星とぽんず
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#11 [七瀬]
『ただいまー。』
「お帰り。」
お母さんが台所で言った。
父、母、姉、私。
父は普通のサラリーマン。母は専業主婦。
姉は高校2年生。
ふと窓の外を見ると、
工場があった。
「松田鉄工業」の看板が
無くなってるなあ、
淋しくなる。
去年までもう一人、
私たち松田一家にはおじいちゃんという家族がいた。
:09/02/26 22:24
:N703iD
:V1qRCp82
#12 [七瀬]
部屋に行き、
制服も着替えず、ベットに倒れこむ。
一気に目を閉じる。
記憶が蘇ってきた。
12年前の3歳。
はじめて見た灰色の景色。油の匂いが鼻をつく。
:09/02/26 22:29
:N703iD
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#13 [七瀬]
私はおじいちゃんに
連れられて初めて
「松田鉄工業」に来た。
3歳ながら、
私は胸が高鳴った。
機会が同じリズムで動く音がとても心地よかった。
おじいちゃんは笑顔だった。
お母さんの危ないという声を無視してほぼ毎日、工場に行った。
といっても
やっぱり危ないので
端っこで見てるだけだったけど。
:09/02/26 22:35
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#14 [七瀬]
小さい工場でおじいちゃんと従業員、2人ぐらいで働いていた。
おじいちゃんは昔から私みたいに技術が大好きだった。そして建築の仕事をしたくて工業全般の勉強をらしい。
けれども結局、挫折してしまい、勉強したことを生かし、この工場を作った。
という話をお父さんから聞いた。
お父さんはまったく工業には興味はなかったから、工業は継がなかったし、
おじいちゃんも無理強いはしなかった。
:09/02/26 22:42
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#15 [七瀬]
でも私には色々教えてくれた。
なんでだろう。
また工場に行ったから?
わからない。
けれどおじいちゃんは
いつも優しい笑顔で教えてくれた。
5歳になる頃には私は、ノコギリを使って木を切れるようになってた。
とはいえ、まだ5歳だし小さくて細い木を小さいノコギリで切っただけだけど。
でも誉められてうれしかったし、
ますます技術が好きになった。
でも去年おじいちゃんは
亡くなった。
:09/02/26 22:47
:N703iD
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#16 [七瀬]
今でも信じらんない。
あんなに元気だったおじいちゃんが。
急に。
78歳にはとても見えない様子でおじいちゃんは毎日、大きな機械を動かしてた。
なのに、あっという間だった。
おじいちゃんがいなくなった今、工場は閉鎖され、従業員も、もちろん首になった。
今も着々と工場の取り壊しが進んでいる。
私はそれを見るたび、
憂うつになる。
:09/02/26 22:53
:N703iD
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#17 [七瀬]
7月の中間。
第2回進路懇談が行われた。
第1回は私とお母さんの口喧嘩、そしてヒグマとの睨み合いで終わってしまった。
今回はなんとかしないと。
「どっか行きたいところはないのか。」
ヒグマの言葉の後、
沈黙が続く。
とうとう観念した私は口を開いた。
:09/02/26 22:58
:N703iD
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#18 [七瀬]
『笑わないでね。』
私はお母さんとヒグマを軽く威嚇した。
笑わないよ、いうように2人はうなずく。
『私……、
電気工学を学びたい!!』
2人を見ると、
目を見開き、口はあんぐりしていた。
「電気……工学??」
とお母さん。
「お前本気か。」
とヒグマ。
:09/02/26 23:05
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#19 [七瀬]
「工業科だろうとは思っていたけど、まさか電気工学とはなあ。」と口元に薄ら笑みを浮かべるヒグマ。
お母さんは相変わらず、目を大きく見開いている。
私の住んでいるところは田舎だけれど近くに工業で有名な高校が一高あった。
J高校。
他にも工業科があるところはあるけれどJ高校ほどではない。
:09/02/26 23:16
:N703iD
:V1qRCp82
#20 [七瀬]
それに工業科にしては、賢い。
私の成績じゃあ足りない!!
でも、それ以外にも理由があった。
それは
“ほぼ男子校”
“ほぼ”というのは、
共学だけども女子で工業科を受ける子がほとんどいないからだ。
建築デザインや、
理数工学ならまだしも、
機械や電気については
去年は0。
その去年も0。
そのその去年も0。
それについては、J高だけでなく工業科についはみんな同じだけれども。
:09/02/26 23:24
:N703iD
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