいつ誰?」

林原が歩志を見て言う。


あの時の林原と同じ。

喧嘩した日の林原と。

怒ってる。

でも、その中で淋しそうに瞳が揺れてた。

⏰:09/03/08 01:17 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#370 [七瀬]
私は何も言わない。

言えない。


何も言わずに黙っている。歩志も、私も、

林原も。



かなり気まずい。


その時、林原が


「柚子っ!」
 

⏰:09/03/08 01:20 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#371 [七瀬]
 
柚子……?

今、林原が


“柚子”って呼んだ?



呼んだよね。

私の耳、間違ってないよね。

思わず疑ってしまう。

だってあの林原が、こんなうわずった声で
“柚子”って呼ぶんだよ?

⏰:09/03/08 01:23 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#372 [七瀬]
 
 
林原は私に背を向けた。
 

「悪かった。」



後ろを向いていたから、林原がどんな顔してるかは見えなかった。

ただ小さな林原の肩が小刻みに震えているだけ。


もう我慢できない。

ここから逃げ出したい。

⏰:09/03/08 01:27 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#373 [七瀬]
 
 
 
 
「ほんとごめん。
あの時、お前があんなこと聞くから…。

つい焦っちまって。


でもなこれだけは聞いてくれ。
俺がJ高を止めて、G高にしたのは、

また、お前と一緒に3年間過ごしたかったから。」

⏰:09/03/08 01:30 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#374 [七瀬]
 
 
 
「俺は、松田…、
柚子のことが……」







「まあ、林原クン。
柚子うれしいわぁー!!」
 
 
 

⏰:09/03/08 01:32 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#375 [七瀬]
「どうしたの?林原クン。振り向いた顔もかっこいー。柚子、大好きー!」


「お前…。
八田歩志だろ?」


「なーんだ、知ってたんだ。ぽんずちゃんにわざわざ、聞かなくても良かったじゃん。

それとも何?
あいつの口から聞きたかったの?

“歩志はただの友達だよ”って。」

⏰:09/03/08 01:37 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#376 [七瀬]
「ぽんずちゃんなら、さっきの電車に乗って帰っちゃったよ?」


「柚子にちょっかいだすな。」

「ぽんずちゃん、さっき泣いてたよ?
あんたにそんなこと言われたくない。
ね、林原クン?」

「お前…っ!」

「暴力はんたーい。

じゃあねー、林原クンっ!」

⏰:09/03/08 01:44 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#377 [七瀬]
 
 
「ばいばーい。」








「なんなんだよ、あいつ。
八田歩志……。


柚子、ごめんな。」
 
 

⏰:09/03/08 01:46 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#378 [七瀬]
 
 
 
電車に乗った瞬間、溜めていた涙があふれ出た。

周りの人たちが、じろじろ見てたけど、
そんなこと、どうでも良かった。



『ぐずっ、うぅ〜。』

泣いても泣いても、枯れない涙。

私はいつから、こんなに泣き虫になったんだろ。

⏰:09/03/08 01:51 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#379 [七瀬]
 
 
 
今日も、また1日が始まる。

私はどうなるんだろうか…。

「今日のラッキーさんは、おひつじ座のあなた。

何事もスムーズにいく1日。あなたの勇気が運命を動かす日となるでしょう。

ラッキーカラーは赤。」

テレビの前のアナウンサーが、はつらつと言う。

⏰:09/03/08 03:21 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#380 [七瀬]
ほんとかな?

おひつじ座の私はテレビをガン見。

ほんとだといいな。

少し期待してしまう。


淡い希望と昨日から固めた覚悟を胸に学校へ出発。



占いで言ってたような、1日になりますように…。
 

⏰:09/03/08 03:24 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#381 [七瀬]
 
 
あ〜、学校に行きたくない。

電車から降り、学校への道のりの中、思ってしまう。


昨日、布団の中で1日かけて固めた覚悟は、もろかった。

そのおかげで、一睡もしなかった。

寝てないのと、泣いたので、私の目は腫れて、ブサイク丸出し。

⏰:09/03/08 03:29 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#382 [七瀬]
 
 
 
行きたくない理由は2つ。


1つは、やっぱりまだ林原に会いたくない。

2つ目は、


歩志に会いたくない。

正確に言うと、どういう顔で会っていいのか分からない。

⏰:09/03/08 03:31 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#383 [七瀬]
だって、

昨日の私は、

歩志に家まで送ってもらう約束をした。


なのに結局、私の都合で、勝手に帰ってしまった。

バイバイも言わずに。


怒ってるかな?

怒ってるよね……。

歩志のせっかくの善意を踏みにじってしまったし。

⏰:09/03/08 03:35 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#384 [七瀬]
 
 
 
 
 
階段を上る、足取りは重たい。



歩志だって、きっと謝れば、許してくれるよね。


よし、素直に謝ろう。

“昨日はごめん”

って。

⏰:09/03/08 03:39 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#385 [七瀬]
ガラッ。

気合いを入れて、勢い良く教室のドアを開けた。




…はずなのに、


歩志は、まだ来ていなかった。

いつもは、私が来るころには席に着いて、窓の外見てるのに。

注入した気合いは、すっと抜けてしまった。

⏰:09/03/08 03:43 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#386 [七瀬]
なぁんだ。

私は席に着く。


歩志がいなくてヒマだったからか、
それとも謝るつもりが予定が狂ってしまったからか。


机に頬杖をつく。

昨日のことを思い出していた。

 
昨日の夜は……。
 

⏰:09/03/08 03:46 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#387 [七瀬]
 
 
“柚子っ!”

昨日の林原の声。

今、思い出しても全身が熱くなる。

今まで、ずっと
“松田”とか“お前”
だったのに、

急に下の名前で言うんだもん。


びっくりするし、

なんか照れる。

⏰:09/03/08 12:58 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#388 [七瀬]
 
 
“悪かった。”

この言葉を聞いたあと、涙がどんどん溜まっていた。


林原が謝ってくれて、

せっかく仲直りが出来そうだった。


なのに、なぜかうれし涙ではなくって、
悲しくって涙が出た。
 

うれしいはずなのに。

⏰:09/03/08 13:02 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#389 [七瀬]
 
 
私の小さな涙に気付かれたくなくて、

逃げてしまった。


あの後、林原が何か言ってたような気がするけど、

私の耳には届かなかった。

何、言ってたんだろう?




ガラッ

⏰:09/03/08 13:05 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#390 [七瀬]
 
『歩志!!』


「何?どうしたの??
ぽんずちゃん。」

あれ、怒ってない?


『昨日はごめんね。』

「は、何が?」

『先に帰っちゃって…。』

「別にいいよ。それくらい気にしなくって。」 
 

⏰:09/03/08 13:09 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#391 [七瀬]
 
あれれ?
なんか優しい。


「それより昨日は、きちんと帰れた?」

『うん。帰れたよ。』


「そっか、じゃ良かった。」


やっぱり優しい。
 
 

⏰:09/03/08 13:16 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#392 [七瀬]
いつもなら

“あっそ。”
とか冷たい態度か、

“ぽんずちゃんは女の子じゃないもんね。”
とか意地悪なこと言うのに。


まるで別人。

戸惑ってしまう。

怒ってないなら、いいけど、
これはこれで、どうすればいいか分からない。
 

⏰:09/03/08 13:19 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#393 [七瀬]
 
 
 
“スムーズにいく1日”

頭に思い浮かぶ。




結局、あれから何もなくって、ほんとびっくり。

占い当たってる?
 
 
そして放課後。

歩志と私は、また同じ作業に打ち込む。

⏰:09/03/08 16:45 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#394 [七瀬]
 
 
やっぱり歩志は真剣で、何も話さない。

私も黙っている。



鉄の削れる鈍い音だけが、この広い体育館に響く。


何も変わらない。

以前と全く変わらない。


ただ、私の気持ちが違うだけ。

⏰:09/03/08 16:48 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#395 [七瀬]
この空気のおかげで、話すこともなく作業もスムーズに進んだ。


“すること”があるのが今の私にはありがたかった。



「俺、用事があるから、先に帰るな。」

『じゃあ、私も帰るよ。』

時計は6時をさしている。

この体育館で歩志としゃべったのは、これだけだった。

⏰:09/03/08 16:54 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#396 [七瀬]
 
 
駅まで歩く。

ふぅ。
何もなくて良かったあ。



チカチカチカ…。

あっ、やば!!
信号が赤に変わっちゃう。


全力疾走。

……が間に合わず。

最悪。

⏰:09/03/08 23:43 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#397 [七瀬]
仕方なく、待つ。


この信号、なかなか変わらないんだよなあ〜。



コツコツコツコツ…。

後ろから聞こえてくる靴音。


元々、人気のないところ。


振り返る。

⏰:09/03/08 23:47 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#398 [七瀬]
すると、小さく林原が見えた。

私には気付いていない感じ。


うそ〜!
信号、早く変わってよ!!

そんな私の思いを、
あざ笑うかのように、信号が変わる気配すらしない。


コツコツコツコツ…。

だんだん大きくなる靴音。

覚悟を決めた。

⏰:09/03/08 23:50 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#399 [七瀬]
「松田。」

昨日、“柚子”と呼んだ声が私の中を響く。


今にも顔が赤くなりそう。


『林原、久しぶりだねっ!』

「いや、昨日会ったし。」


しまった!
緊張して、変なこと言っちゃった。

⏰:09/03/08 23:54 📱:N703iD 🆔:PY5xI9.2


#400 [七瀬]
 
 
でも、いつもの林原と話したのは私にとっては久しぶり。

だから“久しぶりだねっ”は全く変ではないよ?



「どうした、松田。」

林原の声で我に帰る。


『う、ううん。
でも、話すのは久しぶりじゃん。』

⏰:09/03/09 00:12 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#401 [七瀬]
とりあえず、ごまかす。


「そうだな。」

なんか、うれしそうな林原。

「それより、松田。
昨日のことだけど…。」

林原の真剣な光の宿った目が私を捕える。

『もういいよ!』

「え?」

『謝ってくれたし、もういいから。』

⏰:09/03/09 00:16 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#402 [七瀬]
昨日のことは話したくないので避けた。


「ん、そうだな。」

今度は、淋しそうに言う林原。




ごめんね、私が臆病者で。


林原が、せっかく向き合ってくれようとしたのに、
私は自分から逃げてしまった。

⏰:09/03/09 00:20 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#403 [七瀬]
信号が変わる。

私たちは並んで歩きだす。

無言のままで。

林原と仲直り?したとはいえ、気まずい。

駅までの道が長く感じる。
横目で林原を見ると、半袖から伸びている手が見えた。

あ、赤くなってる。

なにか細いもので、叩かれたような線。

⏰:09/03/09 00:25 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#404 [七瀬]
部活だったのかな。


林原が剣道部だったことを思い出す。




『部活だったの?』

「まーな。」

ぎこちない会話。


それからまた長い沈黙。
 

⏰:09/03/09 00:29 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#405 [七瀬]
やっと駅に着く。


少し安心する。

だって、すごく長く感じて、
もしかしたら二度と駅に着かないんじゃないかな?
とバカな心配をしてたから。


ほんとバカだけど、それくらい気まずかったんだな、私たちは。


でも電車の中はもっと苦痛だった。

⏰:09/03/09 00:33 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#406 [七瀬]
何も話さない。

1時間近くある、電車の中で、お互い一言も口にしない。


それから、時間だけが過ぎ、電車を降りた。

前は、あんなに楽しくって短く感じたのになあ。



それから歩いて、別れ道。

⏰:09/03/09 00:37 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#407 [七瀬]
『じゃ、バイバイ。』

「ん、じゃーな。」


家に向かって歩きだす。







「松田っ!」


振り向くと30メートルほど先に林原がいた。

⏰:09/03/09 00:40 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#408 [七瀬]
 
 
 
 
 
 
 
 
「好き。」
 
 
 
 
え…?

“柚子”と呼ばれた以上に耳を疑う。
 

⏰:09/03/09 00:42 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#409 [七瀬]
 
 
真っ赤な顔の林原。



「それだけ。
じゃーな。また明日。」


『…う、うん。また明日。』

林原の背中が遠ざかっていった。


私、告白された?

呆然と立ち尽くす。

⏰:09/03/09 00:46 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#410 [七瀬]
 
 
 
 
私はまた、家へと向かいだす。


赤信号。
赤い林原の腕。

そして、
さっきの真っ赤な林原。


“ラッキーカラーは赤。”

という言葉がよみがえる。

⏰:09/03/09 00:49 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#411 [七瀬]
 
 
 
そして、もう一つ。
 
“あなたの勇気が運命を動かす日”


私の勇気…?

運命を動かす??



私は急ぐ。


さっき別れた林原の元へと。

⏰:09/03/09 00:53 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#412 [七瀬]
ラッキーカラーなんて、ただのこぎつけかもしれない。

占いなんて、当たってるように思うだけ。

だけど、走らずにはいられなかった。


そういえば、林原に走らされてばっかりだな、私。

卒業式の後の公園。

久しぶりにヒグマに会って、林原のことを聞かされたとき。


そして今。

⏰:09/03/09 17:43 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#413 [七瀬]
ほんと、走ってばっか。

林原のせいで、私は泣き虫なマラソン選手になってしまったみたい。






『はぁはぁ。』

走ったせいか息が荒くなる。


いた。
 

⏰:09/03/09 17:47 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#414 [七瀬]
暗闇の中、小さな背中。


見つけた。

『林原!』

まだ息が整っていないまま、力いっぱい叫ぶ。



林原が振り向く。

「松田…。」


林原に近づいた。

⏰:09/03/09 17:49 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#415 [七瀬]
2人の距離は1メートルほど。


深呼吸のため酸素をいっぱい吸い込む。

息は元通りになっていた。



「どうした?」

まるで、さっき告白したのがなかったみたいに言う林原。
 

⏰:09/03/09 17:54 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#416 [七瀬]
 
でも、嘘じゃない。
夢でもない。


確かに聞いた。
林原の
「好き。」という言葉。


忘れられない。

林原の高い声。
真っ赤な顔。
茶色い瞳。


すべてが私の体を熱くさせる。

⏰:09/03/09 17:56 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#417 [七瀬]
 
 
『あのね、私……。』








トクン。

心臓の音が聞こえた。
 
 
 
 

⏰:09/03/09 17:58 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#418 [七瀬]
 
 
私は今、林原の胸の中。


とても心地良い。


林原の髪の甘い匂い。

どこのシャンプー使ってんだろ。

柑橘類の甘酸っぱい香が私をマヒさせる。



ずっと、このままでいたいよ。

⏰:09/03/09 18:02 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#419 [七瀬]
 
 
 
そんな時、なぜか歩志の顔が浮かんだ。


意地悪な勝ち誇った顔。
冷たい眼差し。

そして、あの笑顔。



なんで?

せっかく今、林原の中にいるのに。

⏰:09/03/09 18:04 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#420 [七瀬]
別に林原と歩志を重ね合わせてるワケでもない。


今、私は幸せなはずなのに。

なんで喜べないのよ。



歩志。
歩志。
歩志…。

ドキドキしてた心臓は、キュッと締めつけられた感じがした。

⏰:09/03/09 18:07 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#421 [七瀬]
 
 
 
 
 
「もういいよ、松田。」


『え?』

「俺のとこへ来てくれて、ありがとう。」


『なんで、そんなこと言うの?』



「だって…、」

⏰:09/03/09 18:10 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#422 [七瀬]
 
林原は言った。


「だって…、




お前、泣いてる。」


泣いてる?

うそ…っ。


気が付くと私の頬には、いくつもの涙たちが伝っていた。

⏰:09/03/09 18:13 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#423 [七瀬]
 
嘘だ。
嘘だ。
嘘だっ!


そんなはずないじゃん。

ねぇ、林原。
嘘だって言って。

笑って。
そんな悲しそうに見ないで。

私は泣いてなんかない。

涙なんて出てたまるか。

⏰:09/03/09 18:48 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#424 [七瀬]
目を擦っても、擦っても涙はとめどなく出てきた。


「お前はほんと泣き虫だな。」

誰のせいよ。

アンタのせいじゃない。


「そんなに目、ゴシゴシすんな。
ブサイクが余計にブサイクになる。」

私の頭をポンポンする林原。

⏰:09/03/09 18:51 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#425 [七瀬]
トゲのある言い方。

だけどぶきっちょな林原の優しさがにじみ出てて、
余計に涙が溢れた。



『うっ、ブサイク…じっ、じゃない!』

泣きながら反論する私に、林原は、


「そうだな。松田はかわいいよ。」

こんな恥ずかしくなるような一言。

⏰:09/03/09 18:55 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#426 [七瀬]
「俺は、お前のかわいさに何回も心臓がブッ壊れそうになった。」

また顔を真っ赤にして、林原は言った。


それは、こっちのセリフだよ!

って言ってやりたかった。


林原って、こんなにロマンチストだったっけ?

またまたドキドキが襲ってきた。

⏰:09/03/09 18:59 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#427 [七瀬]
 
 
 
『そっ、それはこっちのセリフよ!』

意を決して言った。



が、その直後にはお互い笑い合っていた。

こんなに林原と笑い合うなんて、久しぶり。


心のモヤモヤが消えていった。

⏰:09/03/09 19:02 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#428 [七瀬]
 
 
 
あれから、私たちは本当の仲直りをした。

林原の告白は、うやむやになったまま。

私は林原をフッたのかな?


林原を嫌いになったわけじゃない。

ただ歩志が心から出ていかない。

いつもいつも私の心は支配されてしまう。

⏰:09/03/09 22:27 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#429 [七瀬]
 
 
 
占いは当たったのかな?

私の運命は変わった?


疑問だらけ。

それでも、前より気持ちが楽になったのは確実。


でも、そのおかげで気付いてしまう。
 
 

⏰:09/03/09 22:30 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#430 [七瀬]
 
 
私を泣き虫にしたのは、林原だけじゃない。



私がドキドキしたのは、きっとアイツのせい。







私は好きなんだ。


歩志のことが。

⏰:09/03/09 22:32 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#431 [七瀬]
 
 
信じられない。

自分でも、こんなにすんなりと、
“歩志が好き”
ってことを認めてしまうなんて。


会ってまだ、数か月。



だけど、
意地悪で冷たいアイツが


好きなんです。

⏰:09/03/09 22:35 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#432 [七瀬]
 
 
『お、おはよー。』

「おはよ、ぽんずちゃん。」


ほんとの気持ちに気付いたからには、どんどん行くしかないでしょ!!

でも、どうしたらいいのか分からない。


松田柚子。
15歳。

男の気持ちなんて、知るわけないじゃーん!

⏰:09/03/09 22:38 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#433 [七瀬]
 
私はまだまだガキだ。

はあ。


「どうしたの?」

私の顔を覗き込むアイツ。


わっ!
朝からそんな顔で見ないでよ〜!!


好きだと解ると、つい意識してしまう。

⏰:09/03/09 22:41 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#434 [七瀬]
「ねぇ、俺は今日から放課後、ずっと残るけど、

ぽんずちゃんはどうする?」



チャンス到来!

『私も一緒に残る!』

やったあ!
これで歩志と長くいれるね。

しかも二人っきりで。


うれしさがこぼれそう。

⏰:09/03/09 22:44 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#435 [七瀬]
「そ。」

『うんっ!』

あまりのうれしさに、歩志の素っ気ない返事にも、
ルンルンで返した。


そんな私を見て、歩志は

「なんかぽんずちゃん、元に戻った。」

『えっ、そう?』

「うん。元気のないぽんずちゃんから、
元気いっぱいの、ぽんずちゃんに戻った。」

⏰:09/03/09 22:48 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#436 [七瀬]
 
 
歩志は、ちゃんと私を見ていてくれたんだ…。

そう思うと泣きそうになった。


また私、泣かされる。笑



とりあえず、涙は堪えて、席に着く。


授業中も、前のアイツが頭から離れない。

⏰:09/03/09 22:51 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#437 [七瀬]
 
 
 
昼休み。

私は、中庭で歩志と食べた。



『歩志の誕生日って、いつ?』

「4月7日。」

『へぇー、過ぎちゃったね。』

⏰:09/03/10 18:32 📱:N703iD 🆔:7bD3bGNs


#438 [七瀬]
 
 
『血液型は?』

「AB。」

『ふーん、そう言われたらそうっぽいね。』


『好きな食べ物は?』

「りんご。」


『かわいい。』

そう笑うと、歩志はりんごみたいな顔になった。笑

⏰:09/03/10 18:35 📱:N703iD 🆔:7bD3bGNs


#439 [七瀬]
そんな歩志を見て、ずっと笑っていると、


「次の質問は?ぽんず姫。」

と歩志。

やり返された。

今度は私がりんごになってしまった。



『じゃ、家族構成。』

「オヤジ、おふくろ、にぃちゃん。」

⏰:09/03/10 18:39 📱:N703iD 🆔:7bD3bGNs


#440 [七瀬]
『兄弟いるんだ。』

「意外?」

『うん。歩志ってなんか一人っ子っぽいし。』

「そう?」

『一人っ子独特の雰囲気がする。』


こんな感じで、とりあえず質問責めにしてみた。

いっぱい歩志のことを知れた幸せと、
次々、現われる驚きで私の心は満たされた。

⏰:09/03/11 22:20 📱:N703iD 🆔:guC0zZjc


#441 [七瀬]
 
 
今までのことをまとめるとこうなった。

八田歩志。

4月7日生まれの16歳。

血液型はAB型で

好きな食べ物はりんご。

父、母、兄の4人家族で、お父さんは大工をしている。

こんな感じ?

⏰:09/03/11 22:24 📱:N703iD 🆔:guC0zZjc


#442 [七瀬]
 
 
うーん。なんか違う。

私が思ってたのと違う。

歩志の答えが違うんじゃなくって、

聞きたいこと、
…つまり私の知りたいことが違う。


歩志のことを知れたのは、うれしい。
例え、どんなことでも。

でも、もっと内面的なことが知りたい。

⏰:09/03/11 22:28 📱:N703iD 🆔:guC0zZjc


#443 [七瀬]
 
 
放課後。

2人には沈黙が出来る。

いつものこと。


でも、この沈黙は嫌いじゃない。

慣れてしまったのと、

歩志の真剣な横顔を見ているだけで満足だから。


でも、いつもしゃべらない歩志が口を開いた。

⏰:09/03/11 22:33 📱:N703iD 🆔:guC0zZjc


#444 [七瀬]
「なあ、昼休みにさあ。」

『えっ、うん。』

いきなり話し掛けられたので、少しビックリした。


「お前、言ったよな。

“俺には一人っ子独特の雰囲気がある”って。」

『言ったけど。それがどうかした?』

「それ、あながち間違いじゃないかも。」

⏰:09/03/11 22:37 📱:N703iD 🆔:guC0zZjc


#445 [七瀬]
『どういうこと?』


「あんまよく分かんないんだよなぁ、俺。」

『何が?』


「にぃちゃんのことが。」

『兄弟なのに?』

「だって一緒に住んでたのが俺が5歳くらいまでなんだよ。」


『なんで?』

⏰:09/03/11 23:36 📱:N703iD 🆔:guC0zZjc


#446 [七瀬]
「俺とにぃちゃんは15歳も年が離れてるの。

それで、俺が5歳になって間もないころに、家を出てったらしい。」

歩志は、なんでもないことのように言った。


普通に驚いた。

その事実と、

歩志が淡々と、私にこんな話をしてくれたから。

⏰:09/03/11 23:41 📱:N703iD 🆔:guC0zZjc


#447 [七瀬]
『へぇ。うちじゃ考えらんない。』

「兄弟いるの?」

『うん。お姉ちゃんだけどね。』

「そうなんだ。

ねぇ、兄弟ってどんなんなの?」

『どんなのって言われても…。』

こんなことを、いきなり聞かれ、かなり戸惑った。
 

⏰:09/03/12 16:59 📱:N703iD 🆔:9WvOYkxk


#448 [七瀬]
 
『ん〜、なんだろ。難しいなあ。』

悩み、考える。

『うーん。

バカにされたり、ウザイと思うけど、
いると心強い存在……

かなぁ。』


「なにそれ。」

『よく分からない?』

「うん。全然わかんない。」

⏰:09/03/13 18:22 📱:N703iD 🆔:1P9d3jy6


#449 [七瀬]
 
 
う〜ん。

歩志がいることを忘れ、
必死に考える。



「じゃ〜あ、俺は?
俺はぽんずちゃんにとって、どんな存在?」


『そんなの今は関係ないじゃん!』

もう!
変なこと聞かないでよ!!
 

⏰:09/03/13 18:28 📱:N703iD 🆔:1P9d3jy6


#450 [七瀬]
またまた、いきなりそんなことを聞いてくる歩志。


“友達以上の大切な存在だよ”

とか言えたらいいのに。


……言えない。



『星…みたいな存在かな?』

目を丸くする歩志。

⏰:09/03/13 18:31 📱:N703iD 🆔:1P9d3jy6


#451 [七瀬]
 
「それは最初に“歩志”を“ほし”って呼んだから、先入観みたいなので
そう思ってるんじゃないの?」


うん、そうなの。

歩志、鋭いな。


でも…。

『それもあるけど、
なんか歩志自体が星みたいなの。』

「フッ、なにそれ。」

⏰:09/03/14 01:28 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#452 [七瀬]
『なんか歩志って、
星みたいにキラキラしてるもん。』

「うれしいこと言ってくれるじゃん。」


『そのキラキラした光で照らされてる気がして、
なんか温かくなるの。』

私は、ほとんど意識せずに遠い目をして言った。


歩志は、その間も手を休めずカンナを動かす。

⏰:09/03/14 01:33 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#453 [七瀬]
 
『でも遠いの。』

鉄の削れる音が止んだ。

歩志を見なくても、手が止まったのだと分かる。


『星って輝いてて、とても近いように見えるけど、
本当は地球から何億光年も離れてるじゃん。
近いようで遠い。

歩志は
分かるようで分からない。

アンタを知ってるようでほんとは何も知らない。』

⏰:09/03/14 01:40 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#454 [七瀬]
ああ、そうだ。


私は思い知る。

現実を。


歩志は無機質なようで優しい。
冷たいようで温かい。

私は歩志の、そういうところが好きなの。

でも、



壁があるの。

⏰:09/03/14 01:43 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#455 [七瀬]
見えない壁が。

私は絶対にその中に入れない。

ううん。
私だけじゃない。

歩志の今まで出会ってきたすべての人々もきっと同じ。

歩志だけにしか入れない、歩志が誰一人も入れさせない。



そういう歩志だけの世界がある。

⏰:09/03/14 01:48 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#456 [七瀬]
いくら質問責めにして、
歩志のことを知っても、


それは幻想にしか過ぎないの。

所詮、まぼろし。

ただの夢なの。


そう分かっているのに、なんて心地いいんだろう。

だから抜け出せない。


いつまでもアイツにハマったまま。

⏰:09/03/14 01:53 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#457 [七瀬]
 
 
「ぽんずちゃん、やっぱり面白い。」

クスクス笑う歩志。



ほらね、

今、苦しい私とは裏腹に歩志はこんなにも余裕。



そっか。

再確認させられる。

⏰:09/03/14 01:57 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#458 [七瀬]
 
 
私にとって歩志は、
大切で大好きな存在だけど



歩志にとって私は、





“今まで出会ってきた全ての人々の中の一人”


だけの存在なんだ

ってことを。

⏰:09/03/14 02:13 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#459 [七瀬]
 
 
 
 
 
『ごめん。
用、思い出したから帰るね。』


一方的に言って、立ち上り歩きだす。

「そ、じゃーね。
ばいばーい。」

後ろで歩志の声が聞こえたけど、
何も言わずに体育館を出た。

⏰:09/03/14 02:18 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#460 [七瀬]
さっきは、あんなに楽しかった。


歩志が私をちゃんと見ていてくれてた喜びと、

“これから”で
私の胸はドキドキでいっぱいだったのに。


一喜一憂しすぎだな。

口元に薄ら笑みを浮かべた。


一気に闇に突き落とされた感覚を味わいながら。

⏰:09/03/14 02:23 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#461 [七瀬]
 
 
 
次の日から歩志といると息が詰まった。


歩志は何も変わらないのに。
出会った時と同じなのに。


当たり前か。

だって変わったのは、
私だけだもんね。

昨日の何気ない会話から、勝手に私が考え込んでるだけだし。

⏰:09/03/14 19:09 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#462 [七瀬]
あれから放課後に残ることもなくなった。

なんとなく歩志を避けてた。

そんな私に歩志は気付いてただろうけど、
普通に接してくれた。

そのたびに胸が締め付けられた。


そんなこんなで、私が最後に体育館に行ってから、
もう1ヶ月近くが経とうとしていた。

もう7月。

⏰:09/03/14 19:13 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#463 [七瀬]
少し暑くなってきた。

座っているだけで
じんわりと汗が出る。


一学期も、もう残りわずか。

相変わらずの私。

何もない毎日。


また入学当時と戻ってしまったみたい。

ほんとつまんない。

⏰:09/03/14 22:07 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#464 [七瀬]
 
歩志は、まだ体育館に通ってるみたい。


つまんないけど、
学校に行きたくないほど
ではないかな。

だって
林原がいてくれるから。

仲直りした日から、林原はちょくちょく会いに来てくれた。

昼休みを一緒に食べたり、

休み時間に1ー2の教室に来てくれたり。

⏰:09/03/15 02:02 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#465 [七瀬]
 
 
いつも林原は私を助けてくれる。


今も林原に救われてる。



林原は告白のことは、
何も言ってこない。

だから私も何も言わない。


またいつもの二人に戻った。

穏やかな日々。

⏰:09/03/15 02:06 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#466 [七瀬]
 
 
 
もう、このままでいいかも。

そう思ってしまう。


だってここが一番安らぐし。
安心する。



私の居場所はここ。
 
林原なんだ。

⏰:09/03/15 02:08 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#467 [七瀬]
 
だってアイツのところへ
行ったら、

絶対つらいもん。

林原以上に泣かされる。


あの壁にぶつかって虚しくなるだけ。

惨めになるだけ。


こんなことなら、もういいや。
 

⏰:09/03/15 02:11 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#468 [七瀬]
 
 
そう思っていたのに…。




学校が終わり、鞄に教科書を詰め込んだ。

今日は林原が部活ないし、一緒に帰る約束してたっけ。


あ、急がないと。

 
ガタッ。
席を立つ。

⏰:09/03/15 02:15 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#469 [七瀬]
 
ガラ。

後ろのドアが開いた。



「ぽんずちゃん。」

『何?』

歩志を見ずに言う。


「ちょっと来て。」

私のそばに来ると、腕を掴んだ。
 

⏰:09/03/15 02:18 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#470 [七瀬]
 
『へ!?』

何!?
何が起こったの?


すごい力が腕から伝わってくる。

歩志の大きな手のひらは、私の腕を完全に捕えている。


でも、そんなこと以上に
歩志のすごい剣幕に圧倒されて、
抵抗することも忘れた。
 

⏰:09/03/15 02:22 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#471 [七瀬]
 
 
このまま連れていかれ、
体育館に到着。


「これ。」

歩志の差し出された手には


…文鎮。

『これ…、
歩志が作ったの?』

「もちろん。」

うれしそうに言う歩志。

⏰:09/03/15 02:25 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#472 [七瀬]
 
すごいきれいな文鎮。


…だけど、

意味不明!


なんで文鎮?

あんなにすごい剣幕で、


文鎮ですか?

目が点になった。

⏰:09/03/15 02:28 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#473 [七瀬]
『……で?』

今度は歩志の目が点になった。



『あんなすごい剣幕で文鎮!?』

「ああ。」

歩志は合点したように頷いた。


「これだけじゃダメ?」

は?

⏰:09/03/15 02:32 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#474 [七瀬]
「だって、俺の作った文鎮見たかったでしょ?」


うん、見たかった。

見たかったけど、なんでこのタイミング?

なぜあの剣幕?


『…見たかったけど。』

「正直でよろしい。」

歩志は満足そうに笑った。 

⏰:09/03/15 02:36 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#475 [七瀬]
「これで技術室に行ける。」


忘れてたワケじゃないけど“どうでもいいや”
と思っていたのは事実。

その間にも、歩志は諦めてなかったんだ。



『うん。そうだね…。』

気力なく言う私。


そんな私を見て、うんざりしたように歩志は言った。

⏰:09/03/15 16:40 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#476 [七瀬]
「ね、
お前、技術室に行きたくないの?」

ううん。
そんなんじゃない。

『…行きたいよ。』

「じゃ、なんでそんな顔してんの?
変だぞ。」


なんでって、
アンタのせいじゃん。

私の思い込みって言われても仕方ないけど、
アンタの壁があるからじゃん。

⏰:09/03/15 16:45 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#477 [七瀬]
「なんか話し掛けても、上の空だし。
避けてるよね?俺のこと。」


図星なのと、
さっきより、すごい歩志の剣幕で何も言えなかった。



「あの林原ってヤツと付き合ったから?
あれから、うまくいったわけ?」


うつむいてた顔を歩志に戻した。

⏰:09/03/15 16:51 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#478 [七瀬]
『…なにそれ。』

なにそれ。
なにそれ。

ますます意味分からない。

はぁ。

歩志はため息混じりの声で言った。

「だから、付き合ってんだろ、その林原クンと。」

何、その呆れた声…。

ため息をつきたいのは、
こっちだよ!

⏰:09/03/15 18:53 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#479 [七瀬]
 
『付き合ってないよ。』

やっとのことで口を開いた。
弱々しい声。



「ふーん。
まあ、どーでもいいけど。」


どうでもいい?

『じゃあ何で聞くのよ!』

立ち去ろうとする歩志に怒鳴る。

⏰:09/03/15 18:57 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#480 [七瀬]
『なんで…、なんでそんなこと聞くのよっ!

もう意味分かんない!

いきなりこんなとこに
連れてこられたかと思えばなんか責められるし。

さっきまで、うれしそうに文鎮見せびらかしてたくせに、キレだすし!


“林原と付き合ってる”
とかゆーし…。

そのくせ、どうでもいい?
ふざけんなっ!!』
 

⏰:09/03/15 21:04 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#481 [七瀬]
私は声を荒げる。

私が悪いのは分かってるのに。


勝手に歩志を避けて、

林原とばっかりいて、
歩志が誤解しても仕方ないのに。


でも悲しかった。

歩志に誤解されて、

悔しかった。

逆ギレなんかして最低だ。

⏰:09/03/15 21:09 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#482 [七瀬]
最低だって分かってるのに私の口は止まることを知らない。


『…付き合ってるよ。』

歩志の視線が痛い。


『林原と付き合ってる。』



「あっそ。
頑張ってね。」

冷たく言って歩志は出ていった。
 

⏰:09/03/15 21:13 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#483 [七瀬]
 
 
次の日。
 
歩志はもう口を聞いてくれない。




そう思っていた。


「おはよ。ぽんずちゃん。」

『…おはよう。』

びっくりしたというより、悲しくなった。

⏰:09/03/15 21:18 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#484 [七瀬]
 
「どうしたの?そのマヌケ顔。」

『マヌケ顔で悪かったね!』

ハハッと歩志が笑う。


昨日は夢でも見てたのかもと思ってしまう。

不自然なとこなんて、一つもなかった。


私は気付かなかった。

余りにも自然すぎて。

⏰:09/03/15 23:53 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#485 [七瀬]
 
 
 
見えない壁がどんどん厚くなっていることに。



放課後。

「ねぇ、ぽんずちゃん。」

『なぁに?』

宿題忘れで、その倍の宿題をしていた私は、
机に顔を向けたまま答えた。
 

⏰:09/03/15 23:58 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#486 [七瀬]
 
 
 
「俺たち、ずっといい友達でいようね。」


心臓が加速してゆく。

『ハッ…ハハ。
何を急に言ってんの?』

私は少し引きつった顔を歩志へ移動させた。


ドクンドクンドクン。

心臓は速くなってゆく一方。

⏰:09/03/16 00:06 📱:N703iD 🆔:3DtPCs2w


#487 [七瀬]
 
「だから俺らはいい友達だろ?
これからも、ずぅっと。」


目が怖い。

作りすぎた笑顔がより怖さを増している。

歩志のニッコリ顔に、私は背中がゾクッとなった。


『あ…歩志。』

声が震える。

⏰:09/03/16 00:10 📱:N703iD 🆔:3DtPCs2w


#488 [七瀬]
「そうだよね?」

何も言えず、頷いた。


「よかった。安心した。
じゃあね、ぽんずちゃん。」

『…バイバイ。』

元気なく手を振った。


歩志が教室から出ていった。

私には大量の宿題と、胸の重い痛みだけが残された。

⏰:09/03/16 00:37 📱:N703iD 🆔:3DtPCs2w


#489 [七瀬]
 
 
 
“俺たち、ずっといい友達でいようね。”



さっきの言葉が頭の中でうるさく響く。


友達。
友達。

“ずっと”友達。

ずっと。
ずっと。
ずっと…。

⏰:09/03/17 01:29 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#490 [七瀬]
 
 
 
それは私は一生、友達以上にはなれないってこと?

歩志にとって1番の人にはなれないってこと?


あ、なんか
めまいがしてきた…。

ゆらゆらと立ち上がる。


早く帰ろう。

早く帰りたいよ。

⏰:09/03/17 01:33 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#491 [七瀬]
 
 
 
校門から出る。


「どうしたんだよ、松田。」


『あ…、林原。』

「なんか顔色悪いぞ。」

『…ん。大丈夫。』

「大丈夫って…。
ちょっと待ってろ。」

そういって、林原はどっかへ行った。

⏰:09/03/17 01:38 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#492 [七瀬]
 
仕方なく、校門前で待つ。



遅いなあ。
早く帰りたいのに。

でも無言で帰るわけにもいかないし。


「悪い悪い!」

振りかえると林原。


「行こっか。」

『え?どこに?』

⏰:09/03/17 01:41 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#493 [七瀬]
『どこって、決まってるじゃん。』


いやいや、何が決まってるの?



「思いっきり笑えるところ。」

そう林原はニカッと笑った。

『なにそれ。全然分かんな…って林原ぁ!?』

言い終わる前に林原は私の手を握って歩きだした。

⏰:09/03/17 01:44 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#494 [七瀬]
 
びっくりした。

だっていきなり手、繋ぐんだもん。



『え、え!?
ほんとにどこ行くの?』

かなりテンパる。


「お前はいーから、黙ってついて来て。」


今日の林原、なんか強引。

⏰:09/03/17 01:48 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#495 [七瀬]
 
なんか私の知らない林原がここにいる。



やっぱり私は何も林原のことを知らなかったみたい。


だって中学生の時は知らなかったもん。

こんな強引な林原。


そんなことを思いながら、また背が伸びたらしい林原の後ろ姿を眺めてた。

⏰:09/03/17 01:52 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#496 [七瀬]
駅に着くと、やっと手を離してくれた。

少し手が汗ばんでた。


「はい。」


『ありがと。…ん?
これ家と反対方向の切符…。』

「あ、電車来た!
松田、走って!!」

『え?ちょ、ちょっと〜。』

⏰:09/03/17 01:58 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#497 [七瀬]
林原に急かされ、電車に乗った。


やっぱりこの電車、家と反対方向じゃん。

『ねぇ、ほんとにどこ行くの?』

「だーから…。」

『“思いっきり笑えるところ”とか言わないでよねっ!』

「分かってるじゃん。」


はぁ、ダメだこりゃ。

⏰:09/03/17 02:02 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#498 [七瀬]
さっきから、もったいぶって全然教えてくんない。

林原、一人だけルンルンして…



なんかズルい!!

よーし、こうなったら林原以上に楽しんでやる!

黙って林原に宣戦布告した。


さっきより心は軽くなっていた。

⏰:09/03/17 02:07 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#499 [七瀬]
 
 
 
『え…、ここ?』


そこには



“1時間350円”の文字。


「うん。」

楽しそうな林原。

上には“カラオケハウス”の看板。

⏰:09/03/17 02:10 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#500 [七瀬]
 
『こ、ここ…入るの?』


「もちろん。」

私はまたもや強引に手をひかれ中へ。



えええぇぇ〜!





私は“ド”のつく音痴だ。 

⏰:09/03/17 02:13 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#501 [七瀬]
自慢じゃないけど、もう5年近くカラオケには行っていない。

だって人前で歌えないんだもん。

恥ずかしいの。


自分のド音痴が。

これにもトラウマがあって……。


話は10年前にさかのぼる。
松田柚子。
5歳。

⏰:09/03/17 02:17 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#502 [七瀬]
 
私の家族はめちゃめちゃカラオケ好き。


私が生まれる前から、週に一回はカラオケへ通っていた。

お母さんも、
お父さんも、
お姉ちゃんも、


おじいちゃんも。

私は5歳のころ、初めてカラオケへ行った。
 

⏰:09/03/17 02:20 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#503 [七瀬]
いつもは、

“まだ子供なんだからカラオケなんてダメ!”
ってお母さんに言われてた。

でも私は、
行きたくて行きたくって
仕方なかった。


だって私だけ仲間外れだもん。

“夜遅いから寝なさい”
って。


そのたび、私は諦めてた。だってお母さん怖いし。笑

⏰:09/03/17 02:27 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#504 [七瀬]
でも、この日は違った。 
鬼と戦うことを誓った私は、引き下がらなかった。

『なんで?
なんでお姉ちゃんは連れてってもらえるのに、
なんで柚子はダメなの〜?』

「お姉ちゃんは小学生で大人だしね〜。
それにおとなしくできるし。
柚子は出来ないでしょ?」

そばを見るとお姉ちゃんが勝ち誇ったように、私を見ていた。

⏰:09/03/17 02:32 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#505 [七瀬]
『できるっ!できるよっ!!柚子できるから〜!
連れてってよぉ〜!!』

「もう!
いい加減にしなさ…」


「いいじゃないか。」

「おじいちゃん、あまり甘やかさないで下さい。」

「まあまあ、
柚子、おじいちゃんと行こう。」

そう言って私の手をとってカラオケへ連れてってくれた。

⏰:09/03/17 02:38 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#506 [七瀬]
初めてのカラオケ。


私の胸は希望でいっぱい。


…のはずだった。


「柚子、何か飲むかい?」

優しく聞くおじいちゃんに

『カルピス!』

と答える。

その後、ポテトやらカラアゲやら、美味しい食べ物が出てきて、最高だった。

⏰:09/03/17 02:43 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#507 [七瀬]
食べたり飲んだり。


カラオケって楽園〜!

とか思っていると、


「柚子も何か歌うか〜?」

ほろ酔いのお父さんが聞いてきた。


『え〜っとねぇ…。』

それから、
その当時、女の子に人気のアニメの歌を歌うことにした。

⏰:09/03/17 02:46 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#508 [七瀬]
 
 
カラオケを出た後の私はご機嫌ナナメ。


「ちょっと、あなたが笑うからよ〜。
柚子、泣いてるじゃない。」

「ママだって笑ってたじゃないかあ。」

「あら、私は笑ってなんかいません!」

「嘘だ。クスクス笑ってたじゃないか。
柚子、ごめんなあ。」

⏰:09/03/17 02:51 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#509 [七瀬]
フイ!

お父さんの言葉に私は首を横に反らした。



確かに
今思っても、私は下手だったと思う。

子どもの音が外れてる
とかのレベルじゃない。

でも!
あんなに笑うことないじゃん!!


今でも心に深い傷がある。

⏰:09/03/17 02:55 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#510 [七瀬]
 
 
それからというもの

家族の週1で行くカラオケには一回も行ってないし、


友達から誘われても、行くだけ行って、何も歌わなかったり。

とりあえず
歌うことだけは避けてる。


これからも人前で歌うことは二度とない!

って思ってたのに…。

⏰:09/03/17 02:59 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#511 [七瀬]
 
 
 
「えーと、502だな。
502。502…。

あった。この部屋。」

指をさして林原は言った。


502号室。

中へ入る。


あー、早く出たい。

入ったばっかりなのに、そう思ってしまう。

⏰:09/03/17 03:35 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#512 [七瀬]
 
二人部屋だし、狭い。



「松田、さっきから何もしゃべらないな。」


『そ、そんなことないよ!あ、何か飲む?』

「ああ、じゃあコーラ。」

『分かった。』


窓際の私は、すぐ横にある受話器に手を伸ばした。

⏰:09/03/17 03:40 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#513 [七瀬]
プルルルル…


コーラとカルピス。

とりあえず飲み物だけ頼んだ。


その間、林原は曲を入れるためか機械をタッチペンでつついている。


もうやだ。

林原がずっと機械に向かっていてくれることを願った。

⏰:09/03/17 03:44 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#514 [ちぃ]
>>1-300
>>301-600
>>601-900

⏰:09/03/17 08:28 📱:SH03A 🆔:CJOnWXdk


#515 [七瀬]
ちぃさん

ありかとう(´∀`)

⏰:09/03/17 12:54 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#516 [七瀬]
 
飲み物が来て、

林原は曲を入れた。


林原が歌う…。

なんか聞きたいかも。



私は興味本意で耳を傾ける。

ドキドキとワクワクが入り交じる。

⏰:09/03/17 13:07 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#517 [七瀬]
 
 
 
林原は





私に負けないくらい、

音痴だった。
 
 
 

⏰:09/03/17 13:08 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#518 [七瀬]
 
『ブッ!』

私は吹き出すと共に、大声を出して爆笑していた。


そんな私には目もくれず、林原は完全に自分の世界に入って歌い続ける。



ってか高い声が、歌うとあんな風になるんだ〜。

私も人のこと言えないけど林原もヒドい!
 

⏰:09/03/17 13:13 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#519 [七瀬]
もうお腹痛い!

笑い過ぎて、目に涙が溜まっていた。



林原が歌い終わる。

「なかなか、良かっただろ?」

『フフッ、あんた絶対歌わない方がいい。』

「ひどいな。」

そう言いながらも、林原は笑ってる。

⏰:09/03/17 13:16 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#520 [七瀬]
「松田も何か歌えよ。」

そういって、機械とタッチペンを渡してきた。


ちょっと戸惑ったけど、

こうなったら歌うしかないでしょ!


意を決してというより、
ほぼ自分の意思でマイクを手にとった。


林原は、そんな私を楽しそうに見ている。

⏰:09/03/17 13:19 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#521 [七瀬]
曲が流れる。


楽しい。

カラオケでこんなに楽しいのは久しぶり、
ってか初めて!!


一緒にいる人が音痴だと、
どうでもいいや〜!
ってなる。



カラオケってこんなに楽しかったんだ。

⏰:09/03/17 13:22 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#522 [七瀬]
 
 
歌い終わると林原が

「お前は絶対歌わない方がいい。」

『うっさい!』

笑いながら、軽く林原の腹にパンチを食らわす。


「乱暴だな〜。」



こうして私のトラウマが一つ解消されていく。
 

⏰:09/03/17 13:25 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#523 [七瀬]
 
 
 
あれから歌って歌って、
歌い続け、外はもう真っ暗。


3時間近くいた。

帰ると、お母さんに完全に怒られるな。


でもいっか。

モヤモヤが全て消えてゆく気がした。
 

⏰:09/03/17 13:28 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#524 [七瀬]
「松田はよく歌うなあ。マイク持ったら、離さないし。」


『ごめーん。』



お互い笑いながらカラオケを出る。



また行きたいな。

音痴の林原と一緒に。
 

⏰:09/03/17 13:32 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#525 [七瀬]
 
 
 
朝の目覚めは最悪。


昨日はお母さんに散々、怒られたのと、

カラオケで暴飲暴食しすぎて胃がもたれる。

歌い過ぎて喉もカラカラ。


でも気分は最高。

昨日は本当に楽しかったもん。
 

⏰:09/03/17 15:50 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#526 [七瀬]
 
学校に行きたくて溜まらない。

歩志と会うのは怖くない。


というのは嘘。



だけど

確かに前よりも心が軽くなったの。


これだけは間違いない。

胸張って言える。

⏰:09/03/17 17:04 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#527 [七瀬]
 
怖くても、私はもう逃げない。


そう心に誓った。

林原のおかげで。


林原はやっぱり何も言わなかった。

「頑張れよ」
とか励ますこともしなかったし、

「何があったの?」
とも聞かなかった。

⏰:09/03/17 17:11 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#528 [七瀬]
そして私もやっぱり林原のそういう優しさに弱いんだ。

ほんと林原には
何回“ありがとう”を言っても言いきれないなあ。


だから私は決めたの。

もう逃げない。


友達がなんだっていうの?

壁なんて壊してやるだけ。 

⏰:09/03/17 17:24 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#529 [七瀬]
 
 
 
 
 
すぅ。

息を吸い込む。


ガラッ


ダダダダダダ…



『歩志、おはよっ!』
 
 

⏰:09/03/17 17:26 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#530 [七瀬]
 
 
 
「おはよう、ぽんずちゃん。」

座って片手をついてる歩志は、
立ったままの私を上目遣いで見た。





「昨日は楽しかった?」


え…?

⏰:09/03/17 18:05 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#531 [七瀬]
 
「だから、カラオケは楽しかった?
彼氏さんとのカラオケは。」


見られてた…?

固まっている私に、歩志は言った。


「駅前のカラオケはあんまりオススメできないな。
音質悪いし。」


見られてたんだ。

⏰:09/03/17 18:08 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#532 [七瀬]
 
でも……。



『楽しかったよっ!』

私は挑むように歩志を目を見る。


ここで逃げちゃいけない。

私は闘うって決めたんだから、

悪魔のコイツと


弱い自分と。

⏰:09/03/17 18:11 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#533 [七瀬]
 
 
一瞬、歩志が驚いたような気がした。

でもまた、すぐにいつもの歩志に戻って



「へぇー。
それは良かった。」

ニヤッっと笑う歩志。


『まあね。』

そういって席に着いた。
 

⏰:09/03/17 18:18 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#534 [七瀬]
 
 
少しだけ。

少しだけだけど
前に進めたんだ、私は。


自分に自信がついた。



男の気持ちなんて分からない。

ましてやコイツなんて…。

私の好きになってしまったのは、とんでもないヤツ。

⏰:09/03/17 18:58 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#535 [七瀬]
 
 
不安でいっぱい。

だけど、


だからこそ…




好きなんだ。


今思っていることをアイツに…。
 

⏰:09/03/17 19:02 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#536 [七瀬]
 
 
 
それから休み時間になるたび、私は歩志に話し掛けた。


前みたいに下らない、どうでもいいようなことを話す。



これじゃあ、
本当に友達のままじゃん!!

どうにかしないと…。

⏰:09/03/17 20:26 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#537 [七瀬]
 
 
えーっとえーっと、

焦ってても仕方ないし…。


そうだ!

とりあえず
“林原と付き合ってる”
という誤解を解かなければ。

でも、いつ言おう。

なかなかタイミングが掴めず、時間だけが過ぎてゆく。

⏰:09/03/17 20:30 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#538 [七瀬]
 
 
とうとう昼休みになってしまった。


しょーがないっ!

お弁当食べてる時に言おう。


なんか緊張するなあ。



『歩志!
…その、どこで食べる?』 

⏰:09/03/17 20:32 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#539 [七瀬]
いきなり聞く。


だって
“一緒に食べよ?”
とか聞いて断られたら、

さすがに立ち直れないし…。


でもっ!

やっぱいきなり
“どこで食べる?”
はキツかったかなあ…。

図々しいというか、なんというか。

⏰:09/03/17 20:36 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#540 [七瀬]
 
 
 
心の中で支離滅裂なことを考えてると


「食堂にしよっか?」


ふぅー。

胸を撫で下ろす。


一つの難関を突破した。  

⏰:09/03/17 20:40 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#541 [七瀬]
 
 
食堂はやっぱりいつもみたいに男共で溢れかえっていた。


奇跡的に席を2つ発見し、そこに腰を下ろす。



な、なんて切り出そう…。



「ねえ、彼氏と食べなくてもいーの?」

⏰:09/03/17 20:44 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#542 [七瀬]
私から話す必要はなかったみたい。


『う、うん…。あのね歩志。
私、実は……


林原と付き合ってないの!』


言った。

とうとう言ったぞ!



「うん。知ってた。」

⏰:09/03/17 20:47 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#543 [七瀬]
『はあ!?』

すっとんきょうな声を上げる。


歩志は何でもないように続ける。

「最初っから分かってたよ。
だって、ぽんずちゃんは嘘が下手だもん。
すぐ顔に出るし。」


『じゃあ何で林原のこと、ずっと彼氏呼ばわりしたのよっ!』 
 

⏰:09/03/17 20:52 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#544 [七瀬]
だんだんムカついてきた。


「んー、面白かったから。」

食堂のうどんを啜りながら歩志は言った。


面白かった?

なんじゃそりゃ。


聞いた途端に気が抜けてしまった。
 

⏰:09/03/17 20:56 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#545 [七瀬]
「面白かったんだもん。仕方ないじゃん。

ってか、ぽんずちゃんほどからかい甲斐ある人いないよ?

ってか、
からかわれてること自体、気付いてなかったし。」


笑いながら言う歩志。


『もっと早く言ってよねっ!』
 
「ごめんごめん。
だって見たかったし。」

⏰:09/03/17 21:03 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#546 [七瀬]
『何が?』


「ぽんずちゃんの
焦ってるとーころっ!」



やっぱりコイツは悪魔だ。

人間の私が適うわけない。



「…でどうなの?」


『ん?何が?』
 

⏰:09/03/17 21:07 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#547 [七瀬]
「だから…、

実際、林原君とは何もないわけ?」


『ああ、なにもないよ。
あるわけないじゃん!』


「そっか。





……良かった。」
 
 

⏰:09/03/17 21:10 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#548 [七瀬]
 
 
『ってか、久しぶりだね。歩志と一緒にお弁当食べるの。』


「そうだったね。
ぽんずちゃんはずっと彼氏と食べてたし。」

『だからっ、彼氏じゃないってば!』


「えー?でも前に聞いた時“付き合ってる”
って確かに、この耳で聞いたんだけどなあ。」
 

⏰:09/03/17 21:23 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#549 [七瀬]
 
 
私も聞いたよ。 



確かに、この耳で。





歩志の


“良かった”

っていう小さな声。
 
 

⏰:09/03/17 21:25 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#550 [七瀬]
 
 
 
 
『私、嫌だった。』

「なーにが?」


『歩志に


“林原と付き合ってる”
って思われて。』


「フッ、だってぽんずちゃん好きだもんね。
俺のこと。」
 

⏰:09/03/17 21:28 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#551 [七瀬]
前にも同じこと聞かれたっけ。


“そんなに俺のこと、好きなの?”
って。


あの時は


“そんなわけないじゃん”って言ったっけ。


そんなに時間が経っているわけじゃないのに、
すごく昔のことに思えるよ。

⏰:09/03/17 21:31 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#552 [七瀬]
 
 
 
『…んなわけないじゃん。』


また同じこと言ってる、私。

まだまだ成長しないなあ。



「嘘つき。

ほんとは好きなくせに。」 
 

⏰:09/03/17 21:34 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#553 [七瀬]
 
好きだよ。

大好き。





『歩志のナルシスト!
変態!!バカっ!』


「ひどいな、ぽんずちゃん。」
 
 

⏰:09/03/17 21:37 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#554 [七瀬]
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「俺は好きだよ。」 
 
 
 
 
 

⏰:09/03/17 21:38 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#555 [七瀬]
 
 
 
ほら、またそんなこと言って私を惑わす。







「柚子。」



そんなアイツは私の星。
  
 

⏰:09/03/17 21:41 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#556 [七瀬]
 
 
まだ始まったばかり。







アイツと私。


歩志と柚子。



星とぽんず…。
 
 

⏰:09/03/17 21:43 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#557 [七瀬]
 
 
 
 
 
 
 
おーしまいっ
 
 
 
 
 
 

⏰:09/03/17 21:44 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#558 [七瀬]
やっと完結しましたーっ
(><)

今はただただ、やりきった感に浸っています。

読んでくれた方ありがと!!


また感想下さいね♪

待ってますヽ(´▽`)/
 

⏰:09/03/17 21:48 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#559 [七瀬]
えーっと、

“結局、歩志と柚子はどうなったの?”

とお思いの方がいると思います。


中途半端な終わり方ですいません(_´Д`)ノ~~
 
 

⏰:09/03/17 21:50 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#560 [七瀬]
 
が!
これには一応、続きがあります。

いわゆる“続編”というやつです(*/ω\*)


また書きたいと思いますが別の話を書いてからにしたいと思います(´Д`)

“別の話”が一話になるのか二話になるのかは、
まだ決めていません。

⏰:09/03/17 21:53 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#561 [七瀬]
 
 
また新作は
ここと七瀬の感想板に
お知らせしまーす!!


今、読み返しても
誤字や不適切な表現…。

いっぱいありますね↓↓


気を付けてはいたのですがごめんなさい゚。(p>∧<q)。゚゚

⏰:09/03/17 21:56 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#562 [七瀬]
 
正直言って、この話は大変書きにくかったです。

私は機械や電気については全くだったので……。

中学生時代の技術の時間を思い出して書いていました。


もっと機械について書きたかったのですが…。

また続編で!

⏰:09/03/17 21:59 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#563 [七瀬]
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4276/

感想板です。
 

⏰:09/03/17 22:06 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#564 [七瀬]
 
 
さっそくですが
新作です(●^ー^●)

bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/10124/

『夏休み、恋花火』
読んでねっ!
 
 

⏰:09/03/18 10:44 📱:N703iD 🆔:1U/TvnL6


#565 [七瀬]

すいません(;_;)

『夏祭り、恋花火』でした↓↓

⏰:09/03/18 10:49 📱:N703iD 🆔:1U/TvnL6


#566 [なお]
>>310-560

⏰:09/03/18 22:48 📱:SO905iCS 🆔:143p0q12


#567 [我輩は匿名である]
安価失礼します
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600

⏰:09/03/19 20:39 📱:F904i 🆔:w8Co4tdM


#568 [闇音孤]
星とぽんずも
見ちゃった

⏰:09/05/24 19:43 📱:F906i 🆔:48.b4aKY


#569 [七瀬]
闇音孤さん

ありがとー゚。(p>∧<q)。゚゚

続編も、見ーてーねっ 

⏰:09/05/25 05:17 📱:N703iD 🆔:vnUiPhyQ


#570 [あき]
>>1-200
>>201-400
>>401-600
続編
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/10462/

⏰:09/07/25 09:49 📱:N02A 🆔:NPimNL/k


#571 [七瀬]
あきさん


ご丁寧に‥><


どうも、ありがとうございます
 

⏰:09/07/26 23:52 📱:N703iD 🆔:T6L90Ygw


#572 [*紫陽花*]
>>1-200
>>201-400
>>401-600
>>601-800
>>801-1000

⏰:09/08/07 17:35 📱:N02A 🆔:xhzALeAY


#573 [七瀬]
*紫陽花*さん

ありがとうございます!
 

⏰:09/08/07 19:55 📱:N703iD 🆔:Rtsevn3Y


#574 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age

⏰:22/10/01 22:30 📱:Android 🆔:rYsbLV12


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