星とぽんず
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#401 [七瀬]
とりあえず、ごまかす。


「そうだな。」

なんか、うれしそうな林原。

「それより、松田。
昨日のことだけど…。」

林原の真剣な光の宿った目が私を捕える。

『もういいよ!』

「え?」

『謝ってくれたし、もういいから。』

⏰:09/03/09 00:16 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#402 [七瀬]
昨日のことは話したくないので避けた。


「ん、そうだな。」

今度は、淋しそうに言う林原。




ごめんね、私が臆病者で。


林原が、せっかく向き合ってくれようとしたのに、
私は自分から逃げてしまった。

⏰:09/03/09 00:20 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#403 [七瀬]
信号が変わる。

私たちは並んで歩きだす。

無言のままで。

林原と仲直り?したとはいえ、気まずい。

駅までの道が長く感じる。
横目で林原を見ると、半袖から伸びている手が見えた。

あ、赤くなってる。

なにか細いもので、叩かれたような線。

⏰:09/03/09 00:25 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#404 [七瀬]
部活だったのかな。


林原が剣道部だったことを思い出す。




『部活だったの?』

「まーな。」

ぎこちない会話。


それからまた長い沈黙。
 

⏰:09/03/09 00:29 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#405 [七瀬]
やっと駅に着く。


少し安心する。

だって、すごく長く感じて、
もしかしたら二度と駅に着かないんじゃないかな?
とバカな心配をしてたから。


ほんとバカだけど、それくらい気まずかったんだな、私たちは。


でも電車の中はもっと苦痛だった。

⏰:09/03/09 00:33 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#406 [七瀬]
何も話さない。

1時間近くある、電車の中で、お互い一言も口にしない。


それから、時間だけが過ぎ、電車を降りた。

前は、あんなに楽しくって短く感じたのになあ。



それから歩いて、別れ道。

⏰:09/03/09 00:37 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#407 [七瀬]
『じゃ、バイバイ。』

「ん、じゃーな。」


家に向かって歩きだす。







「松田っ!」


振り向くと30メートルほど先に林原がいた。

⏰:09/03/09 00:40 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#408 [七瀬]
 
 
 
 
 
 
 
 
「好き。」
 
 
 
 
え…?

“柚子”と呼ばれた以上に耳を疑う。
 

⏰:09/03/09 00:42 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#409 [七瀬]
 
 
真っ赤な顔の林原。



「それだけ。
じゃーな。また明日。」


『…う、うん。また明日。』

林原の背中が遠ざかっていった。


私、告白された?

呆然と立ち尽くす。

⏰:09/03/09 00:46 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#410 [七瀬]
 
 
 
 
私はまた、家へと向かいだす。


赤信号。
赤い林原の腕。

そして、
さっきの真っ赤な林原。


“ラッキーカラーは赤。”

という言葉がよみがえる。

⏰:09/03/09 00:49 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#411 [七瀬]
 
 
 
そして、もう一つ。
 
“あなたの勇気が運命を動かす日”


私の勇気…?

運命を動かす??



私は急ぐ。


さっき別れた林原の元へと。

⏰:09/03/09 00:53 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#412 [七瀬]
ラッキーカラーなんて、ただのこぎつけかもしれない。

占いなんて、当たってるように思うだけ。

だけど、走らずにはいられなかった。


そういえば、林原に走らされてばっかりだな、私。

卒業式の後の公園。

久しぶりにヒグマに会って、林原のことを聞かされたとき。


そして今。

⏰:09/03/09 17:43 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#413 [七瀬]
ほんと、走ってばっか。

林原のせいで、私は泣き虫なマラソン選手になってしまったみたい。






『はぁはぁ。』

走ったせいか息が荒くなる。


いた。
 

⏰:09/03/09 17:47 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#414 [七瀬]
暗闇の中、小さな背中。


見つけた。

『林原!』

まだ息が整っていないまま、力いっぱい叫ぶ。



林原が振り向く。

「松田…。」


林原に近づいた。

⏰:09/03/09 17:49 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#415 [七瀬]
2人の距離は1メートルほど。


深呼吸のため酸素をいっぱい吸い込む。

息は元通りになっていた。



「どうした?」

まるで、さっき告白したのがなかったみたいに言う林原。
 

⏰:09/03/09 17:54 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#416 [七瀬]
 
でも、嘘じゃない。
夢でもない。


確かに聞いた。
林原の
「好き。」という言葉。


忘れられない。

林原の高い声。
真っ赤な顔。
茶色い瞳。


すべてが私の体を熱くさせる。

⏰:09/03/09 17:56 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#417 [七瀬]
 
 
『あのね、私……。』








トクン。

心臓の音が聞こえた。
 
 
 
 

⏰:09/03/09 17:58 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#418 [七瀬]
 
 
私は今、林原の胸の中。


とても心地良い。


林原の髪の甘い匂い。

どこのシャンプー使ってんだろ。

柑橘類の甘酸っぱい香が私をマヒさせる。



ずっと、このままでいたいよ。

⏰:09/03/09 18:02 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#419 [七瀬]
 
 
 
そんな時、なぜか歩志の顔が浮かんだ。


意地悪な勝ち誇った顔。
冷たい眼差し。

そして、あの笑顔。



なんで?

せっかく今、林原の中にいるのに。

⏰:09/03/09 18:04 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#420 [七瀬]
別に林原と歩志を重ね合わせてるワケでもない。


今、私は幸せなはずなのに。

なんで喜べないのよ。



歩志。
歩志。
歩志…。

ドキドキしてた心臓は、キュッと締めつけられた感じがした。

⏰:09/03/09 18:07 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#421 [七瀬]
 
 
 
 
 
「もういいよ、松田。」


『え?』

「俺のとこへ来てくれて、ありがとう。」


『なんで、そんなこと言うの?』



「だって…、」

⏰:09/03/09 18:10 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#422 [七瀬]
 
林原は言った。


「だって…、




お前、泣いてる。」


泣いてる?

うそ…っ。


気が付くと私の頬には、いくつもの涙たちが伝っていた。

⏰:09/03/09 18:13 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#423 [七瀬]
 
嘘だ。
嘘だ。
嘘だっ!


そんなはずないじゃん。

ねぇ、林原。
嘘だって言って。

笑って。
そんな悲しそうに見ないで。

私は泣いてなんかない。

涙なんて出てたまるか。

⏰:09/03/09 18:48 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#424 [七瀬]
目を擦っても、擦っても涙はとめどなく出てきた。


「お前はほんと泣き虫だな。」

誰のせいよ。

アンタのせいじゃない。


「そんなに目、ゴシゴシすんな。
ブサイクが余計にブサイクになる。」

私の頭をポンポンする林原。

⏰:09/03/09 18:51 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#425 [七瀬]
トゲのある言い方。

だけどぶきっちょな林原の優しさがにじみ出てて、
余計に涙が溢れた。



『うっ、ブサイク…じっ、じゃない!』

泣きながら反論する私に、林原は、


「そうだな。松田はかわいいよ。」

こんな恥ずかしくなるような一言。

⏰:09/03/09 18:55 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#426 [七瀬]
「俺は、お前のかわいさに何回も心臓がブッ壊れそうになった。」

また顔を真っ赤にして、林原は言った。


それは、こっちのセリフだよ!

って言ってやりたかった。


林原って、こんなにロマンチストだったっけ?

またまたドキドキが襲ってきた。

⏰:09/03/09 18:59 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#427 [七瀬]
 
 
 
『そっ、それはこっちのセリフよ!』

意を決して言った。



が、その直後にはお互い笑い合っていた。

こんなに林原と笑い合うなんて、久しぶり。


心のモヤモヤが消えていった。

⏰:09/03/09 19:02 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#428 [七瀬]
 
 
 
あれから、私たちは本当の仲直りをした。

林原の告白は、うやむやになったまま。

私は林原をフッたのかな?


林原を嫌いになったわけじゃない。

ただ歩志が心から出ていかない。

いつもいつも私の心は支配されてしまう。

⏰:09/03/09 22:27 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#429 [七瀬]
 
 
 
占いは当たったのかな?

私の運命は変わった?


疑問だらけ。

それでも、前より気持ちが楽になったのは確実。


でも、そのおかげで気付いてしまう。
 
 

⏰:09/03/09 22:30 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#430 [七瀬]
 
 
私を泣き虫にしたのは、林原だけじゃない。



私がドキドキしたのは、きっとアイツのせい。







私は好きなんだ。


歩志のことが。

⏰:09/03/09 22:32 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#431 [七瀬]
 
 
信じられない。

自分でも、こんなにすんなりと、
“歩志が好き”
ってことを認めてしまうなんて。


会ってまだ、数か月。



だけど、
意地悪で冷たいアイツが


好きなんです。

⏰:09/03/09 22:35 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#432 [七瀬]
 
 
『お、おはよー。』

「おはよ、ぽんずちゃん。」


ほんとの気持ちに気付いたからには、どんどん行くしかないでしょ!!

でも、どうしたらいいのか分からない。


松田柚子。
15歳。

男の気持ちなんて、知るわけないじゃーん!

⏰:09/03/09 22:38 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#433 [七瀬]
 
私はまだまだガキだ。

はあ。


「どうしたの?」

私の顔を覗き込むアイツ。


わっ!
朝からそんな顔で見ないでよ〜!!


好きだと解ると、つい意識してしまう。

⏰:09/03/09 22:41 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#434 [七瀬]
「ねぇ、俺は今日から放課後、ずっと残るけど、

ぽんずちゃんはどうする?」



チャンス到来!

『私も一緒に残る!』

やったあ!
これで歩志と長くいれるね。

しかも二人っきりで。


うれしさがこぼれそう。

⏰:09/03/09 22:44 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#435 [七瀬]
「そ。」

『うんっ!』

あまりのうれしさに、歩志の素っ気ない返事にも、
ルンルンで返した。


そんな私を見て、歩志は

「なんかぽんずちゃん、元に戻った。」

『えっ、そう?』

「うん。元気のないぽんずちゃんから、
元気いっぱいの、ぽんずちゃんに戻った。」

⏰:09/03/09 22:48 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#436 [七瀬]
 
 
歩志は、ちゃんと私を見ていてくれたんだ…。

そう思うと泣きそうになった。


また私、泣かされる。笑



とりあえず、涙は堪えて、席に着く。


授業中も、前のアイツが頭から離れない。

⏰:09/03/09 22:51 📱:N703iD 🆔:W7rSt6Q.


#437 [七瀬]
 
 
 
昼休み。

私は、中庭で歩志と食べた。



『歩志の誕生日って、いつ?』

「4月7日。」

『へぇー、過ぎちゃったね。』

⏰:09/03/10 18:32 📱:N703iD 🆔:7bD3bGNs


#438 [七瀬]
 
 
『血液型は?』

「AB。」

『ふーん、そう言われたらそうっぽいね。』


『好きな食べ物は?』

「りんご。」


『かわいい。』

そう笑うと、歩志はりんごみたいな顔になった。笑

⏰:09/03/10 18:35 📱:N703iD 🆔:7bD3bGNs


#439 [七瀬]
そんな歩志を見て、ずっと笑っていると、


「次の質問は?ぽんず姫。」

と歩志。

やり返された。

今度は私がりんごになってしまった。



『じゃ、家族構成。』

「オヤジ、おふくろ、にぃちゃん。」

⏰:09/03/10 18:39 📱:N703iD 🆔:7bD3bGNs


#440 [七瀬]
『兄弟いるんだ。』

「意外?」

『うん。歩志ってなんか一人っ子っぽいし。』

「そう?」

『一人っ子独特の雰囲気がする。』


こんな感じで、とりあえず質問責めにしてみた。

いっぱい歩志のことを知れた幸せと、
次々、現われる驚きで私の心は満たされた。

⏰:09/03/11 22:20 📱:N703iD 🆔:guC0zZjc


#441 [七瀬]
 
 
今までのことをまとめるとこうなった。

八田歩志。

4月7日生まれの16歳。

血液型はAB型で

好きな食べ物はりんご。

父、母、兄の4人家族で、お父さんは大工をしている。

こんな感じ?

⏰:09/03/11 22:24 📱:N703iD 🆔:guC0zZjc


#442 [七瀬]
 
 
うーん。なんか違う。

私が思ってたのと違う。

歩志の答えが違うんじゃなくって、

聞きたいこと、
…つまり私の知りたいことが違う。


歩志のことを知れたのは、うれしい。
例え、どんなことでも。

でも、もっと内面的なことが知りたい。

⏰:09/03/11 22:28 📱:N703iD 🆔:guC0zZjc


#443 [七瀬]
 
 
放課後。

2人には沈黙が出来る。

いつものこと。


でも、この沈黙は嫌いじゃない。

慣れてしまったのと、

歩志の真剣な横顔を見ているだけで満足だから。


でも、いつもしゃべらない歩志が口を開いた。

⏰:09/03/11 22:33 📱:N703iD 🆔:guC0zZjc


#444 [七瀬]
「なあ、昼休みにさあ。」

『えっ、うん。』

いきなり話し掛けられたので、少しビックリした。


「お前、言ったよな。

“俺には一人っ子独特の雰囲気がある”って。」

『言ったけど。それがどうかした?』

「それ、あながち間違いじゃないかも。」

⏰:09/03/11 22:37 📱:N703iD 🆔:guC0zZjc


#445 [七瀬]
『どういうこと?』


「あんまよく分かんないんだよなぁ、俺。」

『何が?』


「にぃちゃんのことが。」

『兄弟なのに?』

「だって一緒に住んでたのが俺が5歳くらいまでなんだよ。」


『なんで?』

⏰:09/03/11 23:36 📱:N703iD 🆔:guC0zZjc


#446 [七瀬]
「俺とにぃちゃんは15歳も年が離れてるの。

それで、俺が5歳になって間もないころに、家を出てったらしい。」

歩志は、なんでもないことのように言った。


普通に驚いた。

その事実と、

歩志が淡々と、私にこんな話をしてくれたから。

⏰:09/03/11 23:41 📱:N703iD 🆔:guC0zZjc


#447 [七瀬]
『へぇ。うちじゃ考えらんない。』

「兄弟いるの?」

『うん。お姉ちゃんだけどね。』

「そうなんだ。

ねぇ、兄弟ってどんなんなの?」

『どんなのって言われても…。』

こんなことを、いきなり聞かれ、かなり戸惑った。
 

⏰:09/03/12 16:59 📱:N703iD 🆔:9WvOYkxk


#448 [七瀬]
 
『ん〜、なんだろ。難しいなあ。』

悩み、考える。

『うーん。

バカにされたり、ウザイと思うけど、
いると心強い存在……

かなぁ。』


「なにそれ。」

『よく分からない?』

「うん。全然わかんない。」

⏰:09/03/13 18:22 📱:N703iD 🆔:1P9d3jy6


#449 [七瀬]
 
 
う〜ん。

歩志がいることを忘れ、
必死に考える。



「じゃ〜あ、俺は?
俺はぽんずちゃんにとって、どんな存在?」


『そんなの今は関係ないじゃん!』

もう!
変なこと聞かないでよ!!
 

⏰:09/03/13 18:28 📱:N703iD 🆔:1P9d3jy6


#450 [七瀬]
またまた、いきなりそんなことを聞いてくる歩志。


“友達以上の大切な存在だよ”

とか言えたらいいのに。


……言えない。



『星…みたいな存在かな?』

目を丸くする歩志。

⏰:09/03/13 18:31 📱:N703iD 🆔:1P9d3jy6


#451 [七瀬]
 
「それは最初に“歩志”を“ほし”って呼んだから、先入観みたいなので
そう思ってるんじゃないの?」


うん、そうなの。

歩志、鋭いな。


でも…。

『それもあるけど、
なんか歩志自体が星みたいなの。』

「フッ、なにそれ。」

⏰:09/03/14 01:28 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#452 [七瀬]
『なんか歩志って、
星みたいにキラキラしてるもん。』

「うれしいこと言ってくれるじゃん。」


『そのキラキラした光で照らされてる気がして、
なんか温かくなるの。』

私は、ほとんど意識せずに遠い目をして言った。


歩志は、その間も手を休めずカンナを動かす。

⏰:09/03/14 01:33 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#453 [七瀬]
 
『でも遠いの。』

鉄の削れる音が止んだ。

歩志を見なくても、手が止まったのだと分かる。


『星って輝いてて、とても近いように見えるけど、
本当は地球から何億光年も離れてるじゃん。
近いようで遠い。

歩志は
分かるようで分からない。

アンタを知ってるようでほんとは何も知らない。』

⏰:09/03/14 01:40 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#454 [七瀬]
ああ、そうだ。


私は思い知る。

現実を。


歩志は無機質なようで優しい。
冷たいようで温かい。

私は歩志の、そういうところが好きなの。

でも、



壁があるの。

⏰:09/03/14 01:43 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#455 [七瀬]
見えない壁が。

私は絶対にその中に入れない。

ううん。
私だけじゃない。

歩志の今まで出会ってきたすべての人々もきっと同じ。

歩志だけにしか入れない、歩志が誰一人も入れさせない。



そういう歩志だけの世界がある。

⏰:09/03/14 01:48 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#456 [七瀬]
いくら質問責めにして、
歩志のことを知っても、


それは幻想にしか過ぎないの。

所詮、まぼろし。

ただの夢なの。


そう分かっているのに、なんて心地いいんだろう。

だから抜け出せない。


いつまでもアイツにハマったまま。

⏰:09/03/14 01:53 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#457 [七瀬]
 
 
「ぽんずちゃん、やっぱり面白い。」

クスクス笑う歩志。



ほらね、

今、苦しい私とは裏腹に歩志はこんなにも余裕。



そっか。

再確認させられる。

⏰:09/03/14 01:57 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#458 [七瀬]
 
 
私にとって歩志は、
大切で大好きな存在だけど



歩志にとって私は、





“今まで出会ってきた全ての人々の中の一人”


だけの存在なんだ

ってことを。

⏰:09/03/14 02:13 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#459 [七瀬]
 
 
 
 
 
『ごめん。
用、思い出したから帰るね。』


一方的に言って、立ち上り歩きだす。

「そ、じゃーね。
ばいばーい。」

後ろで歩志の声が聞こえたけど、
何も言わずに体育館を出た。

⏰:09/03/14 02:18 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#460 [七瀬]
さっきは、あんなに楽しかった。


歩志が私をちゃんと見ていてくれてた喜びと、

“これから”で
私の胸はドキドキでいっぱいだったのに。


一喜一憂しすぎだな。

口元に薄ら笑みを浮かべた。


一気に闇に突き落とされた感覚を味わいながら。

⏰:09/03/14 02:23 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#461 [七瀬]
 
 
 
次の日から歩志といると息が詰まった。


歩志は何も変わらないのに。
出会った時と同じなのに。


当たり前か。

だって変わったのは、
私だけだもんね。

昨日の何気ない会話から、勝手に私が考え込んでるだけだし。

⏰:09/03/14 19:09 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#462 [七瀬]
あれから放課後に残ることもなくなった。

なんとなく歩志を避けてた。

そんな私に歩志は気付いてただろうけど、
普通に接してくれた。

そのたびに胸が締め付けられた。


そんなこんなで、私が最後に体育館に行ってから、
もう1ヶ月近くが経とうとしていた。

もう7月。

⏰:09/03/14 19:13 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#463 [七瀬]
少し暑くなってきた。

座っているだけで
じんわりと汗が出る。


一学期も、もう残りわずか。

相変わらずの私。

何もない毎日。


また入学当時と戻ってしまったみたい。

ほんとつまんない。

⏰:09/03/14 22:07 📱:N703iD 🆔:7n/kQCzw


#464 [七瀬]
 
歩志は、まだ体育館に通ってるみたい。


つまんないけど、
学校に行きたくないほど
ではないかな。

だって
林原がいてくれるから。

仲直りした日から、林原はちょくちょく会いに来てくれた。

昼休みを一緒に食べたり、

休み時間に1ー2の教室に来てくれたり。

⏰:09/03/15 02:02 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#465 [七瀬]
 
 
いつも林原は私を助けてくれる。


今も林原に救われてる。



林原は告白のことは、
何も言ってこない。

だから私も何も言わない。


またいつもの二人に戻った。

穏やかな日々。

⏰:09/03/15 02:06 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#466 [七瀬]
 
 
 
もう、このままでいいかも。

そう思ってしまう。


だってここが一番安らぐし。
安心する。



私の居場所はここ。
 
林原なんだ。

⏰:09/03/15 02:08 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#467 [七瀬]
 
だってアイツのところへ
行ったら、

絶対つらいもん。

林原以上に泣かされる。


あの壁にぶつかって虚しくなるだけ。

惨めになるだけ。


こんなことなら、もういいや。
 

⏰:09/03/15 02:11 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#468 [七瀬]
 
 
そう思っていたのに…。




学校が終わり、鞄に教科書を詰め込んだ。

今日は林原が部活ないし、一緒に帰る約束してたっけ。


あ、急がないと。

 
ガタッ。
席を立つ。

⏰:09/03/15 02:15 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#469 [七瀬]
 
ガラ。

後ろのドアが開いた。



「ぽんずちゃん。」

『何?』

歩志を見ずに言う。


「ちょっと来て。」

私のそばに来ると、腕を掴んだ。
 

⏰:09/03/15 02:18 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#470 [七瀬]
 
『へ!?』

何!?
何が起こったの?


すごい力が腕から伝わってくる。

歩志の大きな手のひらは、私の腕を完全に捕えている。


でも、そんなこと以上に
歩志のすごい剣幕に圧倒されて、
抵抗することも忘れた。
 

⏰:09/03/15 02:22 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#471 [七瀬]
 
 
このまま連れていかれ、
体育館に到着。


「これ。」

歩志の差し出された手には


…文鎮。

『これ…、
歩志が作ったの?』

「もちろん。」

うれしそうに言う歩志。

⏰:09/03/15 02:25 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#472 [七瀬]
 
すごいきれいな文鎮。


…だけど、

意味不明!


なんで文鎮?

あんなにすごい剣幕で、


文鎮ですか?

目が点になった。

⏰:09/03/15 02:28 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#473 [七瀬]
『……で?』

今度は歩志の目が点になった。



『あんなすごい剣幕で文鎮!?』

「ああ。」

歩志は合点したように頷いた。


「これだけじゃダメ?」

は?

⏰:09/03/15 02:32 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#474 [七瀬]
「だって、俺の作った文鎮見たかったでしょ?」


うん、見たかった。

見たかったけど、なんでこのタイミング?

なぜあの剣幕?


『…見たかったけど。』

「正直でよろしい。」

歩志は満足そうに笑った。 

⏰:09/03/15 02:36 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#475 [七瀬]
「これで技術室に行ける。」


忘れてたワケじゃないけど“どうでもいいや”
と思っていたのは事実。

その間にも、歩志は諦めてなかったんだ。



『うん。そうだね…。』

気力なく言う私。


そんな私を見て、うんざりしたように歩志は言った。

⏰:09/03/15 16:40 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#476 [七瀬]
「ね、
お前、技術室に行きたくないの?」

ううん。
そんなんじゃない。

『…行きたいよ。』

「じゃ、なんでそんな顔してんの?
変だぞ。」


なんでって、
アンタのせいじゃん。

私の思い込みって言われても仕方ないけど、
アンタの壁があるからじゃん。

⏰:09/03/15 16:45 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#477 [七瀬]
「なんか話し掛けても、上の空だし。
避けてるよね?俺のこと。」


図星なのと、
さっきより、すごい歩志の剣幕で何も言えなかった。



「あの林原ってヤツと付き合ったから?
あれから、うまくいったわけ?」


うつむいてた顔を歩志に戻した。

⏰:09/03/15 16:51 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#478 [七瀬]
『…なにそれ。』

なにそれ。
なにそれ。

ますます意味分からない。

はぁ。

歩志はため息混じりの声で言った。

「だから、付き合ってんだろ、その林原クンと。」

何、その呆れた声…。

ため息をつきたいのは、
こっちだよ!

⏰:09/03/15 18:53 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#479 [七瀬]
 
『付き合ってないよ。』

やっとのことで口を開いた。
弱々しい声。



「ふーん。
まあ、どーでもいいけど。」


どうでもいい?

『じゃあ何で聞くのよ!』

立ち去ろうとする歩志に怒鳴る。

⏰:09/03/15 18:57 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#480 [七瀬]
『なんで…、なんでそんなこと聞くのよっ!

もう意味分かんない!

いきなりこんなとこに
連れてこられたかと思えばなんか責められるし。

さっきまで、うれしそうに文鎮見せびらかしてたくせに、キレだすし!


“林原と付き合ってる”
とかゆーし…。

そのくせ、どうでもいい?
ふざけんなっ!!』
 

⏰:09/03/15 21:04 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#481 [七瀬]
私は声を荒げる。

私が悪いのは分かってるのに。


勝手に歩志を避けて、

林原とばっかりいて、
歩志が誤解しても仕方ないのに。


でも悲しかった。

歩志に誤解されて、

悔しかった。

逆ギレなんかして最低だ。

⏰:09/03/15 21:09 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#482 [七瀬]
最低だって分かってるのに私の口は止まることを知らない。


『…付き合ってるよ。』

歩志の視線が痛い。


『林原と付き合ってる。』



「あっそ。
頑張ってね。」

冷たく言って歩志は出ていった。
 

⏰:09/03/15 21:13 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#483 [七瀬]
 
 
次の日。
 
歩志はもう口を聞いてくれない。




そう思っていた。


「おはよ。ぽんずちゃん。」

『…おはよう。』

びっくりしたというより、悲しくなった。

⏰:09/03/15 21:18 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#484 [七瀬]
 
「どうしたの?そのマヌケ顔。」

『マヌケ顔で悪かったね!』

ハハッと歩志が笑う。


昨日は夢でも見てたのかもと思ってしまう。

不自然なとこなんて、一つもなかった。


私は気付かなかった。

余りにも自然すぎて。

⏰:09/03/15 23:53 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#485 [七瀬]
 
 
 
見えない壁がどんどん厚くなっていることに。



放課後。

「ねぇ、ぽんずちゃん。」

『なぁに?』

宿題忘れで、その倍の宿題をしていた私は、
机に顔を向けたまま答えた。
 

⏰:09/03/15 23:58 📱:N703iD 🆔:hr2Oe0pM


#486 [七瀬]
 
 
 
「俺たち、ずっといい友達でいようね。」


心臓が加速してゆく。

『ハッ…ハハ。
何を急に言ってんの?』

私は少し引きつった顔を歩志へ移動させた。


ドクンドクンドクン。

心臓は速くなってゆく一方。

⏰:09/03/16 00:06 📱:N703iD 🆔:3DtPCs2w


#487 [七瀬]
 
「だから俺らはいい友達だろ?
これからも、ずぅっと。」


目が怖い。

作りすぎた笑顔がより怖さを増している。

歩志のニッコリ顔に、私は背中がゾクッとなった。


『あ…歩志。』

声が震える。

⏰:09/03/16 00:10 📱:N703iD 🆔:3DtPCs2w


#488 [七瀬]
「そうだよね?」

何も言えず、頷いた。


「よかった。安心した。
じゃあね、ぽんずちゃん。」

『…バイバイ。』

元気なく手を振った。


歩志が教室から出ていった。

私には大量の宿題と、胸の重い痛みだけが残された。

⏰:09/03/16 00:37 📱:N703iD 🆔:3DtPCs2w


#489 [七瀬]
 
 
 
“俺たち、ずっといい友達でいようね。”



さっきの言葉が頭の中でうるさく響く。


友達。
友達。

“ずっと”友達。

ずっと。
ずっと。
ずっと…。

⏰:09/03/17 01:29 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#490 [七瀬]
 
 
 
それは私は一生、友達以上にはなれないってこと?

歩志にとって1番の人にはなれないってこと?


あ、なんか
めまいがしてきた…。

ゆらゆらと立ち上がる。


早く帰ろう。

早く帰りたいよ。

⏰:09/03/17 01:33 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#491 [七瀬]
 
 
 
校門から出る。


「どうしたんだよ、松田。」


『あ…、林原。』

「なんか顔色悪いぞ。」

『…ん。大丈夫。』

「大丈夫って…。
ちょっと待ってろ。」

そういって、林原はどっかへ行った。

⏰:09/03/17 01:38 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#492 [七瀬]
 
仕方なく、校門前で待つ。



遅いなあ。
早く帰りたいのに。

でも無言で帰るわけにもいかないし。


「悪い悪い!」

振りかえると林原。


「行こっか。」

『え?どこに?』

⏰:09/03/17 01:41 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#493 [七瀬]
『どこって、決まってるじゃん。』


いやいや、何が決まってるの?



「思いっきり笑えるところ。」

そう林原はニカッと笑った。

『なにそれ。全然分かんな…って林原ぁ!?』

言い終わる前に林原は私の手を握って歩きだした。

⏰:09/03/17 01:44 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#494 [七瀬]
 
びっくりした。

だっていきなり手、繋ぐんだもん。



『え、え!?
ほんとにどこ行くの?』

かなりテンパる。


「お前はいーから、黙ってついて来て。」


今日の林原、なんか強引。

⏰:09/03/17 01:48 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#495 [七瀬]
 
なんか私の知らない林原がここにいる。



やっぱり私は何も林原のことを知らなかったみたい。


だって中学生の時は知らなかったもん。

こんな強引な林原。


そんなことを思いながら、また背が伸びたらしい林原の後ろ姿を眺めてた。

⏰:09/03/17 01:52 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#496 [七瀬]
駅に着くと、やっと手を離してくれた。

少し手が汗ばんでた。


「はい。」


『ありがと。…ん?
これ家と反対方向の切符…。』

「あ、電車来た!
松田、走って!!」

『え?ちょ、ちょっと〜。』

⏰:09/03/17 01:58 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#497 [七瀬]
林原に急かされ、電車に乗った。


やっぱりこの電車、家と反対方向じゃん。

『ねぇ、ほんとにどこ行くの?』

「だーから…。」

『“思いっきり笑えるところ”とか言わないでよねっ!』

「分かってるじゃん。」


はぁ、ダメだこりゃ。

⏰:09/03/17 02:02 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#498 [七瀬]
さっきから、もったいぶって全然教えてくんない。

林原、一人だけルンルンして…



なんかズルい!!

よーし、こうなったら林原以上に楽しんでやる!

黙って林原に宣戦布告した。


さっきより心は軽くなっていた。

⏰:09/03/17 02:07 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#499 [七瀬]
 
 
 
『え…、ここ?』


そこには



“1時間350円”の文字。


「うん。」

楽しそうな林原。

上には“カラオケハウス”の看板。

⏰:09/03/17 02:10 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


#500 [七瀬]
 
『こ、ここ…入るの?』


「もちろん。」

私はまたもや強引に手をひかれ中へ。



えええぇぇ〜!





私は“ド”のつく音痴だ。 

⏰:09/03/17 02:13 📱:N703iD 🆔:GUMwiLbY


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