夏祭り、恋花火

　
ふぅ。
やっと帰った。

疲れた身体にムチを打ち、最後の仕事をし始める。

それは洗い物。

お客さんの使った皿やら箸。
後はおでんを煮た大きな鍋など。

かなりの重労働。

大体2、3人の女の子たちとする。

　
はずが女の子たちは、
おばあちゃんに呼ばれ、
とりあえず一人で始めることにした。

春とはいえ、まだ肌寒い季節。

冷たい水に耐え、金ダワシに洗剤をつけ、こする。

｢まつり。｣
　
後ろから柔らかい声。
　

振り返ると、そこにはあの人。

｢今日で最後やな。｣

私はこの時、この意味がよく分からんかった。

『うん。今度は夏やな。』

これが終わると、天神祭まで祭がない。

｢そやな。｣

今、思うとなんで気付かんかったんやろう。

悲しそうな顔してたのに。

　
　
『どうしたん？そんな顔して。』

｢いやまた会おな。｣

『なに言ってんの。』

クスクス笑う。

｢また迎えに来るわ。｣

『トラックで？』

その当時、私はよくトラックで送り向かいをしてもらってた。

　
　
　
｢うん、トラックで。
きっとな。｣

それが最後に聞いた、あの人の言葉だった。
　
　
　

　
中学生になって初めての、天神祭。

あの人は来なかった。

そして入れ替わるように、新しいバイトの子たちが入ってきた。

なんかあったんやろか？

と最初は思った。

けれども、もう４年。

　
あれから４年が経った。

生きてるかどうかも分からない。

時は確実に過ぎて行ったのに、

私は置いてきぼり。

いつまでも中学生のまま。　
　
　

　
　
　
もー、暑い！
暑い暑い!!

座ってるだけで汗が出てくる。

｢まつり、ご飯食べに行こか。｣

『奏君、行こか。』

天神祭二日目。

奏君と一緒にご飯を食べに行く。

　
　
昨日はあんま寝られへんかった。

遊希が色々聞くから…。

｢遊希から聞いてんけど、
まつり、男と付き合ったことないんやって？｣

遊希～！
　

　
　
　
『…そうやけど。
やっぱ変かな？
この年で彼氏もできたことないって。』

｢うーん。別にええやん。まつりのペースでゆっくり頑張りぃ。｣

…ありがと、奏君。
　
　