星とぽんず
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#201 [七瀬]
「うん。まーな。
でも、それだけじゃない。
また、松田と話したかったから。」
それはどういう意味?
「じゃーな、また今度。」
『あ、うん…。』
手を振る林原に、手を振り返した。
:09/03/01 23:26
:N703iD
:v.i2gOkA
#202 [七瀬]
『どういうこと?』
今、問いただし中の私。
思わず目付きがきつくなる。
「ちょ、久々に会ったのに、そんな怖い顔しなくても…。」
焦るヒグマ。
:09/03/01 23:30
:N703iD
:v.i2gOkA
#203 [七瀬]
「少し、落ち着け。」
ヒグマに促され、興奮を押さえる。
「なるほどなぁ、そーゆうこと。」
事情を話し終えた。
愉快そうに笑うヒグマを見て、かなりイラつく。
:09/03/01 23:33
:N703iD
:v.i2gOkA
#204 [七瀬]
「まぁ、そんな顔するな。ってか、言ってなかったか?
俺の知り合いがいるってこと。」
そんなの聞いてないっ!
って目をしてヒグマを睨む。
フッと笑いながら、続けるヒグマ。
:09/03/01 23:36
:N703iD
:v.i2gOkA
#205 [七瀬]
「確かに牧田は俺の同級生だ。
ってか永遠のライバルと言った方がいいかな?」
なにそれ??
「まぁ、牧田は昔っから、中途半端な技術が大っ嫌いな奴なんだ。
だからお前らを連れていかないんじゃないか?
技術室に。」
は?
:09/03/01 23:41
:N703iD
:v.i2gOkA
#206 [七瀬]
いや、でも
授業中は自分の話ばっかだよ?
疑問をぶつけるとヒグマは一人、笑いだした。
「相変わらずだなぁ、あいつも。」
いやいや、笑ってる場合じゃないし!
こっちにとっちゃ、重大問題だし!!
:09/03/01 23:44
:N703iD
:v.i2gOkA
#207 [七瀬]
「昔から技術としゃべりだけは最高だった。
まぁ気にするな。俺から言っといてやるよ。
松田は俺のお墨付きの生徒だってことをな。」
その言葉に鳥肌が立つ。
ありがた迷惑だし!
もう帰ろ。
:09/03/01 23:48
:N703iD
:v.i2gOkA
#208 [七瀬]
収穫なしかぁ。
「おい、ちょっと待て!」
ヒグマの声が私を引き止める。
『はい、まだ何か?』
答える私。
:09/03/01 23:51
:N703iD
:v.i2gOkA
#209 [七瀬]
「この前、林原に会ったんだ。駅のホームで。」
林原に?
「学校の帰りだったみたいだ。
牧田のことを話すと、あいつもしつこく聞いてきた。」
なんで?
あんたは3組だし、関係ないじゃん??
:09/03/01 23:54
:N703iD
:v.i2gOkA
#210 [七瀬]
「あいつ、ほんと変わった奴だよなぁ。
進路だって急に変更しだしたし。
“J高は止めたい、G高に行きたい”って。
それも願書提出の前日に。」
どういうこと!?
私は頭が痛くなった。
:09/03/01 23:59
:N703iD
:v.i2gOkA
#211 [七瀬]
私は走りだした。
林原の元へ。
:09/03/02 07:10
:N703iD
:krcqc4nw
#212 [七瀬]
昨日、林原と初めて喧嘩をした。
理由は
……分からない。
ただ、あんな林原は初めて見た。
:09/03/02 07:12
:N703iD
:krcqc4nw
#213 [七瀬]
ピンポーン。
チャイムを鳴らした。
目の前には“林原”の表札。
私は、林原の家に初めて来た。
:09/03/02 07:14
:N703iD
:krcqc4nw
#214 [七瀬]
中学の友達を片っ端に回って、林原の住所を聞いてたら、
もう日も暮れて、こんな時間。
突然の訪問だし、非常識かな、と思った。
けれど、どうしても確かめたいことがあった。
躊躇してるヒマはなかった。
:09/03/02 17:01
:N703iD
:krcqc4nw
#215 [七瀬]
あれ?出ない。
留守かな?
そういえば、林原のこと何にも知らないんだな、私。
そんなことを考えると、
「はぁーい。」
中から女性の声。
:09/03/02 17:04
:N703iD
:krcqc4nw
#216 [七瀬]
ガチャン。
ドアが開く。
「どなた?」
『こんな時間にすみません。私、林原…、
じゃなくって、
幸夫くんの同級生の松田と言います。
幸夫くんはご在宅でしょうか。』
緊張する。
が、
私は次の瞬間、より一層、緊張が増すことになる。
:09/03/02 17:07
:N703iD
:krcqc4nw
#217 [七瀬]
き、きれいな人……。
私のお母さんと同じ歳くらいだろうけど、
全然違う!
こう、なんというか、
歳に合った、品のある感じ。
肌も歳相応のシワはあるものの、張りがあり、シミもあまり見当たらなかった。
昔はお嬢さまだったんだろうなぁ。
ほんと、うちのお母さんと同じ女性だと思えない!
:09/03/02 17:13
:N703iD
:krcqc4nw
#218 [七瀬]
そういえばこの家、かなりデカい。
昔からあるような、貫禄のある家。
木造建築でまさに日本風。
松や池がある庭まで、ちゃっかり座っている。
でも修復は結構してるんだろなぁ。
どんな丈夫な家でも時間が経つと、やっぱりボロは出てくるし、
修復跡がいくつかあるのも発見した。
:09/03/02 17:18
:N703iD
:krcqc4nw
#219 [七瀬]
「幸夫のお友達?
あの子、まだ帰ってきてないの。部活じゃないかしら?
とりあえず中に入って、待ってて。」
お言葉に甘え、中で待たせてもらうことにした。
玄関に頭を通すと、
木の良い香りがした。
:09/03/02 17:22
:N703iD
:krcqc4nw
#220 [七瀬]
「ここでお待ち下さい。
今、お茶を入れてくるわ。」
林原の部屋へと案内された。
『あの、お構い無く。』
すると、林原のお母さん?は微笑んで、出ていった。
ほんと、きれいな人。
憧れる。
:09/03/02 17:26
:N703iD
:krcqc4nw
#221 [七瀬]
ってか、ここが林原の部屋かぁ…。
片付いてるかと思ったら、下には、お菓子の袋が落ちてたりする。
じゃあ、散らかってるのか、と言われると
机の上は、きちんと整理整頓されている。
あいつは部屋ん中も、よく分かんないんだなあ。
少し、笑みがこぼれる。
:09/03/02 17:31
:N703iD
:krcqc4nw
#222 [七瀬]
すると林原のお母さん?がお茶を持ってきてくれた、ちょうど、その時に
「ただいま。」
林原が帰ってきた。
また緊張が戻ってきた。
:09/03/02 17:33
:N703iD
:krcqc4nw
#223 [七瀬]
林原のお母さん?から事情を聞いたらしく、
「どうしたの?」
と林原が部屋に入ってきた。
緊張をほぐすため、
目の前のお茶に手をのばす。
色からして緑茶だな。
湯気が立つたびに
緑茶独特の匂いが、心地よく鼻を刺激する。
:09/03/02 17:38
:N703iD
:krcqc4nw
#224 [七瀬]
『きれーな人だね、林原のお母さん。』
まずは、別の話をしてから本題に移ろうと考えていた。
「ああ、あれおばちゃんだし。」
えぇぇっ!?
……ますます憧れる!!
:09/03/02 17:41
:N703iD
:krcqc4nw
#225 [七瀬]
もっとおばあちゃんのことを聞きたかった。
美の秘訣とか、
林原のお母さんは?
とか。
でも林原は、その話をさせてくれなかった。
:09/03/02 17:44
:N703iD
:krcqc4nw
#226 [七瀬]
露骨に嫌な雰囲気を出すのではなく、
林原が
その話を受け付けない空気を体の全体で発した。
ほんの数秒だけど、
林原の犬のような目に、そんな光が見えたことを、
私は見逃さなかった。
今、思うと
この時から、林原の少し違った感じと、
いやな予感がしてたんだ。
:09/03/02 17:51
:N703iD
:krcqc4nw
#227 [七瀬]
話題転換のため、
少し焦りつつ、私は言う。
『そういえば、林原って部活、入ってるらしーじゃん。何部なの?』
「剣道。」
そんなちっちゃい体で剣道とかするんだ。
これには素直に感心した。
でも林原はかなりご機嫌ナナメだった。
:09/03/02 17:56
:N703iD
:krcqc4nw
#228 [七瀬]
『へ、へぇー。すごいねぇ。私なんか帰宅部だよぉ。』
余計に焦る。
なんとか、持ち上げてみるが、林原はますます、仏頂面になってゆく。
なんとかしないと!
「なぁ、松田。ほんとは俺に何を聞きに来たワケ?」
とうとう、林原の堪忍袋の緒が切れたみたい。
:09/03/02 18:01
:N703iD
:krcqc4nw
#229 [七瀬]
少しばかりの沈黙。
どうする、柚子!?
こればかりは、ごまかせないっ!
林原の何もかもを、見透してしまう目が私に向けられている。
あーっ!
そんな目で見ないでよーっ!!
:09/03/02 18:04
:N703iD
:krcqc4nw
#230 [七瀬]
なあ、
と林原の口がもう一度、開きかけた時に、
『あ、あのさ』
私は、口を開く。
林原の目は、ずっと私を睨んでいる。
一時も離さずに。
:09/03/02 18:08
:N703iD
:krcqc4nw
#231 [七瀬]
『あ、あのさ。
その……、何でJ高を止めて、G高受けたの?』
恐る恐る、林原の顔を見上げる。
あ…れ?
:09/03/02 18:36
:N703iD
:krcqc4nw
#232 [七瀬]
林原は明らか、動揺していた。
大きな目を、さらに大きく広げ、
口をへの字にして固まっている。
「な、なんで今さら、そんなこと聞くんだよ。」
力なく言う、林原。
:09/03/02 18:40
:N703iD
:krcqc4nw
#233 [七瀬]
『なんでって……。
林原が言うから今日、会いに行ったの、ヒグマに。
それでヒグマが言ってた。
林原は願書提出の前日に、G高に変更したんだって。』
顔が青くなりだした林原。はじめっから、羨ましいほどの白い顔が
より、白くなった。
まるで豆腐のよう。
:09/03/02 18:46
:N703iD
:krcqc4nw
#234 [七瀬]
「帰れ。」
え?
『今、なんて?』
「帰れっつったの。」
ボソッという林原の声は、いつもの高い声じゃなくって低く、冷たかった。
:09/03/02 18:48
:N703iD
:krcqc4nw
#235 [七瀬]
『なんでっ!まだ何も聞いてない!』
少し声を荒げる。
が林原は
「帰れ!」
その何倍も声を荒げて、私に言い放った。
:09/03/02 18:51
:N703iD
:krcqc4nw
#236 [七瀬]
誰?
あの人は誰なの??
私の知ってる林原じゃない。
私は気付いたら、走って家の前まで帰ってきていた。
まだ頭が混乱してる。
ヒグマの話を聞いた後よりも、
頭痛がひどくなっていた。
:09/03/02 18:54
:N703iD
:krcqc4nw
#237 [七瀬]
……っと、こんな感じ。
こんな感じで林原と初ケンカしてしまった。
走馬灯のように思い出す。
今も、あの怖い顔した林原を鮮明に思い出せる。
思い出したくないのに。
あぁ、早く忘れたい。
:09/03/02 18:58
:N703iD
:krcqc4nw
#238 [七瀬]
学校、行きたくないな。
正確に言うと林原に会いたくない。
電車に乗る。
幸い、今日は林原と同じ電車には、ならなかった。
ふぅ。
良かったぁ。
:09/03/02 19:01
:N703iD
:krcqc4nw
#239 [七瀬]
満員電車の中、思う。
林原の家に初めて行って、初めて、部屋に入って、
念願のお母さん、
じゃなくておばあちゃんにも会って。
そして
初めて、焦ってる林原見て、
初めて、怒った顔を見た。
:09/03/02 19:05
:N703iD
:krcqc4nw
#240 [七瀬]
初めてだらけで、
ちょっとは林原のことを知れて。
幸せなはずなのに。
後者を除いて……。
:09/03/02 19:07
:N703iD
:krcqc4nw
#241 [七瀬]
行きたくない、とはいっても、
やはり学校には着いてしまう。
しぶしぶ4階へ、足を踏み入れる。
林原に会わないように、願いながら。
:09/03/02 19:10
:N703iD
:krcqc4nw
#242 [七瀬]
これまた、幸いにも林原には会わず。
教室へ入る。
一瞬、林原と喧嘩したことを忘れてしまう。
アイツがいたから。
:09/03/02 19:14
:N703iD
:krcqc4nw
#243 [七瀬]
少し震えながら、足を踏み出す。
これは恐怖で震えてるのではなく、
感動で震えてるのだと思う。
席に着く。
前にはアイツ。
:09/03/02 19:17
:N703iD
:krcqc4nw
#244 [七瀬]
次、会ったら絶対に声をかけよう、
と決めていた。
どうしよう。
いざという時に、迷ってしまう。
よしっ!
決めたぞ!!
立ち上がった。
:09/03/02 19:22
:N703iD
:krcqc4nw
#245 [七瀬]
そして深呼吸。
『あの……。』
ピンポーンパンポーン
“松田、松田。
1ー2 松田柚子ー。
大至急、職員室へ来なさい。牧田先生が呼んでいます。”
もぉー!!
:09/03/02 19:26
:N703iD
:krcqc4nw
#246 [七瀬]
『なんですか。』
「いや、昨日な飛田から電話があったんだよー。
何年ぶりだろうなぁ。
ほんと懐かしくて、つい昔話しちまったよ。」
それから散々、ヒグマとの学生時代を聞かされるはめとなった。
興味ないしー!
やっぱ面白いけど?笑
とりあえず
ヒグマのせいだーっ!!
:09/03/02 19:31
:N703iD
:krcqc4nw
#247 [七瀬]
しかも、
肝心の技術室のことは、全く会話に出てくることはなかった。
なんのために電話したのよ、ヒグマ。
役立たず。
疲れた表情で職員室から出る。
:09/03/02 19:35
:N703iD
:krcqc4nw
#248 [七瀬]
教室へ急ごうとする。
だって早く行かないと、またアイツが、どっかに行っちゃうかも、
と不安だったから。
が、階段へ体を向けた瞬間、すでに私は反対側の階段へと、向かっていた。
:09/03/02 19:39
:N703iD
:krcqc4nw
#249 [七瀬]
だって、
林原が登校して来てたから。
びっくりした。
林原が、こっちを見た気がしたから。
気付いてないよね?
:09/03/02 19:41
:N703iD
:krcqc4nw
#250 [凛]
気になるーっ><
まじおもしろい♪
感想板ってありますか?
:09/03/02 21:51
:N706i
:FIoHv/gg
#251 [七瀬]
毎回ありがとっ(´∀`)
やる気でます↑↑
感想板って、
どうやって作るんですか?
:09/03/02 22:23
:N703iD
:krcqc4nw
#252 [凛]
皆さんは総合の方で
つくっておられますよ♪
:09/03/02 22:27
:N706i
:FIoHv/gg
#253 [七瀬]
教室へと戻り、
ホッと一息。
その一息は、
なんとか林原に会わずに済んだのと、
ちゃんとアイツがいたから。
やっぱり窓の外を見ている、名前も知らないアイツ。
よし!
今日は名前を知ることが目標!!
:09/03/02 22:43
:N703iD
:krcqc4nw
#254 [七瀬]
一時限目が始まる。
まだ得意な数学だけど、長く感じた。
早く終わってよーっ!!
休み時間が待ち遠しくて仕方ない。
だって、こんな近いのに、声もかけらんない。
:09/03/02 22:54
:N703iD
:krcqc4nw
#255 [七瀬]
凛さん、ありがとっ!!
えーと、作ってみようと思ったんだけど、
ちょっと待たなくてはいけないみたいなので、
また明日、やってみますね(●´∀`●)/
作ったら必ずお知らせします。
とりあえず今は、更新を頑張るよーっ(o>ω<o)
:09/03/02 22:58
:N703iD
:krcqc4nw
#256 [七瀬]
終わりのチャイムが鳴る。
「ありがとうござました。」
授業終了のあいさつでさえ、うざったく感じる。
先生が教室から出て行くと、すぐさま、アイツも席を立った。
どこいくんだろう?
:09/03/02 23:02
:N703iD
:krcqc4nw
#257 [七瀬]
しばらく後を付いていくと、
中庭?
そいつは中庭へ向かって行く。
私も追い掛ける。
私はストーカーか?
と少し、自虐的な笑みをこぼす。
するとヤツは中庭の、一番端っこのイスに腰掛けた。
:09/03/02 23:06
:N703iD
:krcqc4nw
#258 [七瀬]
何か見てる?
アイツは下の方を、ジッと見ている。
何を見てるんだろう。
気になる……。
気になる!
気になる!!
私は彼に近づいた。
:09/03/02 23:09
:N703iD
:krcqc4nw
#259 [七瀬]
よほど熱心に見ているのか、私の近づく気配にまったく気付かない。
3メートルほどの距離になると、さすがに気付いたみたい。
私の方に目を移動させ、すぐに、下に戻す。
あの時と同じ。
初めて会った、入試の実技テストの時と……。
私は胸が高鳴っていくのを感じた。
:09/03/02 23:14
:N703iD
:krcqc4nw
#260 [七瀬]
私がずっと見てるのが、気味悪いのか、
ヤツは立って中庭を出ようとした。
こっちに歩いてくる。
すれ違う。
『あのっ!』
たまらず声を掛けてしまった。
:09/03/02 23:17
:N703iD
:krcqc4nw
#261 [七瀬]
「何?」
初めて聞く声。
深みがあって、ずっと聞いていたくなる。
そして、その深みのさらなる奧に
温かさがあるような声だった。
が、その反面、
目はかなり冷たかった。
:09/03/02 23:20
:N703iD
:krcqc4nw
#262 [七瀬]
そのギャップに少し、戸惑いながら、私は聞いた。
『あの、名前…。
名前、教えて下さい!』
頑張ったぞ、私!!
と自画自賛していると、
「あのさぁ、人に名前を聞く時はさ、
まず自分から名乗るってのが常識なんじゃないの?」
:09/03/02 23:25
:N703iD
:krcqc4nw
#263 [七瀬]
と、またまた冷たい目が私を惑わせる。
なんかムカつくかも。
ちょっとヤなヤツ?
いやいや、私が悪いのね?
一人、心の中で考える。
なんか思ってたのと違う。
:09/03/02 23:29
:N703iD
:krcqc4nw
#264 [七瀬]
すると、何も言わずに立ち去ろうとする、アイツ。
待って、待って!!
『柚子っ!松田柚子!!』
あわてて言う。
すると、男は振り向いた。
まぶしい。
:09/03/02 23:32
:N703iD
:krcqc4nw
#265 [七瀬]
太陽が急に差し込んできて、視界を邪魔する。
でも見えた。
私には見えた。
太陽に負けないくらい、まぶしい彼の笑顔が。
冷たい目とは、全然違っていて、
声と比例するほど温かい笑顔。
:09/03/02 23:35
:N703iD
:krcqc4nw
#266 [七瀬]
そんな温かすぎる笑顔で、
「ふーん、よろしくな。
ぽんずちゃん。」
と意地悪く言って、去って行く背中を
ただただ見つめていた。
呆然と立ち尽くして。
:09/03/02 23:38
:N703iD
:krcqc4nw
#267 [七瀬]
ぽんず……ちゃん?
ぽんずって何?
あぁ、あの酸っぱくて、醤油とはまた違った奴かぁ。
豆腐サラダにかけると美味しいよね〜。
……じゃなぁーいっ!
ぽんずちゃんの
“ぽんず”がポン酢ということを理解するのには、
かなり時間がかかった。
:09/03/02 23:43
:N703iD
:krcqc4nw
#268 [七瀬]
どうも、お待たせしました。
七瀬の感想板ができましたヽ(´▽`)/
また感想ちょーだいね!
ごめんなさい(*с*)
貼り方が分かりません。
総合の方で
“七瀬 感想板”で検索していただけると、見つかると思います。
これからも長いお付き合いをお願いしますm(__)m
:09/03/02 23:52
:N703iD
:krcqc4nw
#269 [凛]
:09/03/02 23:56
:N706i
:FIoHv/gg
#270 [七瀬]
あくびが出る。
そんな今は、
2時間目の社会。
あくびで涙目になりながら、前のアイツを見る。
さっきの意地悪顔に似合わず、
マジメにノートをとっている。
そんな私は、アイツとは正反対。
先生は耳をするりと、
通り抜けてゆく。
:09/03/03 18:48
:N703iD
:Fiiu.ZXI
#271 [七瀬]
私の頭の中は、謎でぎゅうぎゅうだった。
なんで、ポン酢ちゃん?
あと、
あなたの名前は?
こんなことが、ぐるぐると脳裏を回っている。
あれから
ずっと、だ。
:09/03/03 18:52
:N703iD
:Fiiu.ZXI
#272 [七瀬]
マジメな姿を見ていると、無性に邪魔をしたくなってきた。
悪魔が私の心に芽生えた。
“ねぇ、ねえ。”
とでも、言うように
私はシャーペンでアイツの背中をつつく。
あれ、
ムシですか。
:09/03/03 18:59
:N703iD
:Fiiu.ZXI
#273 [七瀬]
まるで、何も知らないように、ノートを書き続けている。
気付いてないのかな?
いいや、そんなはずはない。
もっと強く押してみる。
知らんぷりしてるな、こいつ。
腹が立ってきた。
:09/03/03 19:01
:N703iD
:Fiiu.ZXI
#274 [七瀬]
粘り続けること、約5分。
まだ知らん顔するアイツ。
そろそろ、手も疲れてきた。
もう諦めよ。
また休み時間に声かけよ。
すると、
スッとアイツの手が後ろに伸びてきて、
私の机に何かを置いた。
:09/03/03 19:06
:N703iD
:Fiiu.ZXI
#275 [七瀬]
なんだろ?
すると、そこにはノートの切れ端をクシャクシャに丸めたものがあった。
それを開いてみる。
“まだ何か用?”
と、それだけ。
さっそく返事を書く私。
手紙を書いてくれただけのに、心は笑っていた。
:09/03/03 19:10
:N703iD
:Fiiu.ZXI
#276 [七瀬]
“名前、教えてよ。”
“ひつけーな。ぽんずちゃんには関係ないだろ?”
“ぽんずじゃないし!なんで教えてくんないの?”
“個人情報保護法に基づいて。
てかそんなに名前、知りたがるなんて、俺のこと好きなの?”
“ぜんっぜん!!”
“またまた、強がっちゃってー。”
:09/03/03 19:15
:N703iD
:Fiiu.ZXI
#277 [七瀬]
こんな、やりとりが続く。
はぁ、だめだこりゃ。
すぐ話題を反らそうとするアイツ。
そして、それに流されてしまう私。
これじゃキリないよ。
教えてもらえる空気じゃないし。
そんなうちに、2時限目も終了。
:09/03/03 19:20
:N703iD
:Fiiu.ZXI
#278 [七瀬]
『ねぇ!なんで教えてくんないの、名前。』
「ん、そのほうが面白いでしょ。」
こいつは私以上に悪魔が心に住み着いていた。
もう、あの温かい目はしないのかな?
また、してよ。
:09/03/04 12:43
:N703iD
:xIwV6ta2
#279 [七瀬]
結局、教えてもらえないまま学校が終わってしまった。
林原とも、会わなかった。
が、私の謎は思わぬ所で解消されることになる。
家に到着。
:09/03/04 12:47
:N703iD
:xIwV6ta2
#280 [七瀬]
ただいま、
と言おうとしたけれど、
下を見ると、お母さんの靴がない。
買い物でも言ってるのかな?
お姉さんはまだ学校だな。
これはチャンス!!
昨日の夕飯のおかずを、
つまみ食いしようとキッチンへ
ガチャ
:09/03/04 12:51
:N703iD
:xIwV6ta2
#281 [七瀬]
「柚子ー。帰って来てるのー?」
チッ。
心の中で舌打ちをする。
「柚子ー。ちょっと来てー。」
お母さんの大声は静かな家に響き渡る。
2階の自分の部屋にいたら、聞こえないフリも出来たけれど、
台所は玄関のすぐ近く。
:09/03/04 12:57
:N703iD
:xIwV6ta2
#282 [七瀬]
もう!!
エビフライに伸びていた私の手は、それにたどり着くことはなく、
お母さんの元へ。
お母さんは、すごい数のビニール袋を持っていた。
「柚子っ!やっと来た。
はい、これを台所に運んで。」
一つ一つの中身も重たい。
お母さんこれ全部、一人で運んだワケ?
さすが怪力。
:09/03/04 13:03
:N703iD
:xIwV6ta2
#283 [七瀬]
運び終わると、
次は「あの棚になおして。」「冷蔵庫に入れて」
と、散々コキ使われた。
「これは使うから、冷蔵庫に入れなくていいわ。」
『わかった。』
と目線を向けた。
“ゆずポン酢”
:09/03/04 13:07
:N703iD
:xIwV6ta2
#284 [七瀬]
ゆず…ポン酢。
唖然とする。
「どうしたの、柚子。」
「あの、これは……。」
「今日はゆずポンが安かったのよー。
いつもは違うのだけど、たまにはいいでしょ?」
ゆずポン酢を私は初めて見た。
:09/03/04 13:12
:N703iD
:xIwV6ta2
#285 [七瀬]
「もう、ママがいつもいつも、一番安いポン酢買ってるから柚子がゆずポンも知らないんだからなー。」
とお父さんが上機嫌でいう。
「だって、10円がもったいないんだものー。」
とニコニコ答えるお母さん。
この二人のラブラブぶりには、
娘の私たちはいつも恥ずかしく、寒気がする。
:09/03/04 13:18
:N703iD
:xIwV6ta2
#286 [七瀬]
この時だけは、お姉さんと以心伝心できる。
「ってゆーか、柚子はゆずポン知らなかったんだ。」
『うん。お姉さんは知ってるの?』
「昔はうちも、ゆずポンだったしねー。」
そうなんだ。
「パパが、ゆずポン派だったしね。」
:09/03/04 13:22
:N703iD
:xIwV6ta2
#287 [七瀬]
お姉ちゃんは続ける。
「でも、いつからか10円安いやつになってた。」
声を潜め、私に耳打ちするお姉ちゃん。
「お父さんは全く気付かないしね。
ほら、うちのお父さんは味オンチじゃん?」
そうだったんだ。
「柚子の名前の由来はゆずポンから来てるんだぞー。」
:09/03/04 13:27
:N703iD
:xIwV6ta2
#288 [七瀬]
と少し酔ってるお父さんは、いつものおっとり口調ではなく、さらりと言った。
が、私には衝撃的な事実だった。
私の名前って一体なんなのよ〜!!
「やだ、あなたったら〜!」
お母さんは笑ってる。
さっきまで以心伝心だったお姉ちゃんまでも、大笑い。
:09/03/04 13:32
:N703iD
:xIwV6ta2
#289 [七瀬]
そんな、ちょっと複雑な真実を知った私。
初めて食べたゆずポンの味は、いつものやつよりも濃くって、
今の私には苦かった。
あれから、お風呂にも入って、
今は髪を乾かして、クシで、とかしていた。
:09/03/04 13:37
:N703iD
:xIwV6ta2
#290 [七瀬]
鏡に写った自分を見る。
短い髪。
幼稚園の時は背中まで、あったのになあ。
でも小学校にあがってから、ずっとこのショートヘアー。
そして、少し小麦色の肌。
私には、これがコンプレックスだった。
:09/03/04 13:42
:N703iD
:xIwV6ta2
#291 [七瀬]
だって、お母さんもお父さんもお姉ちゃんも、みんな真っ白な肌。
私だけ。
小学生の時、おじいちゃんに聞いたことがある。
『どうして私の肌はお母さん達と違うの?』
「柚子は、わしに似たんだなぁ。」
おじいちゃんは、小麦色の顔で優しく言った。
:09/03/04 13:50
:N703iD
:xIwV6ta2
#292 [七瀬]
この話には続きがある。
この後、おじいちゃんは
「それに柚子とわしの肌はなぁ、太陽をたくさん浴びた証拠なんだよ。
たから、ちっとも恥ずかしがることはない。」
と言った。
これで私のコンプレックスは消えた。
……はずなのに。
またあの当時の、苦しい気持ちが蘇ってきてる。
:09/03/04 13:56
:N703iD
:xIwV6ta2
#293 [七瀬]
なんでだろう。
「どしたの?柚子。
鏡ばっかり見て、好きな子でも出来たの?」
いきなりお姉ちゃんが現れた。
『もう!からかわないでよ!!』
私は、部屋に戻り、ベッドに倒れこんだ。
:09/03/04 14:01
:N703iD
:xIwV6ta2
#294 [七瀬]
さっきのお姉ちゃんの言葉が耳を離れない。
“好きな子でも出来たの?”
ふと、アイツのことを思い出す。
アイツもきれいな小麦色だったなあ。
:09/03/04 14:05
:N703iD
:xIwV6ta2
#295 [七瀬]
今度こそ!
今度こそ、名前を知る!!
固く決心して、元気良く、家を出る。
んー、朝の空気が清々しいなあ。
駅へと、私の足はルンルンと歩いて行く。
アイツのことを考えると、自然と楽しくなる。
:09/03/04 14:32
:N703iD
:xIwV6ta2
#296 [七瀬]
が、
私の気持ちは、一気に暗くなった。
だって、
駅に林原がいたから。
:09/03/04 14:34
:N703iD
:xIwV6ta2
#297 [七瀬]
切符を買っているらしい林原は、私には気付いていない。
なんか懐かしい。
一昨日、会ったのになぁ。
私が2日前に見た林原は、普段の林原じゃなかった。
だから今見てる、いつもの林原がとても懐かしく感じたかな。
息が苦しくなった。
:09/03/04 14:38
:N703iD
:xIwV6ta2
#298 [七瀬]
私はやっぱり林原に声をかけられず仕方なく一本、後の電車に乗った。
「おーい、遅刻だぞ。」
教室に着くころには、1時限目の授業を5分、過ぎたところだった。
技術の授業だったみたいでマッキーの声が私に向けられる。
『すいません。』
私は席に着いた。
:09/03/04 14:45
:N703iD
:xIwV6ta2
#299 [七瀬]
私はボンヤリと朝のことを考えていた。
前にアイツがいるのに、ちっとも、心は弾まない。
どうしちゃったんだろ、私?
自分でもわからない。
マッキーの話は相変わらずなのに
私は全然、頭に入ってこない。
:09/03/04 14:49
:N703iD
:xIwV6ta2
#300 [七瀬]
“どうかしたのか?”
そんな手紙が前から、送られてきた。
アイツが私を見ている。
あの温かい目で。
なんでもないよ、
という風に首を振った。
心配してくれてるのかな?
ちょっぴり元気が出た。
:09/03/04 14:53
:N703iD
:xIwV6ta2
#301 [七瀬]
マジメに授業を受けよう。
不謹慎だけど、
アイツのおかげで、そう思えた。
ノートを開く。
シャーペンで、マッキーの乱雑な字を移し始める。
あ、間違えた。
消しゴムを出そうと、筆箱をさぐる。
あれ?
:09/03/04 14:57
:N703iD
:xIwV6ta2
#302 [七瀬]
消しゴムがない。
もぉー!
どっかに落としたのかな?
そんなことを考えてると、
コロン
と私の目の前に消しゴムが転がってきた。
:09/03/04 14:59
:N703iD
:xIwV6ta2
#303 [七瀬]
アイツの消しゴム。
すぐに前を向いちゃうから顔は見えなかったけれど、
あの温かい目をしてるんだと、見なくてもわかった。
ただ、消しゴムを貸してくれただけなのに、
涙が出そうになった。
:09/03/04 15:03
:N703iD
:xIwV6ta2
#304 [七瀬]
一言でも話すと、涙が溢れそうだから、私は何も言わず、黙ってた。
消しゴムを見ると、
“八田歩志”
と書いてあった。
きれいな字……。
:09/03/04 15:06
:N703iD
:xIwV6ta2
#305 [七瀬]
なんて、読むんだろう。
はった……
ほし?
ん〜、わかんない。
そんなことを考えていて、結局、マジメに授業を受けれずに終わってしまった。
アイツのせいだよ、もう!
と思いながらも、うれさが心を占めていた。
:09/03/04 15:12
:N703iD
:xIwV6ta2
#306 [七瀬]
授業が終わって、私はアイツに話かける。
『ね、ねぇ!
消しゴムありがと。』
あーっ!!
私ってなんで、こんなにかわいくないんだろう。
「どーいたしまして。」
そんな私の反応を楽しむようなアイツの目つき。
:09/03/04 15:29
:N703iD
:xIwV6ta2
#307 [七瀬]
消しゴムを返すと、
「俺の名前、知られちゃったな。」
と言うアイツ。
『う、うん。
えっと、そのはった…、
ほし??』
「あゆし。」
『え!?』
「あ・ゆ・し。
歩く志って書いて、あゆしって読むの。」
:09/03/04 15:34
:N703iD
:xIwV6ta2
#308 [七瀬]
立ち上がって、どっかに行こうとするアイツ。
じゃなくて
八田歩志(ハッタアユシ)……。
『ちょっと!
あ、あのほんとにありがとう、消しゴム。』
「さっきから、ありがとう言いすぎ。」
笑って言う歩志。
今度は、かわいく言えたかな?
:09/03/04 15:39
:N703iD
:xIwV6ta2
#309 [七瀬]
名前…、
知ることが出来た。
うれしい。
歩志のことを考えると、いちいち心臓がうるさくって困る。
これじゃ、心臓が保たないよ。
なんて、
一人で考えて、顔が熱くなる。
:09/03/04 15:44
:N703iD
:xIwV6ta2
#310 [七瀬]
お弁当の時間がやってきた。
もちろん林原とは気まずいし、一緒に食べてない。
アイツはどこで、誰と食べるんだろう?
またまた私はストーカーになることにした。笑
:09/03/04 15:49
:N703iD
:xIwV6ta2
#311 [七瀬]
歩志の後を着いていこう。
「何着いてきてんの?」
バレちゃいました。
廊下を歩いていた、歩志は軽くにらみながら言う。
蛇に睨まれるカエル
ってこういうこと?
:09/03/04 16:41
:N703iD
:xIwV6ta2
#312 [七瀬]
「俺と、ごはん食べたいなら、そう言えば?
ストーカーぽんずちゃん。」
私はぽんずちゃんから
ストーカーぽんずちゃんに
昇格?した。
何か言い返したかったけれど、アイツの言うとおりなので、黙って着いていった。
悔しいけど。
:09/03/04 16:44
:N703iD
:xIwV6ta2
#313 [七瀬]
着いた先は、中庭。
相変わらず、男だらけ。
お日さまいっぱいの光が差し込んでいる。
花草もたくさんで、楽しくなる。
人気なワケは分かる。
でも女の私には、かなりキツいし男臭い。
:09/03/04 23:00
:N703iD
:xIwV6ta2
#314 [七瀬]
そんなことは構わずに歩志は、どんどん奧へと進んで行く。
ちょっとぐらい待ってくれてもいいのに。
冷たい奴。
そういえば、昨日もここに来てたよね。
なんで、わざわざこんなとこで、
ごはんを食べるんだろう。
食欲湧かないじゃん。
:09/03/04 23:04
:N703iD
:xIwV6ta2
#315 [七瀬]
すると、歩志はまた一番端っこのイスに座って、お弁当を食べ始めた。
また何か見てる。
私も歩志の隣にちょこんと座った。
『何、見てんの?』
無視ですか、歩志クン。
:09/03/04 23:07
:N703iD
:xIwV6ta2
#316 [七瀬]
私は、仕方なく歩志の真剣な目線と同じところに目を向ける。
技術室?
歩志の目先には、窓から見える技術室。
中では機械たちが、規則的に動いてるのが、ちょっとだけ見えている。
:09/03/04 23:11
:N703iD
:xIwV6ta2
#317 [七瀬]
すると、しばらくして機械は止まった。
先生たちが機械の様子を見ていることから、
定期検査でも、しているんだろうか。
私は初めて見る技術室に、胸が高鳴った。
歩志は、機械が止まったのを確認すると、
お弁当に目を戻した。
:09/03/04 23:16
:N703iD
:xIwV6ta2
#318 [七瀬]
『ね、なんで技術室見てたの?』
「…。」
またまた無視。
『ねぇ!ねぇってば〜!!』
ムキになる私。
そんな私を、スルーし続ける歩志。
『もう!歩志!!なんで無視するのよ!』
とうとうキレてしまった。
:09/03/04 23:20
:N703iD
:xIwV6ta2
#319 [七瀬]
「プッ、ハハハハハ…。」
いきなり笑いだす歩志に、訳の分からない私。
何笑ってんの、こいつ!?
余計に腹が立つ。
私はすねて歩志に背中を向けた。
「ごめんごめーん。
いや〜。初めて俺の名前呼んだなぁ、と思って。」
振り返って、歩志を見る私。
:09/03/04 23:25
:N703iD
:xIwV6ta2
#320 [七瀬]
「なんなの、その目。
そんな怒らなくってもいーでしょ?ぽんずちゃん。」
歩志を睨んだ。
すると歩志は私の顔に、これでもか!
ていうくらいに顔を近付け言った。
「ちょっと意地悪してみたくなっただけ。」
こいつってやつは〜!!
:09/03/04 23:29
:N703iD
:xIwV6ta2
#321 [七瀬]
私は多分、ゆでタコみたいに真っ赤だったと思う。
「かーわいっ」
そういってアイツは、顔を戻し、またお弁当を食べ始めた。
なんなんだ、アイツは。
ドキドキうるさい胸。
なんなんだ、この気持ちは。
:09/03/04 23:33
:N703iD
:xIwV6ta2
#322 [七瀬]
あれから私は何も言えなくって、
時間だけが過ぎた。
歩志も何も言わずに、
ドキドキしっぱなしの私を見て、喜んでた。
アイツは本当の悪魔だ。
そのおかげで、私はお弁当の味がよく分からなかった。
:09/03/05 16:17
:N703iD
:k5.OS8TM
#323 [七瀬]
6限目の技術。
マッキーが私を睨んだ。
殺されるかと思った。
今も生きた心地がしない。
とりあえず
生きているけど……。
:09/03/05 16:22
:N703iD
:k5.OS8TM
#324 [七瀬]
マッキーは教室に入ってきた時から、異様な雰囲気だった。
日直が起立を言おうとした時、
「この中に俺の授業に文句がある奴がいるようだ。」
と言った。
教室が凍った瞬間だった。
ヤバっ!
私はマッキーから顔を背ける。
:09/03/05 16:26
:N703iD
:k5.OS8TM
#325 [七瀬]
顔を背けていても、マッキーが私を睨んでいるのが分かる。
マッキーの眼力は強烈だ。
うぅ〜。
どうしよぉ。
ビビりまくる。
だって、めちゃくちゃ怖いんだもん!!
:09/03/05 16:29
:N703iD
:k5.OS8TM
#326 [七瀬]
「そいつは、俺が技術室に連れていかないのが気に入らないらしい。」
もう終わった。
私の人生は終わってしまった。
「…が、
俺に意見するなんて、良い根性しているじゃないか。」
あれ?
助かった??
:09/03/05 16:44
:N703iD
:k5.OS8TM
#327 [七瀬]
「その根性に免じて、今回は許してやろう。」
とりあえず助かったみたい。
やっぱ技術室には連れてってくれないのかな?
ま、命があっただけ良かったよね。
贅沢は止めとこ。
:09/03/05 16:47
:N703iD
:k5.OS8TM
#328 [七瀬]
「だから今日は、お前らに技術室に連れてってやる、チャンスをやろう。」
チャ…ンス……?
うそ!
あのマッキーが?
やった、やったー!!
教室からも、嬉しそうな声が飛びかっていた。
教室中が歓喜に浸っていた。
なのに…。
:09/03/05 16:52
:N703iD
:k5.OS8TM
#329 [七瀬]
マッキーは何かを配り始めた。
前から後ろの私の席まで、送られてくる。
鉄?
それは長さ50センチくらい、太さは5センチくらいの鉄の棒だった。
なにこれ。
:09/03/05 17:15
:N703iD
:k5.OS8TM
#330 [七瀬]
みんなポカーンとしてる。
私もその一人。
「お前らは、これで“ぶんちん”を作ってくれ。」
は?
ぶんちん……??
ぶんちんって
何ですか?
:09/03/05 17:19
:N703iD
:k5.OS8TM
#331 [七瀬]
前の歩志は真剣な様子。
『“ぶんちん”ってなぁに?』
「は?お前、ぶんちんも知らねぇの?」
『…うん。
だから!“ぶんちん”って何なのよ!!』
「小学生の時に使ったろ。書道の時間に。」
呆れたような歩志。
:09/03/05 17:52
:N703iD
:k5.OS8TM
#332 [七瀬]
あぁ、なんだ。
あの書道の時に、紙がズレないようにするために、置くやつのことかあ。
歩志に言われ、
ようやく“ぶんちん”という平仮名が
“文鎮”という漢字になった。
…でも、どうやって作るんだろう。
新たな謎が生まれた。
:09/03/05 17:57
:N703iD
:k5.OS8TM
#333 [七瀬]
「じゃ、今日はそれをどうやって文鎮にするのか、考えてろ。
考えが固まったら、俺のところへ来い。
技術室へ連れてってやるよ。」
マッキーはそれだけ言うと、出ていってしまった。
どうしよ。
全然わかんない。
:09/03/05 18:02
:N703iD
:k5.OS8TM
#334 [七瀬]
私は机の上で、ただの鉄を転がしてみる。
丸まっていて、よく転がる。
これを四角くしなきゃなぁ。
それに取っ手もいる。
その前に、もっと短く細くしなくっちゃ。
これじゃ、長すぎる。
考えれば考えるほど、やらなければならない試練が増えてゆく。
:09/03/05 18:05
:N703iD
:k5.OS8TM
#335 [七瀬]
20分ほど、鉄の棒とにらめっこ。
ダメだ。
ほんとわからない。
周りを見てみると、みんなも同じのようだ。
ジーっと、にらめっこ中。
少し安心した。
でも前のヤツは、周りと違って、分かったように余裕な感じ。
:09/03/05 18:08
:N703iD
:k5.OS8TM
#336 [七瀬]
『ねえ、分かったの?文鎮の作り方。』
「ん、まぁ大体な。」
『どうやって!?』
「そんなもん自分で考えろ。」
冷たいなあ。
でもうらやましい。
ほんとに分かったのかな?
:09/03/05 18:12
:N703iD
:k5.OS8TM
#337 [七瀬]
『鉄を溶かすの?』
「それじゃ、取っ手が出来ないじゃん。」
『じゃあ打つの?』
「それじゃ、やっぱり一回は溶かさないとダメだしー。」
はぐらかす歩志。
『もう、教えてよっ』
:09/03/05 18:14
:N703iD
:k5.OS8TM
#338 [七瀬]
「しょーがないなぁ。教えてあげる。
みんなには内緒だよ?ぽんずちゃんだけだから。」
うん、と頷く。
「削るんだよ。」
削る…?
:09/03/05 18:43
:N703iD
:k5.OS8TM
#339 [七瀬]
『削る……
ってどうやって?』
「もー、教科書185ページ開いてみ?」
『……教科書忘れた。』
「はぁ。」
歩志は本当に呆れたように、机に手を入れた。
「はい、どうぞ。」
『…ありがと。』
歩志の出してくれた教科書を見る。
:09/03/05 20:53
:N703iD
:k5.OS8TM
#340 [七瀬]
そこには、カンナの写真。
カンナは木の面を削って、平らにする大工道具。
でも、これは鉄だよ?
というように、歩志を見る。
「鉄とかの金属を削るカンナもあるんだよ。」
私の思いを感じ取ったらしく、そう教えてくれた。
そうなんだ。
:09/03/05 23:56
:N703iD
:k5.OS8TM
#341 [七瀬]
私は木を切ったり、それで何かを作ったりするのは得意。
だけどそれ以外は、ほとんど無知で、こんな道具があることさえ知らなかった。
機械について勉強したいと思ったのも、おじいちゃんに影響されただけだし。
恥ずかしくなる。
こんなことで、技術に自信があったなんて。
:09/03/06 00:01
:N703iD
:T7heHAt6
#342 [七瀬]
でも、
なんでこいつは、こんなに詳しいんだろう。
学校を1日も休んでいない私と、
1週間以上、出遅れている歩志。
何が、こんなにも差をつけるのだろう。
思い切って聞いてみる。
『なんで、こんなに詳しいの?』
歩志の切れ長の目をジッと見つめた。
:09/03/06 00:06
:N703iD
:T7heHAt6
#343 [七瀬]
歩志は見返してくる。
思わず吸い込まれそう。
見とれていると、
「俺んち、
オヤジが大工。」
へぇ、そうなんだ。
「学校に1週間以上、来れなかったのも、
オヤジを手伝ってたから。」
歩志はすごい。
:09/03/06 00:11
:N703iD
:T7heHAt6
#344 [七瀬]
「うちのオヤジ、今近所の家を建て直してんの。
昔、オヤジが建てた家なんだけど、だいぶボロが来ちまったみたいで。
そんで、人手が足りなかったから俺が手伝ってたワケ。」
そういう歩志は、とても誇らしげだった。
『自慢のお父さんなんだね。』
私は優しい気持ちがあふれ出て、
自然と口が動いていた。
:09/03/06 00:15
:N703iD
:T7heHAt6
#345 [七瀬]
歩志はちょっと驚いてたけど、
「まーな。」
と笑った。
あの温かい目で。
まるで、パズルのピースが一つ一つ埋まっていくように、
歩志のことを知ると、
私まで心が温かくなる。
なんか幸せ。
:09/03/06 00:19
:N703iD
:T7heHAt6
#346 [七瀬]
「だけど、
うちのオヤジは頑固者で、未だに機械もほとんど使わず、手作業でやってる。
だから、俺がオヤジのために勉強しよっかなと思ってこの学校に入った。」
歩志は照れてた。
「ま、オヤジには
そんなもんはいらーん!
って怒られちまったけどな。」
白い歯を見せて、ニカッと笑う歩志。
:09/03/06 00:23
:N703iD
:T7heHAt6
#347 [七瀬]
それから、やり方の分かった私たちは、マッキーの元へ。
「ほぉ、本当に分かったのか?」
マッキーは信じられない様子。
私は念願の技術室へ行けるので、心が浮き足立っていた。
歩志は真剣だった。
:09/03/06 07:10
:N703iD
:T7heHAt6
#348 [七瀬]
『わー、めちゃくちゃ広ーい。』
「当たり前じゃないか、松田。
ここには、たくさんの機械があるんだからな。」
『へぇー!!』
私は機械に手を触れようとした時、
「こらっ!」
マッキーの怒声。
「勝手に触んな!」
『ごめんなさーい。』
:09/03/06 07:15
:N703iD
:T7heHAt6
#349 [七瀬]
「お前ら、どうやって文鎮を作る気?」
歩志の言う奴だと、機械は一切使わないしなぁ。
なんかつまんない。
嘘ついちゃおっかなぁ。
『はい、機械を使って……』
「カンナ貸してください。」
歩志の声に遮られた。
:09/03/06 07:19
:N703iD
:T7heHAt6
#350 [七瀬]
マッキーの目が光った。
「ちょっと待ってろ。
松田、何も触んじゃねぇぞ。」
『は、はいっ!!』
マッキーは技術室の奧へと消えてった。
「嘘、つくなよ。」
歩志の冷たい目。
『…ごめんなさい。』
:09/03/06 07:22
:N703iD
:T7heHAt6
#351 [七瀬]
すると、笑顔に戻って
「安心しろ。すぐに俺が、技術室に行けるようにしてやるよ。」
ドキッ!
心臓が一気に跳ねた。
『わ、私も頑張るし!』
「カンナ使うの初めてでしょ?
ぽんずちゃんには難しいよ。」
:09/03/06 07:27
:N703iD
:T7heHAt6
#352 [七瀬]
『木には使ったことあるもん。』
「あー、全然違うよ。
ザラザラしてるし、もっと堅いし。」
なんか意地悪?
冷たくなったり、
優しくなったり、
意地悪になったり…。
歩志は忙しいなぁ。
と笑う私。
:09/03/06 07:31
:N703iD
:T7heHAt6
#353 [七瀬]
「何笑ってんの?」
『べーつにっ!』
「本当になんで?」
『だーからっ!何でもないって!!』
今度は私が意地悪をしてやる。
ざまあみろ。笑
歩志は自分はするのに、されたら必死。
:09/03/06 07:34
:N703iD
:T7heHAt6
#354 [七瀬]
しばらくして、マッキーがカゴを持って出てきた。
「正解。」
そういってマッキーは、私たちを連れて、技術室から出た。
どこに行くんだろう?
連れていかれた先は、体育館だった。
:09/03/07 01:46
:N703iD
:ml8DPkWM
#355 [七瀬]
「ここで作業しろ。」
とマッキーが言った。
『えーっ!技術室でじゃ、ないの!?』
「ボケ。
大切な機械がたくさんあるところにお前らを放っておけるか。」
『そんなぁ。』
私とマッキーが、こんなやりとりをしている中でも、
アイツは真剣な眼差し。
:09/03/07 01:52
:N703iD
:ml8DPkWM
#356 [七瀬]
「じゃーなぁ。」
マッキーは、そう言って出ていった。
もう!!
とふてくされる。
私が、そんなことをしている間にも、歩志は作業に取り掛かっていた。
さっきと違って、全然しゃべらない。
私もやろうかな。
歩志の横に座った。
:09/03/07 01:58
:N703iD
:ml8DPkWM
#357 [七瀬]
…といっても、
やり方分かんないし!
仕方なく、歩志の作業を観察する。
やっぱりカンナで鉄を削ってる。
よぉーし!
私もやってみよう!!
見よう見まねで、鉄とカンナを手に持つ。
頑張るぞぉー!
:09/03/07 02:01
:N703iD
:ml8DPkWM
#358 [七瀬]
1時間…、
いや2時間が経ったんじゃないだろうか。
私の作業は全然、進んでいない。
ってゆーか飽きた。
だって、ずーっと同じことばっか、してるんだもん。
ずっと削りっぱなし。
もう手が痛い。
肩も凝ったし。
:09/03/07 02:04
:N703iD
:ml8DPkWM
#359 [七瀬]
これ、かなり地味で地道な作業。
ほんとに、ただ削るだけ。
ほんとに堅くって、木と全然違う。
もうやだ。
横の歩志を見ると、まだやってる。
飽きないのかな?
手は痛くならないの?
肩は?
:09/03/07 02:09
:N703iD
:ml8DPkWM
#360 [七瀬]
そんな疑問が生まれた。
きれいな横顔に汗が、滝のように流れている。
私は拭いてあげたくなったけれど、出来なかった。
歩志は、私とは違う。
劣等感を覚えた。
軽い嫉妬みたいな感情。
でも、甘くてほろ苦さが胸に染みた。
:09/03/07 02:13
:N703iD
:ml8DPkWM
#361 [七瀬]
「おーい。起きろ。」
『んっ…』
ん!?
「お前、いつまで寝てんの?」
『歩志…。あれ、私……?』
「あれから、寝てたんだよ。ずーっと。」
:09/03/07 17:18
:N703iD
:ml8DPkWM
#362 [七瀬]
『えぇぇえ!?』
私は起き上がる。
体育館の外は、日が暮れて暗くなっていた。
『今、何時…?』
「7時過ぎ。」
『うそっ!!早く帰らないと!』
慌てて起き上がる。
っていうか、
『なんで起こしてくれなかったの!?』
:09/03/07 17:23
:N703iD
:ml8DPkWM
#363 [七瀬]
「だって、俺は作業に没頭してたし。
お前も気持ち良さそうに寝てたし。」
うぅ…。
今から帰ったら、8時半過ぎるじゃん。
「しゃーねぇなあ、送ってやるよ。」
『え、いいの!?』
「うん。」
こうして歩志に送ってもらうことになった。
:09/03/07 17:29
:N703iD
:ml8DPkWM
#364 [七瀬]
二人で学校を出た。
「すごい爆睡してたね、ぽんずちゃん。
ヨダレだらだら。」
『もうっ!言わないでよっ!!』
駅に着いた。
「ぽんずちゃんは、どこで降りるの?」
『私は、この駅。』
切符売場の上の表に指を差して言った。
:09/03/07 22:44
:N703iD
:ml8DPkWM
#365 [七瀬]
「じゃあ、俺と反対方向じゃん。」
『へぇ、送ってくれてありがとう。
じゃっ、また明日!』
切符を機械に通そうとした瞬間……。
「待って!」
振り向くと、
「家まで、送るよ。」
:09/03/08 01:03
:N703iD
:PY5xI9.2
#366 [七瀬]
『え…。』
「送るよ。」
『い、いいよ!
悪いし!!歩志が帰るの遅くなっちゃうよ。』
すると歩志は
「いーよ。
女の子を夜道の中、一人で歩かせるような男じゃないし。」
そういって、強引に切符を機械に入れた。
:09/03/08 01:06
:N703iD
:PY5xI9.2
#367 [七瀬]
「ぽんずちゃんも一応、女の子だしね〜。」
『一応じゃないっ!
かわいいかわいい女の子ですっ!』
「ハハハっ」
そう無邪気に笑う歩志。
ムカつくけど、うれしい。
ダメだ。
どんどん歩志にハマっていく。
:09/03/08 01:10
:N703iD
:PY5xI9.2
#368 [七瀬]
「松田…?」
『林…原。』
私はとっさに歩志の後ろに身を隠していた。
:09/03/08 01:13
:N703iD
:PY5xI9.2
#369 [七瀬]
「久しぶりだな。」
目を反らしながらいう林原。
そんな目、しないでよ。
「そいつ誰?」
林原が歩志を見て言う。
あの時の林原と同じ。
喧嘩した日の林原と。
怒ってる。
でも、その中で淋しそうに瞳が揺れてた。
:09/03/08 01:17
:N703iD
:PY5xI9.2
#370 [七瀬]
私は何も言わない。
言えない。
何も言わずに黙っている。歩志も、私も、
林原も。
かなり気まずい。
その時、林原が
「柚子っ!」
:09/03/08 01:20
:N703iD
:PY5xI9.2
#371 [七瀬]
柚子……?
今、林原が
“柚子”って呼んだ?
呼んだよね。
私の耳、間違ってないよね。
思わず疑ってしまう。
だってあの林原が、こんなうわずった声で
“柚子”って呼ぶんだよ?
:09/03/08 01:23
:N703iD
:PY5xI9.2
#372 [七瀬]
林原は私に背を向けた。
「悪かった。」
後ろを向いていたから、林原がどんな顔してるかは見えなかった。
ただ小さな林原の肩が小刻みに震えているだけ。
もう我慢できない。
ここから逃げ出したい。
:09/03/08 01:27
:N703iD
:PY5xI9.2
#373 [七瀬]
「ほんとごめん。
あの時、お前があんなこと聞くから…。
つい焦っちまって。
でもなこれだけは聞いてくれ。
俺がJ高を止めて、G高にしたのは、
また、お前と一緒に3年間過ごしたかったから。」
:09/03/08 01:30
:N703iD
:PY5xI9.2
#374 [七瀬]
「俺は、松田…、
柚子のことが……」
「まあ、林原クン。
柚子うれしいわぁー!!」
:09/03/08 01:32
:N703iD
:PY5xI9.2
#375 [七瀬]
「どうしたの?林原クン。振り向いた顔もかっこいー。柚子、大好きー!」
「お前…。
八田歩志だろ?」
「なーんだ、知ってたんだ。ぽんずちゃんにわざわざ、聞かなくても良かったじゃん。
それとも何?
あいつの口から聞きたかったの?
“歩志はただの友達だよ”って。」
:09/03/08 01:37
:N703iD
:PY5xI9.2
#376 [七瀬]
「ぽんずちゃんなら、さっきの電車に乗って帰っちゃったよ?」
「柚子にちょっかいだすな。」
「ぽんずちゃん、さっき泣いてたよ?
あんたにそんなこと言われたくない。
ね、林原クン?」
「お前…っ!」
「暴力はんたーい。
じゃあねー、林原クンっ!」
:09/03/08 01:44
:N703iD
:PY5xI9.2
#377 [七瀬]
「ばいばーい。」
「なんなんだよ、あいつ。
八田歩志……。
柚子、ごめんな。」
:09/03/08 01:46
:N703iD
:PY5xI9.2
#378 [七瀬]
電車に乗った瞬間、溜めていた涙があふれ出た。
周りの人たちが、じろじろ見てたけど、
そんなこと、どうでも良かった。
『ぐずっ、うぅ〜。』
泣いても泣いても、枯れない涙。
私はいつから、こんなに泣き虫になったんだろ。
:09/03/08 01:51
:N703iD
:PY5xI9.2
#379 [七瀬]
今日も、また1日が始まる。
私はどうなるんだろうか…。
「今日のラッキーさんは、おひつじ座のあなた。
何事もスムーズにいく1日。あなたの勇気が運命を動かす日となるでしょう。
ラッキーカラーは赤。」
テレビの前のアナウンサーが、はつらつと言う。
:09/03/08 03:21
:N703iD
:PY5xI9.2
#380 [七瀬]
ほんとかな?
おひつじ座の私はテレビをガン見。
ほんとだといいな。
少し期待してしまう。
淡い希望と昨日から固めた覚悟を胸に学校へ出発。
占いで言ってたような、1日になりますように…。
:09/03/08 03:24
:N703iD
:PY5xI9.2
#381 [七瀬]
あ〜、学校に行きたくない。
電車から降り、学校への道のりの中、思ってしまう。
昨日、布団の中で1日かけて固めた覚悟は、もろかった。
そのおかげで、一睡もしなかった。
寝てないのと、泣いたので、私の目は腫れて、ブサイク丸出し。
:09/03/08 03:29
:N703iD
:PY5xI9.2
#382 [七瀬]
行きたくない理由は2つ。
1つは、やっぱりまだ林原に会いたくない。
2つ目は、
歩志に会いたくない。
正確に言うと、どういう顔で会っていいのか分からない。
:09/03/08 03:31
:N703iD
:PY5xI9.2
#383 [七瀬]
だって、
昨日の私は、
歩志に家まで送ってもらう約束をした。
なのに結局、私の都合で、勝手に帰ってしまった。
バイバイも言わずに。
怒ってるかな?
怒ってるよね……。
歩志のせっかくの善意を踏みにじってしまったし。
:09/03/08 03:35
:N703iD
:PY5xI9.2
#384 [七瀬]
階段を上る、足取りは重たい。
歩志だって、きっと謝れば、許してくれるよね。
よし、素直に謝ろう。
“昨日はごめん”
って。
:09/03/08 03:39
:N703iD
:PY5xI9.2
#385 [七瀬]
ガラッ。
気合いを入れて、勢い良く教室のドアを開けた。
…はずなのに、
歩志は、まだ来ていなかった。
いつもは、私が来るころには席に着いて、窓の外見てるのに。
注入した気合いは、すっと抜けてしまった。
:09/03/08 03:43
:N703iD
:PY5xI9.2
#386 [七瀬]
なぁんだ。
私は席に着く。
歩志がいなくてヒマだったからか、
それとも謝るつもりが予定が狂ってしまったからか。
机に頬杖をつく。
昨日のことを思い出していた。
昨日の夜は……。
:09/03/08 03:46
:N703iD
:PY5xI9.2
#387 [七瀬]
“柚子っ!”
昨日の林原の声。
今、思い出しても全身が熱くなる。
今まで、ずっと
“松田”とか“お前”
だったのに、
急に下の名前で言うんだもん。
びっくりするし、
なんか照れる。
:09/03/08 12:58
:N703iD
:PY5xI9.2
#388 [七瀬]
“悪かった。”
この言葉を聞いたあと、涙がどんどん溜まっていた。
林原が謝ってくれて、
せっかく仲直りが出来そうだった。
なのに、なぜかうれし涙ではなくって、
悲しくって涙が出た。
うれしいはずなのに。
:09/03/08 13:02
:N703iD
:PY5xI9.2
#389 [七瀬]
私の小さな涙に気付かれたくなくて、
逃げてしまった。
あの後、林原が何か言ってたような気がするけど、
私の耳には届かなかった。
何、言ってたんだろう?
ガラッ
:09/03/08 13:05
:N703iD
:PY5xI9.2
#390 [七瀬]
『歩志!!』
「何?どうしたの??
ぽんずちゃん。」
あれ、怒ってない?
『昨日はごめんね。』
「は、何が?」
『先に帰っちゃって…。』
「別にいいよ。それくらい気にしなくって。」
:09/03/08 13:09
:N703iD
:PY5xI9.2
#391 [七瀬]
あれれ?
なんか優しい。
「それより昨日は、きちんと帰れた?」
『うん。帰れたよ。』
「そっか、じゃ良かった。」
やっぱり優しい。
:09/03/08 13:16
:N703iD
:PY5xI9.2
#392 [七瀬]
いつもなら
“あっそ。”
とか冷たい態度か、
“ぽんずちゃんは女の子じゃないもんね。”
とか意地悪なこと言うのに。
まるで別人。
戸惑ってしまう。
怒ってないなら、いいけど、
これはこれで、どうすればいいか分からない。
:09/03/08 13:19
:N703iD
:PY5xI9.2
#393 [七瀬]
“スムーズにいく1日”
頭に思い浮かぶ。
結局、あれから何もなくって、ほんとびっくり。
占い当たってる?
そして放課後。
歩志と私は、また同じ作業に打ち込む。
:09/03/08 16:45
:N703iD
:PY5xI9.2
#394 [七瀬]
やっぱり歩志は真剣で、何も話さない。
私も黙っている。
鉄の削れる鈍い音だけが、この広い体育館に響く。
何も変わらない。
以前と全く変わらない。
ただ、私の気持ちが違うだけ。
:09/03/08 16:48
:N703iD
:PY5xI9.2
#395 [七瀬]
この空気のおかげで、話すこともなく作業もスムーズに進んだ。
“すること”があるのが今の私にはありがたかった。
「俺、用事があるから、先に帰るな。」
『じゃあ、私も帰るよ。』
時計は6時をさしている。
この体育館で歩志としゃべったのは、これだけだった。
:09/03/08 16:54
:N703iD
:PY5xI9.2
#396 [七瀬]
駅まで歩く。
ふぅ。
何もなくて良かったあ。
チカチカチカ…。
あっ、やば!!
信号が赤に変わっちゃう。
全力疾走。
……が間に合わず。
最悪。
:09/03/08 23:43
:N703iD
:PY5xI9.2
#397 [七瀬]
仕方なく、待つ。
この信号、なかなか変わらないんだよなあ〜。
コツコツコツコツ…。
後ろから聞こえてくる靴音。
元々、人気のないところ。
振り返る。
:09/03/08 23:47
:N703iD
:PY5xI9.2
#398 [七瀬]
すると、小さく林原が見えた。
私には気付いていない感じ。
うそ〜!
信号、早く変わってよ!!
そんな私の思いを、
あざ笑うかのように、信号が変わる気配すらしない。
コツコツコツコツ…。
だんだん大きくなる靴音。
覚悟を決めた。
:09/03/08 23:50
:N703iD
:PY5xI9.2
#399 [七瀬]
「松田。」
昨日、“柚子”と呼んだ声が私の中を響く。
今にも顔が赤くなりそう。
『林原、久しぶりだねっ!』
「いや、昨日会ったし。」
しまった!
緊張して、変なこと言っちゃった。
:09/03/08 23:54
:N703iD
:PY5xI9.2
#400 [七瀬]
でも、いつもの林原と話したのは私にとっては久しぶり。
だから“久しぶりだねっ”は全く変ではないよ?
「どうした、松田。」
林原の声で我に帰る。
『う、ううん。
でも、話すのは久しぶりじゃん。』
:09/03/09 00:12
:N703iD
:W7rSt6Q.
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