夏祭り、恋花火

　
　
でも、
そうするとキリがない。

いつまでも終わらない。

分かってるのに、
私たちはぶつかり合う。

はぁ

ため息をつく。

今、奏は雑誌を読んでて、私はテレビを見ている。

　
二人の間には会話はなく

ただ、テレビの音と
紙がめくれるパラパラとゆう音が部屋に響く。

｢まつり…さっきはごめん｣

『いいよ。
こっちこそ、ごめんね？』

こうゆうことにも、慣れてしまった。
　

　
こんなことに、慣れたいわけじゃない。

前みたいに、笑顔の二人はもうここにはいない。

疲れた…

最近は、一緒におるだけでその空気に参ってしまう。

まさに最低最悪。

『…なあ、奏。』
　

　
｢ん？｣

『…私、ほんま原田さんとは、なんもないよ。

確かに私の初恋の人やし、あの時、奏を放って原田さんのとこ行ったのも事実やけど、今は…』

｢分かってる。｣

『じゃあ、

…もうあんなこと、ゆわんといて。』

　
｢…ん。
じゃあ、まつりも言わんといて、
“別れる”なんて。｣

『言わへんよ。』

｢俺から離れんとって。｣

『…離れへんよ。』

大丈夫。
大丈夫大丈夫…

私は奏と上手くやっていける。

　
そう自分に言い聞かせる。

｢約束。｣

そう言って、小指を絡める。

少し心が軽くなった。

『指きりげんまん。
嘘ついたら、針千本飲ーますっ!!』
　

久しぶりに笑った。

　
『ゆーび、切った!!』

二人の声が重なって、
唇も重なる。

でも、
この“約束”は、すぐに壊れてしまうことになる。

それも私のせいで。

奏、ほんまごめん。
　

　
　
　
あれから、順調に交際は続いた。

『今から行っていいー？』

｢ええよ。
おいで、まつり。｣

電話越しに聞こえる、
奏の声に安心する。

『うん。
今から駅向かうわ。
コンビニ寄るけど、なんかいるー？』

　
｢うーん、そぉやなあ。｣

少し間が開いて、
また奏の声が聞こえる。

｢ビールと、

そやな…なんかエクレアとかシュークリームとか、
甘いやつ、お願い!!｣

『え？
奏…甘いのん、食べへんやん。』

奏は、甘いもんが苦手。

　
特に、生クリームが
ダメらしい。

｢うん、俺が食べるんじゃなくって遊希が…
ほらアイツ、めっちゃ甘党やん？
それに酒飲まれへんし。｣

『え、遊希おんの？』

｢うん。今、俺の隣に。｣

『ふーん、わかった。
とりあえず買って行くわ。』